南6西20つれづれ日録
2001年11
表紙に戻る
     10月の「日録」へ    12月の「日録」

 11月30日(金)
 帰宅10時過ぎ。雪かき。

 元ビートルズのジョージ・ハリソンが死去しました。
 英国リバプール生まれ。ビートルズでは最年少で、目立たない二枚目という印象があります。60年代後半からインド音楽に傾倒しました。ビートルズ時代は「サムシング」などバラード系の名曲があるものの、ジョンとポールの陰に隠れてあまり才能を発揮できず、解散後「マイ・スゥイート・ロード」「セット・オン・ユー」などのヒットを飛ばしています。
 美術にはあまり関係ないですが、ちょっと悲しいです。

 11月29日(木)
 Nimda騒ぎの記憶も新しいのに、またもやコンピュータウィルスが猛威を振るっているようです。しかも2種類。とりあえず、インターネットエクスプローラーをお使いの方は、最新のバージョンをダウンロードすることをおすすめします。メールの添付ファイルを不用意に開かないのはもちろんですが。

 帰宅9時過ぎ。口内炎ができて、食事がつらい。

 11月28日(水)
 スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)全室で、第20回臥龍社書展が開かれています。
 北海道書道連盟の顧問、宇野静山さん(小樽)の主宰で、メンバーは道内各地と千葉県にちらばっています。漢字の創作が中心で、かな、近代詩文もありました。
 全体的には、飯坂喜代子さん、中川素枝さんなど、スケール感のある漢字作品が目を引きました。速く筆を走らせるのではなく、ためをつくってぐっぐっと筆を動かしているのが伝わってきます。牧野伊津さん「翠浪舞」など、浪の字は波打っているようですし、舞の字は舞い踊っているように見えます。
 入ってすぐ、黒リボンのついた濱田紀郎さん「火山列島」が目を引きます。有珠山、三宅島などの噴火を、山の字で表現した、水墨画にちかい作品です。
 少字数書は、永原博子さん「丘」など、簡素さの快さ。また、河原和子さんは「方丈記」の冒頭をかなで書いていますが、かなでこれほど読める作品はめずらしく、うれしかった!
 12月2日まで。
 
 「てんぴょう」の次号にハマトリのことを書きます。依頼された分量がなんと2000字。仕事でこんな長い原稿はめったに書きません。相当このHPと重複しそうだけど、ぶじ書けるかなあ…

 
 11月27日(火)
 this is gallery(中央区南3東1)で、久野志乃・遠藤香織展 あいまいなあいまが始まりました。
 ふたりともこの春道教大を卒業したばかりの若手です。久野さんは今年の全道展で道新賞に輝きました。遠藤さんの卒業展(時計台ギャラリー)の作品はなかなかのものでした。
 会場には、久野さんのペインティングが3点。久野さんらしい、躍動感のあるタッチで、ジュースのコップなどを描いてます。それを遠藤さんがセッティングしたライトが照らしていますが、通常のギャラリーのライティングとはちょっと異なっています。ただ、意図はよく分かりません。
 12月2日まで。

 どうも根雪のようですな、これは。

 11月26日(月)
 清水一郎・山内孝夫偲ぶ会展が、地下鉄南北線北24条駅のすぐそばの画廊喫茶チャオ(北区北24西4、モンレーブ24ビル3階)で開かれています。二人ともこの8月に逝去されました。
 清水さんは「43Z」の変名で「CHONZA」というフリーペーパーを精力的に発行し、ギャラリーたぴおやサンエス二番街ギャラリー(今は無い)などに出没していたので、ギャラリーめぐりをする人にはおなじみだったと思います。また、ピエロの扮装で絵のモデルも務め、アマチュア画家のグループ展などでは清水さんを描いた絵がよく陳列されていたものです。道内の演劇史、映画史、漫画史の研究家でもありました。
 84歳で亡くなる直前には、入院先の病院から「CHONZA」を出し続けていました。
 会場には、ピエロのコスチュームや、清水さんをモデルにしたいろんな人の絵、さらに清水さんの紙芝居(彼が紙芝居師だったとは知らなかった)などが展示されています。永六輔さんからのはがきも飾られていました。
 山内さんのほうはよく存じ上げないのですが、道立近代美術館の「北海道の美術展」に2回出品していることから、実力の認められた画家だったのでしょう。享年61歳でした。黒を主体にした抽象画などが並んでいます。
 28日まで。午前10時から午後10時まで。

 訃報です。
 朝日新聞によると、写真評論家で、元「毎日カメラ」編集長の西井一夫さんが亡くなられました。55歳でした。
 「写真的記憶」「なぜ、未だ『プロヴォーク』か」(青弓社)などの著書でにまとめられる辛口の批評文を書くかたわら、晩年は毎日新聞社から刊行されたムックの労作「シリーズ20世紀の記憶」の編集に腕を振るいました。
 終戦直後と現代の東京を対比させ、風景の変遷を論じた「新編『昭和二十年』東京地図」(ちくま文庫)は名著です。

 3人のご冥福をお祈りします。

 北海道書道連盟展ART foe the SPIRIT 永遠へのまなざし(道立近代美術館)の紹介をアップしました。ご一読を。後者をまだ見ていない人は、近代美術館へ急げ!

 午後から雪になりました。いよいよ根雪でしょうか。

 11月25日(日)
 きのう、±0cafeの写真がうまくアップできなかったので、やり直しました。こんどはうまくいってると思います。

 マリアン・ラパー展 Toyohira River Girl 2001を、CAI(中央区北1西28)で見ました。
 オランダ出身の作家。札幌アーティスト・イン・レジデンス実行委の招きで札幌に滞在しています。
 映像作品が5つ、会場に上映されています。
 横浜トリエンナーレですっかり映像作品がいやになってしまった筆者ですが、これはなかなか面白かったです。
 いちばん大きい面積で壁に投影されているのが「Toyohira River Girl」です。エフェクトでモノクロームの反転のようになった色調の画面を、川が波を立てて、スローモーションで流れていきます。左の手前、岸辺に、後ろ向きの少女がひとりで座り、ときおり石を投げています。
 ここで、川は、社会とか、外界の暗喩であるように思われます。そこに関与することを、石を投げる行為で象徴させているのではないでしょうか。
 ただ、考えてしまうのが、豊平川が明治期以来、人間との絶え間ない闘いによって、現在のような姿に馴致されてしまったということです。大正時代までの豊平川は大変な暴れ川でしたが、いまは高い堤防にさえぎられ、おとなしく流れています。
 人間は、意志と努力しだいで、激しい川の流れさえも統御することができます。しかし、自然との関係ということを考えた場合、力ずくで自然を征服するのではなく、自然と無理なく共存していくことが求められているのが最近の思潮ですよね。
 いや、ただ一人で石を投げるくらいでは、川の流れはまったく変わらないのだ、というとらえ方も可能でしょう。それでもニヒリズムに陥らずに川に石を投げ続けることの重要性を静かに訴えているということもできるでしょう。
 いろいろな受け止め方が可能な作品だと思いました。
 また、中二階では、おそらく北海道神宮で撮影したとおぼしき映像が流れていました。やはりスローモーションで、エフェクトがかけられています。参道にある、ひしゃくで手を清めるところが写されており、零れ落ちる水は黒い色に変換されています。
 日本に来たからといって神社にロケに来るというあたりがステレオタイプでいやだなー、と思うのですが、逆に私たちがオランダに行ったらことさらに風車やサボ(木靴)をカメラに収めようとするのかもしれません。
 単純な作品ですが、やはりいろいろ考えさせられたのでした。
 30日まで、月曜休み。

