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あーとだいありー 2004年3月前半
3月15日(月) 益村信子 6日美術館展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) メゾネットになっているギャラリー空間を、ひじょうにたくみに使ったインスタレーションです。 題して「宙・そら・あふれる・溢れる・アフレル」。 上のフロアからは、毛糸がたれさがり、下のフロアにつづいています。全長40メートル。大同ギャラリーはじまって以来の、長ーい作品といえそうです。 左の写真は、3階のようす。 手前の部分は、昨年の夏、空知管内栗沢町美流渡(みると)でひらかれた「野外オブジェ展イン栗沢」で発表した、布でできた「LOOK」「PEACE」などの絵文字を軸にした作品を再利用。奥の部分は、昨年仙台でおこなわれた「ボレアス ジャパン」展での出品作をもとにしているそうです。 ただし、半透明な袋をあちこちに置き、さらに、ポスターカラーで青くぬった球を配するなど、たのしくあかるい雰囲気をつよめています。 奥のほうにおいてある紙袋2つには、表面に空の絵が描いてあります。 また、壁には、空をイメージした絵画が展示されています。 4階は、ファクス用紙などの硬い紙の筒をポスターカラーで青くぬったものを立て、うちわの骨や、透明なボウルに樹脂のひもを入れたものなどが置かれています。 ここでも、全体の基調は、青と白です。 壁にはってある「装飾的なコラージュ」5点だけは、全体の印象からはなれて、暖色などをつかった自由な平面になっていました。 この楽天性、そして、立体と平面との響き合いが、益村さんなんだよなあ、としみじみ思いました。 「まあ、世の中いろいろあるけれど、やるべきことはやらないとね」 と益村さん。 16日まで。 ■第2回野外オブジェ展イン栗沢(03年8月) 画像なし ■2003年3月の個展 画像あり ■2002年4月の個展 画像あり ■野外オブジェ展イン栗沢(01年11月)画像あり ちなみに、上の写真は、益村さんにメールで送附していただいたものです。 「北海道・滝めぐり」松田忠雄写真展=富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館) 地図A 松田さんは1935年生まれ、北広島在住。 定年後の趣味に写真を始めたそうです。 こうしてテーマをしぼって撮影すると、アマチュアでもりっぱな作品展ができるという好例だと思います。 すべてカラーの37点。撮影地はほぼ全道にわたっています。 シャッタースピードを速くしたり、夕焼け時間帯をねらったり、真冬の凍った時をねらったり(札幌・アシリベツの滝)、画面にバラエティーをつける試みはさまざま。 社台の滝(胆振管内白老町)で、人の顔に似た滝つぼに迫った写真はユニークです。 また、夕張の千鳥ヶ滝は、昨夏の颱風(たいふう)10号接近で増水した川を撮っています。 それにしても、滝の名前ってアイヌ語がすくないですね。北海道の地名の割には。どうしてでしょうかね。 17日まで。 |
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3月13日(土) まずは、14日で終わる展覧会から。 「札幌の美術」は、後日、別ファイルでアップします。ごかんべんを。 加藤D輔写真展=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G) 現在は札幌と上川管内当麻町を拠点にしている20代の若手。 2月には「Sスクール写真展」に出品するなど精力的に活動しています。これまで撮りためた90点以上の写真をならべた、或る意味でひと区切りになる個展です。大学卒業の記念ってことなのかな。 加藤さんにはめずらしいカラーのプリントもあります。わかい女性がモデルの写真が10数点で、あとはほとんどが風景や空を撮っています。 結論からいうと、感動しました。 ここ何回かの展覧会で見られたような、焼きの不安定なプリントが、今回もないでもありませんが、全体としては、静かさとせつなさにみちた、加藤さんらしい写真になっています。 たとえば、夜景にしても、冬のビニールハウスの上から鈍い光を放つ太陽にしても、車輪の跡が雪の上に縦横に走る海岸にしても、塀が左手にならびトンネルへとゆるやかに下っていく坂道にしても、こうして文字で書いているとどこがいいのかさっぱりわからないかもしれませんが、見ていると、なんだかなつかしいような、さびしいような、痛切な思いにとらわれます。 