札幌市北区北13西4

つれづれ日録の題字





2001年8月



 8月31日(金)
 外出朝7:50、帰宅24:00。
 さすがに長い一日。
 きょうで8月も終わり。ついに札幌に真夏はこなかった。
 この「つれづれ日録」の行数も、月別で過去最多になりました。
 これからは仕事が忙しくなるので、これまでのような更新は難しくなるかもしれません。

 新聞各紙によると、今年の中原悌二郎賞には広井力さん(東京)「海の風」、優秀賞には西野康造さん(京都府亀岡市)「空の記憶」が選ばれました。

 自由美術北海道グループ展を「展覧会の紹介」に追加しました。

 8月30日(木)
 ギャラリー周りはなし。あしたもむりっぽいな。
 Yさんから、アリアンスフランセーズギャラリー(南2西6)の吉田怜銅版画展が面白い、とのメールがあったけど、行けるかどうか…。
 「ブルータス」最新号で、村上隆と奈良美智の特集をやっていたので、とりあえず買いました。
 
 写真展「PASSAGEU」と、大地康雄の油絵展を、「展覧会の紹介」に追加しました。

 8月29日(水)
 第27回女流書作家集団展が、スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)の全室を使って行われているので見てきました。
 あれー、昨年までよりも出品者数が増えているような気がするぞ。気のせいかな。でも、巨大な作品は、確かにすくないように感じられます。
 社中、流派を超えて84人が出品しています。
 総じてみると、漢字の創作が多いなーと思う。墨象もちらほら。かなや近代詩文は意外と少なくて、篆刻はゼロでした。
 好きな作品を挙げてみると、安藤小芳さん(札幌)は漢字一字「娯」。まんなかでぎゅっと押しつぶされたような造形がユニーク。凝集力がみなぎっています。
 三上禮子さん(千歳)は、独特のかすれを生かした作品に挑んでいます。
 糸藤紅陽さん(札幌)の「欝々と翳昇りゆく瀧の木」は、屏風に書かれており、個性的な硬さを宿しています。
 一方、許子桂香さん(同)の「施」はやわらかみがあります。
 9月2日まで。

 
 8月28日(火)
 大地康雄の油絵展を、ギャラリーノルテ(中央区北1西6、安田生命北海道ビル3階)で、自由美術北海道グループ2001を、札幌時計台ギャラリー(北1西3)で見ました。
 大地(おおち)さんは、毎年精力的に個展を開いています。個性的な作品です。
 自由美術は、独特の抽象が多いのですが、具象には現実を告発した作品も見られます。
 すいません、どちらも必ず近日中にアップします(わー、宿題が山積みだあ)。

 パレスチナ・PFLP議長の暗殺を受けて、ユダヤ人入植者が殺され、泥沼の報復合戦が始まろうとしています。
 この件については筆者は「中東に平和を」などと生ぬるいことは言いません。なすべきことははっきりしています。イスラエルはただちにヨルダン川西岸とガザ地区における入植を中止し、農地を放棄せよ!
 やっぱりさー
「1900年前までオレの土地だったし、聖書にもそう書いてあるから、立ち退け」
というのは、あんまりだと思うよ。
 
 8月27日(月)
 高橋俊司展「水辺’01/8」を、テンポラリースペース(中央区北4西28)に見に行きました。
 高橋さんのインスタレーションを初めて見たのは、1996年夏に芸術の森美術館で開かれたグループ展「北の創造者たち展」が最初でした。その時は、青や緑をした、クリアファイルを思わせる樹脂を床や壁に大量にばらまき、カエルの合唱でも聞こえてきそうな濃密な空間を作り上げていました。
 試行錯誤の後、2000年1月(たしか)、アートスペース201(南2西1、山口中央ビル)での個展で初めて、水槽を用いたインスタレーションを行ったと記憶しています。
 今回も、蛍光管で照らされた、熱帯魚を飼えそうな4つの水槽を床に置いてあります。
 そのうち一つだけに、10匹の熱帯魚が入っています。
 パイロットフィッシュと呼ばれるもので(種類の名じゃなくて、役割に付いている名称だと思う)、太陽光に1週間照らすと、腸管の中のバクテリアが水に入って、環境サイクルを作り出すということです。
 つまり、水槽がひとつの「宇宙船地球号・超ミニ版」という感じになっているわけです。
 ただし、電気による濾過がなされていないと持続できない環境サイクルなのですが。
 
 帰宅後、高橋さんからメールが届いていたので、ここで一部紹介させていただきます。
 
 〈大きな水槽を使って初めて気づいたのですが、生物の入らない水槽とは違い、時間とともに明らかに水の色や、濁りに変化が生じていました。水が生き始めたのでしょうか。不思議です。
 魚(アカヒレ)も3回目の個展登場です。いままでの個展のこと憶えているのかな?〉

 さて、水というのは、あらためて言うまでもないくらい、基本的な物質です。少なくても日本では、自然界のたいがいのところにはあります。 それが、すごく人工的な環境の中にあるという、一種のアンバランスさが、高橋さんのインスタレーションの面白さだと思います。
 そして、魚たちの生命は、プラグ1本でかろうじてつながれているけれど、宇宙船地球号にすむ人間たちは魚と違って、自らの意思で、協力し合って環境を改変できるのだから、ひとりひとりが努力しなくてはいけない−と感じました(凡庸な感想ですいません)。

 時計台ギャラリー(北1西3)では、C室の中間弥生個展を見たところで時間切れ。
 中間さんの絵は、輪郭線が何本も何本も描かれたたいへんにぎやかな絵ですので、一目見たら作者がすぐわかります。
 どうしてこんなに隙間を詰めて画面をかくのか、と聞いたら
「だって物の向こうにも物があるでしょう」
との答えが返ってきました。
 問題意識はキュビストたちとつながっているような気がします。
 キュビスムの絵の説明として、山梨俊夫さんの「現代絵画入門」(中公新書)にたいへん面白い形容が載っていました。子供が自動車を横から見たとき、タイヤを4つかくことがあるが、自動車にはタイヤが4つついているのだから、そういうかきかたの方が真実をついているのではないか−という意味の記述でした。
 視点が1つだけ、しかも動かない−というのは、実は非常に近代西洋に特有のものなのですね。それに疑義を呈したのがキュビスムだったわけです。
 ものの見方は、いろいろあるのではないでしょうか(春陽会の折登朱実さんも共通する問題意識をもってるのでは?)

 とりとめのない話になってしまってすいません。
 
 8月26日(日)
 めずらしく自動車で市内を回りましたが、北海道マラソンのため中心部は道路規制だらけ。えらいめにあいました。
 きょうの最大のニュースはやはり、中国を代表する現代美術作家、蔡国強さんのスライド付き講演を聴けたことでしょう。このような機会を与えてくれたフリースペースPRAHAなどの関係者の方々に感謝したいと思います。詳報はのちほど。

 それでは、きょう26日限りの展覧会について。
 第8回杢泥会展(札幌市資料館=中央区大通西13)。
 人形6人、陶芸1人、木工1人によるグループ展。たしか以前はもう少し木工のメンバーがいたはずですが…。
 それでも、浅井富士子さん「街かどで」のモダンさ、穴沢美加子さん「サンタの足音」のほほえましさ、岡部節子さん「花吹雪」の典雅さ、佐藤敦子さん「祈り」の真摯さ、堀江登美子さん「青滴」のデフォルメ、屋中厚子さん「砂浜」の明朗さ−と、6人の人形作家には、それぞれ個性がにじんでいます。

 コンチネンタルギャラリー(南1西11、コンチネンタルビル地下1階)では、韓国・済州島の作家2人の個展が開かれています。
 許敏子Hun Min ja個展朴聖珍Park Sung jin個展です。
 朴さんはドローイングで、「Portrait of modern」と題した作品5点、「untitled」が7点です。「Portrait of modern」のうち最大のものは、横447センチ、縦211センチもありました。
 いずれも、激しい線がモノクロームで描かれています。どうみても単なる強い線の集積なのに、人間の群れに見えるのが不思議です。これだけ激しいタッチの人間は、今の日本ではなかなか描かれないような気がします。
 許さんは石のオブジェで、「喜び」「愛と和解」など、これ以上デフォルメできそうもないほど単純化された人間像が、人の原形質のようなものを表現しています。
 1992年に北海道と韓国・済州島で行われた「島から島へ」展以降続いている交流から生まれた企画。北海道側から矢崎勝美、丸藤信也、大滝憲二、佐々木徹、荒井善則、藤井忠行の各氏が賛助出品しています。この50代作家たちが地道に韓国との交流を続けていることは、評価に値すると思います。