 油展(ゆてん)2001、行ってきました。
 道教大で油彩を学ぶ学生、院生の展覧会です。
 油彩だけでなく、蝶の形に切り抜いた紙を壁や天井に張り付けたインスタレーションなどもありました。
 コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)で、きょう25日まで。

 札幌市資料館(大通西13)にも寄りました。
 輪廻キルト&布絵展。パッチワークキルトを見て、久々にいいなーと思いました。木々の間を魚が泳ぐ「水の柱」など、豊かなイマジネーションを素直に紡いでいて好感が持てました。
 第五回一彩会展は、道展会員・北野清子さんの水彩教室の展覧会。佐藤信子さんの静物画の色彩が鮮やか。
 第21回ぐるーぷ真駒内展は、全道展会友・中田やよひさんの水彩、油彩の教室。山口寿美子さん、島谷京子さんらが、空気感のある静物画をかいています。
 いずれもきょう25日で終了。

 丸井今井札幌本店(南1西2)大通館8階では、柴山勝展が27日まで開かれていますが、さすが絵付陶器では道内屈指の人気作家とあって、大半が売れてしまって会場はすっからかんです。魚や、山の風景を題材にした絵は、素朴でひょうひょうとした味わい。それにしてもこんなに人気とは… お値段も高くなって、カップだと2,3万円します。

 筆者はたぶんまた土曜まで見に行けないと思いますが、今週の札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)はすごい。実力派の画家がこんなにそろうのも珍しいのではないでしょうか。

 
 11月24日(土)
 昼の気温が15度を超えた、あたたかい1日。
 上着を脱いで手に持って信号を待っていたら、信号機に止まっていたカラスのふんが上着に落下しました。まあ、頭の上とかに落とされたりするよりはマシですけどね…

 あちこち見たけど、個人的におもしろかったのは、第30回北海道書道連盟展(丸井今井札幌本店、一条館8階)でした。
 毎年ゴールデンウィークに開かれる北海道書道展こそが、一年の書道を代表する催しなんですけど、あれは会場があちこちに分散してるし、出品作がたくさんありすぎて疲れます。
 その点、この連盟展は、道内の社中や書道団体の代表ら196人が1点ずつ作品を発表しており、粒ぞろいです。まあ、社中は、世襲の場合もありますから、必ずしも道内のベスト196とはいえないかもしれませんが、やはり名の通った書家が顔をそろえています。分野も、漢字、少字数書、かな、近代詩文、墨象、篆刻、前衛−と、バラエティーに富んでいます。
 加盟団体が増えてちょっと会場が手狭かなー、という感じもしますけど。ずいぶん小さい作品を出しているベテラン勢もおり、あるいは会場の広さのことを考えてるのかなー、って思いました。
 27日まで。無料。

 色彩の美しさ、深さに、あらためてうなってしまったのが、ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20)で見た井上まさじ展でした。とりわけ、赤からオレンジ、緑へとうつろっていく正方形の画面は、遠い夕焼けのようでした。ほかにも、水面を思わせるもの、淡い黄や黄緑のグラデーションのものなど、さまざまな色がありますが、どれも現実の単なる写生ではなく、フォルムもなく、ただ美しい微妙な色彩のうつろいが、画面を覆っています。
 井上さんは4月にも同じギャラリーで個展を開いています。そのときの評は季刊「てんぴょう」8号に書きましたが、ひたすらフリーハンドで線を引いていく平面作品でした。
 今回は、井上さんのもう一つの系列の作品です。アクリル絵の具などをローラーで何層も何層も塗り重ねていき、まるで歯ブラシの透明なブラシを埋め込んだみたいな表面になります。
 「透明なミディウムを塗る途中に挟んでいくと、透明感が増すんです」と井上さん。美しい色彩は、気の遠くなるような作業の繰り返しと工夫から生まれているようです。
 井上さんは札幌在住。ほぼ8ヶ月に1度のペースで個展を開いています。
 12月2日まで。

 きょうで終わりなのが時計台ギャラリー(北1西3)とギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)です。
阿地信美智「記憶の表層」 時計台ギャラリーG室での阿地信美智個展
 「記憶の表層」と題された木の立体造型などが展示されています。
 木といっても、いわゆる木彫とはだいぶ感じが異なります。
 表面には、粉にしたコンテを塗ったり新聞紙を張ったりして、古びた趣を漂わせています。
 一見すると、ここには作者の何らかのメッセージが込められているように思えますし、見る人を郷愁に誘います。けれども、それは、そういう感じがするというだけで、実際には明確な主張はないようです。ただ、見る人をなにか思索に誘うものがある、としか言いようがありません。
 なんらかのイメージや表象にたよることなしに、人を郷愁にいざなうというのは、すごいなーと思います。なにか具体的に懐かしい絵がかいてあったり、物がコラージュされてるわけじゃないんですからね。
 札幌在住、新道展会員。

 A室は小川智油絵展
 ことしの道展や、作家集団「連」展(小樽・古屋ギャラリー)などで絵を見て
「明るい色彩で穏やかな風景画をかく人だなー」
という印象をもっていました。道展の出品作は、小樽運河がモティーフ。よくある題材ではありますが、描写力は確かです。
 見覚えのある大きな絵の前で足が止まりました。「サンポールの眺め」。家々の白い壁。オレンジの屋根。南仏でしょうか、坂の町を窓越しに見た構図がまとまっています。均等にかきこむのでなく、遠景では筆が適度に省略されているのにも好感が持てます。どうやら1998年の2月、「六五会」で展示していた1枚のようです。
 そのとなりにある「入り江(ヴィルフランシュ)」という絵にも惹かれました。レンガ色の建物などが堅実な筆で描写されています。

 ギャラリーたぴおでは船木ゆずか展を見ました。札幌のジュエリー作家です。
 個展はたぶん4年ぶりくらいだと思いますが、前回より見ごたえがありました。
 まず、モティーフのテーマが「木の小枝」でほぼ統一されていること。そして、展示する台にも気を配っていることなどが理由です。値段も、シルバーのネックレスやピアスが8000円から1万円前後とお値打ちなのです。

±0cafe 左が谷川さん、右が白戸さん ±0 Cafeに、やっと行くことができました。
 このカフェは、ことし2月から1年間の限定で、毎週土曜と日曜の午後2時から7時まで、フリースペースPRAHA(南14西17)の一角で開かれているもの。札幌で美術活動に携わる谷川よしみさん(自宅は空知管内長沼町)と白戸麻衣さんの二人によるプロジェクト。フライヤー(ちらしのこと)によると「カフェという形態を用いて制作と発表を一体化させ、“パフォーマンスする空間”ごと創る試みです」。
 このスペースで、白戸さんは「着せ替え人形マイちゃん」プロジェクト、谷川さんは「ほどよい情報プラン」なるものを実施しています。そりゃねー、なんかやらないと、ただ仲間内の溜まり場になっちゃってアートじゃなくなっちゃうからねー。まあ、べつに溜まり場でもいいんだけど。1年間やり続けるっていうだけでもすごいし。どういう出会いがあったのか、終わったときにきっちりまとめてほしいと思います。
 珈琲以外にもいろんな飲み物があって、胡麻きなこシェイクというのを飲みました。350円。創作ドリンクです。甘いのが好きな人向きです。
 なお、この年末から1月4日にかけては、東京・渋谷のル・デコというスペースで「出張±0 Cafe」も行うとのことです。おおみそかはオールナイトだとか。ちなみに、同じ会場で顕ちゃんこと谷口顕一郎くんの個展も行われるそうです。 

