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あーとだいありー 2003年2月後半

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 2月28日(金)

 武田史子―銅版画―Selection展=エルエテギャラリースペース(中央区南1西24、リードビル2階)
 1963年生まれ、首都圏在住の銅版画家。長谷川潔、駒井哲郎などの流れをくみながらも、独自のおだやかな世界をつくりあげています。
 「ふたつのキワノ」は手彩色。筆者が気に入ったのは「時刻のループ」でした。らせん状の壁のなかに星空が見える、静けさとスケール感をあわせもったような一枚です。
 3月9日まで。


 2月26、27日(水、木)

 伊藤千尋彫刻展−とげのある日−札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 書くのがおくれていたら、道新の夕刊に先を越されてしまった…。
 鉄の彫刻を10点余り陳列しています。若手です。
 昨年の道展で新人賞を受けた「ADULT STEP」は、錆びた鉄の立方体をつなげ、いくつかの上部にとげを付けたもの。ところどころ破れ目もある。とても上れない階段です。重厚さとスマートさが共存しているのがユニークです。
 「思春期トンネル」は、両端が開いた鼓のような形の表面に、やはりクラゲの足みたいな突起がにょきにょき生えています。

 馬場美康展=同
 こちらも、夕刊のおなじ面で紹介されていましたが、陶による顔、というか仮面の作品です。
 壁際に設置した12点のうち、9点が顔だけの「無題」。のこる3点は、「影」と題し、顔の下に粗い布を巻いて人間の立像のようにしています。いずれも、顔の部分は、アクリルのケースで覆っています。
 けっこうこわいです。わざとやっているのでしょうが、顔は一部が欠けたり、あるいは表面がぼろぼろと剥げ落ちていたりします。「壊れている人間」ということを見る者に突きつける作品です。
 ただ、あえて難を言えば、顔の背後の板は、もうすこし「見せ方」があったのではないかとおもいました。
 馬場よしやすさんは99年に多摩美大の大学院を修了した、札幌在住の若手です。
 いずれも3月1日まで。

 陶&ビーズ・アクセサリーコレクション 高橋美枝子作品展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 陶芸作品と、アクセサリーの両方がありました。
 陶芸は、展示の仕方がなかなか凝っていて、テーブルセッティングのように布などをめぐらして、食卓のようにかざりつけていました。

 シルクアートペインティング教室展=同
 「水のある風景」をテーマに10人があざやかな色彩のろうけつ染め絵画を発表しています。
 よねたゆみこさんは、鯉とおぼしき魚が泳ぐ姿を真上から見た作品を、空中につるしていました。波紋がすずしげです。
 いずれも3月2日まで。

 高沢のり子油彩小品展札幌市資料館(中央区大通西13)
 毎年のように個展をひらいていますが、いつも、ピカソそっくりの画風で、人の顔を描いています。鼻が横向きなのに目がふたつとも正面を向いていて、派手な色をしているとか、そんなふうです。
 3月16日まで。月曜休み。

 Flip Flop Flyin' Exhibiton “Everybody's Dogs”SOSO CAFE(中央区南1西13)
 21日で終わったかとおもったら、まだやっていました。
 5点だけで、いずれも孤島と、そこにいる数人がモティーフです。
 フライヤーには「ピクセルグラフィックス」と書いてあります。ファクスで絵を送信すると、斜めの線がなく、縦と横だけでギザギザに描画されますが、あれとおなじように、縦線と横線だけで、斜めは階段状のギザギザの線で表現されています。陰影はなく、フラットな色彩。まるで、初期のワープロで印字した、アウトラインフォント機能のない文字を見ているようです。
 なんだか、むかしの、いかにも電子音楽です、という風情のテクノみたいで、なつかしさがむしろ新鮮さにつながるんだよなーとおもっていたら、いちばん大きい(1・8×3メートルはありそう)絵に、赤いシャツに黒いネクタイを付けた男4人が並んでいるのを見つけました。みな首だけを左に向けています。うーむ、これってやっぱクラフトワークかなあ。


 2月25日(火)

 竹田博展=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館)
 竹田博展の会場風景竹田さんは、ギャラリーたぴおのオーナーでデザイナーですが、ときどきじぶんのギャラリーで自作の油絵を発表します。
 じっさいの風景からよけいな要素をどんどんそぎおとし、フォルムを単純化して、抽象画になるぎりぎりの手前でとどまる…。そんな作画が中心です。
 写真は、色がわるくて恐縮なのですが、あざやかな黄緑とオレンジで構成された画面は、一見抽象のようでいて、目を細めて見たときの公園の風景のようでもあります。
 陳列されているのは、ことしの作品が「都会の樹林」「春の樹」「樹影」「夏の樹々」「本通りと脇道」「プラタナスとポプラ」「樹」「はまなす」(同題が2点)、それにやや写実的な「61歳の自像」の9点。昨年の作品が「湖面(知床五湖)」「四角いはまなす」。
 2000年の「樹間」、1990年の「手稲山」、89年の「毛蟹」、そして58年の少年時代に描いた習作「洞爺湖畔」です。
 3月1日まで。

 菅野朔(ついたち)感触の表現「明滅の記憶」=GALLERIA CAFFE クルトゥーラ(北区北12西4)
 額絵、みずから染色した色とりどりの布をワイヤーにまきつけて作ったアクセサリー、アップリケの技術をつかって布で花模様を立体的にあしらった服など、じつに多彩な作品がならんでいます。基本は染色なので、そちらに興味のある方はどうぞ。
 3月1日まで。

 歩く、感じる、描く。 坂元輝行 風景画展ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
 126点! 油彩と淡彩がほぼ半数ずつ。
 すべて10号以下とはいえ、新作なのですから、おどろくべき精力的な制作ぶりです。
 しかも、会期後半には四十数点を展示替えするというのですから…。
 作品は1点のこらず風景画。多くは、現場で短時間のうちに仕上げられたもので、線に勢いがあります。別の言い方をすれば、迷いが見られない、というか、迷っているヒマのない生き生きとした線が画面に躍っています。
 「八景」がテーマで、つぎのグループごとに展示されています(一部、8点未満や10点のグループあり)。