 PASSAGE ‐経過する風景U‐ 北海道在住の8名の写真家によるランドスケープ(札幌市写真ライブラリー=北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)。
 三上典久、及川修、畠平論、榎本典益、泉水正也、浅野久男、GinK、ヤマグチタクヤの8人による写真展。
 浅野さん以外はあまり聞き慣れない名前でしたが、1970年代生まれの若い世代が中心のようです。
 いちばん好きになったのは及川さんのモノクロ写真でした。
 詳しくは後日。

 札幌市民ギャラリー(南2東6)では、25周年記念北海道七宝作家協会展
 筆者は、七宝ってけっこう好きです。色がきらきらしてるから。
 今年は、田中稔子さんら広島の作家を招待していました。
 気になった作品を挙げておきます。いつもながらの樹下和子さん「マグマ」。真っ赤に燃えるマグマと、おびただしいワッシャ-の取り合わせがユニーク。
 宇宙的なイメージを展開したのが、協会賞を受けた穴田光子さん「永遠に」、横山利子さん「2001年宇宙へ」。
 山口七子さん「古都」は、デフォルメされた風景画で、微妙な色合いが決めてです。
 一方井清子さん「朝の音」は、新雪をかぶった木々をすなおな描写でとらえています。
 能登誠之助さん「結縄」は、陶板オブジェふうの作品です。
 土谷佳代子さん「燦T」は、この会では珍しい、瀟洒な香合です。
 あえて難を言えば、紙に記された英語の題のつづりがことごとく間違っています。移動展を美唄、士別、東神楽で開く前になおしてあげてください。
 この協会は、道展会員の田邉隆吉さんが会長。参加していない有力作家も、もちろんいます。

 市民ギャラリーでは第20回記念書究院展も開かれていました。
 道内書道界でも実力ある山田太虚さんが院長を務める団体ですが、ごめんなさい、正直言って、二尺・八尺の紙に漢字が3、4行にわたって書いてある作品はどうしても鑑賞する気がうせてしまいます。
 こういうときは、審査員の作品を鑑賞するのがよろしい。院長の山田さんの漢字は、破調に傾く闊達さを有しながらもきちんと決めている、筆者のような素人にも「うまい」と思わせる文字です。
 ほかには橋本宇外さんのさりげなさにひかれました。
 特別展示として、唐の高名な書家・顔真卿の拓本がいくつも並んでいました。

 ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)というと、アマチュアの個展、というイメージが強いのですが、今週は深川の全道展会員渡辺貞之さんが個展を開いていました。
 中心を占めていたのは、さいきん取り組んでいる「黒い羽根の天使」シリーズ。
 頭に小さな角のある天使たちはみな白い半そでシャツを着て、モノクロームで描かれています。画面中央のテーブルが緑などに塗られているほかは、赤いリンゴなどが散見されるくらいで、画面の基調がモノクロームなのです。
 これまでは、金箔を張るなどして、色彩と、さまざまなモチーフに富んだ画面をつくってきただけに、新しい試みとして注目されます。

 スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)では、第23回蒼晨会日本画展
 白崎博さんの指導する会のようです。
 前田知都利さん「現」「径」は、けっして技術的に高いとはいえませんが、ものが存在することとはどういうことか哲学的に考えさせられるふしぎな作品でした。
 石川絢子「フォノ・ロマーノ」は、イタリアに材をとりながらも、風景全体が霧に包まれているような感じです。

 「スケジュール」欄の、旭川美術館「戦後木彫の動向」の会期末があやまっていたので訂正しました。正しくは12月9日です。すいませんでした。
 きょうは分量が多くなりすぎたのでこのへんで。
 8月25日(土)
 石川亨信・山岸誠二 うつすオトコ二人展を、さいとうギャラリー(南1西3、ラ・ガレリア5階)で見てきました。
 石川さんのほうは、いつもの抽象的な銅版画。
 山岸さんも、いつもの印画紙に直接現像液を吹きかける平面作品ですが、新作が4点ありました(それにしても、山岸さん、筆者が見にいけなかったギャラリーたぴおのグループ展も含めると今月4回目の展覧です。すごい)。
 その宇宙的な広がりには、磨きがかかってきたようです。
 以前、櫻井マチ子さんとの二人展のとき、「星空の写真を黒白反転」うんぬんと書きましたが、実際にそういう写真ってあるんですよ。月刊「天文ガイド」などに、彗星の写真のコーナーがありますが、発見間もない彗星はごく暗く、黒い地では見づらいので、反転させてプリントするのが通例になっています。

 アーティスト・イン・レジデンス実行委の柴田尚さんからのメールの話をします。
 たとえばドイツなんかでは、トルコ人差別の実態を訴えたアートなどがある。日本のマスコミは、差別問題などを避けて通るのでかえって実態が見えにくくなっているのではないか…。
 だいたいそんな主旨でした。
 続いていただいたメールによると、作者のジャンニさんは、先日行われたギャラリートークで、今回筆者からのような反響があったことをきちんと参加者に報告したとのことです。
 こういう摩擦からほんとうの交流が始まるのではないか−とも、柴田さんは書いていました。
 なるほど、柴田さんのおっしゃるとおりで、筆者も新聞社に勤めて14年目、すっかりマスコミ的な思考に胸まで漬かってしまっているようで、反省しなくてはならないようです。
 どうも、議論や問題を避けて通る傾向があるのですね。
 それは、マスコミのみならず、日本社会全体に通じる風潮のようにも思えます。

 さて、現在横浜美術館で「奈良美智展」が開かれていますが、来年夏、道立旭川美術館でも開催予定だそうです。
 正直言って、筆者にはどこがいいのかサッパリ分かりませんが。

 今週は札幌を空けていたので、あしたガンバッテ、ギャラリーを回ることにします。

 
 8月24日(金)
 ごぶさたしております。
 この4日間何をしていたかというと、北見にある妻の実家にお世話になり、休んでいました。
 休んでいた、というのは、けっして比喩でなく、22日なぞはほとんど1日中寝てました。
 北見では、北網圏北見文化センター(公園町1)で「日本の美とこころ 東京富士美術館所蔵 桃山から近代・絢爛たる500年の粋」を見ました。たぶん、これ、6、7月に道立函館美術館でやってた展覧会の巡回だと思います。
 ただ、図録も売り切れてたし、作品リストすら無かったので、何も確かなことはいえないんですが…
 詳しくは「展覧会の紹介」に。

 24日、帰途、旭川に寄りました。
 ギャラリーシーズ(旭町2の3)ではサムワンズ・サムホール展
 その名の通り、小品展です。
 斉藤順子さんの「J氏の夢」を見て、2歳半の長男が「猫、猫」と大喜びしていました。
 遠山隆義さんと盛本学史さんの絵は、どこか共通点があるなー。やっぱり師弟だからかなー。
 あべくによしさん「彫刻になった日」。小品になっても、透明な風を感じさせるさわやかさ。板津邦夫さんのレリーフ「私の小宇宙」も、この作家らしいとぼけた味わいがあります。
 27日まで。

 道立旭川美術館(常磐公園内)ではティンガティンガ展
 いやー、これは楽しい。マンガみたいだけど、コムズカシイことを考えずにポップな動物の絵を楽しめばいい。長男も「シマウマだ」「ゾウさんだ」と、騒いでいました(会場にいたみなさん、ごめんなさい)。
 ティンガティンガとは、東アフリカのタンザニアの首都ダルエスサラームで1960年代末に興った絵画の一派です。わずか3年ほどの活躍で早世した創始者ティンガティンガの名にちなんで、そう呼ばれているということです。
 正方形の板に自転車用ペンキで描いた絵は即興性に満ち、装飾的で、陰影を欠いた画風は、西洋よりも日本の絵画(あるいはマンガ)に近いものがあります。
 展覧会では、この派の中興の祖ともいうべきジャファリーら19人の90点を展示しています。
 フラミンゴや孔雀が舞い、犀やキリンが派手な色彩で描かれた作品群は、アフリカに対して私たちが抱くステレオタイプなイメージにむしろ近いものがあります。近年は、歴史に材を得た「ザンジバルの奴隷貿易」、天国観を表した組作品「パラジソ(パラダイス)」など、題材の幅が広がってきているようです。
 会場の説明パネルはたいへん親切で分かりやすいものでした。ただ、日本での紹介ということでいえば、1992年の水戸芸術館以前にも、85年に、ムパタの個展が東京の有楽町西武で開かれ、画集も発行(角川書店)されていますのでお忘れなく。