 以下は寸評です。
 時計台ギャラリー。加藤薫個展。全道展で一番多いタイプの油彩。
 大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)。堀木淳平彫刻展
 螺旋をテーマにした金属彫刻。この作家は、わりと発想のもとになっているのが平面だと思う。平面という部材を立体として用いると、見る角度によって作品の形が全然違って受け取られるという利点が生じる。量塊性はいくらか失われるが、空間がフルに生かされるので、あまり気にならない。モニュメント的な仕事です。
 コンセプトなどを小冊子にして配布しているのは、ありそうでないユニークな試み。
 27日まで。
 村井喜久子油絵展、さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)。
 白い家並みと、緑の木々や紅葉を配した、きわめて心情的な風景画約20点。なにをかきたいのかがわりあい明確なので好感が持てますが、いかんせん構成画ではなく風景画なので、遠くにあるはずの白が前進色なので手前に見えるなど、もうちょい改善できるところもありそうです。
 25日まで。
 アートスペース201(南2西1、山口中央ビル5、6階)。
 第4回アートグループ月の舟展。アサノさんの「EYES」は、抽象画として面白い。
 WOOD CRAFT EXHIBITION。道教大で木工を学ぶ学生のグループ展。例年まじめないすや玩具の作品が多いなかで、清野加容子さんの木の枝を使ったインスタレーションは異例。
 いずれも25日まで。
 
 というわけで、コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)の油展が見られなかったので、25日に行きます。

 11月22日(木)
 きょうも美術の話題はありません。

 四方田犬彦著「ソウルの風景」(岩波新書)を読みました。
 21年ぶりに韓国の首都に滞在した映画・文芸批評家が、その驚くべき急変ぶりをスケッチした一冊です。北朝鮮に備えて兵士が街角に立ち、夜間外出禁止令が出ていた時代は遠く去って、ソウルには大衆消費社会が到来していました。伝統と外来文化、日本文化の流入、KCIAの思い出など、興味深い記述がたくさんありました。金大中のノーベル賞受賞ひとつとっても、韓国内でさまざまな意見があったことがわかります。

 それにしても、今年読んだ本はこれで81冊目。文化部時代の半分以下のペースという体たらくで、6年ぶりに年100冊の大台を割る可能性が高くなってきました。
 11月21日(水)
 20日は9時40分から23時まで会社にいたので更新なし。
 毎日の夕刊で、戸谷茂雄展を絶賛してました。「もしも彫刻家・戸谷茂雄の新作がなかったら、日本の美術は今年もまた、絶望感をつのらせたまま幕を下ろしていたかもしれない」って、三田(さんだ)記者、そこまでほめるかって感じです。12月15日まで、江東区佐賀のRicギャラリーで。
 きょうもギャラリー回りは無しです。
 イチロー選手の大リーグMVPと、狂牛病の牛2頭目確認。大ニュースが相次ぎました。
 11月19日(月)
 みなさーん、しし座流星群は見ましたかあ?
 筆者は夕べ、午後11時前に眠り、万全の体制で午前2時半に起きましたが、空にはどんより厚い雲。3時半ごろ目が覚めたときもやはりだめ。4時過ぎにもう一度目が覚めたら、南の空にわずかに雲の切れ目が見えるではありませんか。すると、明るい流星が流れたので、さっそく家の前に出て観測しました。
 家は札幌市内だし、全体にうす曇だったため、1等星を超えるものしか見えませんでしたが、それでも1時間に30個以上の流れ星が見えました。シリウスのすぐ横を、シリウスをはるかに上回る明るい火球が流れるなど、もう感動です。薄い緑色がかった流星もありましたよ。感動!

 それにしても、きのう書いたことは大外れでしたね。結果的に英国人天文家の予想が的中したわけです。すごい。

 艾沢詳子展のオープニングパーティーが、テンポラリースペース(中央区北4西27)でありました。
 艾沢(よもぎざわ)さんは、国際的に活躍する札幌在住の版画家ですが、今回はドローイングです。鉛筆とクレヨンの曲線が、びっしりと画面を覆い尽くしています。
 線は、何層にも重なっています。おびただしい線ひとつひとつに、作者の息遣いのようなものがひそかに込められ、折り畳まれているようです。
 作者に「日記みたいなものですか」と聞いたら、うなずいていました。
「フォルムよりも線による行為のほうに興味が移っているんですか?」
「だって、フォルムになったらダイアリーにならないでしょ? フォルムはどこかに向かうものだから…」
と艾沢さん。
 ドローイングがかかれた紙(248×215センチ)は、壁から少し離して設置され、物質としての存在感を高めていました。ほかに小品。
 12月8日まで。日曜休み。
 11月18日(日)
 栗沢・美流渡(みると)へ、野外オブジェ展イン栗沢を見に行きました。
 かつて炭鉱で栄えたこの地区には、近年、塚本竜玄さんが窯を構えたり、M・ババッチさんがスクラップアート美術館を開くなど、美術家の移転が目立ちます。今回の展覧会は、近く、上美流渡小中学校の跡地に栗沢町工芸館が開設されるのにあわせ、同館横の広場での野外美術展として企画されたもので、地元・美流渡と札幌などから14人が参加しています。
 国道12号から自家用車で行ったのですが、江別を過ぎたあたりから雪になり、会場の作品も雪を被っ益村信子「にじのさんぽ」ていました。
 左の写真は、益村信子さん(札幌)「にじのさんぽ 突然宇宙(そら)へ行ってしまった人たちへ」。さいきん、複数の絵画で空間を構成する作品に取り組んでいる益村さん。カラフルな虹の色が、雪に映えますね。
 題名は、どうしても米国のテロを思い出させます。そういえば、平松和芳さん(札幌)の立体も「崩壊と復活」でした。
神谷ふじ子「風の波」 神谷ふじ子さん(札幌)、頑張ってますねー。右の写真は「風の波」です。鉄の作品ですが、でかいです。奥行き4、5メートルはありそうです。
 この反対側には、やっぱり大きな「風の翼」が置いてあります。鉄錆がイイ味を出しています。
 神谷さんの作品は、塚本さんの窯の横にある広場のわきにも、梱包されたままの状態で置かれていました。そのうち広場にお目見えするかもしれません。
 佐久間睦男さんという陶芸家はお初にお目にかかります。千葉県生まれで、しばらく金沢で陶芸を制作し、ことし美流渡のさらに奥にある万字地区に窯を開いたそうです。左の写真は「eat 佐久間睦男away」という作品ですが、かわいらしいですね。
 会場の隅の木々の間に、ハンモックが吊り渡してありました。ファイバーアーティスト田村陽子さん(札幌)の「空を仰いで」という作品です。うーん、雪が積もってなかったら乗っかっても良かったんだけど。天気のいい日にハンモックの上から空を見たら気持ちいいだろうなあ。
 ほかに、泉修次、太田ひろ(以上札幌)、笹岡素子(江別)、堀江隆司(夕張)、鈴木順三郎(網走管内置戸町)、林教司、塚本竜玄、伊藤公一、M・ババッチ(以上美流渡)のみなさんが出品しています。
 12月2日まで。

 帰りにスクラップアート美術館に寄りました。ババッチさんのゆかいな廃品アートがずらりと並んでいます。土、日のみの開館です。
 作や、オブジェ展のオープニングパーティーがあったそうで、夜遅くまで飲んで騒いだババッチさんはいくらか寝不足気味のようでした。