  1. おたる八景
  2. 巴里八景
  3. パリ八景(油彩)
  4. ウォーキング・イン・パリ
  5. ヨーロッパ紀行(油彩)
  6. 東京八景
  7. なつかしの北大(油彩)
  8. キャンパス散歩
  9. 北大風景(油彩)
  10. 札幌八景
  11. 積丹八景(油彩)
  12. 美瑛、ふらの八景(油彩)
  13. 樽前八景(油彩)
  14. 小樽八景(油彩)
  15. 運河散歩

 註記のないのは淡彩スケッチです坂元輝行「隅田川暮色」
 「なつかしの北大」とあるのは、もういまは取り壊されてしまった校舎を、ふるい写真などをもとに描いたシリーズ。
 「工学部」「低温科学研究所」「応用電気研究所(北12条)」「中央講堂」「水産講堂」「旧体育館横(北12条)」「馬術部馬場(北18条)」「雪の図書館」です。
 北大のOBにはなつかしい風景なのではないでしょうか。(「旧体育館横」のサクシュコトニ川は広すぎるのではないか−などとツッコミをいれることもできます)
 それに対し「キャンパス散歩」は、現在の北大の風景です。
 また「運河散歩」は、もちろん小樽運河周辺を題材にしています。
 右の絵は、「東京八景」のうちの「隅田川暮色」。ビルの窓から洩れる黄色い光が川面に反射し、空のオレンジ色と微妙なひびきあいをみせています。
 ご本人は
「おれのやってることはこれでいいのか、自問自答しながらかいてるんだよ、ヤナイさん」
と、けっこう気弱でした。
 3月9日まで。3日は月曜ですが、開館するそうです。
 昨年はこちら、一昨年はこちら

 泉豊吉作陶展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 きょう25日で終了。
 「わらび釉」のつぼなど、おちついた、どっしりした雰囲気のうつわが多いなか、「窯変桜吹雪」と題されたうつわや陶板はほんのりとしたピンク色がめずらしく、はなやかです。
 北海道陶芸作家協会の会長です。

 「アルディ会」で追記。
 会場で、佐藤説庫さんからお聞きした話。
 この会は長年「火曜油絵会」でしたが、昨年「マルディ会」と改称しました。
 ところが、八木伸子さん(春陽会、全道展などの会員)の教室展も「ぐる〜ぷまるでぃ」ということがわかり、ことしこっそり(?)「マ」を「ア」に変えたそうなのです。
 ううむ。筆者は、昨年
「もしかしたら、名前まちがったかなあ」
と、気に病んでいたのです。それにしても、1文字なおしてそれでよし、なんて、すごい(^.^)


 2月24日(月)

 まず訃報。
 フランス現代思想、文学を代表する作家モーリス・ブランショさんが亡くなりました。95歳でした。
 戦前には、シュルレアリスムにも近いところにいました。
 筆者は、彼の代表作「明かしえぬ共同体」(現在はちくま学芸文庫)を読んだことがあるくらいで、あまりくわしくないのですが、この本には、あの68年5月を経て彼が得た、「共同体(コミューン)」をめぐる希望と絶望が、折りたたまれているようにおもえます。

 悠画会展アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
 早坂隆さんの水彩と原田冨弥さんの油彩が中心の絵画展。
 この組み合わせはたぶんはじめてです。いずれも、大半が風景画。
 早坂さんは14点。写実的で達者です。ただし、画面のどこかに、ちょうど霧の切れ端がうかんでいるような、淡い部分があって、それが画面に、微妙にふくらみのあるたたずまいをあたえています。
 「坂道(函館)」「道(豊平公園)」などの、何気ない風景が、目を引きました。
 原田さんは6点。
 原色をつかった、元気のよい作風はあいかわらず。「定山渓天狗岳」は、青緑とサーモンピンクが空に塗られ、つよい印象をのこします。(参考画像はこちら
 ほかに、古川秀和さん、伊豆倉久子さんが出品しています。

 少女あります・200323・ひとみ★まさこ展=同
 少女をややギャグっぽいゆかいなタッチで描いたイラストと、ほとんど少女とは関係のない寡黙なモノクロ写真。
 どっちがひとみさんで、どっちがまさこさんだか、わかりません(^.^)
 イラストのほうは、「八福神〜夢ミルUPPER人形」など。大昔の少女漫画をパロディーにしたみたいに目をキラキラさせた女の子が、セーラー服を着たり、エレキギターを持ったり、振袖を着たり…。着せ替え人形みたいな連作です。
 写真は、31点。樹木の影、街路に放置されたいす、ドラム缶、錠、とざされたシャッター…といった被写体を、変な技巧はもちいず、たんたんと撮っています。たまに人がはいったカットもありますが、いわゆる人物写真ではありません。うーん、さびしげだ。
 いずれも、25日まで。

 道新油絵教室 第31回アルディ会展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)ABC室
 故・国松登さん(全道展会員)が講師だったHBC婦人文化教室にはじまり、現在は米谷哲夫さん(同)がおしえる道新文化センターの火曜日の教室としてつづいている、歴史ある絵画教室の展覧会。
 原田勢津子さんがさまざまな取り組みをおこなっています。「ラベンダーロード」(20F)では、画面全体に格子状の模様を描き、その間に紫や黄色が飛び散ります。「小さな街」(同)は、花瓶と風景のくみあわせ。しゃれているけれど、枯れたムードがただよいます。
 福江文子さんは「ライラック」(同)が目を引きました。ワインレッドの地が、花瓶に盛られたライラックの花や葉にまで染みとおっていくような、しずかで、それでいて豪奢なうつくしさをたもっているようです。
 佐藤説庫(えつこ)さんは「地風景」(S100)よりも、「青夜」(10F)のほうが気に入りました。色もしゃれているし、ななめに走る線が、動きをかんじさせるからです。ほか、会場で配布しているリストにはありませんが、小品「花」も陳列しています。
 大久保恵美子さん「南国」(80F)は、ゴーギャンをもっと幻想的にしたような力作ですが、中央の女性の顔が変形されすぎているのが気になってしまいます。
 ほかに、山内淳恵、名畑昌子、村椿千恵子、奈良恵、川原正子、馬場京子、佐藤トシ、三浦キミ子、今井祥子、大原博子、中元征子、家山るり子、阿部征子、仲井みち子、北野敬子、山本和雄、後藤隆之、熊谷京子、細川美代、川内恵美子、山本トシ子、中谷久美子、三上範子、北野洋子のみなさんと、米谷さんが賛助出品しています。
 3月1日まで。
 同ギャラリーの3階はあす以降に。