 同館では、銅版画の詩人 駒井哲郎展も開かれています。
 戦後を代表する銅版画家を、85点によって紹介した、これまた充実した内容でした。
 こちらも「展覧会の紹介」をお読みください。
 いずれも26日まで。

 中央バスターミナル(1の7)2階のギャラリーでは、斉藤順子・木滑美恵・長岐和彦・吉中博道・盛本学史5人展。
 あれ、盛本さん(富良野)はいつ加わったんだろう。残る4人は、いずれも1960年前後の生まれ。長岐さんが上川管内美深町のほかは、旭川の在住。たしか1993年ごろから毎年グループ展を開いて切磋琢磨している画家仲間です。
 聖書に題材を得てダイナミックな群像画をえがく木滑さん(道展会員)は「Mind control」と題した2作。うち1作は、男女が輪になって、正面を向いて座っている図。筆者には、稽古を終えた役者たちが舞台に腰を下ろしているひとときのようにも見え、今回の展覧会で一番気になりました。
 ニューヨークでの個展を終えた長岐さん(同)は「h・a・n・a-composition」と題した5作で、ただひとりの抽象画。マチエールの表情豊かな白を基調とした画風にみがきがかかっています。
 斉藤さん(道展会友)は「画室の語りべたち」という、3人前後の子どもたちと風景をモチーフにした作品を描き続けています。陰影に乏しいため素朴な画風に感じられるのと同時に、子どもたちの遊び道具などの細かい描写がなぞめいた物語性を宿しているようです。吉中さんも「壁」のシリーズに取り組み続けて、わざと奥行きの乏しさを強いられる構図に挑んでいます。
 盛本さんは、昨年の三岸好太郎・節子賞の受賞者。個展はこちらを参照してください。今回も、動物のような抽象のような、不思議な絵を発表しています。

 夏休みも終り、あすからは仕事です。

 8月18〜20日(土、日、月)
 更新をさぼって申し訳ありません。筆者は、夏休みに突入しています。

 朝5時過ぎに寝て、19日は朝8時に起床、函館の友人を桑園駅で拾って石狩湾新港へ
 そうです、RISING SUN ROCK FESTIVAL 2001 in EZOです(以下、ロックに興味のない人は、次の矢印をクリックして、とばしてください
 1999年に始まったこの催しは、全国で唯一、夜通しロックを楽しめるフェスティバルです。昨年から、野外ステージと大型テントの2ステージ開催となり、3回目の今年は、初めて3日間の日程となり、17日もテントで9バンドが演奏しました(シーナ&ロケッツなど)。
 筆者は2日目からの参戦です。
 ステージでは、OPENING ACT(前座)に続き、午後1時から翌朝5時過ぎまで、ナンバー・ガール、モッズ、スピッツハイロウズ、UA(ウーア)、イースタン・ユース、ミッシェル・ガン・エレファント、シャーベッツ、鬼束ちひろ、シアター・ブルックなど、13アーティスト(すべて国内)が演奏しました。
 といっても、ぶっ続けで聴いているわけにも行かないので、3つほどパスして、持参のテントで休んでたりしました。
 一番前は立って聴くスペースですが、その後ろには寝転がれるスペースがあり、さらに後ろ半分にはテント用の広大な敷地が広がっています。コンロの持ち込みも可能なので、夜は友人の友人たちとジンギスカンを食べました。何十という屋台も出ており、後ろでビールを飲みながら、あるいは最前列で熱狂しながら、気ままにいろんな楽しみ方ができるのが魅力です。
 エアG’(FM北海道)のブースでは、アナウンサーのTさんや編成のKさんなどに会いました。アナウンサーのCさんは道内アイスクリーム店の地図を配っていました。
 ソニー・グループのSさんと、元BMGファンハウスのSさんが、端っこのテントで、ケータイの充電1回いくらというサービス(というか商売)もしていました。オリコンのNさんにも会った。ウエス(主催者)のKさんも元気そうでした。

 感想その1。
 人出は最高、気温は最低。
 主催者発表で17000人を超え、昨年の倍ちかくになりました。ただ、日没後はかなり寒くなり、長袖シャツだけを持っていった筆者は震えていました。

 その2。
 スピッツは「涙がキラリ」「ロビンソン」など、ベストアルバムのような構成。「夏らしいのを一発」と言って「ランナウェイ」をやったけど。
 まあ、ミッシェルがカッコイイのは言わずもがなで、最後の曲の「世界の終り」では、スタンディングゾーンは熱狂の坩堝と化していました。
 鬼束ちひろはグランドピアノ1台のみというシンプルな編成でわずか4曲でした(うち2曲はパティ・スミスとオジー・オズボーンのカバー)が、聴かせる歌声でした。
 そしてトリのシアター・ブルック。めっちゃ、カッコイイ。そしてうまい。いままで知らなかった。オレってこういう、メロディアスなベースに弱いんだよな。

 その3。
 会場中央附近に、DJプレーなんかのための小さな広場があるんだけど、夜明け方、昨春解散した伝説的ロックトリオ、ブランキー・ジェット・シティーの元ドラマー中村達也らのプレーに、元ボーカルのベンジーこと浅井健一が飛び入りし、あたりは騒然となりました。やっぱ、中村のドラミングはすごい。手が4本くらいあるんじゃないかと思っちゃう。

 その4。
 これはごく個人的な感想だけど、昨年までと違って取材をまったくしなくていいから気楽なぶん、なんだかすごく時間がたつのがはやく感じられました。
 あー、オレの青春も終わったな(って、何回終わってるんだ)。というのは冗談ですが、まあ、オレより年上の客はほとんど皆無だろーからな。はっはっは。

 19日はけっきょく朝8時ごろ帰宅、正午すぎに起きて、この日は職場の送別会。
 勤務時間の関係で午後3時スタート。11時半まで飲んでました。

 さすがに20日は昼過ぎまで寝ていました。

 札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)に行きました。
 
 A室は、北浦晃油絵個展
 北浦さんは室蘭の画家。
 1997年に主体美術協会と全道展を退会したので、それ以降は、小品ぐらいしか作品を見る機会がなく、5年ぶりとなる時計台ギャラリーでの個展は待望の開催です(ただ、室蘭美術協会には今も籍を置いて大作を発表しているそうです)。
 96、7年ごろは、「日勝峠」シリーズと題して、白地に裸木が並ぶ平面構成的な作品をかいていましたが、今回は、色数も増え、かなり写実的に道内の山々をとらえた平明な油彩が並びます。
 でも、平明さの陰には、実は、構図には綿密な計算がはたらいているようです。
 たとえば「雌阿寒岳遠望」「斜里岳」といった作品では、水平な線が何本も走り、画面をしっかり引き締めています。
 「有珠山冠雪」は、うっすらと雪をかぶった山頂の描写が、ほんとうに美しいのですが、相似の木々が画面のあちこちに配されて隠れたリズムを生んでいることも見逃せません。「日勝峠」シリーズでの探求が生かされているようです。
 小品では「カムイヌプリ(摩周湖)」の、幻想的ともいえる月夜の摩周湖の美しさに惹かれました。
 会場では、いろんな話をお聞きしました。美唄中教諭になったばかりの当時(1958年)、2年生に、今は国際的な彫刻家になった安田侃がおり、のちに彼が岩教大に入って教育実習でやって来て、毎晩のように焼き鳥屋で美術論をかわしたこと。育った美術の炭鉱地区は文化活動もさかんで、田中忠雄、山中春夫、大月源二、中居定雄ら大勢の画家が来たこと。絵を始めた当時はアンフォルメル旋風の最中で、どこで絵筆をおいてよいかわからず、とりあえず木版画からスタートしたこと、などです。
 出品作を書いておきます。
 「斜里岳」「有珠山冠雪」「美瑛岳11月」(以上F120号)
 「室蘭岳」(F100号)
 「美唄浅春」(P50号)
 「十勝岳」(P30号)
 「ニセコアンヌプリ」「雌阿寒岳遠望」「雄阿寒岳遠望」(F30号)
 「美瑛岳」「羊蹄山」(P20号)
 「美瑛富士」(F20号)
 「地球岬(駒ヶ岳遠望)」(F15号)
 「カムイヌプリ(摩周湖)」「羊蹄山」(F6号)
 「雌阿寒岳」「利尻岳」(F4号)
 「ニセコアンヌプリ夏」「斜里岳」「雄阿寒岳遠望」(F3号)
 「大雪山旭岳」「美瑛岳」(F0号)