 きょうは「しし座流星群」の極大が予想されていますが、札幌は曇り空で、なかなか厳しいようです。まあ、流星群の予想はあまりあてになりません。前回(たしか1999年)の大出現の予測も、ピークが数時間ずれただけで日本では見られず、欧州でだけ観測できたのでした。

 11月17日(土)
ホワイトイルミネーション 毎週恒例のギャラリー回りです。
 きょうは、油彩、水彩などその他の絵画、彫刻、工芸、写真の順番でいきたいと思います。
 非常識な行数になりましたが、なにとぞご容赦ください。

 ちなみに、右の写真は、きのうから大通公園で始まったホワイトイルミネーションです。毎年だいたい同じ電飾が置かれていますが、すっかり有名になりました。

 ▼油彩

 きょうで終わりの時計台ギャラリー(中央区北1西3)。
 A室では、米寿記念・遠藤ミマン作品展。代表作3点をシルクスクリーンの版画にしたことを記念した展覧会。過去の作品がずらりと並んでいました。
 遠藤さんは苫小牧の美術会の長老。いまさら筆者がどうこう書くことでもないのですが、あたたかなマティエール、まばゆく明るい色彩、厳密な構図(今回の出品作「三角点と馬」には、構図を考えた跡を示す薄い直線がひかれているのが分かります)が特徴といえるでしょう。見ていて幸福な気持ちになる絵です。

佐藤泰子「finish」 B室では、佐藤泰子展
 「finish」シリーズの油彩13点と、パステル画数点です。
 以前、佐藤さんに
「目をつぶったときに網膜の裏に映る光みたいですね」
と話したら
「実はそうなのよ」
と言われたことがありました。
 オレンジ、赤など、鮮やかな色彩の中に浮かぶ、残像のような定かでないかたち。ただし、地の色面は、オレンジの下には黄緑、赤の下には灰色…というふうに、さまざまな色が重ねられ、響き合っています。これこそ、油彩ならではの醍醐味といえましょう。
 不定形の形は、佐藤さんのもう一つのシリーズである「さくらさくら」とつながっているのではないかと思えるのですが、どうでしょう。
  札幌在住、自由美術会員。

 3階は全室、札幌高専教員展
 金工の金子直人さんが、アントニオ猪木に続いて、藤原紀香の顔をデザインしたすずのコップを開発! 会場には、彼女が笑顔で、両手に自分の顔のついたコップを持っている写真まで貼ってあります。
「うーん、ミーハ―だなあ」
と思っていたら、金子さん本人が現れて
「いやー、ミーハ―路線ですからあ」
なんて言っていました。
 彼女は格闘技ファンとしても知られています。猪木とのつながりで、事務所から依頼されたとのこと。写真も事務所から送ってきたもののようです。
 ほかに、都市計画やデザイン、CGなど盛りだくさんでした。廣嶋敬久さんと小島和夫さんが日本画を高専で教えているとは知らなかった。
小関恵久子個展
 さて、大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)では、小関恵久子個展を見ました。
 筆者の知るかぎり、やわらかい描線と暖色による人物画が多かった小関さんですが、70年代には抽象もやっていたし、いろんな引き出しのある人のようです。
 ギャラリーの奥の壁に並んでいた2点が目を引きましたので、写真に撮ってきました。
 左側は「人70年」。自画像を中心に、ほおずきや植物の種子を配しています。ストロークに、画家の生きてきた証のような思いが込められているようです。
 右は「シルエット」。こちらは、淡い中間色を主体に、人物のシルエットや静物を描いています。
小関恵久子個展「幻となった遊具」 と思うと、左の絵のように、線描を主体にした、どこか幻想的な作風のものもあります(たしか「幻となった遊具」というような題だと思った。メモしてなかったので、すいません)。
 この遊具は、中島公園の北側入り口にかつてあったが、今はないそうです。
 曲線が命、という感じの作品です。
 小関さんは、時計台ギャラリーで大規模な回顧展を開いた98年に病気で入院し、いまも肝臓などを患っています。
「エクちゃんの絵はやさしいね、っていつも言われるし、いろんなものをかいてみようと思って。幸い、かく意欲はすごくあるし。自分の引きだしを探しながら、これからもかいていこうと思っています」
 札幌在住、全道展会員。
 20日まで。

 ▼水彩などその他の絵画

 「シチリア島」スケッチ紀行展は、版画家の渡會純价さんを講師に今春行ったツアーの報告展。渡会さんを含め15人が、水彩や油彩などを発表しています。
 地中海の波の印象を、緑の地にオレンジの直線が走る抽象画にした武田輝子さんの作品が印象に残りました。
 渡会さんのツアーは今年で6回目。来年は5月9日から、スイスに行くのだそうです。優雅だなあ。いいなあ。渡会さん(と東急観光さん)、私の定年まで続けてくださいね(だいぶ先だけど)。
 コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)で、18日まで。

 さて、コンチネンタルギャラリーを出ると、大通西12の路上に
「古本 新刊 ギャラリー ザリガニヤ
という小さい看板が置かれているのが見つかった。
古いビルに入って階段を昇り、奥の部屋に小さな古本屋があり、その壁の一角で、知久寿焼「だるまさん千字文」原画展が開かれているのであった。
 この名前に見覚えのある人もいるでしょう。そう、「さよなら人類」で一世を風靡し、いまもマイペースで活動を続けるバンド「たま」のボーカル兼ギターです。
 詩人の矢川澄子さんに誘われて絵本の挿絵をかいたとのこと。スケッチブックの切れ端にかいた鉛筆画だが、なかなか達者で、ほのぼのとした味わいがあります。19日夜、同店でライブがあるそうですが、こんな狭いところでどうやってやるんだ。
 本屋はごく小さく、筆者の蔵書数といい勝負のような気がします。
 「いらっしゃいませ」でもなければ、本を買っても「ありがとうございました」でもなく、商売っ気ゼロだな、こりゃ。
 原画展は12月14日まで。

 スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)では、志賀迪水彩画展
 ことしの道展の「宇治幻影」は仏教的な作品でしたが、個展には、例年の、丹念な筆致の写実的な風景画を中心に陳列しています。
 一昨年の道展で発表した「寂」に惹かれました。厚田村望来の手前にあった古い家がモティーフですが、池のようになった雪解け水の水溜まりに屋根や空が微妙に反射しています。
 志賀さんは「水の反射が好きなんです」。昨秋、網走管内津別町でスケッチしたという「チミケップ湖」、北大で描いた「冬への道」なども、水のある風景です。
 道展会友。18日まで。

 ▼彫刻
 this is gallery(南3東1)では伊藤幸子彫刻展
 白い表面に淡彩を施した、半身像やトルソなど。首の下の部分が抽象的に処理されているのがおもしろい。ちょっと舟越桂を思わせるけど。
 伊藤さんは道展会友。
 24日まで。月曜休み。

 ▼工芸
 札幌市資料館(大通西13)で、3つの染織の展覧会が開かれています。
 日日工房とその仲間達展は、加藤祐子さんら16人が、ジャケットやタペストリーなどを出品。斉藤早苗さんの「琉」が、青い波の階調をよく表現していて気持ちのいいタペストリーだと思いました。
 加藤千香子展 this side-the other sideは、布によるインスタレーション的な構成。ごく疎らに縫った布を天井からつりさげています。うーん、ピピロッティ・リストのビデオ作品上映にいいかもしれない。というのは冗談ですが、縦70センチ、横20センチくらいの、色の異なる薄い布20枚近くを規則的に、旗のように壁に取り付けるなど、意欲的な試みです。
 一方、桐山久三古 糸で織(あそ)ぶ布で遊ぶも、インスタレーションふう。こちらは、あたたかそうな厚い布ばかり。3枚をハンモックのように吊り下げています。ただ、好みの問題なんですが、青と茶という配色のパターンは、筆者にはちょっと…。
 すべて18日まで。

