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あーとだいありー 2003年1月後半

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 1月24日(金)
 冬のファミリー文学館 「散歩しながらうたう唄」 森雅之まんが原画展道立文学館(中央区中島公園)
 森さんは札幌在住の漫画家です。
 漫画、といっても、よくあるギャグ漫画、ストーリー漫画、少女漫画とはちがいます。
 大人も子どもも安心して読める。でも、子ども向け、というのともちがう。
 少年少女のころの、ちょっとした心のさざめきを描いた漫画が多いです。コマはほとんどどれもおなじ大きさ。水彩で丹念に着彩した、4−6ページくらいの作品が大半で、ただのカット(挿絵)もかなりあります。
 よんでいるとおもわずほっとするんです。なんだか、なつかしくなるんですよね。
 10歳くらいのとき、ちょっと気になる異性のちかくをとおりすぎると、どきどきするとか。意外な女の子から年賀状もらったとか。風邪で寝ているときに聞こえてきた外の音とか。そういう、もうすっかりわすれた心が、よみがえってきます。
 だから、読んで大笑いとか、はらはらドキドキとか、そういうたぐいの漫画ではないのだけれど、だれでもなごめるとおもいます。おすすめです。
 今回気が付いたのは、原画って、ふしぎなオーラがあるなーということ。かんがえてみれば、ギャラリー周りをしているとき見ているのは、版画以外は原画ばかりなのに。漫画の場合は、複製を見るのがふつうなので、原画にオーラを感じるんでしょうね。
 もうひとつ。98%のコマが縦構図もしくは正方形で、横のコマはほとんどありません。人がひとりで中央に立っているというコマが多いから、縦のほうが落ち着くのかな。
 文学館としてはめずらしく入場無料。26日まで。

 A★MUSE★LAND 2003 おとなもこどももようこそ あそベンチャーワールド道立近代美術館(中央区北1西17)
 美術館の役割には、展示のほかに、所蔵、教育、研究などがあります。道立近代美術館は以前から教育に力を入れてきました。新潮社の「とんぼの本」に「子どもと親の美術館」という名著がありますが、これは同館の編集です。
 1978年から毎年冬休みには、おなじく「子どもと親の美術館」という題で展覧会を開いています。
 それを引き継いだのが「A★MUSE★LAND(アミューズランド)」。「美術をもっと親しみやすく」というねらいがあるのだとおもいます。ただ、これまでは、現代美術や絵画のある「美術展」を、わかりやすく味付けした、という印象があったのですが、今回は、展示場ぜんたいが遊び場になってしまった感じ。
 学校に上がる前の子どもならたのしいでしょうけど、おとながひとりで行くと、ういちゃうかも。
 美術作品ももちろんありますが、リカちゃん人形とか、昔のおもちゃ、紙芝居、お菓子のおまけなどのほうがめだってるかんじ。フィギュアもあります。「THE END OF EVANGELION」は、弐号機の頭にロンギヌスの槍が突き刺さっている場面をえがいています(って、わからん人にはわからん話ですいません)。
 そのおもちゃだらけの一角に
「きみもとくさつ監督だ」
と題し、テレビカメラの前に、ビルや怪獣を自由に置いてたのしめるという趣向のコーナーがありました。
 …伊藤隆介さんのプロデュースです。
 ううむ。
 高校時代のころ、8ミリで特撮映画「総合艦隊」を撮ってたころと変わらんではないか。
 隆介さんの映像インスタレーションにもふれたいのですが(傑作!)、きょうは時間切れなので、またあした。
 で、しつこいようですが、これくしょんぎゃらりい「生命のかたち」も、26日までですので、お見逃しなく!


