2001年5月

つれづれ日録の続き

 5月31日(木)
 掲示板でおなじみ(?)akaさんが西岡の拙宅にわざわざ見えられ、そのゴッドハンドでターミナルアダプタを直していきました。ありがとうございました!
 5月30日(水)
 パソコン復旧のめどは全く立っておりません。

 といって、見て回るのをサボるわけにもいかず、まずは、さいとうギャラリー(中央区南1西5、ラ・ガレリア5三人展の会場風景階)で、富田知子・林雅治・林玲二 三人展
 富田さんは昨年全道展の会員に推挙された新進の画家で、個展は主に時計台ギャラリーで。
 林雅治さんはオブジェを制作する陶芸家(前回の個展はこちら)で、個展は専ら大同ギャラリー。
 林玲二さんは主に水彩を描く無所属の画家で、個展会場はギャラリーたぴおが多い(前回の個展の模様はこちら)。
 というわけで、どういう結びつきがあるのか筆者には分からなかったのですが、どうやら、さいとうギャラリーのスケジュールに空きができ、「やってみませんか」という話があったようです。
 雅治さんは例によって、ぐにゃあっとした管のようなオブジェが二つ。富田さんは抽象のような作品が多くなっています。玲二さんの作品は、紙の上に珈琲をこぼしたり、ライターで焦げ目を作った上に、ウルトラマ林玲二作品リンの水彩絵の具を散らしています。鮮やかな青がまぶしい。
 「絵の具の、粉という性格を出したかった」
と玲二さん。ごく薄く塗られた絵の具なのに、奇妙な物質感があるのが面白く感じられました。ほか「no-where,now-here」は、コンピューターのプリント用紙に描いた抽象画の連作です。まだ続けています。

  札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)。
 A室は、第9回池上啓一油絵個展。フランス各地をスケッチした、穏やかで明るい色調の風景画が並んでいます。パリの絵もありますが、アルビ、ヌーシャテルといった田舎町の何気ない街角や水辺が、穏やかに、過不足のない筆致で描かれています。よーく見ると、地上や水上に比べると、空が短いストロークで、筆の跡がわかるように塗られているのが、特色と言えば特色といえるでしょう。
 G室では佐藤まゆみ銅版画展。植物や民家などを題材に、古いヨーロッパの書票を思わせる、写実的な小品が並んでいます。目新しさはありませんが、理屈ぬきでホッとさせられる作品です。

 ギャラリーたぴお(北2西2)では、またまた小樽在住の版画家、嶋田観さんの展覧会が開催中。といっても、今回は小品ばかり。刀や銅板の表面を拡大したような無機質な世界が広がります。(前回の個展はこちら
 5月26日(土)、27日(日)
 パソコンがモデムを認識しなくなってしまった。どうしてわがVAIOはこれほどいつもきげんが悪いのか。こうして日録を書いても、いつアップできるか分からない。

 26日はいくつか見に行ったけど、これを書いている時点ではほとんど終わっており、みなさんに「見に行けー」といえないのが残念なところです。
 札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)の続きで、3階は徳丸滋展
 徳丸さんというと、筆者は、湿原の草や虫などを微細な視線でとらえた絵画が思い出されますが、今回は、風景画の方が多かったです。それも、余計な夾雑物を取り去った、シンプルな風景画。とくに、「川のほとり」は、小さな林、濃い樹影、ほのかな月影が、クレヨン画のようなマチエールで描かれ、なかなか感動的です。徳丸さんは後志管内倶知安町在住、全道展会員。HPはこちら

 景をどう、自分なりに咀嚼するか。これは、スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)で行われていた山川真一個展にも共通するテーマであったように思います。山川さんは、故郷の美流渡(空知管内栗沢町)などの山林風景がモチーフですが、使われている色は赤やオレンジなどで、確かに実際の森林を見てかいているのでしょうけど、氾濫する色彩は抽象画のようですらあります。形態は没し去ってしまい、色のみが配されているかのような画面は、それはそれである種の統一感を保っています。山川さんは札幌在住、道展会員。

 風景画といえば、ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)で、酒井芳元さんがステンドグラスの作家と共催していた展覧会もなかなかのものだと思いました。海外や道内の風景に題材を得た小品の「売り絵」ばかりではありますが、技術は確かだと思います。とりわけ、プラハの風景を描いた水彩画は、濁りのない色調もさることながら、何の変哲もない町の一隅にも感動の目を向けているということが好ましく感じられました。

 順番が前後しましたが、スカイホールでは、片桐三春個展も開かれていました。片桐さんは旅先の風景などをテーマに隔年で個展を開いているのですが、今回は一昨年に旅行したバリ島が題材。とにかく、色彩がまばゆいぐらいにハデで、画面狭しとちらばめられたターコイズブルーやビリジヤンやオーキッドイエローがぶつかり合い、熱帯のリズムを感じさせるのです。踊る女性たちの絵もいいですが、個人的にはクタビーチの日没を描いた作品が好き。紫やオレンジの微妙に混じりあった夕空は、作者の感動を直接に反映しているようです。片桐さんは、公募展などと関係ないところで、独自の世界をつくってきているなあ、ということを感じました。