 北海道陶芸会展が、アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)の全室を使って開かれています。5階が一般の作品、6階がうつわの展示即売です。
 今年は「秋」が共通テーマのせいか、全体的にちょっと地味な印象です。
 福盛田眞智子「使われたものたちの秋」が、廃物を思わせる組作品で目を引きましたが、ほかは大型の器です。
 高井秀樹「巡り行く季節」はマツボックリやドングリを並べた作品。山梨保子「雌雄の愛」は重量感があります。吉田時彦「秋」は銀色の釉薬がきれい。コ橋浩「のん気な捨て台詞 二重人格」は、古代調のユニークな作品。香西信行は存在感ある焼き締めの器。小木美則はひだすきの技法を用いています。
 20日まで。

 自由ではちゃめちゃな面白さという点では、スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)で開かれている陽窯OB発展途上展のほうが勝ちです。若手が多いもんね。
 清水しおりさんの「ハコイス」は、その名の通り、箱の形をしたいすの置物です。西村和さんは、祭壇を思わせる重厚な壁掛け式平面。桜田恭子さん「やわらかくつつみこむ」は、棒状にまるめた布を重ねて器にしたような、一種だまし絵みたいな一品。師匠格の?高野陽子さんのいすも、なんだかいろんな突起がついて、陽気です。ほとんど遊園地です。
 18日まで。

 さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)の高橋千弥作陶展は、深い青の釉薬が非常に印象的でした。18日まで。

 ▼写真

 石井一弘写真展「納沙布」は、富士フォトサロン札幌(北2西4、三井ビル)で。
 石井さんは朝日新聞をこの春定年退職したカメラマン。いまから40年前の学生時代に納沙布岬に滞在して写真を撮影して以来、たびたび訪れており、ライフワークと呼べる打ち込みようです。
 会場には、往時と今のコンブ漁の写真を中心に並べています。1963年、ソ連との協議で貝殻島でコンブが取れるようになったときの歓迎ぶりをおさめた写真も多くあります。
 また、40年前に小学生だった男女に、同じ場所に立ってもらって撮った写真もありました。歳月の重み、というと月並みな言葉ですが、すごく感じました。
 筆者のような世代の人間には、ぬかるんだ道、羽目板の木造住宅―という景色は、とても懐かしかったです。
 28日まで。

 第12回写真同好会「歩歩」写真展が、札幌市資料館(大通西13)で開かれています。
 倉本正一さんの指導による6人のグループです。
 9、10月にイーストウエストフォトギャラリーで個展を開いていた宮内英而さんも、じつに笑顔のすてきなおばあさんを撮った「朝市のマドンナ【輪島】」などを出品しています。
 会場で宮内さんにお会いしたので、ホームページのアドレスが分かりました。こちらです。そのうち「リンク集」にも入れます。
 いちばん印象に残ったのは、宮浦禮子さん「光陰」「静かな空間」でした。建築の内部をシャープに切り取り、不思議なたたずまいが広がっています。新鮮だと思います。
 安藤裕さん「飛沫」は、逆光の難しい条件で、大通公園の噴水の水しぶきを捉えています。あおり気味の角度が躍動感を与えています。
 18日まで。

 イーストウエストフォトギャラリー(南3西8、大洋ビル2階)では花木弘昌写真展を見ました。
 ヒマラヤの山々をとらえています。確かにすごい被写体なのですが、雪がまぶしすぎて、青空が真っ暗に写ってしまった写真もあるなど、厳しい条件下での露光の難しさを考えさせられました。
 20日まで。
 
 11月16日(金)
 このHPは、職場の人間にはあまり宣伝していないのですが、きょうある同僚から
「ヤナイさん、更新してませんね」
とチェックを入れられてしまいました。
 バカ話、時事ネタならなんぼでも書くことはあるけれど、ここはそういうHPでもないし…。

 アートスペース201のHPの掲示板で、アーティスト・イン・レジデンスの議論が多少盛り上がっているようですが、あの資金は全額が行政から出ているわけではないし、出ていたとしてもほかの公共工事なんかに比べたら取るに足らない額ですし、有名アーティストの作品の購入に比べても安上がりです。それでも無駄使いというなら仕方ありませんが。
 札幌のような試みは日本各地で行われているようですが、地域おこしの一環としてとらえられているところが多いようです。札幌の場合は、すぐには見返りを求めず、地元小学生との交流といった行事をやたらと組み入れることもありません。ただ、地道に続けていけば、滞在したアーティストが将来ビッグになったときに
「札幌での滞在が忘れられません」
とかいうことになったら、充分モトはとれるような気はします。ま、そこまでいかなくても、世界の現代美術の世界で、札幌の知名度は少しづつ上がっていると思えば、やる価値のある取り組みなのではないでしょうかね。
 
 11月14日(水)
 きのう13日は朝、デスクに電話で呼び出され、米機墜落の特別紙面をつくり、夜は飲み会で、すすきのの某所ではっと時計を見たら2時を過ぎていたので、更新できませんでした。

 12日に書いた選考会ですが、贈られてきたスライドやビデオやCD-ROMなどの資料を見て行います。本人が札幌まで来てプレゼンテーションするわけではもちろんありません。

 美術書専門の古本屋「亜本屋」がHBC3条ビル(中央区南3西2)の2階にこのほど開店したと聞き、のぞいてきました。美術書ばかり集めた書店というのは、新刊書店を含めても道内で初めてではないかと思います。
 それほど店内は広くありませんが、本棚の一部に映画や詩歌の本があるほかは確かに美術関係書で埋まっています。品ぞろえは、「三彩」「美術手帖」「みずゑ」「目の眼」など雑誌のバックナンバーや図録類はかなり多く、道内関連で珍しい本もありました(ただし「北海道美術史」15000円は高い)。ただ、新しい本はそれほどなく、市内の他の古書店を回る意味がなくなったわけではないと思います。
 18日まで、開店記念で2割引きです。
 なお、この店舗の開店にしたがって、月寒中央通にある「亜本屋」は、一般書が中心の店舗になったそうです。
 11月12日(月)
 来年度のアーティスト・イン・レジデンス(S‐AIR)の作家選考会が、豊平のICCであり、出かけてきました。筆者のごとき人間の1票が、鬼丸名誉教授と同じ1票というのもなんだか気が引けましたが、やってみると案外票はおなじ作家に集中するもんですね。今回は、欧米、アジアから応募が22人もおり、4時間半もかかりました。いずれ、実行委から発表があると思います。

 ニューヨーク沖で旅客機が墜落しました。まだテロかどうかは分かりません。

 星のきれいな晩です。オリオン大星雲がはっきり見えます。

 11月11日(日)
 きのう書いた「こすもす1107」のHPのアドレスが違っていたので、リンクを張りなおしておきました。こちらです。ごめんなさい。

 谷内丞作陶展について昨日書き忘れていました。丸井今井札幌本店(中央区南1西3)の大通館8階美術ギャラリーで開かれています。
 目を引いたのが、三彩の器と、「陶彫」と題したオブジェでした。三彩は、道内では手がけている人はほとんどいないと思います。
 陶彫は、アダムとイブの図像がレリーフになった、リンゴ型の立体などです。
 どちらも、日本的な美の範疇にとどまらない、アルカイックというか、オリエンタルというか、古代につながるおおらかな美しさを持っているようでした。
 14日まで。