それは、どの風景も、見てもどこなのかわからない、いわばアノニマスな(無名な)風景でありながら、ひとつの典型になっているからではないかと思います。「どこかで見たことがある、だけど、どこでもない風景」なのです。なんだか、デジャブ(既視感)にとらわれているようです。 もちろん、ほとんどのショットに人が写っていないというのも、その印象を強めているといえましょう。 孤独な風景写真。そこには、近代を生きるわたしたちに特有の、何度でも生まれ変わって生成してくるロマン主義の心情が胚胎しているように思われます。 □作者のサイト ■Sスクール写真展(04年) ■3大学合同写真展「CLARITY」(03年) ■安房・加藤写真展(03年) ■加藤D輔写真展(03年) ■加藤、斎藤、原田3人展(02年) 環境と芸術の作家展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図A) 陶芸家の清水知秀さん(帯広)が呼びかけた、森林保護などをアピールするチャリティー展。 染織の寺岡和子(小樽)、安藤美香(函館)、木彫の増田忠宏(空知管内栗山町)、アートクレイの番匠康子(十勝管内池田町)、陶芸の青木紀子(同本別町)、谷本幸子(同新得町)、吉原利津子(空知管内長沼町)、會田恵美(茨城県北茨城市)、写真の舟田和幸(十勝管内浦幌町)の各氏が出品しています。 全体的には、展覧会というよりフリーマーケットという感じ。陶芸は、うつわが大半で、購入しやすい価格になっています。 佐久間敏夫 花の日本画展U=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) 60点近い日本画の個展。 題のとおり、花を写実的に描いた作品が過半数を占めています。 とりわけ「睡蓮」など、ハスを描いた作品は、花が光を放っているようで、うつくしいと思いました。 人物(女性像)、風景もあります。郊外の風景は、洋画ではとりくむ人がたくさんありますが、日本画では意外にすくないと思います。水墨画的なものでも、寺社でもない、自然の描写というものを、今後どのように展開していくのか、興味がわきました。 16−27日、江別の画材店「カナリヤ」(大麻東町15の11東町ニュープラザ商店街)でも開催。 第10回木もれ日会展=札幌市資料館(中央区大通西13)地図C 油彩と水彩のグループ展。かつて岸本裕躬さん(行動展会員、札幌)に絵をならっていた人のOB・OG展です。岸本さんの絵はありません。 やはり、斎藤由美子さんの水彩画が気になります。精緻で、濁りのないタッチはあいかわらずです。「葉叢」は、風景画といえないこともないのですが、題のとおり、木々の草や実が画面いっぱいを覆っていて、わざと奥行き感をうしなわせた平面的な処理をほどこしています。 ■第8回(03年3月) |
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3月12日(金) マグカップ展=ギャラリーこけもも(中央区南11西23 地図E) 田村健さん(札幌)のマグカップは、半分ほどの高さのあたりがちょっと出っ張っているのが特徴。黒い釉薬がほぼ全体を覆っているので、炭焼珈琲などが似合いそうです。 ほかは、道外の作家で、市川孝、井山三希子、岩田圭介、長谷川奈津の5氏。青い釉薬を使ったもの、持ち手のないないものなどさまざまですが、全体には洗練された作風で、土味を強調した作品はありませんでした。 会場は、昨年の夏にオープンしたばかり。古い民家を改造したとおぼしき、かわいらしい建物です。企画展をひらいていないときは常設展をやっているそうです(日、祝日休み)。 ジェイ・アール北海道バスで円山公園駅からバス。「南11西21」下車徒歩3分。環状通からギャラリーにいたる道は桜並木で、季節がくればとてもうつくしい一帯です。近くの崖にとりつけられた階段をのぼれば、ギャラリー門馬もすぐです。 展覧会は、12日かぎり。 第20回Bridge展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) 油彩のグループ展ではわりと古参の部類。メンバーもすこしずついれかわってきています。 ことしは岡和田暁子、片山美代、後藤やよい、武田直美の4氏が出品しています。急遽2室になったため、それぞれ5−11点と、点数が増えています。 後藤さんの「そら」シリーズなどはユニーク。