 1月22日(水)
 企画展・今荘義男「古里」ギャラリー「ART-MAN」(中央区南4東4)
 空知管内栗沢町在住のベテラン抽象画家、今荘さんが、1989年ころからえがきつづけているシリーズ「古里」から、新作2点をふくむ13点を展示しています。
 新作、いいです。すくなくても、筆者は好きです。
 渋くて、軽快。
 深いのに、鈍重でない。
 シンプルだけど、スカスカではない。
 油彩だけど、題名のとおり、ちゃんと「日本的なもの」も見据えてる。茶や抹茶緑を使ったり、線が絶妙な味を出しているところは、たとえばマーク・ロスコと似ているようでいて、ぜんぜんちがいます。
 今荘さんのひとつの到達点だとおもいました。

 うずのような形や、山の形をデフォルメするなど、いろんなこころみをくりかえしてきた今荘さんですが、昨年わりあい多くみられたのが、製作過程の最後に、書道のように、さっと線を入れて全体の均衡をつくるという手法でした。
 しかし、今回の新作2点には、そのような線ははいっていません。
 構図がかっちり固まっていて、入れる余地がないようなのです。
 たとえば、右側の絵にある要素といえば、五つの点と、数本のみじかい線、それらをぐるっとかこむようにひかれた明るい線−これぐらいです。現実をなにも模写していない。幾何学的な冷たさもない。ごくすくない要素で、100号はありそうなカンバスが、じゅうぶん満たされているのです。
 筆者は、李禹煥(リ・ウファン)さんの90年代以降の平面作品をおもいだしました。「東洋的境地」としか言いようのない、点3つが打たれただけの平面などです。
 ただ、李さんの作品は、要素がすくないため、しばらく見つめているときもちはあらぬ方向にさまよい出てしまうのですが(それはぜんぜんわるいことではないのですが)、今荘さんの絵は、茶色の塗りかたなどに微妙な濃淡があり、画面を見つめることの楽しさがあるのです。
 「線だけで(絵が)できれば理想だなあって思いますよ」
と今荘さんは話していました。

 今荘さんは、個展はほとんどはじめてだそうです。
 新道展の会員であるほか、北海道抽象派作家協会の創立以来の同人として年2回発表をしているうえ、地元・栗沢でもグループ展をひらくなどしていますから、忙しくてそれどころではなかったのでしょう。
 今回の新作2点も、もともとは、ゴールデンウィークにひらかれる抽象派作家協会展のために制作していたものだそうです。
 それが、12月に入ってからこの企画展の話があって、急きょ仕上げたものだそうです。
 「いや、まいったよ。でも作家っていうのは、新作を出さないで展覧会をやるっていうわけにはいかないんだな」
 25日まで。

 ところで、ギャラリーART−MANは、これまでも存在はしていたそうですが、この展覧会が本格的なスタートということになります。
 ひろさは、this is galleryくらいと小ぶり。洗い場がむきだしになっていたりして、手作り感のあるスペースです。
 国道36号線からですと、豊平橋のすぐたもとにある「かに遊宴」とガソリンスタンドの間の道を北上して徒歩3分。札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)からは400メートルくらいです。
 住所でいうとけっこう都心なのですが、ちかくに駅はなく、公共交通機関で行こうとすると不便かも。
 ススキノから500メートルほど、ちいさな卸売業者やアパートなどのならぶ、都心のエアポケット的な地区です。東京でいうと、銀座に近いわりに、みょうにさびしい新富町の裏通りみたいな感じかな。ちょっとちがうか。
 そのうち、ギャラリーマップGに、位置を追加しておきますね。
 来週からは、楢原武正さんの個展です。これはたのしみ。

 きょうのもうひとつのオススメ。
 金沢一彦銅版画展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 昨年9月に個展をひらいたばかりなので、新作はわずかですが、いつもながらの想像力あふれる童話的な世界がくりひろげられています。
 どういう時に作品をおもいつくんですか、ときいたら
「こういうときです」
と、簡略なエスキスがたくさんかかれたノートを開いてみせてくださいました。個展の最中に、アイデアがうかぶのだそうです。
 「だからけっこう個展の期間ってたいせつなんですよ。題名もいっしょに思いつけば、もうだいたい大丈夫ですね。制作にとりかかれます」
 採用されなかったアイデアは、2000円の小さな版画作品になるそうです。ノートには「桜通り」という文字と、下書きがよみとれました。つぎの個展にはならんでいるかもしれませんね。
 26日まで。