 D室は水谷のぼる彫刻展
 ブロンズ、FRPの比較的小さな作品が14点。
 「辺境の人」と題された一連の裸婦は、手足がねじのようになっています。
 筆者が一番すきなのは「森の人」と題された2つの作品で、帽子をかぶった寡黙そうな男のたたずまいが良いと思いました。

 いずれも25日まで。

 柴田尚さんからメールの続報がありました。
 とっても良い内容なので、近く紹介したいと思います(きょうは分量が多くなりすぎたので)。

 訃報です。
 ピエロの扮装でデッサン会などに出没、「CHON-ZA」なるミニコミ誌を精力的に出し続けていた清水一郎さんが上旬に亡くなっていたことを、熊谷重俊さんからお聞きしました。
 戦前のプロレタリア演劇運動などの生き証人的存在でもありました。
 近く「しのぶ会」を開く予定もあるそうです。ご冥福をお祈りいたします。

 次の更新は24日(金)の予定です。

 8月17日(金)
 LABORATORYと題された展覧会を見ました。
 現代美術スクールを兼ねているCAI(中央区北1西28)で、夜間の中級講座に学ぶ4人の展覧会です。うーん、さすが中級。初級よりはおもしろいです。
 中谷(なかや)聡子さん「Experiment…」というインスタレーションが気になりました。
 2方の壁に、およそ40枚のメモ帖とおぼしき紙片が貼ってあり、1枚ずつ、何かの物質が零れたようなあとがあります。
 その手前に、その物質を培養しているかのようなシャーレが二つ、置いてあります。
 本人がいなかったので何なのか分からないのですが、培養、という言葉がぴったりです。
 といっても、メモ帳のしみは、日々成長しているわけでもないんだよなー。謎めいています。
 篠原泰子さん「スライド Transperency」は、8つの正方形の布や紙を、光源の手前につるしたインスタレーション。それぞれ材質が違うので、光の透過ぐあいも異なります。その素材感と透過の違いは、あるいはコミュニケーションというものの比ゆになっているのかもしれません。
 原睦美さん「memory」は、ギャラリーの床に、縦横に目盛りをつけたものですが、これって、もしかしてだじゃれ?
 福嶋宏さんは、壁に2枚のドアを張っていました。
 24日まで。月曜休み。

 S−AIRの展示(15日参照)に関して、事務局の柴田尚さんから丁寧なメールがありましたので、ここで紹介したいと思います。

 ジャンニのサイコロの作品についてですが、少し説明を加えたいと思います。
これは、1971年にイギリスで出版されたルーク・ラインハートによる小説「ダイスマン」が下敷きになっております。ある精神科医が、サイコロによって徐々に過激なことを決めていくというストーリーで、ヨーロッパではポピュラーな小説のようです。もちろん、本人は「水曜どうでしょう」は知りません。

 とのことでした。
 二番煎じというのは、ちょっとキツイ書き方だったかもしれませんね。
 柴田さんのメールはたいへん丁重なもので、筆者は、自分のいつもの書き方に対していささか反省しました。

 ただし、このHPの読者には、若い人もいると思うので、ちょっと補足しておきたいと思います。
 パチンコ屋の経営者に韓国籍の人が多いのは事実です。
 もちろん、北朝鮮籍の人も、日本籍の人もいます。
 ただ、韓国籍の人が、必ずしも、パチンコ経営(あるいは焼肉屋経営)を好きでやっているのではありません(好きでやっている人もいるでしょうが)。
 韓国籍(北朝鮮籍も)に対する、陰険な就職差別の実態があるのです。そこで、同胞の多い自営業に流れる、という現実があるようです。
 韓国や北朝鮮の人は、公務員になりづらいのはもちろん、民間企業でもなかなか採用してくれないのです。(あと、差別があまりないのは芸能界で、安田成美、にしきのあきらといった韓国籍の人がいます)
 「日本の企業に就職したけりゃ日本の国籍をとればいいだろう」
という人もいるでしょう。日本に韓国籍の人が大勢いるのは、歴史的な経緯がある(明治末の韓国併合による)ので、いちがいにそうともいえないと思います。
 百歩譲って、国籍変更を勧めたとしますが、そこは日本の入国管理局です、そう簡単には日本の国籍を取らせてくれないのです。たとえば前科−といっても駐車違反とかですよ!―があると、日本国籍は取れません。

 ジョン・レノンじゃないけど、国籍とかどーでもいい世の中にはやくなればいいなー、と、ちょっと無責任なことを思いました。

 さあ、あしたはRISING SUN ROCK FESTIVAL 2001 in EZOだ! 徹夜でさわぐゾー

 8月16日(木)
 昨夜、家に帰る途中
「月と木星がずいぶん接近しているなー」
なんて思ってたら、実はすぐ後に木星食があったんですね。
 知らなかった。知っていたらもうちょっと見てたのに。残念!

 さて、this is gallery(中央区南3東1)で阿部ナナ展を見てきました。
 予想していたよりもずいぶん小さなサイズのインスタレーションで、床の上の、直径30センチくらいの円い形に、バラなどの花びらと、白く塗られた100体近い兵士のフィギュアが収まっていました。
 兵士たちは、騎馬姿だったり、丸くなって何かを話し合ったり、さまざまな格好をしていました。
 なんだか、美術よりも、田宮模型とかガレージキットとかそういうファンに受けそうですね。その文脈で見れば、たしかに労作です。
 ただ、どういう意図があるのか知りませんが、この終戦記念日を挟む時期に、兵士たちを美しく見せようとする展観には、まったく共感を覚えることはできないということを、ここで申し上げておきたいと思います。

 一原有徳さんの話題が今年は多いですが、こんどは北海道功労賞の受賞が決まりました。
 知事からもらう賞では最もエライ賞だそうです。おめでとうございます。

 8月15日(水)
 終戦記念日。

 札幌市資料館(中央区大通西13)からいきましょう。
 山岸誠二・上條千裕 忘却の空です。
 山岸さんはこのHPにも、もう何度登場してるんだ、ってくらい活発に発表を続けている人です(そして、札幌市内のギャラリー出没回数でも筆者をはるかに上回っています)。
 今回は、大きな作品が山岸さん、小さな作品が上條さん、という分担(?)になりました。
 山岸さんは、大きな紙(写真撮影で背景に使うものです)にアクリル絵の具の飛沫を散らした作品。大きすぎて、ロールを一部まいたままになっているものもあります。
 印画紙を使っているわけではありませんが、宇宙的な広がりという点では共通するものが感じられます。
 上條さんは、美濃紙などを支持体に、蜜蝋などを顔料に用いて、紫などの色が浮かび上がる繊細な表面の抽象平面を制作する人。今回は、それらの顔料のほか、柿渋といった染料を初めて使い、いつもよりもシブイ感じの作品に仕上がりました。
 どちらも抽象とはいえ、異なる作風の二人ですが、二人展としてはちょうどいいバランスになったのではないでしょうか。おたがい干渉しすぎず、新たな世界をつくっています。
 「忘却の空」とは、鬼束ちひろの歌に出てくる言葉だそうです。
 筆者は、この新人女性シンガーの名前を聞くとある種の感慨にとらわれるのですが、その話はいずれ書きます。
 19日まで。
 資料館は、朝9時からあいています。

 ほかの部屋では、北海道の自然風景を撮る写遊塾写真展なるグループ展が開かれています。
 題名の通り、ネイチャーフォトです。
 小路正幸さんは、早朝の摩周湖をとらえた「朝霧に沸く」など、朝靄系が得意のようです。
 上田湧三さんは、近接撮影で植物の朝露などをおさめています。
 菅原みどりさんは、たしかナキウサギを撮っていたはずですが、今回はツクシなどが被写体です。
 26日まで。20日休み。