抽象ですが、支持体に段差がついています。何段もついているのかと思って近づくと、そのうち半分は、段差がついているように描いているだけです。だまし絵のようですが、構図はすっきりとまとまっています。 武田さんも昨年よりすっきりしてきました。「赤い樹」など、人間を配した公園などの風景です。 片山さんは 「一昨年までの作風にもどった」 そうで、もっぱら、バイオリンなどの楽器を持った数人の演奏のようすを描いています。 「なんとか音楽が聞こえてくるような絵にしたいのよね」 レモンイエローやアーバン系、ウルトラマリン系の色使いに特徴があります。 岡和田さんは「卓上」など静物画が主体です。 とりあえず、来年はいったんお休みするそうです。 ■第19回展 □後藤さんのサイト「GOYA倶楽部 雲の座標」 第9回グループWho展=同 こちらも、女性の絵画グループ展。 石部セツ子さん「蒼の風」は、構図はうまいと思います。背景と人物におなじような色を展開しているのは、全体のトーンを統一するはたらきがありますが、モティーフがめだたなくなってちょっと損をしているのかもしれません。「蒼の風」が暖色系なら、「遠い平和」は青系が生きた作品。あかるい母子と、右下のひざをかかえる人物との明暗の対比に、平和への思いがこめられているようです。 笹尾ちえ子さんは「晩秋湿原」と題した2点。黄色から茶系の枯れた色彩を丹念に配しています。 以上、13日まで。 笹山峻弘個展 インド紀行デッサン展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) 東洋の人物や、曼荼羅などに題材を得たパワフルな大作で、道内の日本画で異彩を放つ札幌の笹山さん。 ここ数年、毎年インドに行っているそうで、昨年秋もハジュラホという村に1カ月ほど滞在。1000枚ほど書いたスケッチの中から40枚余りをえらんで、今回の個展をひらきました。 題材になっているのは、ヒンドゥー教の寺院跡のようなものが中心。かるく水彩で色をつけています。石に彫られたさまざまな人物の姿態に笹山さんが憑かれたように和紙の上に筆を走らせているのがわかります。 第9回 湖(うみ)の会展=同 型破りの巨大な作品や奔放な漢字書で知られる札幌の島田無響さんが代表を務める「點(てん)の会同人会」の展覧会。ただし、島田さんは出品していません。 それと、毎回疑問に思うのですが、どうしてグループと展覧会の名前がちがうんでしょう。 各自が、漢字の創作(一部、近代詩文)と、課題の小品(「筆」もしくは「墨」)をならべています。少字数書ならではのエネルギーが感じられる作品が多いです。個人的には麓抛月さんの「梵我一如」などに、俳画のようなのびやかさを感じました。 以上、14日まで。 吉田英子展 変容=ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館 地図A) インスタレーション。 家の解体現場から持ち出してきたような長い板を、1本ずつ壁に立てかけています。そのほか、こわれかけたドアがふたつと、教室にあるような簡便ないすが2脚。一部の板は天井からつりさげられ、また大きな板には薄汚れた布がひっかけられています。 板の多くには着彩がほどこされているので、置かれているからといって「もの派」とはだいぶ印象がことなります。また、数は何百もあるわけではないので、物量作戦の作品ではありません。むしろ、ラウシェンバーグやジム・ダインら「ネオダダ」の即物的な世界を、実際の立体に移し変えたような印象を受けます。 ここには、人間の具体的な活動を反映させるものはないのですが、それでも木材の集積は、人間のいとなみを象徴しているかのようです。そしてそれは、建設中の建物がもつ躍動感と、いずれ廃材となる空虚感という、まじわらないふたつの感情をあらわしているようでもあります。 14日まで。 |