 エミリー・ベイツ展=this is gallery(中央区南3東1)
 札幌アーティスト・イン・レジデンス(S-AIR)のまねきで札幌に滞在中の、英国の女性作家による個展。
 写真2点と、黒の布を輪の連なりのようなかたちに変形させて、会場の空間に横断させたインスタレーション。
 これは「喪」を表現しているのでしょうか。
 31日まで。

 市橋節こ・大石慶子二人展ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
 油彩10点ずつを出品。
 市橋さんは「彼方」「乞蔵」と題された連作。ヴェールをかぶった女性を主モティーフに、その周囲はとっちらかった抽象模様で埋まっています。主人公の壮絶な孤独感のようなものがつたわってきます。
 大石さんも、けっしてきれいな絵ではありません。こちらも、「追想」「風景」という題しかついておらず、どこの風景ともわからない、半抽象的な色と線の乱舞です。いちばん大きい「追想」は、いろいろなものが置かれている室内で、ひざをかかえてすわっている女性がこちらに首を曲げて見ている(ただし、顔はえがかれていない)という図。
 ふたりとも、もっと表面的にきれいに仕上げることはできるようにおもいますが、そんなことはどうでもいいとおもえるような情念が、絵にかくされているようです。

 第25回山崎幸治個展=同
 「鳥」がいいです。
 雪の降る中、さみしそうなカラスが2羽。
 今回はじめておもったのですが、山崎さんの絵はどこかルオーを思わせます。

 第10回光画会新春展=同
 山崎さんの教室展。
 市橋さんは「いづこへ」、大石さんは「詩人の住む街」を出品しています。
 作風もまちまちな14人が油彩、水彩を、自画像とともに出品しています。リアリズム系統の人はすくなめです。
 杉本明美さん「passion」は、バイオリンの周囲を、赤などの絵の具で塗りたくったもので、デュフィもびっくりの感情があふれた絵画です。
 ほかに、浅野明子、澤田静子、砂場忠子、田中恵子、塚原宏平、寺西冴子、中野頼子、古家玲子、本間洋子、松本百合子、三井伸、宮沢栄子、吉川みちこの各氏が出品。
 いずれも26日まで。 


 1月21日(火)
 まず、きのう書き忘れてしまったことから。
 砂川在住の押花アート作家、多比良桂子さんの「太陽のカード」が、現代手工芸作家協会主催の第20回ニュークリエイティブ展で協会賞大賞を受賞しました。
 おめでとうございます。
 大賞は3人で、ほか2人は、洋画家と染色デザイナー。
 作品は、23日から29日まで、東京都美術館で展示されます。

 もうひとつ。
 今週いっぱいでおわりですが、道立近代美術館(中央区北1西17)の常設展に出ている一原有徳さんの版画はすごいぞ!
 とても90歳の人の作品とは思えないパワフルな大作であります。

 モニカ・ソスノヴスカ展=ICCインタークロス・クリエイティブ・センター(豊平区豊平1の12)
 札幌アーティスト・イン・レジデンス(S-AIR)の招きで札幌に滞在している3人の海外作家の発表がはじまりました。
 1972年ポーランド生まれの彼女も、そのひとり。
 筆者は、マイケル・シャオワナサイさん(タイ出身)の展覧会もおなじ会場でひらかれているとおもっていたんですが、これはかんちがい。彼はパフォーマンスアーティストなので、20日のオープニングパーティーが発表の舞台だったのです。
 ざんねんながらこれは見られませんでしたが、26日正午から午後2時半にかけて、タワーレコードでパフォーマンスを展開するそうですから、これはなるべく見に行くつもりです。
 もうひとり、エミリ・ベイツさん(英国出身、オランダ在住)は、this is gallery(中央区南3東1)でひらかれています。
 さて、モニカさんのインスタレーションは、S-AIRの人に訊かなくてはわからないところにありました。
 水色の床の上に、高さ数センチの小さな家の模型がばらばらにならんでいます。100個はありそうで、壮観です。
 家と家の間隔ははなれているものの、家の大きさそれ自体は、日本の民家をおもわせます。
 まー、欧州の人が日本の、とりわけ大都市の住宅環境を見たらおどろくだろうなあ。筆者は、なにかというと「欧米では…」とのたまう文化人(「ではの神」ともいう)はあまりすきではありませんが、それでも日本の住環境は、どこか貧弱さをのこしているからです。
 いや、平均床面積といった数値の面ではようやく欧州に追いつきつつありますが、均整のとれた街並みという面では、まだまだ問題が多すぎます。1軒1軒が醜い−というわけではけっしてないのですが、全体としての統一感が、あきれるくらいないのです。
 インスタレーションを見ながら、日本人にけっして美意識がないわけじゃないのにどうして街は…ということをつい考えてしまいました。
 31日まで。