 道展の紹介、いちおう工芸も書きました。展覧会の会期はきょうでおわりですが、文章に不備、事実誤認などあれば、訂正していきたいと思いますので、お気づきの方はご一報をください。

 グループ炭坑夫の写真展、けさの道新・道央版に出てましたね。
 11月10日(土)
 例によって土曜はギャラリー回りの日です。市内のバスや地下鉄、市電が1日乗り放題の「1dayカード」(1000円)を持って、昼過ぎに出発しました。

 大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)で、岩下寿男展
 油彩と水彩です。いっけんありそうで、実はありえない風景をうまく構築しており、なかなかおもしろく拝見しました。
 くわしくは「展覧会の紹介」をお読みください。13日まで。

 ギャラリーノルテ(北1西6、安田火災北海道ビル3階)では、開設14周年記念展「東志青邨とノルテの作家たち」が開かれています。
 東志青邨(ひがし・せいそん)さんは、空知管内新十津川町生まれ。上田桑鳩と出会い本格的に書の道に踏み出します。北海道墨象会、札幌墨象会の代表を務め、道内墨象の代表的作家です(5月の札幌墨象会展の様子はこちら)。
 しかし、今回のメーンは、顔真卿(がん・しんけい)の「争坐位文稿」の全文の臨書です。東志さんはこれまで、顔三稿と称せられるうち二つの文書の臨書を終えており、これで三つがそろったことになります。「稿」とあるとおり、手紙の下書きですから、ラフな草書体で書かれています。70歳にして古典から学びなおす、という姿勢なのかもしれません。
 17日まで。日曜休み、午後5時半に閉廊というのがちょっとこまります。

 道立近代美術館(北1西17)では、ART for the SPIRIT 永遠へのまなざしと題された、同館企画の現代美術展が開かれています。
 出品作家は、ボルタンスキー、ジェームス・タレル、宮島達男、岡部昌生(北広島在住)、舟越桂の5人。いずれも国際的な評価のすでに固まった人たちですから、展覧会ぜんたいの水準は横浜トリエンナーレなんかよりもはるかに上です(^_^メ)。
 ただ、このうち筆者が唯一見たことのないタレルの作品が体験型のため、先約がいっぱいで鑑賞できなかったのが残念でした。Yさんから言われたとおり、すいている日に見に行かなくてはダメなようです。
 マスコミ主催の展覧会や貸し館のあいだに挟まれて、美術館が独自企画として開いている展覧会なので、みなさん必ず行くように! かなり、重量級の展覧会で、生と死について考えさせられますが。
 12月2日まで。
 ところで、会場から出てきたら、宮島、舟越、岡部の各氏によるシンポジウムが終わる直前でした。う〜〜、知らなかったぞ、そんなのやってたなんて。残念。

 道立三岸好太郎美術館(北2西15)では、二人の野獣(フォービスト)-里見勝蔵と三岸好太郎を見ました。
 またまた、日本人が「洋画」をかくことの意味みたいなものを考えてしまいました。
 参考として、となりの近代美術館からヴラマンクを2点借りて展示しています。里見の滞欧時の作品があまりに師匠ヴラマンクに似ているので、笑っちゃいますけど。
 さすがに日本に帰ってくると、やっぱり日本人的な絵になってくるんだなあ、これが。
 18日まで。

 オリジナル画廊(南2西26)に久しぶりに行きました。オリジナル大賞展をやっていました。
 道内外から画廊が公募するコンテストです。なぜか八子(晋司・直子)夫妻とか、道展会員の照井栄一さんとかも出ていますが、サイズはいささか小さめでした。
 グランプリは、さすがにうまい。ペンによる細密画です。もっとも、パネルには、稲田務「鳥瓜」ってあったけど「烏瓜」なんだろうな、たぶん。
 17日まで。

こすもす1107 コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)に行ったら、こすもす1107という、女性の異業種交流グループによる展覧会が開かれていました。ふだん美術展で目にする名前がないわりには、書、写真、オブジェなどなど、元気のいい作品が多くて、おもしろかったです。毎年11月7日前後に開かれ、4回目だそうです。100人の会員のうち出品しているのは20人くらいでしょうか。カフェもオープンしています。
 写真は、なんとお菓子の街。 設計図を引き、会員が手分けして焼いてきたクッキーなどを会場で組み立てたという労作です。最終日の11日夕方に解体して食べるそうなので、食いしん坊はどうぞ。
 こすもす1107(ちなみにこの数字は「イイオンナ」の意味)のHPはこちら

グループ炭坑夫写真展 小路の6丁目では、夕張の写真家、風間健介さん率いるグループ炭坑夫が、空知の炭鉱跡のPRをしようと、路上?写真展を始めました。
 三笠・幾春別や赤平など、いまに残る炭鉱跡が紹介されています。考えてみれば、グループが活動をはじめたころは、産業遺産として観光に活用できるなんて思ってた人はほとんどいなかったのですが、ここ数年で地元の人々の意識も少しずつ変わってきたようです。
 風間さんは「この会場はええなあ」と言っていますが、何がいいのかはここでは言いません。
 石炭ストーブ(右の写真、手前)が運び込まれて、イイ味を出しています(暖かい!)。
 18日まで。

 さて、時計台ギャラリー(北1西3)は、平日に行くことがほぼ不可能になり、仕方なく最終日に出向くことが常態化しています。
 A室は、芹田綾子と若きアーティスト達展。ご主人の画家・英治さんとともにニューヨーク暮らしが長かった芹田綾子さんが、滞在中に親交のあった若手女性とグループ展を開きました。綾子さんが日本画を出品しているほか、渡辺慶子(版画)、武田享恵(金属造型)、小菅山知子(織)、三宅紅里子(写真)の札幌在住の4氏です。
 木版、銅板など複数の技法を駆使して作り出される渡辺さんの作品は、ますます不思議な力をはらみ、複雑な表面を宿すようになっています。「September.B-1(水面下に眠る)」は、曲線の大きなフォルムのなかに勢いのある直線が走り、画面に深みを増しています。
 武田さんは、いつもの道展の巨大な作品に比べるとやや小ぶり。シリンダーみたいな形の「静寂の力」など。なんだかわからんけど、力を感じます。
黒木孝子「連なる」
 B室は黒木孝子展
 札幌在住の主体展会員、全道展会友。これまでの個展は新作を中心にならべていましたが、今回は両展に出品した大作の「連なる」シリーズを陳列しています。すべて抽象画です。
 黄、茶を主にした色遣いは変わっていませんが、今年あたりから、あちこちに浮かんでいた不定形のフォルムはほぼ一掃されて、力と速度を感じさせる直線が縦横に走って画面を支配するようになりました。個展では、そこらへんの変化の痕がうかがえます。
 筆者の好みからいうと、だんぜん新作のほうがいいですね。スピード感とシャープさのある新作に比べると、昨年まではややとっちらかった印象は否めません。
 「線をかくことは苦痛ではない」と言う黒木さんが、どう変化していくのか、注目したいと思います。

 C室、朴の会彫刻展は、女性7人のグループ展。
 門馬よ宇子さんがテラコッタによる普通の首だったのは意外で、鶴岡とよ子さんがむしろ現代美術っぽい立体を出していました。
 D室の川井紘子個展
 毎年思うことですが、油彩よりは、イラストとか版画に向いているのではないかと思います。独特の世界がだんだん出てきたようですし。