 札幌市デジタル創造プラザ インタークロス・クリエイティブ・センター(豊平区豊平1の12)という、やたら長い名前の会場で開かれているS-AIR Showにも行ってきました。
 2カ月間滞在してもらってその間に作品をつくってもらうアーティスト・イン・レジデンスのプロジェクトに参加した3人が発表しています。
 一番作品としてまとまっていたのは、セバスチャン・ザリウスさんでしょうね。
 同じ大きさの平面数十枚が並んでいます。身の回りのもの(ポリ袋など)の表面をとらえて着色したものだと思われます。微細なものへの真摯な視線が感じられます。
 ジャンニ・プレッシャさんが、サイコロに人生を任せてどうのこうのというコンセプトで平面を並べていましたが、このアイデアじたい、HTBテレビの人気番組「水曜どうでしょう」の二番煎じに過ぎない上、作品の中に「韓国籍を取ってパチンコ屋を開く」などという一文がありました。こういうテキストを書く人物の神経が疑われます。

 401号室のS-AIR実行委ものぞいてみましたが、がらんとしていました。

 25日まで。土、日は、駐車場の入り口から401号室を呼び出してほしいとのことです。
 東西線東札幌駅からも行けますが、国道36号線を通る中央バスに乗って「豊平3条12丁目」で下車するのも便利です。西2丁目通りのバス停(東急デパートの前、市民会館の横、DEPOツクモの前)から乗るとほとんどのバスが止まりますが、すべてではないんです(平岸駅経由の路線は不可)。

 今週は、コンチネンタルギャラリーとアートスペース201はお盆休みです。

 
 8月14日(火)
 伊藤零児遺作展
 札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)の2階全室(A、B、C)を使い、1950年代から97年の絶筆まで計57点を展示しています。
 筆者は生前の画家は知りませんが、1997年、自由美術協会の北海道展の搬入を終え、居酒屋で打ち上げをしている最中に倒れ、そのまま息を引き取ったという話は聞いています。不謹慎かもしれませんが、なんだか画家らしい最期だな、と思いました。
 伊藤さんは1925年札幌・苗穂生まれ。市役所に勤め、あひる会(市職員の絵画サークル)の指導にも携わっていたということです。
 さて、その作品ですが、見ていくうちに「百鬼夜行」という言葉が頭に浮かんできます。
 どの絵も人物が数人あるいは大勢登場しますが、どれもオバケのように、グロテスクに描かれています。ホラー映画のような、「いかにも幽霊!」という意匠は少ないのですが、見るからに薄気味悪いのです。
 それでも、先の自由美術・北海道展に出した遺作「魔笛」などは、骸骨がサーカスで玉乗りや空中ブランコをしています。
 「どうしたの」という絵がありました。どす黒い色をした人々がみんなで空を見上げています。中央でうずくまって正面を向いている少年だけがやや白っぽい色をしています。空に浮かんだ太陽のようなものは、これまた亡霊の顔のように見えます。
 また、「親馬鹿」といったタイトルのついた、親子や親しい人を描いたとおぼしき絵もかなりあるのですが、やはりそうした人々も薄気味悪く描かれているのです。
 伊藤さんの目には、あらゆる人間が(一見親しく見える人間関係すらも)虚飾に満ちたものに見えていたのではないか、と思われてなりません。
 人物の背景も、とにかくパレットの上にある絵の具を全部混ぜたような、なんとも濁った世界がどこまでも広がっており、これといった風景や室内が描かれていない場合が大半です。
 「絶筆」とされた作品は、3人のうち左の人物が、まるでタコのように何本も腕を持つ人間として描かれていました。「死の旅路」という、老夫婦を題材にした絵もありました。どの作品の背後にも、人間への絶望が漂います。それでも伊藤さんは、裸の、薄汚い、虚飾を剥ぎ取った人間を描き続けたのでした。

 D室は、安藤和也個展
 1995年に新道展を退会、個展もそのあたりから久しぶりのようで、筆者は(おそらく)初めて見る画家です。
 まるでエアブラシを使ったかのような非常にリアルな人物画(ちょっと1970年代のパルコの広告を思わせる)は、道内では異色の画風といえるでしょう。
 出品作はすべて「scene」と題されています。「scene〜蒼氓T〜」という絵は、顔より下を見せている裸婦が二人室内におり、壁には海を描いた大きな紙が張られ、その前には折り畳み椅子が3脚並んでいるという、どこか舞台の書割じみた世界が描かれています。大作にはいずれも海が描かれているのですが、みな偏光プリズムを通したような不思議な色をしています。
 こういう個性的な作家が、留萌管内羽幌町在住と知り、なんだか絵の具一つ手に入れるのも大変そうなところですけど、がんばってほしいものだと思いました。

 G室は、グループ風雅
 丹野見気さんは縦長の抽象が中心。いろんな布を表面に張って効果を試しています。
 松木由美子さんは水彩などの室内画。永井漾子さんの静物画はなかなか大きな対象の捉え方で、油彩なのに木版画を思わせます。

 いずれも18日まで。

 予告。
 筆者、18日から24日まで夏休みのため、期間中ギャラリー回りやHP更新が滞ることが予想されます。あらかじめご諒承くださいませ。
 
 8月13日(月)
 きょうはどこも回っていません。

 朝日新聞夕刊によると、フランスの作家、画家のピエール・クロソウスキー氏が亡くなりました。96歳でした。なにせ、リルケなどの知り合いですから、もうとうに鬼籍に入られたとばかり思っていました。
 
 8月12日(日)
 休みですが、用事ついでにいくつか回りました。

 まず、12日限りの展覧会。
 コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)では、ウェイン・クロザース展
 オーストラリア出身の版画家ですがここ数年日本に居を定めています。とはいっても住まいは京都か東京のはずで、どうして再三札幌で個展を開いているのかは分かりません(本人がいたから聞いてくりゃ良かった)。
 木版画は、棟方志功が抽象に転じたようなパワーを感じさせます。
 壁から離して、天井から吊り下げたり、床に置いたりした作品も多く、インスタレーション的な効果も出しています。
 無題の作品が多いのですが、「ゴリアテ」「ゴリアテのアワーグラス」という題の付いた連作もありました。「ゴリアテ」は、確か、旧約聖書で、若いときのダビデに石つぶてで殺された巨人です。
 「アートスペース201」のHPに作家紹介のコーナーがあります。

 札幌市資料館(大通西13)では中村昭夫風景画展などが開かれています。
 中村さんはシチリアの風景に題材を得たゆさい、水彩の小品を多く並べています。二条市場や駅前通り、豊平川河畔を描いた作品は、なんだか古きよき時代の札幌を描いたみたいで、とても最近とは思えない、暖かさと懐かしさを感じさせます。

 ギャラリーミヤシタ(南5西20)では椎名澄子展。72年生まれ。札幌大谷高から東京芸大彫刻科に進んだ若手です。
 うずくまる人のレリーフ、コンブのように柱に巻きついた作品、レモン型をした土の塊に小さな人の頭が付いたもの・・・など、さまざまなバリエーションの作品を並べています。共通するのは、低い温度で焼いたという、土の素材感のようなものでしょうか。
 作品とは関係ないけど、作者が、自分の2、3年前までは卒業制作は全員売れたけれど自分のときは全然だめだった、と話していたのが興味深かったです。ようするに、不景気なんですね。

 大同ギャラリー(北3西3、大同生命ビル3階)では興味深い二つの展覧会が開かれています。

 下のフロアでは、第7回NAC陶展。造形に携わる陶芸家のグループ展で、毎年ここで開かれています。
 ことしは、伊勢幸広さん(岩見沢)、木村初江さん(札幌)、滝本宣博さん(上川管内東川町)、林雅治さん(後志管内倶知安町)、堀江隆司さん(夕張)の5人が出品。
 伊勢さんは丸い塊の上に、人の首が乗っかった作品ふたつを出品。
 林さんは、これまでの白いチューブ状の立体から一変し、青い波型のオブジェを、淡墨で書が書かれた紙の上に置いています(「走る波」)。
 滝本さんは「ゆれる陶」といって、細長く薄い垂直の帯が20本ほど横に並び、扇風機の風で揺れるという題名どおりの作品でした。