 パークギャラリー(南10西3、パークホテル中2階)で、塩谷哲朗書展。これだけは28日(月)まで開催です。
 表装でなく額装された小品が中心で、筆者が行ったときにはほとんどの作品に「売約済み」を示す赤丸が付いていました。人気があるようで、これが初個展とは信じられません。
 良寛を臨書した作品が象徴しているように、飄々とした味わいのある漢字と近代詩文が並びます。もちろん、ただ味わいだけではなく、楷書の「泥中蓮」などには、たしかな存在感がありました。「臥」「悔」といった淡墨の一字書は、自在さがありました。書に興味のある方は見に行ってほしいと思います。
 塩谷さんは1927年日高管内浦河町生まれ、札幌在住。
 5月25日(金)
 休み。つれあいが街へ用事を足しに行くというので、たまに二人の子供から解放してやるのもいいかと思い、留守番役。
 門馬よ宇子個展の評を書きました。(こちらをクリック
 「春の院展」は見なくても、こちらはぜひ見に行ってください。元気がもらえます。あしたまでです。
 5月24日(木)
 風邪は快方に。
 札幌時計台ギャラリーで、門馬よ宇子さんの個展を見た。70年代終りから90年代半ばの絵画作品と、95年以降の立体作品が展示されている。今年81歳になるとは思えぬバイタリティーに脱帽。
 26日まで。最終日の午後3時、チェロの演奏会が会場である由。
 同ギャラリー、残りはあす以降に。

 ついに、帯広の池田緑さんの個展に行けなかった。残念。
 ようやく、盛本学史さんの個展の評をアップしました
 門馬さんの評は少し待ってください。

 5月23日(水)
 いぜんとして風邪。きょうもギャラリー回りはなし。

 講談社現代新書の新刊、「教養としての〈まんが・アニメ〉」(大塚英志など著)を読む。ある分野の歴史を最初に書くという独特の高揚感は、岡倉天心なんかに共通するものがある。岩舘真理子と紡木たくが、少女まんがの「内面を描く」文法の頂点を極めた、という指摘も卓見。ただし、ビルトゥングスロマン(教養小説)の崩壊を言うのなら、三原順に言及してほしかったと思う。
 なお、この本はあくまで、最近のまんが・アニメは知っているけれど昔のことは知らないという若い世代向けに書かれており、そのため「ガイナックス」の項目では「王立宇宙軍」については詳しいが「エヴァンゲリオン」は省略するという書き方をしているため、一般向けの入門書にはなりません。
 
 5月22日(火)
 風邪悪化。仕事はきのうと同じ。

 道新の夕刊に、「春の院展」が札幌・三越で始まった記事と、カルダー展が道立帯広美術館で始まったという記事が出ている。前者の方が見出しも写真もでかいのだが、逆じゃないかと思う。かたや20世紀を代表する彫刻家、かたや毎年の恒例行事。しかも、本ちゃんの院展じゃなくて「春の」院展だし。道内では、本ちゃんの秋の院展はめったに開かれません。
 5月21日(月)
 のどの痛みがひどくなってきました。にもかかわらず、朝9時から夜8時まで仕事。とうぜん画廊回りはなし。15日に予告した通り、今週は忙しいです。
 函館支社の同僚から「クレヨンしんちゃん」の新作を絶対に見ろ、すごい傑作だから、と言われているのですが、果たしていつ見に行けるのか?
 5月20日(日)
 快晴の大通公園を歩いていると、白い雲は空に浮かび、濃淡のある緑の木が並び、白と紫のライラックが家族連れが遊び、若者が芝生に寝転び、もう平和と幸福であふれているといった光景で、ほんとに一年になんどあるか、というような特権的な好天の休日でした。

 市民ギャラリー(中央区南2東6)の展覧はいずれもきょうまで。
 北釉会は、道内の七宝サークルの連合体で、もともと筆者はあのガラス様の色彩が好きなので、なかなか面白かったです。中でも、ワッシャ−を取り入れてユニークな抽象表現に取り組んでいた「マグマ」の樹下和子さん、水墨画ふうの「凍りつく釧路湿原」の小関昭子さんら、釧釉会の作品が新鮮でした。
 ほかに、雪中の7羽のスズメの姿態をユーモラスに描き分けた「雪すずめ」(井伊百合子さん)、ハマナスの花の背景の金釉が効いている「夏」(高橋澄子さん)などが良かったです。
 第3回蒼樹会北海道支部展。穏当な写実的画風の油彩が大半。田村隆さん(空知管内新十津川町)が得意の廃屋をモチーフにした「北国の詩」、桜井寛さん(後志管内岩内町)「積丹盛夏」などが、安定した構成力を見せています。加藤真悦さん(東京)の遺作「沼のある風景」も、実直な作品でした。
 さて、ちょっと驚いたのが第19回和紙ちぎり絵展。「習作」と銘打った作品が50点あまりもあり、「ふうん、謙遜深い人が多いなあ」と思っていたら、なんと全く同じ絵柄が何枚もあるんです。どうやらお手本をそのまま写しているらしい。そりゃね、書道にも臨書はあるけど… オリジナル作品とわざわざ書いてあるのも多いけど、どれも風景画ばかり。主宰者の亀井健三さん(米子)「大雪山残照」はさすがにうまいけど、なんかこれってまさに「CCアート」だなあ。(CCアートについてはこちらを参照)

 札幌市資料館(大通西13)もきょうまで。木版画教室展は、全道展会員の木の瀬博美さんの教室ですが、石塚喜朗さんの木版が素朴な味を出しています。えぬぶんパステル展は、やはり全道展会員の浅野ナ彦さんの教室展。澤幸恵さん「少年」が、公園にたたずむ少年の姿を描き、いい味を出しています。
 