 ICCは、地下鉄東西線の東札幌駅から徒歩10分。
 中心部から行くのなら、市民会館の前か、南1西1・アインズドラッグストアの前から、中央バスに乗って「豊平3条12丁目」で下りると徒歩4分と、便利です。
 ほとんどどのバスに乗ってもOKで、本数も1時間に十数本あります。
 ただし、たまに「平岸駅経由・西岡4の14行き」など、国道36号を通らないバスがあるので要注意。
 ウェブサイト「ギャラリー情報。ぞ」に「ICC」の地図があります。ここからジャンプ

 野越さゆり写真展「自己愛という病・2−紅綺譚」札幌市資料館(中央区大通西13)
 モノクロ20枚、カラー8枚。
 彼女の作品にいつも登場する美少女が主人公の、お芝居めいた連作。
 少女は、浴衣姿で、ナイフをのどにつきさしてみたり、注射をしてみたり、錠剤をのんで斃れてみたり、どうやら死へのあこがれが濃厚にあるようです。
 なかには、股をひろげて、そこに百合の花束を置いた、大胆な1枚もあります。
 すききらいはあるかもしれませんが、いささか擬古的というか、むかしの少女趣味というか、統一ある世界がくりひろげられた、意欲的な個展であるということはいえそうです。
 もっとも、ここまできちんとつくっているんだから、手ブレとかが散見されるのが、どうにも惜しいなー。

 同館では、アイヌ工芸作品展と柴田木石色絵展もひらかれています。
 前者は、札幌在住の貝澤竹子さんが主催。アイヌ民族の伝統を受け継いだ布やバッグなどが多数展示されています。オヒョウという木の皮をはいで製作した敷き物やタペストリーは、北の厳しい自然にも耐えられそうな剛直な感触が印象的でした。
 いずれも26日まで。

 福・北・北 美術往来Free Space PRAHA(中央区南15西17)
 福岡と北九州の美術交流に、札幌もまぜてもらった企画。
 さぞかしいろんな年賀状がとどいているんだろうなー、と期待していくと、なんと、まだ10通しか来てないではないですか!
 会場のさびしいこと。2月1日の会期末までにはもうちょっと増えそうですか、大橋君。

 (追記)
 なお、参加予定者として事前につたえられていたのはつぎのとおり。
 北海道・東北からの参加者は、阿部ナナ、阿部安伸、伊藤ひろ子、伊藤隆介、植田暁、樫見菜々子、上遠野敏 河田雅文、岸亜希子、木瀬浩詞、黒田晃弘、小杉淑美、斎藤周、椎名勇仁、下小川毅志 白戸麻衣 SEVEN DOGS、仙庭宣之 高澤美子 谷口顕一郎、武田浩志、千葉有造、中尾峰、野上裕之、畑俊明、藤本和彦、宮嶋宏美、MITORAMA、真砂雅喜、三橋紀子の30人でほぼ決まり。九州側の参加予定作家は、北九州在住:阿部幸子、鈴木淳、宮川敬一+イェスパー・アルヴァー、森秀信、 LICCAなど、福岡在住:牛嶋均、オーギカナエ、廣橋勲、藤浩志、ナウィン・ラワンチャイクン など30人を予定。

