カンパチ
Seriola dumerili
2007年、9月25日に購入したカンパチ。全長は35.5センチ お値段は1500円。高いといえば高いのだけども、たんまりと肉がとれることを考えればまあ納得できなくもないお値段かもしれません。同じスーパーでは3〜4切れのカンパチの刺身でお値段298円なり。たぶん刺身にした時点で丸ごとよりも1.5倍〜2倍ぐらい高くなっているのではなかろうか? それにしてもどういうわけかこのカンパチ、スーパーでは”鮮魚”というなんともアバウトすぎるラベルで売られておりました。なんでなんでしょうね。カンパチの方が売れやすいと思うのだけども・・・・・
さて、鮮魚とレッテルされようがなんであろうが、この魚が見た目からしていわゆるスズキ目(このカテゴリーにどの程度の意味があるんだ?というのはともかくとして)であって、なおかつブリかなんかに近い魚なんだろうということは分かります。しかしそれは分かるのだけどもこっから生真面目に検索表を辿っていと、これがまた長い。
まずは色々なところをすっ飛ばして腹びれが1棘5軟条であることから出発し、コチやらネズッポでもなく、”目の下の3番目の骨の後ろ向きの突起”がないことからいわゆるカサゴ目でもないし、見た目からしてハゼでもない(ああなんというアバウトな消去法をして検索表を使っているのだ私は)。そしてもちろんこれはワニギスやらなにやらでもないし、finlets がないからサバ科でもない。
注:カンパチの頭をあまりいじらなかったので前上顎骨が突出できなかったかはちょい未確認。
そしてさらに検索表を消去法で進む進む。なんかもう、ほとんど原始形質だけを辿って派生するさまざまな系統群を全部避けていく感じで進む進む。この魚はクロタチカマスでもヒシダイでもないし、ツノダシやニザダイのような特徴も欠いているし、側線がスムーズに伸びていることと見た目からしてカワスズメでもベラでもブダイでもないと前方へ進み、ヒメジやヒイラギでもなく、ハタンポでもギンカガミでもなければ側線が普通に体側面の真ん中を通ることからシキシマハナダイだかなんだかとかいう魚やらなにやらでもない。そして、
:背びれの棘が7本(ただし7本目はとても小さい)であること
:臀びれの前方に2本の遊離棘があること(遊離棘はごく小さく、その後ろに長い3番目の棘がある)
こうしたことからようやくアジ科にたどり着く。さらにそこから、
:アジみたいにゼイゴがないこと
:背びれの後ろの部分の開始点が臀びれよりずっと前にあること
:背びれ前の部分にある棘がお互いに膜でつながること
:finletsがなく(この形質はさっきも検索表に出てこなかったか?というのは置いておく。アジ科のツムブリはfinletsを持っているらしい。やれやれ・・・・)
:口先は眼よりも下にあることからブリではなく
:後ろの背びれが鎌状にのびないのでヒレナガカンパチでもなく
:鰓を支える骨の先にある鰓耙の数が12であること(これは解剖して確認)
以上のことからカンパチであろうということが分かります。ただ、まだ小さい個体であるためか(成魚は150センチとかになるらしい)、尾びれの下先端が白いという特徴ははっきりしません。縁が申し訳程度に白いだけですね。
さてはてカンパチが Carangidae 、つまりアジ科でありアジに近い魚だったというのは知りませなんだ。ここで改めてアジ科の魚達を眺めてみれば体型が実にさまざまです。ほとんど菱形に近いものからスリムで細長い体型のもの、背びれ、臀びれが長くのびたもの、なかには腹びれを退化させたものもいて、いやはやその多様性にはいささか驚かされるグループです。ファミリー内部の系統関係に関しては論文があるようですが、まだ読んでいません。共有派生形質についてはいまひとつよく分からないのですが、Fishes of the Wold 3ed では小さな丸いウロコがあること、たいていの場合は臀びれには3つの棘があり、前の2つは小さいことが特徴として取り上げられています。
カンパチの味についていうと、肉はあぶらがのっていておいしいですね。煮るよりは刺身の方がいい感じでしょうか? アニサキスには一応注意して薄くスライスして喰っちまいました。