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3月7日(日)−11日(木) MITORAMA ]T 〜飛びますか?〜 水戸麻記子絵画展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) 「ミトラマ」とは、水戸さんがじぶんの個展につけている名前。1972年生まれで、もう11回目になるのですから、精力的な活動ぶりがうかがえます。 今回は、油彩20点を展示。やはり、どっかヘンてこりんというか、常人には考え付かないユニークな発想の絵が多くて、たのしめました。 アンコールワットに旅行した際に見た風景を軸に、さまざまな人間や物をくわえて、独自の世界をつくっている絵が何点かありました。たとえば、大作の「再」。 左側で、宙に舞っている女性は、アンコールワットのあたりでウプサラダンスという踊りを踊っている女性がもとになっているのだそうです。体に蛇がまきついているのは、まるで蛇のように体を曲げて踊るようすにヒントを得ました。全体的に暖色が支配的ななかで、この女性のあざやかな水色の衣裳は、画面に異彩を放っています。右側には、はだしの女性と、骸骨男が立ち、あたりには遺跡の、動物がレリーフされた石がごろごろところがっています。 小品では、「座敷犬の恐怖」がコワイ。夢がもとになっているんでしょうけど、子犬とはいえ何匹にも襲われたらいやだなあ。 「テレビ捨て」は、骸骨男が橋の上からテレビを投げ捨てている絵。題のまんまやないけ(笑い)。テレビばかり見ている人に反省を促す絵といえるでしょうか。男は、水戸さんの絵でおなじみのキャラクターである、頭がリンゴになっている人間にも似ています。 「今回の個展では、彼が出ている絵がほかになくてさびしいので、骸骨でもリンゴでも、どちらで見てもらってもいいんですよ」 水戸さんの絵の特徴は、題材のおもしろさもさることながら、人間がいろいろなポーズでいきいきと描かれていることだと思います。絵に出てくる人物というのは一般的に、ただ立っていたり座っていたりすることが多いのですが(そのほうがかきやすいし、ポーズをとる人も楽)、水戸さんの絵の人物はいかにも存在感があり、多彩なうごきをとっていて、画面にも動感をあたえています。 9日で終了。 ■04年1月の「New Point」展 ■02年の個展(画像あり) INTRODUCING "PHOTO GRAPHIX"=みずほ銀行札幌駅前支店(中央区北3西3) 札幌の、自分の経営する会社内にデジタル写真ギャラリーを併設すべく準備に奔走している松山敏さんの作品が5点ほど展示されています。 ハワイの風景をコンピュータグラフィックスで加工し、再配置した画面は、かがやかしさに満ちています。 12日まで。 □作者のサイト |
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3月6日(土) 柴田睦子 陶芸展「天空」=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1) 地図A 柴田さんは札幌在住の若手陶芸家。 今回は、「はやし」の2階に、インスタレーションふうに竜2匹の陶器をすえつけました。 2階の床が、空というか、水平線になって、竜の体が出たり沈んだりしているように見えます。頭部は、黒っぽい釉薬のほうは、大きく口を開け、咆哮(ほうこう)しているかのようです。 もう1匹は白っぽく、おとなしくうねっているといった感じです。 ただ、黒っぽいほうも、階段のあたりから見ているとなかなか迫力たっぷりなのですが、近づくと怖いというよりは愛敬のある顔つきをしています。 「わたしのなかでは、この会場が空、というイメージなんです。顔が怖くないのは、まだ人生経験がたりないからかもしれませんね」 と柴田さん。 下の階では、柴田さんや、愛知、京都、和歌山の陶芸家によるうつわ展も同時開催中。洋食にもあいそうなライト感覚の食器がたくさんならんでいます。 いずれも8日まで。 フォトクラブひかり 第4回写真展=NHKギャラリー(中央区北1西1、地図A) よくあるアマチュアのカメラ愛好家のグループなんですが、筆者はけっこう毎年楽しく見ています。 5年前にNHK文化センターで写真をまなんだ人たちらしいです。みなさん、自然にすなおに感動して撮ってらっしゃいます。11人が3点ずつ、カラーを出品しています。 ことしの最大の特色は、水辺の風景が多いことでしょう。 佐野一枝さんの「秋映」の3点は、紅葉などを反射する大沼のさざなみが被写体なのですが、湖の水面もけっしていちように同じ波をたてているのではなく、あるところでは印象派の絵のように映像がぶれ、あるところでは鏡のように反射しているのだということがわかります。 もうひとつ印象深かったのは、残間光男さんが市内南区南沢で撮ったという「初冬点描」。画面の中で、真っ赤な紅葉がめだっています。 カラー写真の表現力はめざましく進歩していますが、それでも、花の赤などを撮ると実物よりもにじんで派手に見え、花の青紫を撮ると実際よりも地味に見えるというのは、多くの人が経験していると思います。その弱点を逆手にとって、赤を目立たせた、おもしろい写真だと思いました。 また、新出澄子さん「コロボックルの夢のあと」は、おびただしく穴の開いた蕗の葉を逆光でとらえたユニークな1枚です。 ほかの出品者は、斎藤格、佐野栄司、高橋博、竹尾敬三、田中治、鳥海顕、長尾年彦、米谷一美の各氏です。 11日まで。 ■2003年3月の展覧会 ■2002年6月の展覧会(4日の項) |