 さて、表紙ページでしつこく宣伝していた通り、四方田犬彦さんの講演が道立文学館で行われました。
 四方田さんは映画評論がメーンですが、野外彫刻にやたら裸婦が多いことへの疑問を毎日新聞で呈したかと思うと、中上健次を論じ、手塚治虫を語り、ボウルズを翻訳し、モロッコ紀行を書き、「現代詩手帖」のアンケートに毎年その年の良かった詩集を答え、料理の本や韓国論を出版し…といった具合で、とにかく博覧強記というのはこの人のためにあるような言葉です。
 で、「北海道とフェリーニ」ですが、期待にそむかぬオモシロさでした。映画の中にあらわれるイメージとしての北海道、というテーマで「ギターを持った渡り鳥」(小林旭主演)や「硝子のジョニー 野獣のように見えて」(アイ・ジョージ主演。これは、フェリーニの代表作「道」を北海道を舞台に翻案した珍品)といった映画のサワリを見ながら、話題はイタリアや中国などに縦横無尽に飛び、「男はつらいよ」の物語構造は「シェーン」だとか、さまざまな話で2時間はあっという間に過ぎていったのでした。「その国のイメージを決定付けるのに映画は大きな力を持っている」。本当はもっと紹介したいのですが、明日は早いので、このへんで。
 今週は忙しくなりそうですが、がんばって更新したいと思います。

 
 5月19日(土)
 前夜午前3時過ぎまで眠れず、めちゃくちゃ眠たい1日。でも午前7時50分に出勤して、帰宅は午前0時過ぎ。ああ、眠い眠い。あんまり回れなかったし。

 まず、きょうで終了した下澤敏也・多田昌代二人展」。(器のギャラリー中森。中央区北4西27)
 たしかに器の展覧会ですが、下澤さんの花器はオブジェに通じる存在感がありました。多田さんの花器は、うねうねとした口がかわいいですね。
 隣接のテンポラリースペースでは、小川智彦。(どうでもいいけど、後ろに「個展」とかなんとかつけないのか)
 海を写したカラー写真を短冊のように細く切って24片つないだものを、24個壁に貼っていました。
 24という数字は、おそらく1日の時間を表しているとは思いますが、夕方と思しき光の写真は24枚中1枚あっても、夜中の撮影と思われるものは全くないので、1時間おきに撮ったのではなさそうです。ただし、いろんな時間に写した海の表情をランダムにつなげることで、見る者の感覚を攪乱するという意味があるのかもしれません。
 会場に作者はいないし、作品名やコンセプトの展示など全然なかったので、推測で言うしかないのですが。
 30日まで(日曜休み)、午前11時から午後7時まで。

 なお、彼が1998年5月に開いた個展はとても示唆に富むものでしたので、そのとき書いた展評を参考までに掲げておきます。
國松明日香インスタレーション
 CAI(北1西28)では、國松明日香個展
 「彫刻家の内庭」と名付けられた個展には、その名も「インスタレーション」という立体2点を中心に、壁にぽつんぽつんと小さな立体を布置した「北斗七星」=写真はその一部=や、平面作品が出品されています。「インスタレーション」は、これまで通りステンレスと鉄を用いており、ひとつの彫刻作品として自立しているような形態をもっています。ですから、いくら会場で組み立てたとはいえ、いわゆるインスタレーション(仮設芸術)とは異なるような気がしますが、それはそれでいいのではないでしょうか。
 國松さんは若いとき、インスタレーション的な設営で展覧会を開いたことがあるそうですが、会場でいくらでも構成できるというあり方をズルイと思ったそうで、わりと潔癖な方なのかも、と感じました。
 今回の作品も「風」シリーズの延長線上にあります。台座に乗った従来の彫刻のように量感があるのではなく、かといってスカスカではなくて、円と直線(板の表面をグラインダーで削って作った模様も含め)が生む独特のリズムと「負の量感」とでもいうべき存在感はある。量感があるようでないようで、また、素材をそのまま使っているようでいて実は加工して組み立てているという、きわどいところに成立している彫刻であるように思います。
 國松さんは小樽出身、東京芸大卒。札幌高専教授。
 27日(日)まで。月曜休み。
内田芳恵の作品
 ギャラリーミヤシタ(南5西20)では、内田芳恵展
 これまで、かきなぐった大作が多かった内田さんですが、今回はサムホールから5号くらいの小品が16点です。
 何が面白いって、支持体でしょう。一番下がキャンバスやボードなどさまざまなのですが、その上に紙や、ユリの花などを貼り付けて、石膏で固めたものを用いています。だから、相当凹凸のある、家庭で焼いたパイみたいな複雑な構造になっています。そこにアクリル絵の具で着彩を施しています。「黒以外のすべての絵の具を使った」と話し、確かに近くから見るとさまざまな色がぶつかり合っているのですが、離れて見るとある一定の秩序と言うか傾向が感じられるのが不思議です。
「お菓子を作るみたいにすごく楽しくやれた」とは内田さんの弁です。
 あす20日(日)まで。
 5月18日(金)
 また更新をサボってしまいましたが、仕事が忙しくてきのうもきょうもギャラリーまわりができなかったのです。これは、年末年始を別にすれば、当HP始まって以来の異常(?)事態。来週はもっと忙しくなりそうです。とりあえず、あす19日はがんばって回る予定ですので、よろしく。

 仕方ないので関係ない話。
 さいきん日経の最終面の名物連載「私の履歴書」を、哲学者の梅原猛が書いていて、なかなか読ませます。終戦後、弁証法にどうしてもなじめなかったというくだりがあり、早とちりの気のある筆者は
「ははぁ、マルクス主義が嫌いだったのか」
と思ったのですが、さにあらず、戦争を結果的に擁護することになった京都学派の学者たちが、弁証法を用いていたからだというんですね。彼らが追放された後の京大の哲学や歴史は、自らの史観を語るのではなく西洋の大家の解釈にとどまる学者たちが主流になった、というくだりも、なるほどなと思いました。
 それにしても、梅原は唯物史観やマルキシズムから遠い存在でありながら、それらの嫌悪をあまり語らないのはユニークだと思います。あれくらいの年の文学者や思想家でマルキシズムにはまらなかったり、あるいは好意的な意見をもたなかった人はほとんどいないはずで、そうでなければ不必要なまでに左翼の悪口を言うやからになりがちです(例えば、谷沢永一、渡辺昇一)。