 じつは、9日の夜(10日の早朝)、キリンビール園(南10西1)を会場に、クラブイベントがあったので、踊ってきました。といっても、フロアで立ってた時間の方が長かったけど。
 アレックス・パターソンは、前から興味のあったDJだったし。
 会場で、主催のノースウェーブのTさんと、ギャラリストのIさんに会いました。Iさん、いつも名前思い出せなくてごめんなさい。
 しかし、オレって37歳にもなって何してんだろう。
 テクノミュージックに関する考察はそのうちいずれ、また。
 11月8日(木)
 ギャラリーたぴお(中央区北2西2、道特会館)は最近、ほとんどの展覧会で、1時間繰り下げて11時から19時まであいているようです。スケジュール表に、間違った時間を載せてしまってすいませんでした。
 で、いまやってる「共振する空間展3」には、三神恵爾、太田ひろ、長谷川雅志、竹田博、平松和芳、田村陽子、中岡りえ、吉住ヒロユキの8人が出品しています。

 このなかでは、三神さんの「見ることと視ること2001」に、強い印象を受けました。
 オブジェ、水彩の抽象画連作、コラージュという、多くの部分からなる作品です。
 コラージュは「廃墟と鏡(中国七三一部隊)」「パレスチナ自治区(ガザ)」などと題され、新聞のスクラップが使われるとともに、鉛筆でそれを戦火の絶えなかった20世紀を振り返るものとなっています。
 「記憶殺し(ユーゴ、サラエボ図書館)」という、図書館が破壊された情景をモティーフにしたコラージュには、ファン・ゴイティソーロの言葉が引かれています。

 「私は詩こそが破滅の淵に向かいつつある人間の魂の抵抗の最後の砦だと思います。詩が世界を救えるといっているのではありません。ただ少なくとも人間の中にある人間性というものを救うことはできるはずです。」

 オブジェのほうは、縦横20センチ、高さ十数センチくらいのミニチュアの部屋が目を引きます。壁には銃弾の痕のような穴があき、乱雑に本が並べられた書棚が据えられています。部屋の中央では、大きさのスケールのおかしな飛行機と自走砲が対峙しています。手前にはなぜか、漬物石のようなサイズの石が置かれています。
 どこか、タルコフスキーの遺作映画「サクリファイス」や、ドイツの美術家アンゼルム・キーファーを思わせます。戦争を表した象徴性の高い一作だと思いました。

 平松さんは平面のオブジェ3点などを出品。「アフガンの冬の花火」などと題がつけられています。小石の使い方など、いつもより引き締まった印象を受けます。
 長谷川さんと田村さんは染織。中岡さんは箱型オブジェ。太田さんは楽器兼用の、三日月形の金属の立体。吉住さんはトルソの裸婦をいくつも反覆したレリーフを。それぞれ出品。竹田さんは四季の北海道をテーマに、すっきりとした色の配置と啄木の歌によるポスター4枚組みを制作、デザイナーとしての一面を見せています。

 傳展をラ・ガレリア(南1西3)でさっそく見てきました。詩的な題の油彩8点が飾られていますが、エスカレーターの昇り口と降り口ではゆっくり見るわけにも行きませんね。

 さいきん、端聡さんと岡部昌生さんからあいついで、自作を収めた図録が贈られてきました。ありがとうございます。
 端さんはハンブルクでの展覧会で忙しそう。岡部さんは、道立近代美術館での展覧会に出品しています。

 
 11月7日(水)
 スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)では
北星学園新札幌高等学校 第5回原始林展
中野邦昭日本画展
山田聳宇屏風書展

の三つの展覧会が、全室を使って一緒に行われています。中野さん、山田さんは、北星新札幌の先生なのです。生徒のほか、OBや教職員が出品しています。
 手前の部屋は、日本画と陶芸が中心。中野さんは、あの清楚な女性像もありますが、重点はどうやら函館や札幌の夜景にうつったようです。函館山や三角山から見た景色のようです。ぼけーっと見ていると、観光写真みたいですが、ひとつひとつ丁寧に点された灯火が人の証であると考えると、感慨がわいてきます。
 学生の作品では、3年生の福井美奈子さんの「仮面」の根気強い画面づくりが目を引きました。
 陶芸は、派手な絵付けの壷が多いです。
 奥の部屋は、書の作品が並びます。壁は額装、表装が中心なので、空間の中央部分の山田さんの作品はどうしても屏風が中心になってしまいます。とりあげた作品は、一休と山頭火が中心で、うーん、山田さんのあこがれが分かりますねー。
 大きな作品「飛騰時(?)麗」は、いつになくきまじめな筆致です。
「何枚かあるうちから生徒に選ばしたら、こうなったんです。いやー、生徒達は正直だからねー。『先生もうまい字書けるんでしょやあ』とかね」
 2年生の小池良平さんの「詩人」には正直言ってびっくりしました。高校生とは思えぬ、伸びやかで、迷いの無い線でした。
 11日まで。
 11月6日(火)
 道展の紹介をアップした。まだ工芸部門を書いてない。未定稿です。
 11月5日(月)
 出勤前にギャラリーどらーる(中央区北4西17、ホテルDORAL)に寄り、山川真一展を見ました。
 5月にスカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)で開いた個展の出品作に、120号の「秋色[タキノウエ]」などが加わっています。紅葉の季節の山々を、まばゆい色彩で描いた油彩です。塗りはごく薄く、キャンバスの目が見えるほどです。
 以前も書いたのですが、山川さんの作品は、望遠レンズでのぞいた風景のように、遠近の奥行きに乏しく平面的で、あたかも色彩だけで構成されているかのようです。フォルムはまったく赤やオレンジ、黄色や緑などの色の海の中に沈んでしまったかのよう。線も、ところどころアクセントとして使われているだけといった趣です。
 といって、幹や樹影が完全に色彩に埋没しては抽象画になってしまいます。山川さんは、木々のフォルムを地と明確に区別することをやめながらも、木と木を明度や彩度の面で分かち、抽象画になる一歩手前のところで、風景画にとどめているようです。
 あるいは、故郷の空知管内栗沢町美流渡への望郷の念を表すには、フォルムが茫漠とした表現のほうが適しているのかもしれません。
 札幌在住、道展会員。
 30日まで。

 掲示板に速報しておきましたが、書家で、文化勲章受賞者の金子鴎亭さんが亡くなりました。
 金子さんのいちばんの功績はなんといっても「近代詩文」(人によっては「調和体」とよぶ)という分野を開拓したことです。
 近代詩文は、古典に範をとった漢字やかなと異なり、近現代の詩歌や流行歌、童謡などに材をとり、だれにでも読める文字を書こうという問題意識から、金子さんが創始した書です。いまでは、書の一大分野として認められています。
 1906年、現在の渡島管内松前町生まれ。比田井天来に師事。日展理事など歴任。代表作に、井上靖の詩を書いた「交脚彌勒」など。87年、道立函館美術館で「現代書の父金子鴎亭60年の歩み」展、90年に文化勲章。
 筆者は一度もお会いしたことはありませんが、ご冥福をお祈りします。

 けさの道新に、キリンアートアワードで優秀賞を受けた林田嶺一さんが出ていました。東京は、テロ報道のしわ寄せを受けながらも、やることはやっているようですね。

 
 11月4日(日)
 いつもの年よりちょっと遅い初雪。
 遅い分、けっこう降りました。
 11月は、積もったり解けたり、足元が汚いのが困った季節です。

 高校時代の友人の結婚式に出ました。この年になって結婚式があるのは、けっこううれしかったりします。

 澄川喜一彫刻展の紹介の文章をアップしました。

 きょう、イスタンブールビエンナーレのプロデューサー長谷川祐子さんが札幌に来ていたようです。レクチャーをやるというのをついさっき知りましたが、もう遅い。
 11月3日(土)
 ひさしぶりにギャラリー巡りができました。
 とはいえ、きょうあすで会期終了のものが多く、あまり情報としては役に立たないのですが。