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3月5日(金) 本日は大量です。 ほとんど絵画についてなので、写真についてだけ読みたい人は、下のほうまでいってください。 はじめに、札幌市民ギャラリー(中央区南2東6 地図G)で開催中の「札幌の美術 20人の試み」の関連行事があす6日からたくさんあるので、ここで日程を掲載しておきます。 名前だけがあるのは、出品作家によるギャラリートークの時間です。 展覧会はおもしろいです。14日までなので、ぜひごらんください。 3月6日(土)正午 武田享恵、午後0時半 高橋俊司、 1時 三上雅倫、1時半 樋口雅山房(ワークショップ)、2時 吉田三枝子(ワークショップ)、2時半 江川博、3時 川上加奈、3時半 新明史子、4時 酒井広司、4時半 佐々木徹、6時 古幡靖 折登朱実展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) おりとさんは、札幌の画家。風景から引き算をかさねて空気感だけを表出したような、あるいは、抽象の一歩手前でふみとどまったとでもいうべきような、独特の画風です。 札幌では3年半ぶりとなる今回の個展は、25点を展示。 うち5点が、折登さんにはめずらしい油彩で、のこる20点が、水彩をはじめ鉛筆やインクなどによるミクストメディアの作品ですが、双方の画面にあまりちがいはありません。 わりと大きめの絵は「四辻」「森のざわめき」「水の鉄橋」「揺れる空」など、いずれもミクストメディアのほうです。 以前にくらべると、白い部分が減って、紺などの有彩色が多くなってきているようです。 「白に頼らなくなってきてるってことでしょうか」 と折登さん。 春陽会会員。 天野澄子(ガラス)、澤すずこ(陶)、安藤米子(木彫)三人展=同 食器が中心で、小さくて安価で、現代的なセンスのものが多く、食卓ばえしそうです。安藤さんのプレートは大きいですが…。 いずれも7日まで。 坂元輝行風景画展 歩く、感じる、描く。PartU=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル) 地図A あいかわらず旺盛な制作欲には脱帽せざるをえません。計122点! しかも、淡彩スケッチだけでなく、油彩もかなり多いです。 ことしのシリーズ名は、つぎのとおり。 さっぽろ散歩 10点いずれも、現地にスケッチブックをひろげて、あるいはイーゼルを立てて描いたものばかりだと思われます。 それぞれの色にはホワイトをまぜて、発色が生っぽくならないようにくふうもされています。 今回の特徴としては、ラベンダー色が効果的にもちいられていることでしょう。水面の空の反射などにアクセントとして置かれているようです。 また、題材としては、東京がなく、札幌も少なめ。そのかわり、小樽がやたらとたくさんあります。題名だけかえて、小樽運河のおなじ場所を執拗に描いています。また、長崎、東北地方(磐梯山、会津若松など)、ヨーロッパ(パリ、イタリア、スペインなど)を周遊し、その結果、絵はがきのような題材の絵が多くなっています。 一部には、「チャラツナイ(室蘭)」といった、めずらしい題材の絵もありますが。 7日まで。 ■03年2月の個展 ■02年 ■01年(いずれも画像あり) 川井坦展・北海道教育大学札幌校日本画展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) 1964年に道学芸大札幌分校(現・北海道教育大学札幌校)の助手として教壇に立ち始めて以来、多くの後進をそだて、「北の日本画展」の設立など、道内の日本画振興に力を注いできた川井さん(教授)が、この春で退官するのを記念しての個展。 川井さんの個展はA室だけで、のこるB−G室は、川井さんの、1968年卒から在学生まで教え子計72人が1点ずつ出品しています。道展などで活躍中の人もいますが、この展覧会のために、ひさしぶりに絵筆を執った人も多い−と、5日の北海道新聞(札幌市近郊版)にありました。 