 以前は、新刊の美術書はほとんど買っていたのですが、経費が使えなくなり、買いたいけれど買えない本が増えていく一方です。最近、買おうと思ってまだ買ってない書物。
 李禹煥の詩集「立ちどまって」(書肆山田)。みすずから出たエッセー集も買ってないぞ。美術出版社から出た鶴岡政義の評伝。小学館から、読売日曜版の連載をまとめた「名画再訪美術館」。森山大道の対談集「新しいものはつねに懐かしい」(青弓社)。そうだ、森山のエッセー「犬の記憶」が今月、河出文庫から出ました。写真に興味のある方は一読を。モホリ=ナジの評伝。「文人画家の系譜」。港千尋が岩波から出した評論。メモをとってないので書名とかはうろ覚えですけど。
 5月16日(水)
 「北の日本画展」、見てきました(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階スカイホール)。
 道展の会員、会友、入選者を主体とするグループ展です(というか、道展を脱会したり、無関係の人はいないようです)。昨秋、道立近代美術館を借り切って大規模な展覧会を開いたばかりで、さすがに今回は、比較的サイズの小さな作品が並んでいます。従来の作風を打ち破った作品は見られず、全体に落ち着いた雰囲気が漂っています。
 若手で、筆者が注目している吉川聡子さんは「ひととき」と題した、いつもの凝った構図に比べるとシンプルな女性の半身像を描いています。平向功一さんは「遺伝子への冒涜 ドクターモローの島より」と、題こそ難しいですが、作風はこれまで通り、動物をモチーフにした寓話ふうのものです。
 そんな中で最若手の谷地元麗子さん「流動」は、もしかしたら既発表作かもしれないけど、着物の装飾性を大胆に取り入れて意欲的な画面構成をしています。
 ベテラン勢では、中野邦昭さん、羽生輝さんらが、手堅い仕事ぶりでした。
 なんか、出品してない人がけっこういるような気がするけどなあ。長谷川綾子さん、どうしたの?
 5月15日(火)
 きのうは仕事が休みで、風邪をひいた子供の小児科通いなどに付き合うなどしていました。

素材の対話展 ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館)では、グループ展「素材の対話展vol.2」。(すいません、無許可で会場写真載せてます)
 伊勢幸広さんは石に着彩を施した3点。太田ひろさんは円筒状の錆びかけたトタン(?)板。山岸誠二さんも錆びた金属板12枚を支持体に、さまざまな色の飛沫を散らしています。素材こそ違いますが、山岸さんが最も得意とする、印画紙に直接現像液を散らして感光させた一連の作品と、似た表情を持っています。あるいは、大小の点だけで構成されたジャクソン・ポロックというところでしょうか。
 西条民治さんがドローイングを、瀬野雅寛さんが抽象の水彩7点を出していますが、ダイレクトメールに名前のあった古賀さんは作品が見当たらず、代わりにギャラリー主宰の竹田博さんが、旧作の油彩の小品を2点陳列していました。何があったのかなあ。

 さて、毎週のギャラリー巡りは、どうしても札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)から始めることが多いのですが、今週は個展がなくグループ展だけとはいえ、まずまず見ごたえのある内容でした。
 A、B室の第65回方究会は、なんと1936年の発足だそうです。まさか、発足時のメンバーはいないと思いますが。23人が出品しています。
 個人的に気に入ったのは、増田正子「憂蔭」(油彩、F80)。よく知らない人です。木陰の椅子に座った女性の全身像で、右下にテーブルがあります。画面の上半分を覆う木々は、まるで日本庭園の松のように、楕円形の緑がいくつも浮かんだ形で描かれていますが、緑の彩度が高く前進色になっているので、女性よりもむしろ前にあるように見えます。それらの楕円は、右手前にあるアジサイの楕円とも響き合って、画面にリズムを与えています。
 堀昭さん「天を衝くポプラ」(F50)「離農」(F20)は相変わらず達者なタッチ。南里葉子さん(白日会会員)「懐古」(F50)は、写実的な静物画という点では南里さんらしい作品ですが、以前より筆の痕跡があらわになってきたような気がします。津田義和さん「バルセロナの裏通り」(F120)はこうして見ると、平坦な塗りが効いていて、画面全体が落ち着いた良い作品です。
 尾崎志郎さん(全道展、春陽会会員)「煉瓦と石の古い倉庫」は、この人らしい、建物を正面からじっくりとらえた、今回唯一の版画(木版)でした。また、川村正男さん「トラピスチヌの丘」(F20)は、何の変哲もない風景画ではありますが、斜めに修道院の屋根を照らす光線の調子が素直にかつ的確にとらえられていて、好感が持てました。
 
 D、E、F室は「第26回新麓樹会展」。油彩、陶芸、金工、インスタレーションと、なんでもありのグループ展です。
 佃多哉志さんが姪3人の肖像などを描いていましたが、幼い彼女たちへの愛情が画面からあふれ出ていて碓井良平展の会場、見ていて気持ちのいい絵でした。総じて、肖像画は、写実的な普通の絵ではありますが、対象への思い入れが感じられました。矢内研一さんや米倉龍也さんです。
 菅原義則さんは、メルヘン的な小人たちを、金工によるインスタレーションにしていました。

 北2条ギャラリー(北2西2、STV北1条ビル)での「クレヨン太巻72色展」は、札幌と東京の両方にアトリエを持つ碓井良平さんの、アドリブ力が爆発した小品展。ともすれば、油彩ばかりありがたがる私たちに冷や水を浴びせるような、即興的な抽象画が所狭しと並んでいます。ニューヨークの雑踏をフリージャズに置き換え、それを色彩にしたような感じもします。