 怠平人 TAIHEIJIN=札幌市民会館(中央区北1西1)
 アクリル画によるイラスト、というか諷刺画展。
 それぞれ、みじかいキャプションがつき、それを読まないと作者のメッセージがわからない絵が大半です。
 そういう絵もあっていいとおもいます。
 なかみは、平和ボケのいまの日本にたいする警告です。
 右派的なものというより、原爆ドームを前にした群像をモティーフにした絵もありましたから、あの悲惨な戦争を語り継いでいっていない日本人にたいする批判というトーンがつよいようにかんじられました。
 ただ、一昨年の米国のテロ事件をエンターテイメントとしてしかとらえられないじぶんを皮肉った「9月11日と僕」など、やや斜視ぎみであります。
 このように、メッセージ性のつよい絵なのですが、案内状にも会場にも作者名がいっさいありません。メッセージをつたえるにあたって不利だとおもうんですけど。
 そう聞くと、旭川の学生だという作者は
「そういう紙は会場で用意してくれるものだとばかり思って…。無責任だとはおもうのですが」
と話していました。だけど、もうはじまって4日目なんだからさあ。芳名帳1頁やぶって貼ればすむんじゃない?
 27日まで。

 リンク集に「画材店」のページをあらたにつくりました。
 リンク希望の店は、どうぞご連絡ください。


 2月23日(日)

 深川と小樽に行ってきました。
 札幌駅に着くと、つぎの特急まで時間があったので…。

 碓井良平展覧会 by Paint Box=TOM'S CAFE(北区北6西2、パセオ地下1階)
 鎌倉から帰還後の碓井さんは「Paint Box」というグループを組織し、ギャラリーではなくおもに喫茶店を発表の場としています。既成の美術の世界にとじこもるのではなく絵を生活の場に開いていこう−というおもいがあるのだと推察しています。ご本人に聞かなくてはわかりませんが。
 それはともかく、今回は和紙に墨で書いた作品が8点。奔放な抽象絵画が多い碓井さんとしては異色作です。あ、でも、以前岩内のお店でインスタレーションふうな作品にしたときも、モノクロの世界だったっけ。
 「和紙に墨」
というと、すぐ
「前衛書」
を連想したくなりますが、碓井さんの筆つかいは、やはり「絵画」としか言いようがありません。紙の大半を、墨の濃淡が覆っているためだとおもいますが、理由はそれだけではなく、やはり筆つかいが書とはちがうのでしょう。
 碓井さんの自筆とおぼしき文章が、案内状にホチキス止めされており、あまり自作をかたる文章を目にしない碓井さんとしてはめずらしいとおもうので、ここに引いておきます。

「和紙」

楮(こうぞ)から生まれた紙、「和紙」と呼ばれるこの紙は、薄ければうすいほど、私にとって刺激的です。

一見儚げでその実堅牢であり、虚と実を隔てる皮膜のようでもあります。皮膜自体がすでに作品です。和紙に限らずあらゆる紙、板、キャンバス地などの表面に絵を描くための具体的な素材=支え(「支持体」)にいえることなのですが、それらはそこに在るだけで十分な作品といえます。

さて、いつもながらその既作品、今回は和紙に白紙の矢を射て、汚し、こすりなどあえてするのですが、薄い堅牢な皮膜を突く意義があるのか否か、横紙破りにならなければとただ細心の注意の日々です。

 筆者は、食器の棚の上にあった作品が、どこかパウル・クレーを思わせ、気に入りました。
 3月7日まで。

 月蝕集団展=アートホール東洲館(深川市1の9、経済センター2階)
 空知の若手5人による絵画展。
 専用の空間ではなく、廊下に展示されています。
 中村真紀さんは、1月の札幌での個展にくらべると、小品が中心。
 「慟哭vol.1」「慟哭vol.2」や「凍結-frozen-」など、厚塗りのはげしいタッチです。
 渡辺盛二さん「読書」は、教室で本を手に一列にならんでいる子どもたちを、しっかりした観察力で描いています。こういう構図の絵を見ると筆者はつい小磯良平をおもいだしてしまうのですが、それよりとなりの「ドロノキV」がおもしろいです。そびえる大木。その左に、空中に浮かぶ巨大な工業都市。荒れ果てた大地…。さまざまな連想をさそわれます。
 吉川博幸さんは、深川にほど近い石狩管内沼田町の消防士さんなのでしょうか。「デビュー」は、白衣に袖をとおす男の人ら3人が描かれ、手前に「沼田消防」とかかれたヘルメットが置かれています。背景が、グリザイユ(モノクロ)で処理され、人物がうかびあがっています。
 桔梗智恵美さんは、人々が落下している最中のような光景を描く「ダラク」「華やかな落下」など。
 合田里美さんは「東中の生徒」と題したクロッキーが4枚。油彩「氷の部屋(零下2度)」は、帽子、あれい、ストップウォッチなどがモティーフになった静物画ですが、じぶんの部屋なのでしょうか。
 28日まで。