 上のフロアでは「山岸誠二と櫻井マチ子の場合」展。
 しかし、二人ともよく発表するよなー。エネルギーあるよなー、とつくづく感心。
 山岸さんは得意の? 大きな印画紙に直接現像液を霧吹きで吹きかけて、ペンライトで露光させる作品です。今回は「生レルトコロ」「静カニ待ツ」など7点を出品。星空の写真を黒白反転させたような、細かい飛沫が前面を覆う地と、豪快なフォルムと微妙なグレーの色合いを持つ模様とが、魅力的な対象を見せ、宇宙的な広がりを感じさせます。
 櫻井さんは、モノクロームに近い色づかいの小品を並べています。独特の、どこかエロティックな曲線もいつも通りですが、色彩のせいかあっさりした感じ。本人いわく
「いやー、色がついてたら暑苦しいしょやー」
とのこと。

 いずれも14日まで。

 少し暑い1日でしたが、ナナカマドは赤く色づき、トンボが飛び、コスモスが風に揺れる今日このごろ。ついに今年の札幌に、ほんものの夏は来なかったのだなあ、と感慨しきりであります。

 8月11日(土)
 昨夜は、執筆途中で寝てしまった。
 きょうは休みでしたが、くたびれていたので、ひねもす昼寝。S-AIRのオープニングなどには行きませんでした。
 で、きのうの続き。
 日本現代工芸美術展北海道会展です。
 本展は、上野の東京都美術館で毎春開かれているそうです。
 で、きのうも書きましたが、昨年に全道展を脱会したメンバーが半数以上を占めていますので、ノリは全道展によく似ています。
 詳しくは「展覧会の紹介」のページ参照
 12日まで。

 2階では、同じ展覧会に出品している岩崎貞子さん(岩見沢)が、ロビーすべてを使って個展「北彩・炎の造形展」を開いています。
 市民ギャラリーのスケジュール表にも「北彩・炎の造形展」としか書かれていないから、岩崎さんの個展と知らないでいる人もいるのではないでしょうか。3年続けて同じ会場で個展を開いているとのことですが、筆者も初めてきました。
 床には、たくさんの陶器がインスタレーション風に展示され、壁面には陶板作品がずらりと並び、とにかく、そのエネルギーには呆然とさせられます。ふだんここは、グループ展や公募展で何十人もの作品が並ぶ会場。そこを一人で埋めているのですから。
 12日まで。

 イラストレーターのすずきももさんの展覧会Cafe momo展が、カフェ・クルトゥーラ(北区北12西4)で開かれています。
 イラストのほか、絵付けした磁器の食器が数多く展示されています。淡い色の帯がかわいらしいHEARTシリーズのコーヒーカップや、葉っぱとエンジェルのカップ、梨の絵のついたプレートなど、女性が見たら楽しいでしょうね。
 絵柄はどこかで見たことあると思ったら、タウン誌「ファンラン」の表紙をずっとかいてた方だとのことです。
 12から14日はお盆休みで、18日まで。会期中は特選メニューあり、筆者はアイスミントティーを注文しました。さわやかでしたよ。
 クルトゥーラは、南北線北12条駅から北へ半丁歩いてセイコーマートの角を左折した、中通りにあります。

 
 8月10日(金)
 きのうと同じ。忙しかったのに、あちこち見ています。

 アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル6階)は、この週(木から火のサイクルです)は福原秀貴銅版画展だけです。
 前回の個展は1995年とのことですから筆者は見ていません。
 とても言葉で表現するのがむつかしい、不思議な(シュルレアリスティックと言っていいのか)イメージの単色版画です。
 DMに印刷されているのは、今年の全道展に出品した「豊饒の時」という作品ですが、これはかなり「常識的」な部類に属します。
 たとえば「還りゆくものT」では、オカリナ状をした、大きな目玉を持つ異様な物体(生き物?)が三つ描かれています。同時に描かれた釘とあまり変わらない大きさですが、その物体の腹には穴が空いて梯子が伸びています。この物体の大きさは全く分からないのです。
 「還りゆくものU」はストーンヘンジのような風景がモチーフですが、各列柱の壁には血管のような筋が浮かんでいます。
 ほかにも、幻想的な光景を描いた作品が並びます。
 福原さんは北広島在住。全道展会友。

 ギャラリー大通美術館(大通西5、大五ビル)では、李鉄君・曹木二人展
 中国水墨画が中心。曹木さんは虎と得意とし、李さんは主に、竹林やボタンなどの植物や風景に材を得ています。墨一色ではなく、使われている色数が多いのが特徴です。
 李さんの風景は、実際にある風景というよりも、山間の小屋といった「理想的な風景」の描写です。このへんが水墨画らしいところでしょう。

 何の気なしに立ち寄った札幌市民ギャラリー(南2東6)で見た日本現代工芸美術展北海道会展。
 これはよかった! 聞いたことのない展覧会だなーと思っていたら、昨年が最初の展覧会だったそうです。
 会場を見渡すと、昨年全道展から大量脱退したメンバーが半数以上を占めています。
 
 8月9日(木)
 忙しかったけど、なぜかたくさん見ています。

 まずは、時計台ギャラリー(中央区北1西3)の残り。
 A、B室では第31回グルッペ・ゼーエン展
 道学芸大(現道教大)の卒業生7人が1964年に結成、その後毎年のようにグループ展を開いています。息の長さは驚異的といえるでしょう。
 昨年はちょうど30回目ということで、時計台ギャラリー全室で7人が個展形式の展覧会を開いたのは記憶に新しいところです。
 メンバーは、多田紘一さん、照井栄一さん、西本久子さん、丸藤信也さん(以上札幌)、玉木憲治さん野崎嘉男さん(以上岩見沢)、井上象元さん(岐阜県美濃市)の七人。
 この中で、今回ちょっと変わったのは西本さんでしょうか。「ふぁー」と題した、虹色に染め上げた薄い布の作品を毎年出品していますが、今年はその布をチューブ状にして、壁から天井へとつなげたり、壁から壁へと差し渡したりしています。とても軽さを感じさせるのに、しっかりしたフォルムというか存在感のようなものも両立させている、稀有な作品だと思います。
 照井さんも、昨年までは丸などが大きく画面を占めていたのが、今回はシャープな線の横断が目を引きます。紙風船や紙飛行機といったアクセントが添えられているのが照井さんらしいですが。
 井上さんの「ゆらぎ」シリーズは、元気のいい明るい色の曲線が躍る抽象画。一番下に塗られた色が前進しているように見えるなど、不思議なイリュージョンを醸し出す作品群です。
 野崎さんがここ数年取り組んでいる「記シリーズ」は、規則正しく排列された正方形の上を子供の落書きのような線で絵の具を引っかいてかいた連作。丸藤さんは「ZIPシリーズ」で、細い線の組み合わせによる抽象画を陳列しています。
 玉木さんは、浮遊感ある抽象版画。多田さんは木彫。軽妙さがあります。
 
 C室は日本画藻花展
 一見、小品が多いので、どっかの教室展かとも見えますが、ところがどっこい、けっこう道内の日本画家でも中堅やベテランクラスが出品しています。大塚さつきさん、安榮容子さんなどです。
 気になったのは、中村和之さんという方で、小樽運河に在を得た「遺作 憧憬」と、抽象画「遺作」が展示されていました。黒いリボンなどはなかったのですが、これはほんとに遺作なのでしょうか。そういわれてみると、どちらも不思議な静けさをたたえているように見えます。

 D室は、第3回佐々木かおり・杉本一枝油彩展
 佐々木さんは人物を軸に、画面を構成。色遣いに特色があります。
 杉本さんは、梨、桃など静物がモチーフで、対象を凝視する姿勢が感じられました。

 G室は、20回虹の会水彩展
 道展会員の大ベテラン今野ミサさんが賛助出品しているグループ展だけど、栗山巽さんがアンモナイトをアクセントにした抽象ふうの作品を出しているなど、これまたあなどれません。
 永田操さんの西洋風景は、光の濃淡にものすごく気を使っていて、好感を持ちました。