 来月、札幌ドームのオープンを記念して別刷り特集を、北海道新聞で出します。その関連の作業で来週にかけて忙しくなりそうです。
 5月13日(日)
 北海道書道展のうち、パークホテル会場と丸井今井会場に行ってきました(一般の作品が展示されている札幌市民ギャラリーはパス)。
 前者は、招待、会員(苗字がア、カ、サ行)、会友の作品を、16日まで、後者(札幌本店・一条館8階)では、会員(苗字がタ行以降)作品を15日まで、それぞれ展示しています。
 どうも筆者は、一昨年と昨年は見ていないようなので、今年がどうのこうのということはあまり言えません。
 ちょいと気のついたことを書くとすれば、小川東洲さんの「炎2001」とか、会友の中島青霄さんなどのように、墨象にジャンル分けされながら限りなく「前衛書」に近い作品が出てきています。パークホテルで、「会友ってこんなにたくさんいるんだあ」と、あらためて驚きました。
 書道に興味のある人は、丸井今井を見るだけでも、そのバラエティーの豊かさにけっこう感心するんじゃないかな。
 かなでは、安喰のり子さんの野性味があるというか、剛直な書が好きです。その一方で、阿部和加子さんや村井藻々子さんのような、構成に配慮した作品にも惹かれます(ぜんぜん読めないんだけど)。
 漢字・少字数書では、安藤小芳さん「混」が、右肩上がりの斜めの書き方で動感を出していて、サスガという感じ。遠藤玲子さん「一環」も余白を生かした構成が目を引きます。中野層雲さんも、隷書なのか前衛書なのか分からぬ自在の境地が面白い。
 このほか、二本柳朴秋さん「叫」は、字の意味にふさわしからぬ、肩の力が抜けた雰囲気がユニーク。藤根凱風さん、羽毛蒼洲さん、宇野雉洞さんらも、すっと力を抜いた巧まざる筆致に惹かれます。
 墨象では、馬場怜さんの「辿」のユニークな墨色が面白く感じられました。東志青邨さんは、独特のにじみの中に、筆使いの呼吸を感じさせます。
 この調子でどんどん書いて行きたいのですが、とりあえずきりがないのでこのへんで。もうちょっと、「北海道の書は今」ってな調子で見られるような鑑識眼と蓄積が自分にあれば書道鑑賞も面白いんだろうけどなあ。

 
 5月12日(土
 自宅でコンサドーレ札幌の試合をテレビ観戦していたので、ギャラリー巡りはなし。
 昨年の王者、鹿島アントラーズに勝ってしまいました。すごい。

 昨日の市根井さんの写真展に追記。作家による作品解説は、毎日午前11時と午後2時とのことです。
 俗世間を忘れて天上界に遊ぶひととき、とでもいうべき写真展かな。ただ、4×5という大きな機材を持っての登頂にはまったく頭が下がります。

 さて、道新の各地方版には、美術に関する記事がかなり出ています。ただ、ほかの地方版が見られないのが残念ですが。
 最近では、後志版に、木田金次郎美術館(岩内町)に、木田の初期作品「岩内郊外風景」(1923年)が寄贈されたという記事が出ていました。また、室蘭版によると、道展会員の水彩画家、武田貢さんが、自作を市に寄贈したとのことですし、恵庭版にもアマチュア画家の個展の記事が出ていました。
 正直なところ、道新は地方版を細分化しすぎているような気がします。見出しだけでもほかの地方版をネットで読めるようにするとか、できたら便利だと思います。

 古田瑩子個展と草刈喜一郎展について「展覧会の紹介」コーナーに書きました。
 5月11日(金)
 きょうも盛りだくさんです。

 本日のおすすめは、大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)の盛本学史個展です。ちょっとヘンだけど楽しい絵です。うまくいえないけど。
 盛本さんは、昨年第1回が開かれた「三岸好太郎・節子賞」で最高賞を獲得した、新進の画家であります。
 詳しくは「展覧会の紹介」へ。(最近、こうして執筆を先延ばしする傾向が強いな。反省してます。でも、もう少し待ってください)


 もう一つ、なかなか良かったのは、コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)の「北の群展」。
 今回初めてのグループ展です。抽象画やコラージュが多いですが、とっつきにくさは全然ありません。
 とくに斉藤勝行・邦彦さん兄弟には、もともと達筆な人でしたが、著しい進境ぶりにうなってしまいました。
 邦彦さんの「作品01-14」は、キャンバス2枚による横長の抽象画です。地の茶色と、画面中央を貫く灰色の帯が、渋いコントラストを生み、帯の中を白い線が自在に走ります。茶の地の部分には、灰色や白などが絡み、荘重な画面を生んでいます。
 弟の勝行さんは3点を出品。「我が序曲」は、支持体がコラージュになっていて、その灰色の上を、十字架や、昇っていく白い線が彩り、宗教的な雰囲気すら帯びています。「被爆」は、ほとんどモノクロームで表現した抽象画です。
 ほかの人にもふれておきますと、大ベテラン菊地又男さんはいつものように、菓子の箱などを用いたコラージュを3点。でも「立春」「合掌造り」はともかく、「都会の騒音」は、CAIの人が見たら泣くだろうなあ。
 阿部みえ子さん「composition」は正方形にきったダンボール16枚を使用した平面作品。スタティックな美しさがあります。阿部啓八さんもダンボールを用いてコラージュした平面を出品しています。
 異色なのは、石炭画で知られる早川季良さん。「空海」は、壁掛けの立体作品。石炭による小さな仏像らしき立体を、ダイナミックな造形の木片と、さらに「衆生済度」と書かれた板が囲み、円空や木喰に通じる民間信仰的な世界を現出しています。


 写真展は二つ見ました。
 富士フォトサロン(北3西4)では、中村征夫写真展
 知床の海中写真で知られる中村さんですが、今回は「沖縄珊瑚街道」がテーマ。珊瑚礁でいかに多くの生物が共生しあっているか、目を瞠ります。
 それにしても南の海って、珍妙な生き物がいるんですね。オトヒメウミウシなんて、この世のものとは思えません。
 16日まで。