 まず、あすで終わりの澄川喜一彫刻展。会場は、札幌彫刻美術館(中央区宮の森4の12)です。
 地下鉄東西線を円山公園駅で下り、バスに乗ろうとしたら、彫刻美術館の方へ行くバスって、次の西28丁目駅から出てるんですね。北1西27というバス停まで行けば乗れるとわかり、歩いて行くと、まさにそのバス(山の手環状線)が目の前を通り過ぎようとしています。停留所まで走ったんですが、そこは市営バス、筆者を待つことなく、走り去っていきました。
 待ち時間には、バス停のすぐ近くのCAI(北1西28)で、岩下硯通個展「INNER HORIZON」を見ました。
 岩下さんは東京芸大を卒業。いまは岩見沢と神戸近郊にアトリエがあります。
 作品は、壁掛けインスタレーションとでもいうべき、黒く塗られた抽象の木彫です。横の長さが1、2、4…の比になっている直方体が、規則的に同じ高さで壁に掛かっています。その直方体は、ちょうど真ん中で、横一直線に切れ目が入っています。
 遠くから見るとミニマルアートのような作品ですが、近づくとその切れ目の部分が、それぞれ異なり、ほんの一部でしか上下の直方体がつながっていないものもあれば、切れ目の浅いものもあります。また、表面には、精緻な彫りの模様が入っています。
 ギャラリストのトラスト・ハワードさんが詳しく説明してくれたのですが、先ごろカリフォルニアで開いた個展では、もう少し彫りの粗い木彫レリーフが出品され「日本的」と評判だったとのこと。
 ギャラリーの外にも、黒い、細かい線模様が彫られた直方体の作品が置かれていました。
 ほかにも、表面にわずかに赤が塗られたレリーフなどが出品されています。岩下さんの抽象世界は、ことによるとたいへんに東洋的な何かをたたえているといえるかもしれません。
 17日まで。

 さて、澄川喜一彫刻展は、別項に譲るとして、帰りは宮の森フランセス教会の前から円山公園駅までタクシーに乗り、東西線で中心部まで出ました。
 時計台ギャラリー(北1西3)では、「大島龍版画展 Prallel Blue・ピレーネからの声に」を見ました。青と紺の版をいくつも重ねて深い色合いを出したモノタイプの版画作品が並びます。
 一見抽象のようですが、大島さんは旅先でデッサンを重ね、それが作品にも生かされています。たしかに、よく見ると、山容や、きらきら光る水面に見えてきます。
 大島さんは石狩在住。

 A室では、芹田英治・綾子展
 芹田さんは長らくニューヨークにアトリエを構えていましたが、たしか97年に帰国し、現在は苫小牧に住んで絵をかいています。
 芹田さんの絵は、イメージとしての摩天楼を、要塞のように描くものです。
 今回は「放射されるエネルギーと建造都市」と題して、真っ赤に燃える摩天楼を描いています。直接は言及されていないとはいえ、9月11日のテロを思わないわけにはいきません。
 綾子さんは「さくら四景」と題した、陶芸の三島のような絵画。同じ花びらの模様がびっしりと画面の過半を埋め尽くす一方で、微妙で渋い色が塗られている地の部分と対比をなしています。米国で、日本人が絵をかくとはどういうことかを考えていた人の絵であることがわかる作品だと思います。

 C室のグループ未知展は、千村由起子さんの染織「無量寿」の、夕映えを思わせる鮮やかで哀切な色のうつろいが、強く印象に残りました。

 いずれもきょう3日まで。

 つづいて、4日までの展覧会。
 さいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)では、峯孝彫刻展が開かれています。
 峯さんは1913年生まれの大ベテラン。札幌市民には、大通公園3丁目の「牧童」や、真駒内中央公園の「エドウィン・ダン」などがおなじみかもしれません。
 のびやかで、すがすがしい人体彫刻が並びます。
 67年の「小さな獲物」という作品は、イタリア・ラヴェンナの海岸で見た、貝か何かを拾う少年の姿をヒントに、女性像として制作したもの。かがむ人物が、絶妙のバランスでつくられています。ちょっとでも重心が狂えばすぐに作品が破綻しかねない、難しい格好を、見事にまとめています。
 首も存在感があります。「O夫人」は44年の作品。近作の「街の老コック」は、長いコック帽をかぶった人物ですが、うしろに重心が行き過ぎることなく、しっかりしたバランスの中で、柔和な老人の人となりを伝えている佳品です。
 自由美術に出していた「のんきな日々」もありました。

 スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)では佐藤信明水彩画展
 あいかわらず、透明感のある風景画や裸婦像を並べています。岩内出身のためか、海岸の風景が多いようです。
 今回初めて、40号という大きさの「海沿いの集落」を出しています。遠くの崖、だれもいない小さな集落、寂しげに連なる電信柱、海といったモティーフが、淡い光の中でとらえられています。
 「トタンが赤で、海が真っ青−というような絵はやめようと。それとは違う光の感じを出したかった」
と話す佐藤さんは、石狩在住。

 こんどは6日までの展覧会。
岡倉佐由美 大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)に行ったら、岡倉佐由美・福士千香子展のティーパーティーの真っ最中。
 岡倉さんは97年に器のギャラリー中森で開いた「コンタミネーション」以来、久しぶりのような気がします。不思議さいっぱいのオブジェが並びます。青い石のかけら、金色に塗られた三日月、骸骨の模型、天使の羽、アンモナイト、中世の絵のような太陽…こういったものたちがコラージュされ、独特の幻想世界をつくりだしています。
 右の写真は「月の遺伝子」と題された連作の一部。
 澁澤龍彦とか稲垣足穂の好きな人はぜったいおすすめです。
 福士さんは、ふたつの正方形のパネルを合わせて1点にした絵画が中心。「honey」「undreground」など、勢いのあるタッチです。

 上のフロアでは第47回創究展が開催中。
 堀昭さん「北大風景」など、いつもながら、乾いた筆で鮮やかな色を散らす風景画が達者であります。

 アートスペース201(南2西1、山口中央ビル6階)では、第39回歩々画展
 山が好きな人が絵もかいている、という集まり。写真、切り絵なんかもあります。道内自然保護界の大御所、八木健三さんは、日高山系のスケッチを出品、日高横断道路の工事中止を訴えています。
 六花亭の包装紙でおなじみの坂本直行さんのスケッチもあります。というと、新作展、というわけでもなさそうだなあ。

 同じ会場の、5階では、創遊会展火曜会展という、ふたつのグループ展が開かれています。
 火曜会展では、この6月に亡くなった画家の菊地さんをしのんで、2点が展示されていました。佐藤孝夫さんの、ちょっとシュールレアリスムっぽい油彩がおもしろい。
 創遊会は、絵画のほか写真や彫塑などもあり。佐藤信明さんも出品しています。

 風邪をひきました。子供がひいて、いまや家中みんながぐしゅぐしゅやっています。
 ねむたいので、きょうはここまで。

 「東京ばたばた日記」4ページの横浜トリエンナーレの項目で、作家の一部に、作家紹介ページへのリンクを張りました。これは、ハマトリのHPのなかにあるものです。

 
 11月1日(木)
 生活面4ページ、文化、芸能、金曜羅針盤2ページ、ほん2ページ、計10ページ、刷り56枚を読んだ。疲れたあ。

10月にもどる   このページのトップに戻る