 いずれも11日まで。

 TEMPORARY SPACE(北4西27)では、トヨ・ツチヤ写真展−1980年代のアメリカ
 スナップ的にニューヨークの人物や雪景色が撮影されています。
 テレビのダイアナ妃の結婚式、ヘルズ・エンジェルズ、家族連れでにぎわう海水浴場コニ-・アイランド、街頭パフォーマンスなどなど。
 ただ、80年代というのは中途半端に古いので、あまり感慨が涌きにくい。ごめんなさい。
 11日まで。

 this is gallery(南3東1)では、毛内やすはる展
 手作りらしいややゆがんだ形の立体が、天井からつりさがっていたり、壁からにょきにょきと生えていたり。
 床から生えている3本の柱は、「つながりゆくもの」と題され、ブランクーシの無限柱にインスパイヤされたものという。確かに似ているが、ぱっと見は枝豆、という感じでした。
 ギャラリーにはだれもいなくて
「無用心だなー」
と思ってたら、オーナーの田村さんが戻ってきて、入り口の扉を全開にしました。すると、大きな枝豆がかすかに風で揺れたのでした。
 これはあるいは毛内さんには本意ではないかもしれないが、風があったほうが面白い。
 これまた11日まで。

 続いてギャラリーユリイカ(南3西1、和田ビル2階)では、小峰尚・陶と題した陶芸展が開かれています。
 小峰さんは茨城県出身、在住なのですが、北大卒ということもあって、時々道内で個展を開いています。全国的にも活躍しています。
 今回並んでいるオブジェは、炎や樹氷などを連想させる生命感たっぷり、それでいてすっきりした作品です。もちろん、うつわの類もあります。
 19日まで。
 
 
 8月8日(水)
 きのうは酔っ払って帰ってきたので更新せず。ごめんなさい。

 覧会は7日で終わっちゃったんで、情報としては遅いんだけど、大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)で見た、八重樫真一さんの「メリーゴーランド」という絵が忘れられません。
 八重樫さんは、人物と、抽象的な風景を組み合わせた絵を、道展に出品しています(会友です)。わざと狂わせた遠近法。どこと特定できない町の風景。おつゆがきで薄く塗られた白い絵の具が特徴だといえます。その白は、風を思い出させます。
 「メリーゴーランド」は、それらの絵とはちょっと異なっていました。
 人物がやや小さめです。
 遠景に、だれも乗っていないメリーゴーランドがあります。その右には、ミントグリーンの木立。
 手前にたたずむ人物。
 左側には大きな川が流れ、河川敷にはよく分からない建物が建っています。川に沿うように道が奥へと続き、一番遠くには工場のシルエットが描かれています。
 近景はまったく別の光景です。
 遠景と近景を分かつようにベンチが置かれています。
 手前では、人物(女性?)がひざをついて何か作業をしています。床に紙を広げて工作でもしているような雰囲気です。傍らには傘が置かれ、いちばん手前(画面の下)には、ガラス片のような鋭い三角形が二、三描かれています。
 それほど不思議な風景ではないかもしれません。直接的に何らかの物語を示す要素もありません。
 でも、この絵には、どうも忘れがたいたたずまいのようなものがありました。今回の出品作でも、ダントツで構図がまとまっているというだけではないような気がします。
 ほかに、3年前の個展にも出品されていたのと同じような、孤立する森を描いた作品もありました。やはり、全面を薄く覆う白の飛沫が印象的でした。

 時計台ギャラリー(北1西3)で、吉田康子版画展も見ました。
 吉田さんは1983年からパリ在住。銅版画を手がけています。札幌での個展は3年ぶり。近年は全道展には出していないようです。
 今回は「ラプソディー・共鳴」がテーマ。オーケストラや室内楽の演奏者をモチーフにした作品が並びます。1版多色刷りが持ち味で、独特の色の混ざり具合が見ていてきれい。演奏者たちはエンボスのように浮き出ていて、その周囲に、天体を思わせる形や、画面を横断するシャープな直線、曲線が走り、リズミカルで楽しい構成になっています。
 11日まで。
 ほかの部屋は後日。

 ギャラリーたぴお(北2西2、、道特会館)では、中嶋貴将彫刻展が開かれています。
 なかしまよしゆき、と読むようです。
 97年のPRAHAでの3人展以来、久しぶりに見ました。
 ギャラリー中央に置かれた「熱変」という4点は、細長い金属片を貼り付けたように見えますが、実は、蝋の型にブロンズを流し込んで制作したものだそうです(ということは、作品は一つしか出来ません)。たいまつ、球根…いろんなものに見えますね。
 壁には、自分のやっていることが古いのか新しいのか、という自問が、英文で書かれています。たしかに「彫刻」という言葉からして、どこかしら「現代美術的」ではありませんが、中嶋さんもいろんなことを考えながら発表しているのだと思います。
 11日まで。

 
 8月6日(月)
 広島原爆忌。

 なんだか最近、会期終了の直前に飛び込む展覧会が多くて、反省しています。
 アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル5、6階)にも、きょうやっと行きました。
 芸術団Jamなるグループ展が開かれています。
 八子晋嗣さんの抽象の木彫がいつも楽しみなのですが、今回は宮崎亨さんの油彩が強烈でした。
 題は「自由」。
 灰色の男が立って苦しんでいるさまを描いた絵ですが、肩から3本の腕が出ていたり、7本も8本も腕があるのです。まるで、鶴岡政雄の「重い手」の作中人物が立ち上がって、荒野をさまよっているようです。
 しかも脚は、木の根のように地面にへばりついているのです。
 後景にも、同じように腕があちこちから出ている男が立っています。
 いつもは「この絵の書き方はどうだ」とみている筆者ですが、久しぶりに、ストレートに絵の内容というか、熱さが、がしんと伝わってくる作品に出逢いました。うれしいです。

 上のフロアでは、ポストカード展も開かれています。膨大な作品が並び、すべて1枚150円で売られています。
 美術に興味のないフツーの人は、なかなかギャラリーなんて行かないもんだけど、こういう試みはいいね。ギャラリーに足を運ぶ層を確実に増やします。
 それにしても、札幌にこんなにたくさんの、イラストレーターとその志望者(のグループ)がいるとは驚きでした。

 エルム画廊(中央区北2西2、チサンホテル本館2階)の清水康雄油彩展にも行きました。
 ドン・キホーテやベネツィアの町をモチーフにした薄塗りの繊細な色彩の絵画は、これまでと変わっていませんが、おやっと目を引いたのが、紙を支持体にした「騎馬オペラ」などの作品です。
 これは、紙にグワッシュで色を塗っていったんふき取り、その上から油の絵具を置いていくのだそうです。この技法のために、油彩では出づらい輝かしい色彩が生まれています。女性像などのモチーフと色面を知的に構成した画面に惹かれました。
 清水さんはパリから戻って一時体調を崩されていたようですが、元気を取り戻していたようでした。
 余談ですが、エルム画廊って道内では珍しく”銀座っぽい画廊”ですよね。売るための小品が多いし、入り口のガラス戸なんていかにも、です。

 いずれも7日まで。

 8月5日(日)
 手稲駅前の渓仁会病院にお見舞いに行った。
 巨大なデパートみたいな病院だったが、ロビー附近に見覚えのあるレリーフがたくさん飾ってあった。でもだれのだか、思い出せない。

 先週は相当見落としが生じてしまった(札幌市民ギャラリーの平和美術展など)。
 今週はもうちょっとマメに回ろうと思います。

 それにしてもホントに蔡国強さん、札幌に来るんだろうか。すごいなー。

 8月4日(土)
 わーん、3時間半もかけてたった三つしか回れなかったよー。

 最初は、きのうもちょっと触れた、美しが丘ギャラリー(豊平区美しが丘2の1)の故・伊藤隆一氏関係者展覧会「あんたたちの作品展」です。
 道内のデザイン界に大きな功績を残しながら昨年亡くなった道教大名誉教授の伊藤先生をしのび、関係者が作品を持ち寄りました。
 いま、デザイン界と書いたけど、ほかにも北欧との交流、漆工芸での創作と後進育成、木彫の指導書の執筆などなど、実に幅広い分野で活躍した方だけに(そういえば大学の野球部の顧問、なんてのもあったな)、出品されているのも工芸、デザイン、書道、写真など幅広い分野です。
 でも特に個人的に面白かったのは、長男の隆介さんの作品。映像モニターだけを見ると、車が緑の中をずーっと走っているように見えるのですが、すぐ下に仕掛けがあって、ミニカーを乗せたベルトコンベアーが延々回っているのをカメラで撮影しているのです。オタク心、炸裂ですね。
 ずいぶんお客さんが来ていて、故人の人徳を感じました。