 五番舘西武赤れんがホール(北4西3、ロフト7階)では、道内山岳写真の第一人者、市根井孝悦の世界 21世紀に残したい原始の姿 日高山脈・遥かなる山並みが始まりました。
 生き物の愛らしい姿に満ちていた南の海と異なり、こちらはフレームの中に動物が全く入りません。容易に人を寄せ付けない、荘厳な四季の山々ばかりです。六月になっても雪の残る、厳しい大自然。時にはなだれが急斜面を覆います。それでも、夏の花畑には心が和みます。
 筆者の好きなのは、「ソエマツ岳の御来光。神威岳から」。日陰で雪原がきらきらと光を帯びているのには、ため息が出ます。もう一つ、「厳寒の札内川」は、石に丸く積もった雪の造形がユーモラスです。
 20日まで。無料。最終日をのぞき午後8時まで開いているのもうれしい。毎日作家によるギャラリートークも予定されているようです。

 それにしても、これらの自然を守っていかなくては…という思いを強くしました。

 ほかに、市資料館(大通西13)で見た水野宏子作陶展。初耳の人です。
 志野あり、萩あり、信楽あり。灰釉あり、焼き締めあり。うーむ、ふつう、ひとりでここまでいろいろやるものなんだろうか。
 でも陶芸は評価が難しい。志野の抹茶茶わんなんて、江戸初期の名品だと言われたら、信じちゃいそうだもんなあ。 
  
 5月10日(木)
 きょうはたくさん見ました。

ファイバーワーク展会場風景 ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)では、ファイバーワーク展。女性5人による染織のグループ展ですが、単に織物を展示してあるのではなく、インスタレーションふうに並べてあって、わりと面白かったです。
 とくに注目したのは、加藤祐子さんの作品(写真)。マフラーみたいに垂れ下がったおびただしい毛糸の束の先端が、水槽の水に浸かっているのです。中央の藍色の糸からは染料が水に溶け出しています。ほかの青や水色は、色の流出こそ見られませんが、糸が水を吸い上げて、下のほうから湿ってきています。会期中には少しずつ変化してゆくのでしょう。意欲的な作品だと思いました。
 12日まで。

 札幌時計台ギャラリー(北1西3)。
 A室は鈴木昭個展(滝川在住)。全道展で近年、受賞を重ねている人です。
 湿った紙に、固形の墨で直接書くという異例の技法。これで、毎日1点ずつ風景や人物、静物などのデッサンを続けてもう6千枚以上になるそうです。うーむ。継続は力なり、という古い言葉を思い出してしまった。
 大作は、わずかに色彩を帯びているものもあります。なかでも「低気圧接近」は、巨大な存在感を持つ山のふもとを、小さい赤い列車が走っている情景を、遠くから描いたもので、自然の大きさと人間の小ささを同時に描写して、なかなかのものでした。

 B室は古田瑩子個展(石狩在住)。
 石狩の仲良し主婦水彩グループが解散して3年ほどになりますが、その後個展を開いたのは古田さんだけ(といって、ほかの人を責めてるんじゃないですよ)。こんな短期間でウマくなっちゃっていいの? てな感すらあります。近日中に「展覧会の紹介」欄に文章をアップします。
 水彩連盟展準会員。新道展会員。

 3階のD室は空知管内長沼町在住の飯沢能布子「星の七宝展」
 七宝作家としては道内で有名な人です。今回は、女性天文学者の草分けであるカロライン・ハーシェルが発見した7つの彗星をテーマに、彗星が見つかった星域を題材にした連作が目を引きます。
 七宝といえば、美しい発色が命、みたいなところがありますから、星座絵が題材というのは、「うまいことやったなあ」という感じです。まさに七宝にぴったりの題材。カロラインと、有名なウィリアム・ハーシェルとの関係がよく分からないのが残念ですが。
 道展会員。

 G室は青山清輝個展(岩見沢在住)。青山清輝個展
 青山さんといえば、筆者のイメージは、右の写真の「存在ーオブジェ的発想による空間思考」のシリーズなのである。
 パネルの木目をなぞっただけの絵画。しかし、どの木目を選ぶかという点で青山さんの創作力ははたらいているのです。
 ただし、今回は、もう一つの作品系列である、和紙を使ったちぎりえ風の作品が中心(すべて無題)。これは、出来合いの和紙の表面に依存する部分が大きすぎて、筆者としてはそれほど感心できませんでしたが。
 美術文化協会会員。
 各室とも12日(土)まで。

 ギャラリー大通美術館(北1西5、大五ビル)では、草刈喜一郎展
 これはオススメです。読売新聞道内版(5月1日夕刊)には「江別の元炭鉱マン 55年の集大成 ヤマへの思い油彩画で」と見出しにありますが、まさにその通りの内容です。道内炭鉱を題材に61点もの油彩が並びます。
 「展覧会の紹介」欄でそのうち詳しく書きます。
 13日(日)まで。

 最近、充実した書道の展覧会が続くスカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)では、北海道文化奨励賞受賞記念 第六回小原道城書作展。全室ぶち抜いた会場に、とても個展とは思えないほどバラエティーに富んだ21点が並びました。
 とりわけ、自作の草書千字文というのはユニークな試みです。
 一種のスマートさを持った漢字作品がこの作家の持ち味ではないかと思われますが、果敢にも、「白居易の生誕の地は書のメッカ 龍門山に迎春花咲く」といった自詠の淡墨の近代詩文書や、南画まであり、この作家のある種の貪欲さが伝わってくる個展でした。
 北海道書道協会理事長。
 13日(日)まで。