 それにしても、なにかにつけて福岡と札幌は比較されるのですが、あちらは100万都市がふたつ、こちらは札幌一極集中。美術をささえる文化の厚みは、とてもかなわないような気がします。がんばらねば。

 「展覧会の紹介」に、札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)でひらかれている「春陽会道作家展」を追加しました。
 絵の好きな方はご一読ください。ただ、デジカメ故障のあおりで、画像はありません。


 1月20日(月)
 なんと5日ぶりの更新! まちがいなく、このサイト始まって以来のワースト(パソコン故障時をのぞく)だと思います。m(__)m ひたすら謝るのみ

 10人展 四川省と北海道を結ぶ=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 札幌の日本画家・伊藤洋子さんと、中国・四川省の楊青さんが以前から友人だったというつながりから、伊藤さんが奔走して画家4人を招聘。開催にこぎつけた展覧会です。
 道内からは、伊藤さんのほか、齊藤博之、白鳥信之、三宅悟、森弘志、輪島進一の洋画家5氏が出品しています。描写力の高いメンバーがそろっています。
 輸送費の関係もあるのでしょう、中国側からはあまり大きな絵はきていません。
 楊さん、胡冰さんは、イラストっぽい雰囲気の女性像。
 徐朝〓(晶の「日」が「金」)さんは裸婦。日本で多く見られる裸婦像とことなり、その裸婦をとりまく部屋の様子とか、あるいは周りの木々の緑なども含めてリアルに描いていますので、なんだか生々しいかんじがします。モデルがグラマーなこともてつだい、濃厚なエロティシズムがかんじられます。
 張國平さんは「静かな山村」など、田園風景を4点。重慶あたりでも、近代化がすすんできて、こういう風景は郷愁をさそうものとなっているのでしょうか。建物をしっかり、葉をややブレぎみにえがいているので、まるでシャッタースピードを遅くして撮影した写真のような余韻がただよいます。

 一方、北海道サイド。
 伊藤さんの絵は、ひさしぶりに見ました。90年代後期は、写実とはなにかをめぐって試行をくりかえしていましたが、今回の「夜の魔法」はどこかユーモラスな、ふしぎな構成画です。手前に置かれた3つの首は、ベルギーの古都ゲントのお土産屋で見た置物なのだそうです。バックは黒で処理され、派手やかなインコが舞い、画面上部には、これもベルギーの街角に貼ってあったのでしょうか、「PIRL DENOYELLE」という人のCDのポスターが何枚もならべてあります。旅の印象をコラージュした作品ともいえそうです。
 三宅さんはあいかわらず、家族の姿をたんたんと描写しています。その静謐さは、スーラと共通するものがあるように、筆者には感じられます。
 森さんは「14.31.52」と「14.31.56」と題した2点の女性の肖像画を出品。絵の上部には「2002.10.29.14.31.52」などと明記されていますので、たぶんその瞬間の女性の表情をとらえたのでしょう。昨年の「ACT5」のときにも書きましたが
「絵によるスナップ」
という実験を、ますます強めた絵といえそうです。この4秒の差による、女性の笑顔の差。
 輪島さんは、バレリーナのデッサンを3点出品しています。
 白鳥、齊藤両氏は旧作。

 張さんは重慶の美術館の副館長だそうですから、いずれあちらでもこのメンバーによる絵画展が開催されることになりそうです。
 21日まで。

 ガラス&クレイ〜Two way road〜アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル6階)
 お二人によるステンドグラスとクレイワークの展覧会。
 ステンドグラスでは、万華鏡がきれいでした。
 クレイワークは、トーストの上に乗ったネコちゃんたちが秀逸。ネコ好きの人はほしくなっちゃうかも。
 21日まで。
 アートスペース201は、この展覧会だけのようです。

 すでに新聞などで報じられていますが、写真家の秋山庄太郎さんが16日死去しました。82歳でした。
 秋山さんは、原節子さんのグラビアなど健康的な女性像や、花の写真で知られていました。
 写真をはじめたのが、13歳の時といいますから、まだ初老ヤナイの父親も生まれてません。すごいもんです。