北海道は、日本の他地方とことなり戦前から洋画のほうが盛んで 「風土からいって北海道には日本画は根付かない」 などといわれたことさえありました。そのなかで、教鞭をとってきた川井さんの存在は大きなものがあったと思います。川井さんの退官と同時に、教育大学からは日本画のコースがなくなります。日本画を教える高等教育機関は道内にほかにないと思いますから、道内の日本画の行く末が案じられるところです。 さて、川井さんの出品作は、近年道展で発表してきた絵が中心です。 中国の雲南省の女性たちに材を得た「無」や、アイヌ民族をモティーフにした「譚」シリーズなどです。 個人的には、1990年代半ばの「昆布とりの島」や、出品作のうち最も古い「雪原」が興味ふかかったです。 前者は、道東などにありそうな小島です。小さな島にトタン屋根の家が何軒かあるのですが、こんな島が実在するのでしょうか。切り立った崖など、モティーフ的には、釧路の羽生輝さんと共通するのですが、あちらがきびしいモノクロームの世界なのに対し、川井さんは色をかさねて、深みのある画面をつくりだしています。 「雪原」は、対象の省略のしかたに、キュビスムなど近代洋画の咀嚼が見られ、作者の視野のひろさがうかがえます。 つづいて札教大日本画展から。 吉川聡子さん「卓上の世界」 1991年卒。道展会員。あいかわらず高い筆力です。机の前にすわる女性の、向かって左側に鳥かご、右側にキジとおぼしき鳥が2羽いるあたりも吉川さんらしいです。この鳥、大きすぎて、かごには入らないのも、吉川さんらしいユーモアですね。背景に葉の落ちた木々が描かれているのもおもしろいです。 北口さつきさん「月光」 86年卒。道展会員。北口さんというと、女性像をパワフルに描き、全体は暖色系でまとめているという印象があるのですが、今回は青が主調です。画面上部にある月の光の色のイメージでしょうか。右側には民族衣装を身にまとった女性が3人。 伴百合野さん「鎮魂の構図−父へ−」 61年卒。ガーゼを貼り付けるなど、既成の日本画の枠内にとどまらない試みをつづけています。ただ、題材的には、雪山など、北方のロマン的なものをつよく感じます。 高橋潤さん「ROMAN」 88年卒。昨年の道展入選作も、ごく日常的な題材を精緻な筆でとらえたユニークな作品で印象にのこりましたが、今回も菓子屋を真上からとらえたおもしろい構図で、おびただしい菓子がたんねんに描かれています。ただ、遠近法の処理に難点があるのか、菓子の棚が、中央の女性よりも高い位置にあるかのように見えるのが残念です。 今橋香奈子さん「向」 2001年卒。意志のこもったまなざしを前方に向ける若い女性を、斜め前からの角度で描いています。箔足も画面にリズム感をつくっています。 大古瀬和美さん「Verse−詩、光、断片」 1988年卒。茫漠とした青の光がかさなりあう美しい抽象の大作。全出品作のなかでも、とても現代的な作品だと思います。 大塚さつきさん「回帰」 76年卒。道展会員。近年とりくんでいる、滝をモティーフにした1点。 村木愛さん「風呂」 3年生。日本画をならっている最後の世代。風呂用ブラシなど、ごく日常的な物を、洋画のデッサンのようなタッチで描いています。 駒沢千波さん「解放」 4年生。ひざを抱えてすわりこむ若い女性。おびただしい要素を破綻なくまとめる筆力の高さはあいかわらずですが、周囲の地面からにょきにょき生えているものはなんでしょう? 益山育子さん「雪」 2003年卒。ほとんど、川面と、そこにふりしきる雪片のみから構成されています。 野口絹代さん「陽」 4年生。洗面台に立つ女性像。ハイキーな色調が現代的です。 野口裕司さん「泉」 1993年卒。毎年1月に、現代美術の個展をひらいている人。ネット状に張り渡した針金の上に広い銀箔をはっています。中央部分がまるくうきあがっていて、なんだかジャスパー・ジョーンズみたいです。 谷地元麗子さん「子猫百姿」 「在学研究生」とありますが、どういう身分なんでしょう。卒業したばかりだと思いますが。これまで何度も書いていますが、これほど 「日本画」 ということに自覚的な人はいないんじゃないでしょうか。中央の金色の布は、青海波(せいがいは)など日本伝統の装飾でうめつくされています。それに、この絵は、奥ほど小さくなるという遠近法にのっとっていません。さらに、おびただしい猫の姿態を描いているのは、昔からの「物づくし」に伝統にもとづいているといえるのではないでしょうか。 朝地信介さん「揺れうごくスキマ」 98年卒。道展会友。