 さいとうギャラリー(南1西3)では、毎春恒例の中吉功・和子個展
 中吉功さん(道展会員)はあいかわらず、美しい薄紫を基調とした富良野などの風景画を描いています。安らげる雰囲気を持った絵だと思います。いちばん大きい絵でも10号くらいというのがちょっと不満ですが。ご夫人の和子さんは写真です。建物の壁や鋪道など、色数を抑えた、独特の即物的な作風です。
 「15の版作用」と題した、道内関連の版画の15人展も開かれていますが、これって、さいとうギャラリーさんの所蔵する作品を並べてるような気がするんだけど。もし違ってたらごめんなさい。何人か知らない人もいます。
 いずれも13日(日)まで。

 アートスペース201(南2西1、山口中央ビル5階)で開かれている私大合同展というのは、はっきり言ってこの会場でよく開かれている凡百のグループ展と同水準ですが、札幌学院大の白川琢麻さんの「宇宙刑事シャリバン」はばかばかしくて面白い。こういうのを50点くらいかいてずらーっと並べたりしたらけっこう現代美術になったりして。吉川隆一さんの「キングクリムゾン」って、題名が気になるなあ。
 
 5月9日(水)
 4日から8日まで、両親の転勤先である釧路と、妻の実家のある北見に行ってきました。
 
 あくまで、孫の顔を見せるプライベートな帰省でしたので、各地の関係者の方々には礼を失したことをあらかじめ申し述べておきます。
 そういいながら、美術館とかにはちょこまか足を運びましたが…

 4日は3時間半ほど寝た後、釧路へ。午前11時ころ出発。
 車で釧路へ行くのは初めてです。
 結論。
 釧路は遠い……。
 8時間以上かかりました。

 年に1、2度は車で行っている北見は、札幌からの距離では釧路とそれほど差はありません。しかし、旭川まで高速道路がある北見と、高速の恩恵のない釧路とではかかる時間も疲労度も段違いです。
 高速といえば、話のタネに、道東自動車道の音更帯広−池田間に初めて乗ってきました。連休中だというのに、21キロの間、すれ違ったのは20台あまり。一般の道路でみんな80キロや100キロを出している十勝地方で、70キロ制限の、片道1車線の(追い越しできない)高速道路を造るというのは、理解に苦しみます。

 長沼の「道の駅」センターハウス3階で開かれている谷川よしみ谷川よしみ展
 一昨年、道教大岩見沢校を卒業した(あれ、大学院修了だったっけ?)若手です。
 メーンの作品は、右の写真の通り、昨秋札幌のThis is galleryで陳列した作品のでかいバージョンです。縦3メートル以上ありそう。
 といっても、見ても分かりませんね…
 クレヨンでいろいろな色を塗り、その上から黒のクレヨンを重ね、ひっかいて人の姿を描いています。1600人はいるようです。みんな、谷川さんらしい顔でオモシロイ。アリナミンのCMに出てくる疲れ玉に似てます。
 今月いっぱいです。

 鹿追町民ホールでは、「信濃デッサン館」所属画家12人による〈夭折画家の系譜〉展」を見ました。これは8日で終わっています。
 絵描きが長寿、というのは俗説ですが、この展覧会を見ると、関根正二(20歳)や村山塊多(27歳)のような本物の早死にはほかにはいなくて、49歳で死んだ人(瑛九)もいました。やっぱり、小説家や詩人の方が悲惨だなあ。
 小熊秀雄もありました。「風景」など、さすが速筆でした。
 
 5日は、釧路市立美術館で細江英公の写真1950−2000を、道立釧路芸術館で「風景の向こうに−山・森・湖・大地の深遠」展を、それぞれ見ました。
 細江英公のほうは、それにまつわる文章を執筆中です。直接彼の写真を論じるのではなく、変化球の文章になりそうです。
 後者は、主に道内の美術館の所蔵品から、人間や動物が描かれていない、風景だけの絵50点(ただし、戸谷茂雄の木の立体1点を含む)を展示したものです。道内風景画の”定番”ともいえる、田辺三重松「雪の狩勝峠」、小山昇「摩周湖」から、小川原脩「岳」、瀬戸英樹「沈み森」、徳丸滋「森」といったどことも知れぬ情景を描いた作品、八木保次や鎌田俳捺子らの抽象作品まで多彩です。並んだ作品を見る限りでは、道内名所紀行というよりも、既存の風景をどう消化し加工し、あるいは抽象化していったかという画家のわざの方に、キュレーションの焦点があるように見受けられました。日高理恵子「落葉松」、大本靖「沼の平」、今泉真治「火口」、相原求一朗「二月のレモン色の空」など、全くの写実に見えて、じつは作者による理想化が相当に施されているのです。
 どれか強いて1点を挙げるなら、岩橋英遠「風雪の名瀑(風)」。滝が強風で流れを曲げた瞬間をとらえています。甘いロマンチシズムではくくりきれない厳しい北の自然をまっすぐに凝視する画家のまなざしがそこにあります。

 6日は、北緯43美術館というところに行ってきました。釧路管内阿寒町の「道の駅」のすぐそばにあります。その名の通り、北緯43度附近にある国の美術家の作品を収集しています。フランスのイブ・クラインによる真っ青なテーブルが目を引きます。中国の人が日本画をかいているのも面白かった。
 個人コレクションなのであまり大きい作品はないし、集め方にも一貫した特徴はそれほど見受けられませんが、ダリやミロの実物があり、見ごたえはあります。
 
 5月3日(木)
 きょうは大量にあります。

 まず、This is gallery(中央区南3東1)の「もうすぐ春ですね」
 若手4人の絵画展で、いずれも小品です。でも、この展覧会名はないだろう。とっくに春だよ。
 5日まで。