 それでは、すでに先週かぎりで終わった展覧会から。

 高須重家作陶展スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 荻、粉引、飴釉など、さまざまなタイプの茶器がならんでいました。渋い、しかも安い。応用範囲のひろそうなオーソドックスな器です。
 西川芋山書作展もひらかれていました。

 巖信栄 油絵個展 〜自分だけの風景を求めて〜=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 太い筆で、すばやく風景をとらえていく巖さん。色彩も、空がレモンイエローだったり、海がビリジアンだったり、独特で、現場の空気感がただよいます。
 モティーフは道内各地の風景ですが、とくに、住んでいる恵庭附近の牧場や、恵庭岳を望んだ風景を描いた作品が気に入りました。
 新道展会員。

 ギャラリーたぴお20周年記念展=ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館)
 15周年記念展がついこないだのような気がする…なんて書くと、いかにもジジクサイですな。
 それにしても、絵画、版画、写真、立体造形、彫刻、コピーによるコンセプチュアルアート、CD、詩(を書いた原稿用紙)、廃品アート、イラストなどなど、なんでもありで(ただ、書展はひらかれたはずなのに書の作品がない)、このギャラリーの寛容な性格をあらわしているようであります。
 案内状には、この5年間で、ギャラリーで出品した102人もの名前がしるされています。この全員が出品したかどうかはチェックしてませんが。
 赤石準一さん「潜」は、青の色の帯をリズミカルに配した抽象画で、わたし、こないだの時計台ギャラリー(中央区北1西3)での個展で見た全作品よりこっちの方がすき。
 樋爪俊二さんの魚のオブジェは、人がちかくをとおりかかると音楽が数秒間なるという、やかましい作品です。
 野島理さんは新作イラスト「起点11キロ、定山渓鉄道石切山駅の黄昏」。1969年かぎりで廃止になった定山渓鉄道の駅を題材にした、郷愁に満ちた一作。なお、石切山駅の建物は、集会場として現存しています。
 三神恵爾さん「記憶」は、水彩で色を散らした自作豆本セットによる作品。三神さんの作品には、いつも、歴史から身を離さない或る種の痛切さがただよっているように思います。
 よーし、この際だから、案内状にある名前を書いちゃおう。

 青木崇、アサキチカ、浅野明子、浅野美英子、阿部啓八、阿部典英、阿部敏子、阿部玲、市川義一、一原有徳、今井和義、今井宏明、今荘義男、井村郁子、岩佐淑子、江川博、M.ババッチ、漆山豊、太田ひろ、大滝憲二、大林雅、大本靖、岡本仁美、葛西義信、加藤祐子、上條千裕、金子辰哉、川上りえ、カワシマトモエ、川村雅之、久保千賀子、後藤顕、小林孝人、今偉正、西条民治、桜井マチ子、笹岡素子、佐々木けいし、佐々木徹、笹村忠雄、斉藤邦彦、島田晶夫、嶋田観、杉田光江、杉山留美子、瀬野雅寛、瀧原聖司、高橋俊司、高田稔、高坂史彦、玉本猛、民野宏之、田村佳津子、田村宏、田村陽子、為岡進、D.HISAKO、中岡りえ、中嶋貴将、中森秀一、名畑美由紀、西岡秀徳、西澤宏生、野口耕太郎、のざわゆきお、能登健一、花田和治、長谷川雅志、畑俊明、林教司、林田理栄子、兵藤いずみ、平松和芳、福岡幸一、福原多賀士、藤川弘毅、藤原瞬、別府肇、星野修三、益村信子、松岡えり子、丸瀬文現、水戸麻記子、水谷のぼる、村元由紀子、八木保次、柳川育子、山岸誠二、山崎恵美、山林優、横山隆、吉住ヒロユキ、蓬田やすひろ、吉田織絵、渡辺英四郎、竹田博

 個展を開いていても、ここに名前のない方もいらっしゃるようですが、まああまりふかく追及しないことにします。