フラッシュ(3)

次に、フラッシュ位置を決めるの要素の2つ目。フラッシュをカメラの、上下右左?どの場所に置くか?について学びます。

光がある限り、影は決してなくならない

光がある限り影は決してなくなりません。よく影を『消す』という表現をしますが、厳密にはこれは大嘘である事は覚えておいて下さい。今僕らは光を回す方法と理論を学んでいます。影を『消す』方法です。これは濃い影を薄い影に変え、影の出る位置を目立たない場所にする、という意味です。面倒なのでこのHPでも影を消すと書きますが、光で照らす限り、影は決してなくならない事は覚えておいて下さい。

晴れた昼間、自分の影を見てみましょう。体の形・姿勢を変えると影の形も変わります。大きくなったり小さくなったり、目立ったり目立たなくなったりします。ぜひ自分で試して下さい。(不審者として通報されない場所で・・・)

僕らはこれを光源、フラッシュの位置を変える事によりコントロールするのです。

影が下にある事

僕たちは、重力のある世界で地面にくっついています。そして常に太陽は上から光を送ってきます。ですから常に下に影がある世界で生きています。そのため影が下にある事が自然で違和感を覚えません。

子供の時懐中電灯を顔に下からあてて人を脅かした事ありますよね。
あの顔が怖いのは、陰がいつもと逆の場所に出来て不自然だからです。

影が下・上から光 影が上・下から光
こら!両方怖いとか、見るのはそこじゃない。
影の不自然さを見るのじゃ〜 

これは水中でも被写体が魚でも共通です。見る人間側の感覚の問題です。水中マクロ写真でも光を回す場合、基本的には影を薄く、下に持ってきます。

自然なライティングには被写体の正面または上から光を当てるのが基本です。下から当ててはいけません。

撮影条件ごとのパターン

フラッシュをカメラの、上下右左?どの場所に置くか?については撮影条件ごとに2つのパターンがあります。それを見ていきましょう。

180度型フラッシュ位置

カメラとフラッシュ2灯が一直線に並ぶ位置です。カメラを中心にフラッシュの2つの角度が180度開いているため180度型と呼びます。

光の回り方はこの位置が一番良いです。右のフラッシュが被写体の右半分、左のフラッシュが被写体の左半分にあたります。そのため360度すべてに光が当たります。被写体の正面から光を回すイメージです。被写体自身の影は後に行きます。目立ちません。

では、すべてこの位置でいいのか?というとそういう訳ではありません。

この180度型は、中層を泳いでいる被写体には最適な位置です。スズメダイ・ハナダイ・ベラ・ブダイ・チョウチョウウオなど。

しかし、地面や壁にくっついている被写体には良い位置ではありません。甲殻類・ウミウシ・ベニハゼ・ハゼの大半など。特にこれらの被写体をローアングルで撮る場合にはデメリットが大きくなります。

地面や壁にくっついている被写体を180度型でローアングルで撮ると、フラッシュは、非常に地面に近い位置にあります。そのため構図を考えて少しでもカメラを回すと地面の凸部(でっぱり)にフラッシュがけられて被写体に光が当たらなくなります。
また、前景の背景の地面や壁は凸凹です。フラッシュが地面に近いと、この凸凹の影が色濃く・長く・強く出てしまいます。前景の背景の影がきつくなります。

180度型ではフラッシュが、地面や壁に近すぎるため、地面や壁にくっついている被写体にはうまく光が回せないのです。フラッシュのけられが起きやすくなります。地面の凸凹の影を大きく作ってしまいます。

120度型フラッシュ位置

フラッシュ2灯をカメラの上に少し上げた位置です。カメラを中心にフラッシュの2つの角度が120度位開いているため120度型と呼びます。

120度型では、フラッシュが2つとも上にあるため、被写体の下側にフラッシュ光が全く当たらない部分が出来てしまいます。

しかしその影は、被写体の下に出来るため、自然な影となりあまり気にはなりません。

地面や壁にくっついている被写体を120度型で撮る場合、180度型の時のようなフラッシュのけられ・凸凹の濃い影というデメリットが小さくなります。

120度型は、地面や壁にくっついている被写体には最適な位置です。
前景の背景への光の回りがよくなります。

まとめ

  180度型 120度型
光の回り 360度綺麗に回る 下に影が出来る
地面の影響 フラッシュのけられが起きやすい フラッシュのけられは出にくい
地面の影響 凸凹の影が大きい 凸凹の影は小さい
地面の影響  地面の影響が大きい 地面の影響が少ない
  中層を泳ぐ魚に最適  地面や壁にくっつく生物に最適

120度型フラッシュ位置のバリエーション

120度型では被写体のいる場所・縦構図・横構図によってバリエーションがあります。そのご紹介です。

縦構図120度型フラッシュ位置

縦構図とはこういう縦長の写真です。これを120度型で撮るためには、カメラを縦向きに90度回します。そしてその縦にしたカメラの上にフラッシュを移動させます。左側が通常の120度型で、右側が縦構図120度型です。カメラの向きが変わってもフラッシュの位置はキープするために動かさなければいけません。。

      

被写体の上と僕らの上は違う

陸上では、重力のためほとんどの生き物が地面に足をつけて生きています。人間・犬・猫・馬・牛・・・・。従って上は空の方角です。例外は壁に止まるヤモリ・昆虫など少数です。

しかし水中では、泳ぐ魚たちは、僕たちと同じく『上』は水面の方角です。しかし、壁などにくっつく生物や壁近くを泳ぐ魚は様々な方角を向いています。従って『上』も様々な方角になります。甲殻類・ベニハゼ・ウミウシ・アオギハゼ・ツバメタナバタウオ・チョウチョウウオでさえ洞窟の中では上下逆に泳いでいます。

被写体の上から光を当てるという事の『上』とは、僕らの上ではなく各被写体自身の『上』なのです。従ってフラッシュの位置は各被写体ごとの『上』に、移動させなければいけません。

今からは、壁や天井にくっついている生物を120度型で撮影する場合のフラッシュ位置について学びましょう。

壁にいる生物を120度型で撮る

垂直な壁の上にくっついている生物、ベニハゼ・イソハゼ・ウミウシ・甲殻類、そういう奴いますよね?

  

このような被写体の『上』は・・・

そうです。この矢印の向きです。という事はカメラよりも矢印側にフラッシュをずらさなければいけません。

黒四角がカメラだとすると・・・カメラの『上』にフラッシュですから赤丸がフラッシュ位置となります。


通常の120度型ではフラッシュ一つが壁に近すぎます。被写体の『上』ではありません。

 
このように変形するか(縦構図120度型の応用)

 
通常の120度型のままカメラの向きを変える事になります。 

天井にいる生物を120度型で撮る

天井に上下逆ににくっついている生物、オキナワベニハゼ・イソハゼ・ウミウシ・甲殻類、そういう奴いますよね?

 

このような被写体の『上』は・・・


そうです。この矢印の向きです。という事はカメラよりも矢印側にフラッシュをずらさなければいけません。

黒四角がカメラだとすると・・・カメラの『上』にフラッシュですから赤丸がフラッシュ位置となります。


通常の120度型ではフラッシュは2つとも天井近くで全く役に立ちません。

 
このようにフラッシュを2つとも下に下げるか

 
このように変形するか(縦構図120度型の応用)のどちらかになります。

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