 2002年度深美協会員展=同
 こちらはギャラリーの中。
 深川市美術交流協会のメンバーによる作品展で、写真、書、絵画がならんでいます。
 絵は、渡辺貞之さん(全道展会員)、加藤博希さん(同)、氏家功さん(新道展会員)、斉藤百合子さん(道展会友)など、見覚えのある顔ぶれがいます。
 書は、長谷川深象さんの少数字書「窓」の安定した構えに惹かれました。
 写真では、佐藤文昭さんが「冬薄暮」「紺碧の静寂」と題した、カラーの雪景色2点。よけいなものを取り払ったシンプルでうつくしい世界を現出させていました。佐藤武史さんはモノクロの山岳写真3点を陳列しています。
 28日まで。

 福井尚敏ギャラリー=市民交流センター(深川市4の9)
 朝日新聞道内版によると11日に開設され、16日までひらかれていた記念展には油彩23点が陳列されていたそうですが、筆者が行ったときには、油彩4点と木彫3点があるだけで、がらんとした空間がいささかさびしくかんじられました。
 しかも、絵のすぐ前に彫刻が置いてあります。陳列の仕方、もうすこしどうにかならんのでしょうか。
 作者は1938年深川生まれ。金沢美工大を卒業し、現在は茨城県岩井市にアトリエをかまえています。
 筆者には、彫刻のほうがおもしろくかんじられました。「丸太 喜びの歌」は、両手をいっぱいに高くのばして大きな球をかかげる裸婦の像です。写実的に肉感ある裸婦ではなく、天へとむかっていく伸長性とでも形容すべき晴れやかさが、形態に宿っています。
 絵画は「生きる」など、人物と風景を組み合わせた構成画が中心。たくさんの明るい色をちりばめ、スケールの大きなつくりになっています。
 以前拓銀(北海道拓殖銀行)の深川支店だった建物で、深川駅からほど近い一等地です。

 異国旅情−旅でみた風景市立小樽美術館(色内1)
 小樽美術館の所蔵品から、高森捷三、中谷龍一ら、海外の風景を題材にした絵画を32点えらんで陳列しています。
 画題の性格上、道展、一水会の系統の作家が多くなってしまうのは、やむをえないことでしょう。
 新収蔵品も11点展示されています。
 5月25日まで。詳細は後日。

 小樽ステーションギャラリー(小樽駅構内)では、藤倉英幸さんのはり絵が展示されています。
 「JR北海道」の月刊PR誌(特急に乗ったら無料でもらえる)の表紙原画展です。
 北海道の風景を、ダイナミックな構図と細心の色彩配置でとらえた藤倉さんの世界については、あらためて書くこともないのですが、意外だったのは、表紙の絵は縦長なのに、原画は横長が多かったこと。表紙だけを見ると気がつかないのですが、ふたつならべてみると
「うーん、トリミングしないで済むならしないほうがいいよなあ」
とおもっちゃいます。
 5月11日まで。


 2月21日(金)

 LAD 004札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
 2000年暮れにスタートした若手の写真展もはや4回目。前回から半年もたたないうちの開催です。
 「LAD」は「Liberty and Doing」の略です。
 今回は、佐々木織恵、大沢亜実、佐賀章広、斉藤友鯉子、富田亜也の5人が出品しています。佐々木さん以外はすべて学生という、若いメンバーです。
 佐々木さんのウェブサイトの表紙に採用されている写真があったので
「そっかー、広告看板に『heartbazaar』というのがあったのかー」
とおもってたら、これは合成とのこと。ちなみに、下の車の色も、変えているそうです。
 どうやらイタリアの空港の近くで撮ったみたい。会場では、「とおいまち」のタイトルのもと、英国やフランス、沖縄で撮った写真といっしょにならんでいました。
 大沢さんは「うめつくす」ことを念頭に、似たような写真を複数枚ならべました。
 「うまくいえないんですけど、過ぎてゆく時間というようなものを、連続する映像であらわしてみたかった」
 続いた時間のなかから4ないし6つのカットを切り取ってみせたような構成です。
 富田さんは、CDの表面に写真を焼き付けて展示したのがおもしろい。斉藤さんはモデルをつかったプロっぽいテイストの写真。ファッションは60年代ふうです。佐賀さんは、1台の車を、2ないし4つのプリントに分解したモノクロ写真など。単一の被写体が、ちょっと変わって見えます。
 23日まで。

 ARE YOU HUNGRY? =SAPPORO ALTA(中央区南1西2)
 札幌アルタに初めて入りました。
 中年男には入りづらいです。店はわかい女性向けばっかりだし。
 札幌で、イラストレーターとして活躍するこばやし雅史、KEI、キノコ☆クリスティー、SM、Shiro、せいのあさみ、菊地奨、杉本奈緒子の6氏のほか、投稿作品も展示されています。また、ポストカードの販売などもおこなわれています。
 こばやしさんは、特徴ある画風です。また、KEIさんが、作品をすべて厚手のビニール袋に梱包してたのはおもしろい。
 絵では、キノコ☆クリスティーさんが、個性的な画風と、微妙な色彩の差異をつかんだ表現でよかったとおもいます。
 23日まで。

 北海道東海大学芸術工学部デザイン学科・建築学科2002年度卒業研究作品展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 いす、都市計画、建築、絵本、ブランド創出、小学校の副読本、家具、写真、イラストレーションなどもりだくさん。
 都市計画では、道外に構想したものがけっこう多かったです。
 個人的には、渋谷洋介さんと高橋健一さんによる、旭川の小河川の研究というのが興味をひきました。「旭川は川の町、とよくいわれるが、大きな川しか視野にない」という指摘は重要でしょう。
 23日まで。

 上野美好 書の散歩道=ほくでん料理情報館MADRE(中央区北1東4、サッポロファクトリー・1条館3階)
 インテリアにぴったりの、書の額装作品がならんでいます。「舞」「花」「韻」など。入り口にあった「百花繚乱」も、さらりとしたかろやかな筆致が魅力的でした。
 28日まで。