これまでも、人気のない架空の都市をリアルな筆致で描いて独自の世界をきずいてきましたが、今回は作風が一変。縦に細長い支持体を3つならべ、ビルなどを図式的に描き、かるみのある画面です。赤っぽい色をべつにすれば、むしろ齋藤周さんの画風につうじるものがあります。 田村直子さん「ギミックのうみ」 89年卒。機械仕掛けの魚。なんだかSFの世界です。 富樫はるかさん「いつかの景色」 4年生。富樫さんが1点だけを出品するのって初めて見ました。さびしげな冬枯れの川べりで、遠くの林が青みがかっていて、富樫さんらしさが感じられます。 6日まで。 ほかの出品者はつぎのとおり。(敬称略) 1968年卒…岸本雅行 75年卒…佐藤弘美子 76年卒…西英美 78年卒…岩田ひとみ 大塚博子 岡恵子 山田英吉 80年卒…大溝雅之 81年卒…高橋久美子 82年卒…氏家珠実 83年卒…山内菜穂子 84年卒…越智次郎 富永一久 85年卒…千葉繁 古瀬真弓 86年卒…品田由佳 87年卒…川田弘子 88年卒…平向功一 89年卒…朱音 大和恵美子 90年卒…稲見尚 武藤恒一 92年卒…安栄容子 高木久仁子 94年卒…齊藤美佳 95年卒…坂井寿栄子 高橋明子 96年卒…山本真紀 97年卒…石井和華子 98年卒…上西知子 佐藤仁美 陳曦 99年卒…大田原義幸 佐藤綾子 馬場智絵 2001年卒…富山真祐 02年卒…笠島咲好 加藤拓 03年卒…佐藤由枝 壽崎優子 4年生…熊崎みどり 百野道子 渡邊優太 3年生…池田さやか 今野美緒 新野友子 為口紗衣 内藤まゆ 桝本士乃 三浦仁美 宮町舞子 院2年生…松田彩 聴講生…廣田麗子 山内郁子 結城亮史・野越さゆり写真展「夜夢想華」=札幌市資料館(中央区大通西13 地図C) すべてモノクロで、統一感のある二人展になりました。 結城さんは、以前筆者が命名した「Sスクール」のカテゴリーに入りそうな、静謐で孤独感のある風景写真を多く撮っています。そこで名を挙げたなかで、ただひとり2月の「Sスクール写真展」には出品してはいませんでしたが。 ただし、結城さんに特徴的なのは、題のつけ方や撮り方に、時としてひねったところがあることです。 今回も「四季葬」などは、冬枯れた林と鹿ノ谷小学校(夕張)を二重露光(あるいは焼くときにネガを重ねた)して、ダブルイメージとしています。 また、「溺れる夕刻」などは、身近な室内を撮り、結城さんとしてはラフな感じのする作品です。 「郷愁モノクローム」は5枚組み。コンクリート壁に大きな人の影がうつっている1枚が、印象にのこります。 一方、野越さんは「異形の眼」「三月の記憶」「Twelve devils」「雪灯り」の4部構成。 「異形の眼」は、これまでにもあった、セーラー服の美少女にいろんなポーズをとらせた、どことなくなまめかしい5枚組。うち2枚は、なぜか眼帯をしています。 いちばん枚数が多いのは「三月の記憶」。アパート?の白い壁に映った木の影、ガスタンクや気象台の煙突、洗濯ばさみでつるした手袋、人物など対象はさまざま。手ぶれしている写真も少なくないのですが、それさえも心のふるえの反映に思われるような、繊細な精神の響きを感じさせます。 「Twelve devils」はユニーク。悪魔のメークをした男女12人ですが、こういう人が集まるコンサートとかパーティーがあるんでしょうか。 ■03年1月の野越さん個展 ■03年7月 S.C.リボン展 ■02年5月の野越さん個展 ■03年2月の写真展aerospace(結城さんが出品) 7日まで。 北星学園大学写真部 校外展=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G) モノクロ、カラーなど、バラエティーにとんでいます。 結城さんはこちらにも「郷愁モノクローム」を出品しています。 Keiさんは、モノクロの多彩な作品を壁面いっぱいにならべています。ヒッチハイクをこころみているとおぼしき「ON THE ROAD」が若者らしいです。 武田Kさんも、風景、人物などをたくさん出品しています。「好きな場所 in Winter」は、昨年12月の「好きな場所」の延長線上にある作品で、こちらの風景は、さびしさというよりさわやかさを感じさせます。 福永友美さんは、ファイルにおさめられたカラー写真のみですが、揺れ動く若い心のうちを語っていて、よかったです。 ひとり、雪の写真の焼き方のうまい人がいましたが、名前がはってありませんでした。 7日まで。 ■03年3月の校外展 |
