ライト撮り(2)・デメリットとメリット

今までやっていたフラッシュ撮影と比べると、ライト撮りはメリット・デメリットがあります。その説明です。

ライト撮りのメリット

(1)ファインダーの中に見た絵がそのまま撮れる。
フラッシュ光では、影の出方が撮るまでわかりませんが、ライト撮りの場合、撮影前にファインダーの中で見たままに写ります。特に影を作る時や光の回りが悪い被写体を撮る時などには有効です。ライト撮り最大のメリットです。

(2)自由なライティングが可能。
フラッシュは有線(光・電気)で繋げます。アームに取り付けます。設置場所に制限があります。ライトは自由に置く事が出来ます。これは大きなメリットです。

(3)連射可能
連射可能です。

(3)フラッシュがない
フラッシュによる制限がすべてありません。SSの同調速度。チャージ待ち。過熱防止待ち。すべてなくなります。

ライト撮りのデメリット

(1)色変化がカメラで出来ない。
ライトは青い自然光と同じく定常光です。従って、フラッシュのようにSS・F値・ISOで青い自然光の比率を変える事が出来ません。ライトを設置した瞬間に七色のライト光と青い自然光の比率が決まり、カメラでは変化させられません。ライト自体の発光量を変えなければいけません。これはフラッシュ光との大きな差です。

(2)ブレが出やすい。
フラッシュ撮影は、瞬間光ですので1/1000以下というとても短いフラッシュ発光時間でブレが止まります。ライトは定常光なので、SSの分、長く濃いブレが出ます。手ブレ・被写体ブレすべてが顕著に出ます。ブレのコントロールの面でもフラッシュには到底かないません。

(3)発光量はフラッシュにはかなわない。
水中フラッシュは、50万ルーメン・5000itsあります。水中ライトは明るくなりましたがフラッシュとは比べ物になりません。ライトは定常光ですから、瞬間光のフラッシュに比べると不利です。

(4)暗がりが好きな生物は、明るいライトでは、逃げる、撮れない。
暗がりが好きな生物は明るいライトでは、逃げ出します。フラッシュの場合瞬間光なので、逃げません。

(5)操作性
ライトのオン・オフが面倒。発光量調整が面倒。本格的にライト撮りするためにはコントローラも買わないといけないでしょう。

(6)価格
ライト撮りには、大光量のライトが必要ですが、高価です。

(7)高感度特性
高感度特性の良いカメラが必要です。最低ISO800程度は常用する必要があります。

(8)演色性
LEDライトでは、Ra95など高演色性の商品も出ています。今までのLEDライトはRa70程度ですので、より太陽光に近いです。しかし、フラッシュのキセノン管は演色性がほぼRa100です。フラッシュの方が演色性が高いです。

(9)色温度
高演色性のLEDライトはは4000〜4500kと色温度が低い物が多いです。太陽光は 5000〜6000K程度で、フラッシュは5500kです。フラッシュの方が太陽光に近いです。

解説・メリット

メリットの方は、わかりやすいので詳しい説明は要らないと思います。
このメリットを生かす事のできる撮影方法においては、フラッシュ撮影よりも有効な場合があります。これは後述します。

解説・デメリット・色変化

フラッシュ撮影では、SS・F値・ISO感度を操作して、青い自然光量の比率を変えてきました。同時に被写体本来の色の再現も変化させてきました。色の出方・黒抜き・青抜き・青被り・青被せ・・・。

しかし、ライト撮りでは、SS・F値・ISO感度・NDフィルターを操作しての色調変化は一切出来ません。


F値・SS・ISOを設定後ライトを置きました。青い自然光が四角2個・ライト光が四角8個・必要光量が四角20個。写真はアンダーです。青い自然光20%・ライト光80%

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F値を一段分開けた場合・SSを一段分遅くした場合、青い自然光&ライト光の両方とも定常光ですので2倍に増えます。
青い自然光20%・ライト光80%

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ISO感度を倍にした場合、青い自然光20%・ライト光80%

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フラッシュ無しでのライト撮りでは、青い自然光比率はカメラの操作では変えられません。これは非常に大きなデメリットです。
青い自然光比率を変えるにはライト光の強さを変えるしかありません。
●ライトの光の強さ
●ライトと被写体の距離
この2つを変えて青い自然光比率を調整するのです。

色の変化を使った今までの撮影技法は使えません。

解説・デメリット・ブレ

ブレについては、第四章・ブレを先に読んで来て下さいね。

ライト撮りは100%定常光撮影です。フラッシュ撮影と違いブレは目立ちます。
●定常光比率は100%ですのでブレは非常に濃くなります。薄くする事は出来ません。
また、
定常光のブレですから
●SSが遅くなると、ブレは、長くなります。
●SSが速くなると、ブレは、短くなります。

濃いブレなので、SSを速くして、出来るだけブレを短くしなければいけません。
静体で被写体ブレ・手ブレが無い場合でさえ、浮遊物のブレを抑えるため予防的に速いSSが望ましいです。

解説・デメリット・ブレ(2)・最低限のSS

ライト撮りは、通常の自然光での陸上撮影と同じ定常光撮影です。従って同じ法則が当てはまります。
手ブレが目立たないSSは、『1/焦点距離以上』と言われます。

しかし、水中マクロライト撮りでは、さらに速いSSが必要になります。陸上よりも撮影条件が厳しいからです。
●浮遊物が多い
●三脚無し手持ち
●近接マクロ
●被写体が動体