 札幌市民ギャラリー(南2東6)では札幌墨象会展。スケールのでかい作品が並び、ストレスがふっとびますよ。6日まで。展覧会の紹介のページ参照。
 2階で開催のホロコースト展は見る時間がありませんでした。

 三越では恒例の第41回伝統工芸新作展。すきのない力作群に感動であります。
 筆者は、工芸は、よく分からない分野と全然分からない分野にわかれるのですが(笑い)、無理を承知で道内作家の作品をいくつか取り上げてみましょう。「展覧会の紹介」のページ参照。
 
 大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)では田崎敦子銅版画展。一昨年の道展で「金子賞」を受けた期待の新人です。でも最近の版画の例にたがわず、抽象で、はっきりしたフォルムもなく、ムツカシイ。よく油彩で遠近法を強調するため取り入れられている格子模様がここでは平面性を出しているのがおもしろく感じられました。
 10日まで。

 ギャラリー紀(南5西24)では、森口護展。セン、ナラ、カツラなど多彩な道産材を用いて作ったうつわを展示しています。木の性質にさからわず、自然なかたちをつくりだしているところに、好感を持ちました。

 会社に行くと「北朝鮮の金総書記の息子が偽造パスポートで入国しようとして拘束」のニュース。なんとディズニーランドに行きたかったとか。うーむ。なんでわざわざ混雑している時期に…。腕にはロレックス。1万円札を出して職員にサケ弁当を買いに行かせ「釣りはいらない」と言った由。
 1面トップのわりには、なんとも間の抜けたニュースであります。

 次回のつれづれ日録更新は9日です。
 5月2日(水)
 札大(豊平区西岡3の7)の学長室ギャラリーで細江英公写真展「薔薇刑」を見ました。
 戦後の写真を語るとき、はずせない名作であります。1970年に割腹自殺した作家、三島由紀夫を被写体に、すごく濃い世界をつくっています。7日まで。
 ちなみに、札大に行くには、東豊線・月寒中央駅から「西岡4の14行き」に乗り、札大正門前で下車するのが一番分かりやすいと思います。学長室は、正面の建物を入って、まっすぐ前の階段を2階に上るとあります。
 細江英公については、近日中に釧路で見る予定ですので、その時にまとめて。

 札幌市資料館(中央区大通西13)では展覧会が三つ。
 アール伏古展は、道展会員の堂下拓美さんの教室展のようです。みなさん、なかなかお上手。先日、ギャラリー大通美術館で初個展を開き、筆者が称揚した筒浦さんの風景画もあります。佐藤登代子さん「厳冬の滝」は、ほんとうに寒そう。池上律子さんもなかなか達者な風景画をものしています。
 ちなみに「伏古」とは、札幌の地名。ローカルですなあ。ちなみに語源はアイヌ語の「古い」。道内あちこちに同じ地名があります。

 創作グループnuage(ニュアージュ)展は、北海道女子短大で美術を学んだ同窓生3人のグループ展。伊藤修子さんの油彩「メトロ」はにぎやかな大作。ペットボトルを活用した「ともだっち」なる、これまたにぎやかなオブジェが窓を彩ります。
 玉沢睦子さんは日本画。「はな」は、赤を大胆に使い、よくある植物画ふうの作品とは一線を画しています。
 北村真由美さん(士別)は銅版画。「風」「そだつ」など、草の双葉をデザインした作品がなかなかおしゃれ。

 で、いちばんびっくりしたのが鈴木節子展
 油彩と写真なんですが、油彩は、小学1年生くらいの女の子がかく落書きがあるでしょう。三角形のワンピースをはいたお目目きらきらの女の子が正面向いたままピアノを弾いてて背景は単色で塗りつぶしてるってやつ、あれをそのまま油絵にしているんです。
 ここまで子供っぽい絵は、かこうと思ってかけるものではありません。
 写真は、作品じゃなくて、どこの家でもアルバムにあるような、旅行の写真とか、孫と写したスナップなんです。そういうのをわざわざ並べて人に見せようとするのは、初めて見ました。現代美術で、自分と家族を見せようとするとか、そんなんじゃなくて、ホントにただスナップを並べているんです。
 うーむ。この鈴木さんというおばあさんは何者なのでしょう。

 壁紙が異様に重くてダウンロードしづらいので、変更しました。
 5月1日(火)
 うーん。なんかハデな壁紙だなあ。
 きょうの圧巻は、函館在住の書家による中島荘牛書展です(スカイホール全室 中央区南1西3大丸藤井セントラル7階。6日まで)。
 漢字が中心ですが、バラエティーに富んだ書風。厳しさの中にも、余裕の感じられる作品もあります。書は分からん、という人も、きっと何かを感じられるのではないかと思います。近く「展覧会の紹介」に書きます。
 4プラホール(南1西4、4丁目プラザ)では、常盤響作品展が行われています。
 エッ? 常盤響を知らない? そんなヤツは相手にしない。というわけにもいきません。阿部和重の小説「インディビジュアル・プロジェクション」の表紙をデザインした、いま若手ナンバーワンのグラフィックデザイナーです。実は、エルマロとか電気グルーヴとか、アルバムジャケットも手がけていて、壁にびっしりと張ってました。写真も、女の子の写真が大半で、やっぱり壁にびっしり。あなたの想像するとおり、ちょいとエッチな感じ。でも湿っぽくなくて、ポップ。アングルが今風なんだよね。
 筆者が会場を覗くと、常盤さんが、透明なアクリル板に、黒と白のマーカーでどんどん落書きみたいな絵をかいているところでした。
 入場無料。9日まで。

 美深の長岐和彦さんからDM。なんとニューヨークで個展ですと。いったいどういういきさつでこうなったのか、今度聞いてみたい気がします。すごいなあ。DMに印刷されている絵も、だいぶ作風が変わった感じです。
 日程などは「道外のスケジュール」のページ参照。

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