 写団ほくと第7回写真展=コニカプラザサッポロ(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
 松里繁宏さん「日本人観光客」がユニーク。カメラを提げて無防備に集団でいる姿は、まさにわたしたちの姿。外国に行って、いかにも外国に行ってきました的な写真ではなく、こういうスナップを写してくるのは、おもしろいです。
 28日まで。
 ところで、コニカプラザは、3月以降の日程が空白になっていたけれど、どうするんだろう。

 大和画材さんのサイトがすごいことになっています。
 とくに、ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)でひらかれている展覧会は、全部の絵の画像があるんじゃないかとおもわれるくらい、充実しています。
 最近で言えば、浅井学園大のサークル展、川本ヤスヒロ展など、いながらにして全点の画像が見られます。
 ちょっと重たいのが難点ですが、ADSLならなんら問題はないでしょう。


 2月20日(木)

 きのうまでのつづき。
 まず、札幌市資料館(中央区大通西13)で22日までひらかれている札幌市立高専の卒業・修了制作展はおもしろかったです。どうしてだかわからないけど、例年よりずっと充実しているようにおもえました。
 くわしくは「展覧会の紹介」をお読みください。 

 なお、2月前半の「道教大卒業制作展」についての記述は「展覧会の紹介」に移しました。

 北海道教育大学大学院美術教育専修修了制作展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 10人が出品。さすがに院生とあって、先の卒業制作展にくらべると完成度の高い作品があつまっています。
 久野志乃さんが「二つのイメージ」という、ふたつのキャンバスからなる油絵を出品していました。
 大きなスタジアムの客席にひとりですわっている人。周囲の風景は、ながれるようなタッチで処理され、なにが描かれているか、わかるようでわかりません。
 会場の入り口にあった彼女の修論のプリントを見ると、最初に名前が引用されていた美術家がエリック・フィッシェルだったので、なんとなく
「やっぱりなー」
と思ってしまいました。
 彼女の絵画は、フィッシェルとか、ゲルハルト・リヒターといった作家の業績を踏まえて見るべきなんじゃないでしょうか。
 すくなくとも、某新聞にあったように「幻想的」ではないでしょう(この記者は、抽象画でもリアリズムでもないときはなんでも「幻想的」と形容すればいいとおもっているらしく、ケント・カールソン版画展でも「幻想的」と書いていた。それは、ちがう。幻想という語は、たとえばギュスターブ・モローの絵みたいな場合にもちいるべきである)。
 「どうして絵画なのか」
という問いに自覚的であるということだけでも、彼女の絵が、道内でいまかかれつつある絵画のなかで独自の位置を占めているといえます。そして、クリスティアン・ボルタンスキーやアンゼルム・キーファーといった作家とことなり、自分のなかに、彼らのような、表現すべき記憶なり主題の欠落していることにたいしても、ある程度自覚的なんじゃないかと、筆者には感じられます。
 彼女は、若手グループ「loppaco」の一員として、ユニークなパフォーマンスアートにもとりくんでいます。そういう、いわゆる“現代美術”的な活動と、絵画とが、どのようにむすびつくのか、こんどたずねてみようとおもいます。

 間笑美さん「忘れ逝くもの」は、シュルレアリスムふうの油彩(これこそ「幻想的」だ)。
 わかい女性が透明な直方体に幽閉され、それを支える柱や、地面に亀裂が入っていることから、不安なムードをかきたてます。周囲にはトランプの札などが散乱しています。
 もう1点、「敬愛」という絵も出品しています。
 描写力は上がったなーと感心しました。ただ、間さんも、ギャラリーミヤシタで発表した抽象的な絵画とは、画風がかなり異なります。
 石垣亜希さんは、自画像を組み入れた「居場所」と題する油彩を2点。新見亜矢子さんは油彩「市場−初冬−」を2点。いずれも画風は、石垣さんが全道展、新見さんが道展で発表しているときとおなじです。ブルー系の色を多用して陰影を表現し、かきての感情がこめられている点では、共通するものがあると思います。ただ、新見さんは、1点は、二条市場を外から描いたものですが、もう1点はごった返す市場のなかをモティーフにしており、どうやらこれは、現代の実際の二条市場ではなさそうですが…。

 小田伸治さん「どんぐりストーブ」は、鉄による大作。丸っこいかたちがかわいらしいです。
 金子佳宏さんは、先日アートスペース201で「couleur」と題した木工の個展をひらいたばかり。すでに、若手木工作家という感じですね。「Slit」は、家具ともオブジェともつかない立方体。あちこちに引き出しがついています。「無題」は、勾玉というか、水滴に似た形のオブジェを15個床に配したインスタレーションです。
 河原大さんは「科学教育アニメーション」。1分半のクレイアニメです。子どもに無理なく受け入れられそうな、高水準です。もっとも、筆者は
「たきつけなしで、あんなにすぐ火がつくかなー」
と考えだすと、気になってしかたありませんでした(-_-;)。個人的な好みでいえば、2年前の卒業制作展の「自在時代」のほうがすきだったりします。
 白山郁美さんは金工。銅の「入る器」は、直径1メートル、高さ25センチで、力士が酒を飲むときにもちいる器よりも大きそうです。ほかに「わかろうとしてもわかりづらい文化をいつもとは違う方法で認識するために身につけてみる」という長い題のついたネックレスが数点。そのうち1点は、ガンプラ(人気アニメ「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデル)をつなげたみたいに見えるけど、ちがう?
 谷川よしみさん「きもちいいモノ」。学校にある掃除用具箱をひとまわり大きくしたような箱のなかに入ると、なかはシリコンゴムや白い毛皮で気持ちよいというもの。閉所恐怖症の人はたのしめませんね。
 米沢香奈さん「60のアナ」は、木工。三角形2面と五角形4面とからなる六面体を15個つなげた、一種のインスタレーション。すっきりした表現になっています。
 22日まで。