僕の経験ではAPS-C+105mmでは、最低限・・
●証拠写真で、動かない被写体で、1/150・1/焦点距離、動く被写体は、1/250・1/(焦点距離×2)必要です。
●綺麗な写真で、動かない被写体で1/250・1/(焦点距離×2)。動く被写体では、1/500・1/(焦点距離×3〜4)必要です。
これ以下ではエッジの甘い、眠い写真になります。 
しかしフラッシュ発光時間は1/1000以下ですから、フラッシュ並みにとなるとさらに速いSSが必要になります。
陸上で野鳥撮影などではSS1/1000〜1/2000なので当然と言えば当然ですね。

僕の最低限のデータを機材別に換算した表です。
50〜60mmレンズで動体の場合、この表よりもっと速いSSが必要だと思います。
100mmレンズ 60mmレンズ
素子サイズ APS-C  フルサイズ  APS-C  フルサイズ
35mm換算
焦点距離
 150mm 100mm  90mm  60mm 
1/焦点距離  1/150 1/100  1/90  1/60 
証拠写真・静体
1/焦点距離
 1/150 1/100  1/90  1/60 
綺麗な写真・静体
1/(焦点距離×2)
 1/250 1/200  1/180  1/120 
証拠写真・動体
1/(焦点距離×2)
 1/250 1/200  1/180
??? 
1/120
???
綺麗な写真・動体
1/(焦点距離×3〜4)
 1/500  1/400 1/360
??? 
1/250
???


さらに、ライト撮りでは、浮遊物のブレが濃く長く写り込みます。この対処が、被写体ブレ・手ブレよりも厄介かもしれません。
ライト撮りのブレの検証動画です。ライト撮りに興味がある方は必ず見て下さいね。

解説・デメリット・ブレ(3)・フラッシュ撮影並みの画質

ライト撮りで本気でフラッシュ撮影並みの画質を得るためには、ブレをフラッシュ撮影並みに抑えなければいけません。フラッシュ撮影の2種類のブレとライト撮りの100%定常光のブレでは種類が異なるため比較が難しいですが、、、

●フラッシュ撮影で、F16・ISO100・SS1/250の場合(青無し写真)、1/250の定常光のブレと1/1000以下のフラッシュ光のブレのミックスです。このデータでの青無し写真は、定常光量比率はとても低いため、見えません。
ライト撮りでこの写真と同等のブレを実現するためには、F16・ISO100・SS1/1000というデータで撮影しなければいけなくなります。
同じ青い自然光量の写真を撮るためには、F16・ISO400・SS1/1000です。非常にits値(照度)の高いライトが必要です。暗い海で、青い自然光量比率が低ければ、F16・ISO1200・SS1/1000にする事で、its値1/3のライトで、似た写真が撮れます。ただし高感度特性が良ければですが・・・

●フラッシュ撮影で、F2.8・ISO100・SS1/250の場合(青多い写真)、1/250の定常光のブレと1/1000以下のフラッシュ光のブレのミックスです。このデータでは、定常光量比率は高いため、1/250の長い定常光のブレも見えだします。
ライト撮りでこの写真と同等のブレを実現するためには、F2.8・ISO100・SS1/(焦点距離×3〜4)では、動体では、被写体ブレが場合によって残り、浮遊物のブレが短くても濃いため、同等のブレとはいいがたく、100mmレンズでSS1/(焦点距離×5)以上必要ではないかと思います。
同じ青い自然光量の写真を撮るためには、F2.8・ISO120〜300・SS1/300〜750です。非常にits値(照度)の高いライトが必要です。暗い海で、青い自然光量比率が低ければ、高感度にする事で似た写真が撮れます。ただし高感度特性が良ければですが・・・(青無し写真よりも条件は緩いですが、それでも厳しいです)

かなり厳しいデータです。
このSSで実際に撮るには、無理な場合も多く、もっと遅いSSで妥協しての撮影になります。その場合は、ブレの対処をフラッシュ撮影の何倍も気を使って抑え込まなければいけませんね。

実際、上の検証動画でも、後半の綺麗に撮れていて、浮遊物のブレも気にならない写真は、SS1/500〜1/750です。1/(焦点距離×4〜5)です。
暗い場所での近接撮影ばかりなのは、このデータで、撮るためには近接撮影でなければライト光量が足りないからです。逆に言えば、スズメダイなどの少し離れた撮影では、its値(照度)が高いライトでなければ不可能です。100度3000ルーメン・2灯(60its)では照度が全く足りませんね。

●青被せ写真(超青多い写真)、ほとんどライト撮りに近いです。定常光量比率はとても高いため、1/250の長く濃い定常光のブレが写ります。
ライト撮りでこの写真と同等のブレを実現するのは、簡単です。元から1/250のライト撮りと同じくらいの濃さのブレがあるのです。1/500などSSを早くすれば、ブレが短くなります。この場合だけ、ライト撮りの方がSSを速く出来るのでブレは短くなるためライト撮りが有利です。

解説・デメリット・発光量不足

3000ルーメン以上の明るいライトが多数あります。しかし、its値・光度は高くありません。瞬間だけ光るフラッシュ光は50万ルーメン・5000itsです。光量はありません。全く勝負になりません。
しかも綺麗に撮るためにはブレ防止でSSをフラッシュ撮影よりもかなり速く設定しなければいけません。速いSSでは、フラッシュに匹敵する最大発光量を水中ライトで得る事は難しいです。

●ライト撮り(1)でも書きましたが、明るい海では、発光量不足はより顕著になります。
●離れた被写体では、発光量不足はより顕著になります。

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