マトウダイ

Zeus faber

 

 比較的深い水深(100〜200メートル)にすむ魚で、スーパーなどではあまり見かけません。ちなみに上のスケッチには間違いがあって、腹ビレは実際にはもっと前方、胸ビレの基底よりも前につきます。スケッチ下の線画が腹ビレの相対的に正しい位置。

 体の側面に目玉模様があって、名前の通り、的を思わせます。背ビレ前方には10本の棘が、臀ビレ前方には4本の固く鋭い棘があります。また、腹と背中の輪郭にそって、棘のついた鋲のようなものが並ぶのが特徴的(検索図鑑では棘状板と呼ばれています)。これは骨であるらしく、半透明で固く、体が湿っている状態だとよく見えません。

 また、口がよく突出することが特徴で、下顎を開けると、それに応じて、上顎の骨が前方にスライドします。上顎の骨には眉間にまで届く突起があり、これが前方にスライドするので、口を開けた時はおでこがややへこみます。この個体の体長は29センチ。

 肉は白身でおいしい魚です。頭が大きく、内臓の領域もそれなりに広く、眼の後ろの後頭部から側面の的、およびそこから垂直に線を降ろしたあたりまで内臓が占めます。内臓の中でも、肝(たぶん肝臓)は大きくて柔らかく、かなりおいしいものです。自分は煮て食べましたが、塩も何も味付けしない状態でも、なにか旨味がある感じ。背骨と浮き袋の間にかなり大きな赤黒いもの(血合いでしょうか?)、がありますが、これも煮ると特に臭みもなく普通に食べられます。胃袋はそこそこ大きなもので、厚く、煮て食べるとおいしいものです。皮もヒレの基部にある鋲を抜かせば固いものはありません。皮の裏が脂でべとべとするとかそういうこともなく、そのまま煮付けても問題ありません。ヒレやそれを支える骨に鋭いものがありますが、それらはいずれも大きく、特に小骨もないので、料理して食べるにはなかなか良い魚だと言えるでしょう。

 ちなみに、鰓蓋の後ろから腹側、やや斜め後ろ下まで細長い骨が出ていて、触るとはっきりと分かります。さばく時はこのあたりから刃を入れると内臓を抜きやすいかもしれません。

 

 2013.03.18 以上のイラストは腹ビレの位置に間違いがあるので、以下に別のマトウダイをスケッチ、新たにイラストを描き起こして、追加しました。こちらの個体の体長は27.5センチ。上の個体より小さいためでしょうか? 背ビレの棘が1本少なくて9本、さらに背ビレ後方と臀ビレの付け根についている鋲の数も少ないようです。色はどちらも鈍い銀色。ただ、上の個体の方はスケッチで時間が経過したせいか、やや変色が進み黄色みが強く、こちらの個体は灰色が強い状態。こちら下の方がマトウダイ本来の色に近いかもしれません。また、こっちの個体は尾ビレに怪我と思われる欠けがあります。

 下顎を下げて口を開くと同時に、上顎は前方にスライドし、左右に広がります。

 

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