 第26回鉄道ファン/canonフォトコンテスト入選、佳作作品展=キヤノンサロン(北区北7西1、SE山京ビル)
 「鉄道ファン」は、3大鉄道趣味月刊誌のひとつ。ことしも2486点の応募があったそうです。札幌の会場には、佳作、グランプリ、金賞などを得た40点が展示されています。
 すごいのは、40点のうち、25点がSL(蒸気機関車)を題材にしているということです。しかも25点中24点がJRで復活運転しているSLです。
 最近JRでSLが走っているのは、山口線、磐越西線、釧網線、留萌線などごく一部の線区にかぎられています。その限定された被写体に、かくも集中しているのですから、SL人気の根強さをあらためて感じずにはいられません。鉄道写真の被写体は、客車(現在では大半が寝台夜行)、電車(通勤型、特急などさまざま)、ディーゼルカー、電気機関車、ディーゼル機関車、貨車、駅やレールなどの施設など、たくさんありますが、やはりSLの人間くさい魅力は圧倒的なのです。
 そもそも、鉄道写真の愛好者が急速に増えたきっかけが、70年代前半のSL引退でした。国鉄がJRになり、個性的な車輛はたしかに増えましたが、その半面で古い電車や客車がつぎつぎと姿を消していっていますから、復活したSLにファンが飛びつくのもむりはないとおもいます。
 ただ、上位に入った作品は、SL以外をうつしたものが多いようです。
 グランプリは、石澤さんという方の「お見送り」。お召し列車から手を振る天皇、皇后と、線路際にならんで見送る、おそらく農家の人々を、列車の真横からとらえた1枚です。たしかに、めずらしい一瞬です。ただし、カラーでなければ、見送っている人々の衣服の古めかしさもふくめ、昭和30年の写真といわれればうなずいてしまいそうで、筆者はクラクラしました。
 金賞は、案内状にも印刷されている、住本勝也さんの「白いかもめ」です。闇に浮かび上がる白い特急の車体は、シャッタースピードがおそいことで、かえってスピード感を増して見えます。背景がほとんど見えないのが、画面をすっきりさせています。
 筆者の好みでいえば、網谷秀幸さん「塘路駅夕景」。C11からいっせいにふきあがる蒸気が、夕映えを反射してエメラルドグリーンを帯びています。「塘路(とうろ)」は、釧網線の駅です。釧路湿原のなかにあります。
 写真はどれも良いのですが、撮影地と、撮影者の住所が書いてないのが残念です。よほど詳しい人でないと、撮影地を特定できないんじゃないでしょうか。

 それにしても、鉄道写真というジャンルがかくも郷愁をさそうのはなぜでしょう。
 わたしたちはそこにロマン主義の影を見ることができます。
 距離的あるいは時間的にとおくへだたった「ここではないどこか」を具体的に想像し、あこがれ、もしくは現実との落差に絶望する−という所作は、近代に特有のものです。鉄道は、近代のわりあい早い時期から、「ここではないどこか」へつれていってくれるという人々の希望を体現していたといえるのではないでしょうか。
 あるいは、「車窓風景」と「映画」の共通性(ゴダール「中国女」)。「国民国家」の形成における「鉄道」の役割…。

 21日まで。
 東京、福岡、仙台はすでに終了。3月6−12日、大阪・梅田、3月24日−4月4日、名古屋に巡回します。
 なお、おなじ会場のミニギャラリーでは、松田光司「ブータン紀行」もひらかれています。つい近年までテレビもなかったヒマラヤの秘境を撮影しています。

 第37回藤女子大学 卒業制作書展=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階)
 先日の教育大岩見沢校の卒業展が漢字中心だったのにたいし、こちらはかながほとんど。臨書だけでなく、創作もかなりあります。
 中野北溟、松本暎子、平田鳥閑、小森和雄、大川壽美子の5氏が賛助出品。かなの大家・松本さんは、めずらしく拓本です。
 藤女子大書道部による「わかな書展」も併催。在校生10人による共同制作の屏風などもありました。
 23日まで。

 ニャンコのワ・2=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 猫好きにはたまらないグループ展。版画、置物など、猫を題材にした作品であふれています。
 東京の木版画家で、雑誌などでもよく見る大野隆司さん、空知管内長沼町の金工作家・上杉あいさんら7人が出品しています。
 それぞれの作品は比較的安いですし、じぶんの猫をモデルにした作品のオーダーメイドにも応じるそうですから、お好きな方は足を運んでみてはいかがでしょう。 

 石黒義栄・村上和美二人展 花の写真とパステル画=同
 石黒さんが写真とパステル画2作、村上さんがパステル画。
 パステル画は、ボタニカルアートとちがい、適度にラフな筆致で描かれています。資料館の裏庭など、花のある風景を描いたものもあります。写真も、ホタルブクロなど、めずらしいものがありました。
 23日まで。

 さいとうギャラリーのある「ラ・ガレリア」のエスカレーターぞいに展示してある藤野千鶴子さん(札幌、美術文化協会・新道展会員)の絵が入れ替わりました。さらに明度があがり、白や赤のめだつハッピーな作品になっています。5階ギャラリーまでの行き帰りは、エレベーターではなくエスカレーターでどうぞ。


 2月18、19日(火、水)

 川本ヤスヒロ展ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)
 川本さんは石狩市在住の画家。全道展会員、独立美術の会友です。
 例によって、しゃれこうべをメーンのモティーフにした油絵の大作や小品がならんでいます。
 いやでも、人間の死について考えさせられてしまう、重々しい絵です。
 構図的には、画面の下方にしゃれこうべを中心に、絵によっては自画像や猫の顔とならべ、画面の上半分に横たわる骸骨などを配しています。したがって、逆三角形の構図になっています。
 もちろん、サブのモティーフは絵によってそれぞれことなり、「石狩挽歌」と名づけられた2作では、左のほうに花束が荒々しい筆致で描かれていますし、「クノッソス」と題された2作では骸骨といっしょに裸婦も横たわっています。
 その重たさの中で、一服の清涼剤のようになっているのは、愛猫のチャメの存在です。チャメのユーモラスな顔がしゃれこうべの横に描かれている絵もあって、なんだかほっとします。
 川本さんはことしの全道展にも300号だかの大作を出すそうです(全道展は、会員は10人だけが超大作を出せるそうで、これは希望者の抽選なんだそうです)。とにかく、そのパワーにはびっくりさせられます。
 出品作は以下のとおり。とくにしるさないものはすべて油彩。

