アイナメ

Hexagrammos otakii

 

 2007年、9月1日に購入したアイナメ。胸びれと尾びれが壊れています。

:背びれを前後にわけるくぼみ(欠刻)があること

:体に5本の側線があること(背中に2本、側面に1本、腹の前に1本、後ろに1本)

:頬や鰓ぶたにウロコがあること

:1番上の側線が背びれの後ろ半分、その真ん中あたりで途切れること

といった特徴が見られることから、これはアイナメでいいのでしょう(「日本産 魚類検索 全種の同定」を参考)。全長は34センチ。新鮮だともう少しピンクがかったきれいな色をしているのですが、やや暗い色ですね。さばくと浮き袋はなく、内臓は体の前方1/3程度までしかないので意外と身が多い白身の魚です。ただ、スーパーで買ったら1100円という高値。こりゃあ高級魚の部類ですね。皮とウロコはなかなか丈夫で、丸ごと焼いたらウロコがけばだち、かじるとごりごり。皮をはいで食べるのが妥当っぽい。口は妙に厚ぼったくて、目つきが少し悪いお魚さん。

 アイナメは伝統的にカサゴ、メバル、ホウボウ、カジカなどと単系統群(Scorpaeniformes :カサゴ目)をつくるとされていますが、カサゴ目全体を束ねるような共有派生形質はほとんどひとつだけ、

目の下の3番目の骨に後ろ向きの突起がある( a posterior extension of the third infraorbital bone :[Fishes of the world 3ed] )、

ぐらいのもので、あまり多くありません。この特徴は日本語では”第3眼下骨の後部にある突起 (眼下骨棚:suborbital sray)”と呼ばれるものです。アイナメの場合、つるんとした頬のあたりをぐりぐりするとどうも固い骨がそこにあるらしい・・・ということは分かります。

 さて、グループを束ねる特徴がほとんどひとつだけということは、ちょっと反証があるだけでもグループが壊れてしまいかねない危ういものである、ということです。実際、カサゴ目が単系統であるかどうかはしばしば疑われていますし、多系統であることを示した論文もあります。その場合、アイナメはカサゴから離れ、カジカなどとひとつの単系統群をつくるそうな。また先に書いたようにアイナメは浮き袋を持っていないのですが、これはアイナメやカジカなどが作る単系統群の共有派生形質であるようです(Imamura & Yabe 2002)。

参考文献

今村2005 「魚の形を考える」松浦啓一編著 東海大学出版会 第5章 [ 形から考えるカサゴ目の単系統性 ]

Imamura & Yabe 2002, Demise of the Scorpaeniformes (Actinopterygii: Percomorpha): An Alternative Phylogenetic Hypothesis, Bull. Fish. Sci .Hokkaido Univ 53(3) pp107~128

 

 

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