 5日まで。
 おそらく札幌市内のギャラリーで最も遠い「美しが丘ギャラリー」は、東豊線の福住駅から、市外と反対方向に行く中央バスに乗るとOK。ただし清田9の3行き、農業試験場行きは途中で曲がっちゃうので不可。北広島、千歳、三里塚小学校などに行く路線に乗りましょう。
 バスが途中で左折して「清田区役所」の前から旧国道を通る路線だったら、「日の丸団地」で下車して徒歩7分。まっすぐ国道を行ったら「清田区体育館」前で下りて徒歩4分です。
 帰りは行きより不便ですが、1時間のバスの本数は国道が2、3本、旧国道(日の丸団地)が5本です。

 次はCAI(中央区北1西28)です。
 吉川貫一個展「近未来パラダイス」
 ことし一月に同じ会場でやった「アンダー23」に出品されていたビデオ作品があんまりぱっとしなかったし、サイトART CORE JAPANで読めるインタビューもベタな感じだったので正直言ってぜんぜん期待してなかったんだけど、うさぎ耳型帽子をかぶった作者が柔道の受け身の格好で床に背中を打ち付けてるビデオを延々と見てると、バカばかしさを通り越してけっこう面白かった。地下街とかでいきなり上着を脱いでバターン! と受け身をやると周囲の人がびっくりするんだよね(当たり前だけど)、その反応が面白い。あんなに背中をバターン! と打ち付けて痛くないんだろうか(痛いだろうな)。
 いわば、作者の行為はほとんど無意味であって、その無意味さが周囲を異化することでアートになっちゃってるみたいな部分って、あるだろうな。
 それにしても、近未来ねえ。
 吉川さんくらいの若い世代がこの言葉から何をイメージするんだろう。
 1970年ごろまでは「鉄腕アトム」とか真鍋博のイラストレーションみたいなポジティブなイメージがあったけど、80年代以降は「北斗の拳」「風の谷のナウシカ」みたいな破滅のイメージに変わったと思う。もうさいきんは「近未来」って言葉を聞いても何にも感じないもんな。たぶん何にも変わらないだろうなっていう感じだから。
 このあたりを作者に聞いてみたい気がする。ビデオやドローイングの持つ雰囲気と必ずしも合ってないと思うし。
 ただ、重箱の隅を突っつくようで申し訳ないんだけど、どうしてビデオの中で「1、2、3、4、5」と数えながら受け身を繰り返していたんだろう。いや、観衆がドイツ人だから「アイン、ツヴァイ、ドライ」とやれっていうんじゃなくて、プロレスのカウントって3つまでじゃないの?
 5日まで。
 中心部でパフォーマンスの予定アリ。

 久しぶりに、すぐ近所の工芸ギャラリー愛海詩(えみし)に立ち寄る。
 札幌高専で金工の先生をしている金子直人さんが個展を開いているのです。
 金子さんの作品は進化しました。
 すずの表面に、フォトエッチングの要領で、自由に模様を定着する手法を身に付けたのです。
 いちばんオジサンが喜びそうなのが、はだ花器。ヌード写真を花器に焼き付けてあります。といっても銀色の鈍い光沢があるので生々しくはありません。
 格闘技ファンにオススメなのが、アントニオ猪木のサインと詩があしらわれたコップ。新日本プロレス公認だそうです。
 10日まで。

 ゆうべ書きかけだった「北海道二紀展」の紹介をいちおう完結させました。

 8月3日(金)
 うーむ、今週は「当たり週」かもしれん。
 なんてこと言って、お前水曜までなにやっとったんじゃって言われそうだな。
 スカイホール(南1西3、大丸藤井セントラル7階)は別項で書きます。
 北海道二紀と南巖衛個展。どちらもいいです。
 ギャラリーたぴお(北2西2、道特会館)では「キャバレーたぴお」なるグループ展を先週からやっていて、よーするに夏だから夜は交代で女性美術家がホステス役やってみんなで飲もうという愉快な集まりなんですが、ごめん、4日で終わりだ。
 出品者は、よくこのギャラリーを借りてるおなじみのメンバーが多くて、しかも小品が中心なんだけど、けっこうオモシロイ。猫の絵のD.HISAKOさんの横に、青木崇さんが詩を添えてたりして。今井和義さんの「空白」ってのは、ビジュアル・ポエトリーだよね、これ。詩人の鈴木順三郎さんも金属の立体を出品しています。
 林教司さんは、両足を石膏取りした立体を床に置き、上の壁には、手の形をした立体と古ぼけた電球を木の箱に入れて展示しています。こういう電球を見ると、筆者は宮澤賢治の「春と修羅」の序文を思い出しちゃいますね。
 田村陽子さんは、表からと裏からでは、光沢感の異なるファイバー作品。
 杉田光江さんはお得意の「種」を、六つのガラス瓶に入れています。個人的には、でっかいインスタレーションよりこっちの方が好きだな。
 ギャラリー主宰の竹田博さんはめずらしや、鮮やかな黄色をバックにした人物画です。
 陶で造った顔をてっぺんに配した木の棒に貝殻だの石だのを貼り付けた、しゃれた作品を出品した山岸誠二さんに、久しぶりに会いました。筆者の名刺を作ってくださっている方でもあります。山岸さんは筆者なんかよりもはるかに多くのギャラリーを見て回っている人ですが、
「美しが丘ギャラリーの『あんたたちの…』、わりと面白いですよ」
とのことでした。
 そうだ、このサイトに山岸誠二おすすめコーナーを作ればいいんだよな。だめかなあ。きょう山岸さんからDMを見せてもらうまで、石川ひとさん(過去の個展はこちら)が写真二人展やってるなんて知らなかったぞ。あーあ。

 訂正です。
 「全道展の評」で、久野志乃さんは初出品ではありませんでした。3回目だそうです。すいませんでした。

 追記。
 表紙からこのページへのリンクを貼り忘れていました。やれやれ。

 8月2日(木)
 札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)は、今週は粒ぞろいです。

 A室は輪島進一展
 独立美術の会員になった年、コンテのみによる風景画を出品して、筆者は正直言ってびっくりしましたが、今回札幌で久しぶり(4年ぶり?)に開いた個展では、前回の個展にやや戻ったようなところもあります。
 詳しい評はこちらです。
 輪島さんは小樽在住。
 
 B室は北口さつき展
 昨年、道立近代美術館で開かれた「北の日本画展」では、巨大な作品で来場者の目をひいていましたが、今回も小品はなし、大作だけの直球勝負。存在感ある女性像を、暖色を中心に描いているのもこれまでと同じです。
 一番の大作「人」は、さまざまなポーズをとった女性3人と、百合の花を配し、ゴーギャンを思わせるスケール感を有しています。
 道展会員、札幌在住。北口さんのホームページはこちら。

 室は齋藤周展
 齋藤さんは、赤や茶といった暖色の色面で、複数の人物をモチーフに画面を知的に構成する−といったイメージがあったんですが、いやー、今回の個展でがらっと変わりましたね、画風が。
 屋外とも屋内ともつかない、どこか建築パースを思わせる不思議な空間。そこに独りでたたずむ、薄塗りの人物像。「自由にならない時間」「起きたらもう夕方」など、思わせぶりなタイトル。
 非常に「2001年的」な感じのする画風です。
 都会的、といってもいいかもしれない。
 道展会友、札幌在住。

 3階はMSB
 ムサビの愛称で知られる武蔵野美術大のOB展。
 ただし、道内の卒業生みなさんが出品しているかどうかは、筆者の知るところではありません。個人的には、橋本礼奈さんがいないのが寂しいよー。
 品川等さん「漆のおわん椅子」、木路毛五郎さん渋谷俊彦さん、といった布陣は、先月アメリカンセンターで開かれた「日本美の継承」展にも出してましたね。
 植田伊都子さん「Over the Century」は素朴な木版画。三箇みどりさんのレリーフ状の人物の首もユニークです。やまだ乃理子さんも出品しています。

 いずれも4日まで。

2001年7月の日録