 1987年:「石棺(ある光景A)」(エッチング)、「ゴヤのパンティオン(マドリッドにて)」(木版画)
  95年:「顔A」(F10) 
  96年:「骸骨のある自画像」(F30)
  97年:「生命」(P25)
  98年:「コ」(F30) 「ひとり」(M20) 「顔B」(F10)
  99年:「ワシリー寺院(モスクワにて)」(木版画)
 2001年:「石狩挽歌A」(F130) 「石狩挽歌B」(F100) 「夢(む)」(135×135)
  02年:「骨(こつ)」(270×160センチ) 「クノッソスA」(F130) 「挽歌」(S100) 「クノッソスB」(F100) 「ブルーの空間」(変15) 「二つの顔」(変15) 「入院中の自画像」(F6) 「顔E」(1号) 「糸杉」(デッサン) 「オリーブの木」(1号、デッサン)
  03年:「漂着」(S100) 「右顎の欠けたしゃれこうべ」(F50) 「しゃれこうべA」(F50) 「裸婦A」(F30) 「花柄の壁紙の自画像」(F30) 「チャメと二人」(F15) 「赤い帽子(モロッコにて)」(F10) 「石棺(ある光景B)」(F10) 「ロジャー・ケンワージー先生の肖像」(F10) 「しゃれこうべB」(F10) 「顔C」(全紙) 「顔D」(F8) 「二人」(F4) 「チャメA」(F4) 「しゃれこうべC」(F3) 「チャメB」(サムホール) 「ネコと女」(サムホール) 「チャメC」(0号) 「デルフィの遺跡にて」(0号) 
 なお、目録のプリントにある「裸婦B」は出品されていません。 

 23日まで。

 美の小回廊(プロムナード)ギャラリーどらーる(中央区北4西17、HOTEL DORAL)
 企画画廊「ギャラリーどらーる」がことし3−12月に毎月ひらく個展に登場する画家の、いわば「顔見世展」。
 あらためて顔ぶれをしるすと…
 3月。東誠展(函館。新道展会員)
 4月。平向功一展(札幌。道展会員)
 5月。佐藤潤子展(同)
 6月。矢本政行展(登別。行動展、全道展会員)
 7月。夏山亞貴王展(札幌。全道展会員。故人)
 8月。北浦晃展(室蘭)
 9月。高橋佳乃子展(札幌。道展会員)
 10月。徳丸滋展(後志管内倶知安町。全道展会員)
 11月。谷口一芳展(札幌。春陽会、全道展会員)
 12月。鵜沼人士展(札幌。道展会員)
 このうち、平向さんが日本画で、あとはすべて洋画です。
 小品展なのかなーとおもっていたら、50号クラスの絵もかなりありました。ただし、ほとんどはここ数年で発表済みの作品です。
 高橋さんが抽象画で、しかも画面の大半を、黒く塗りつぶした作品。急に、試行錯誤をはじめたのでしょうか。
 東さんは、巨人の両手がスパナなどの工具になっているという、これまたふしぎな絵を出しています。

 見に行って、まだ書いてない展覧会が多数あります。20日じゅうにはかならず更新しますので、ご了承ください。


 2月17日(月)

 〜光への誘い〜 渡辺節代ステインドグラス札幌教室作品展大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 18歳まで札幌在住で、現在は茨城にアトリエを持つ渡辺さんですが、現在札幌に教室を持ち、おおぜいの生徒さんがいらっしゃいます。
 今回は、その生徒さんたち34人の展覧会。アールデコ調の、曲線のゆたかな模様のついたランプスタンドなどが中心。とくに、上のフロアは、電灯をすべて消してあかりだけをともしているので、なかなかきれいなながめです。
 筆者が行ったときには、おばさんたちで混雑していました。
 18日で終了。

 ケント・カールソン版画展=ギャラリー山の手(西区山の手7の6)
 スウェーデンの美術家。かつて1年間ほど、旭川の道東海大の教壇に立っていたこともあるそうです。
 今回は版画30点。かるい感じの作品です。
 A3判くらいの紙のまんなかに、A6判くらいのちいさな絵が刷られています。地はなし(紙の色)。
 たとえば、かなづちの絵が「バンバンバン!!!」とか、脳みそに船の錨がぶらさがっているのが「二日酔い」とかは、おもわずクスリとわらっちゃうし、大きな蝶が自動車の上に覆い被さるようにとまっている図柄が「自然のリベンジ」というのもわかるんだけど、バラとハンカチで「トーキングヘッズ」とか、アリと地球を重ね合わせて「偽善者」とか、なにを風刺してるのかさっぱりわからないのもありました。
 エディションがみな66点というのも、おちゃめだとおもいます。
 28日まで。

 田巻秀敏写真展「がう。」=ニコンギャラリー(北区北7西4、新北海道ビルヂング2階)
 ニューヨーク滞在中に撮影したモノクロ12枚。
 バスのなかでほほえむ黒人の青年、舞い散る落ち葉の中を肩をすくめて歩く老人、夜の路頭でサックスを吹く男。なぜか、ウィリアム・クラインにも共通するかなしさみたいなものをかんじてしまう。
 焼きはやや軟調ぎみ。これはあくまで好みの問題ですけど。
 27日まで。


 2月16日(日)