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3月2日(火) 「アフガニスタン戦禍を生きぬく」大石芳野写真展=富士フォトサロン札幌 (中央区北2西4、札幌三井ビル別館) 地図A 大石さんは1944年生まれ。これまで、戦火のベトナムや、ポルポト政権によって国が破壊されてしまったカンボジアなど、世界をかけめぐってきた行動派の女性です。 今回、会場パネルに、じぶんはアフガニスタンがこれほどひどい状況になっているとは知らず忸怩たる思いだ―という意味のあいさつ文が書かれていましたが、大石さんのまじめさをあらわした文だと思います。1979年のソ聯による侵攻、そして内戦、タリバンによる強権政治、米国の空爆…と、この国の現代史はまさに苦難の連続であり、軍閥が割拠する状態と米軍によるアルカイダ掃討作戦は、いまなお続いています。 今回の写真展にも、戦争で親や家族をうしなった子どもたちの肖像がつづき、キャプションを読むごとに、衝撃と絶望感にうたれずにはいられません。 たとえば、内戦で両親をうしなった12だか13歳のハシーブくんは、洗剤などを売って日々の糧にしているというのです。ふかい悲しみをたたえた彼の表情を見ると、粛然とした気持ちにさせられます。 風景写真にも胸を打たれました。難民のテントが4500はあるというナンガルハル州の難民キャンプに、雨がふりだした瞬間をとらえた1枚があります。かなり暗い露出なのですが、しかし、この露出こそが、難民の現状をとらえて適正なのだという気がします。 もちろん、少女の結婚式の写真や、なかばくずれたビルで再開した商店など、あかるい角度からとらえたものもありますが、極限状況で生きる少年少女たちのけわしい表情を前に、こんどこそ平和がおとずれてほしいと祈るしかありませんでした。 3日まで。 |
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3月1日(月) 2日でおわる展覧会の紹介です。 林玲二展〔蒸散する時間〕 雪玉によるドローイング2004=アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図B) 青の水彩絵の具を水に溶かし、そのなかに雪玉を入れると、顔料が雪の中にしみこんでいくそうです。それを紙の上におき、とけるにまかせた結果がこれ。 偶然性が、うつくしい模様を描いているとでもいえましょうか。 あるいは、本来表面にあらわれない、作品をつくっている時間とか、プロセスというものが、露呈しているのは、興味ぶかいことだと思います。 「52歳ともなると、じぶんの志向みたいのが見えてくるんだよねえ」 という林さんですが、とても52歳には見えないのでした。 知り合いの詩人とのコラボレーションによる作品も貼ってあります。 「林の作品を見てるとどんどんことばが出てくるといわれるのがうれしくて」 ■2002年の北海道抽象派作家協会展に招待 ■03年の「存在派」展 ■01年3月の個展 (画像あり) ■01年5月の富田知子・林玲二・林雅冶3人展 (画像あり) 「・・・will I ?」 前田美由紀 独りぼっち展=同 1991年、高校1年生のときから現在までの絵、立体、詩集などをならべた初個展。 絵画は、スキルはまだまだだけど、表現したくてしかたのないものがある、という点で、前の週の阿部直人展を思い出させました。 筆者は、「クレマチス」など、オブジェ系がすきです。 伊藤明彦作品展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) 台座の上には彫刻の小品、その周囲の壁には、モノタイプ版画というべきなのか、押し花のような平面がならんでいます。 こちらは、花をぎゅっと紙に押し当て、試し刷り用の印刷機でプレスしたもので、たしかにこの季節だと、春の兆しをただよわせます。 彫刻のほうは、右の写真で大きく見えているのが「unity red」。その奥が「unity blue」です。 それぞれ、紅がらと、イブクラインブルーをまぜた色です。 その奥、招待状にあったのによく似た陶芸作品は「unity」。タニグチススムさんの登り窯でやかせてもらったそうです。 「unity」とは、単一とか個体という意味です。 左側の小さいブロンズは「i.e」と題されています。「家」の意味ですが、ごくシンプルな、ほとんど矩形をしています。 「まわりの壁にあうんじゃないかと思って」 という伊藤さんの発想は、とてもサイトスペシフィックだと思いました。 いずれも2日までです。 |