 加藤D輔写真展アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
 北星学園大に在学中の若手です。
 昨年11月に、北大写真部の2人と組んで、3人展をひらいたばかり
 今回は、モノクロ12点プラス6枚からなる組写真、それにカラー7枚を出品。
 だれもいない冬の荒れた海辺や、空など、心象風景ともいえる寡黙さは変わってないようにおもえました。
 「My Inner Feelings and Thankfulness」の夕映えのうつくしさには、うっとりしました。
 露出(あるいは焼き)が若干アンダーぎみに感じますが、筆者は、心象風景なんだからこれぐらいがむしろ適正なんじゃないかとおもいます。
 ただ、これは筆者の個人的な意見ですが、かならずしも1枚1枚に題はいらないような気がしますが、どうでしょう。

 2002年度卒業制作展 北海道教育大学岩見沢校美術研究室=同
 おもしろかったです。札幌校にくらべると、少数精鋭ってかんじでしょうか。ひとりで複数の作品を発表しています。
 鬼頭渚子さん「Community-1」。針金でかたちをつくった大タコのような彫刻を、赤い毛糸でくるんだインスタレーション。形のユニークさもさることながら、硬いものとやわらかいものの共存、さらには、男性的な作業と女性的な作業の合体−なんてことまでかんがえてしまう作品でした。
 牧野祥子さん「OFF ON」。三つの数十センチの立方体からなるインスタレーション。表面からビニールチューブがはえていたりして、触覚でたのしむ彫刻。
 松本ゆかりさん「A−B−C−」。白い紙のエンボスの凹凸だけで作成。版画ってなに? と自問し、見る人にも問う作品。
 浅沼さゆりさん「虚」「拒」。テンペラ技法で、手の動きなどをモティーフにした絵画。独特のマティエール。
 中畑亜紀子さん「響−踊る照明」。木工。壁掛けのあかりです。板が10数枚突き出ていて、を差し込む位置を自由に変えられます。音を出すとセンサーが感知して、光がつよくなるのもたのしい。
 大沢真人さん「bowl」。大がかりな木のおもちゃ。船の操舵を横にしたような大きなハンドルをまわすと、カムが作用して、ビー玉が低い位置からやや高い位置へと、えっちらおっちら上っていく仕組み。上り終えると、坂をガ〜っと転がっていって、またえっちらおっちら…。スタジアムの観客席のウェーブのように上下し、引力にさからってビー玉をはこんでいく木の部品のうごきがおもしろく、ついハンドルをうごかすのに熱中してしまいました。
 20−23日に、岩見沢校でもひらかれますが、こちらは卒業制作だけの展示になるので、点数は若干減る見通しです。

 escape3=同
 うめきち、きょったん、りゅうく、百合若、川村弥みの5人によるイラスト展。
 みなさん風変わりな名を名乗ってますが、いずれもイラストやウェブの仕事で活躍するプロあるいはセミプロの方ばかり。
 若い人のイラスト展だと、往々にして、スキルは後回しで、そのくせ説教っぽくて言いたいこと過剰−という場合がありますが、このグループ展はそういうことはありません。5人5様の個性がしっかり出ている、おもしろい展覧会です。たとえば、百合若さんは、正方形のコンピューターグラフィクスを約40枚ほどならべていましたが、文字が入っているのは数枚で、都会人の日常生活をかるくフラットなタッチで描いたものが中心で、押し付けがましくないのがなによりいいです。
 5人のなかでやや異質なのが、川村さんの仕事。すきな映画(「ロッキー・ホラー・ショー」など)の見どころなどを、文字や似顔絵などをちりばめた1枚の紙に、にぎやかかつたのしくまとめています。映画専門誌に載っていてもおかしくないできばえです。
 第1回は昨年の今ごろ。半年に1回という精力的なペースですが、百合若さんは
「2カ月に1度展覧会をやるぞ、と意気込んで予約を入れたんですが、さすがに大変。これからは、やりたくなったらやります」
と話していました。
 ウェブサイトはこちら。ここから5人のページにとべます。

 いずれも18日まで。
 百合若さんとおはなししていたら、akaさんが現れて、昨今のギャラリー事情などをしゃべっているうちに「平岡高校写真部展」の部屋が閉まっちゃいました。ここは午後6時20分閉廊か?! 
 ちなみに、道教大岩見沢校は午後6時で閉まりますので、ご注意を。

 十五人の作家による小品展=ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20)
 同ギャラリーで近年個展をひらいた、青山由里子安住公美子伊賀信、井上治子、内田芳恵、梅沢みほ、大矢朗子、酒井浩慶、椎名澄子、だてまこと、間笑美、林亨、牧野季昭、宮崎むつ、守分美佳の各氏が、小品を数点ずつ発表。販売もしています。
 個人的には、椎名さんの彫刻、すきです。女性ふたりと、彼女が立っている地面までをいれた作品です。腕をぴったり胴につけて立ち尽くしたり、すわりこむ彼女たちは、筆者の目には、おおきくてかなしい運命を甘受せざるをえない人々のように見えるのです。
 林さんの紹介などに、リンクをはっておきました。
 23日まで。

 小林俊哉展=TEMPORARY SPACE(中央区北4西27)
 江別出身、東京在住の現代美術家。
 今回は平面10点。いずれも、黒い地に、あざやかな黄緑で、植物のかたちを描いたもの。
 輪郭は写実的なのですが、それ以外の要素(羽と茎の境目とか、葉脈とか、陰影とか)はいっさい省略されています。
 ご本人に話を聞けずにおわってしまったのですが、「わたしたちが『ものを見る』というのは、どういうことか」をあらためて問い直す作品ではないかと思いました。たとえば、黒に黄緑の一定程度の面積の塊があって、どうしてそれを植物だと認識できるのか、とかね。
 3月1日まで。

 日本画家の奥田元宋さんが亡くなりました。90歳でした。
 日展の重鎮で、文化勲章受賞者です。
 なにせ北海道には日展が巡回してこないし、関係者もすくないので、筆者も売り絵をふくめ実作を見た記憶があまりありません。道内を描いた風景画くらいはあると思いますが、それほどふかいゆかりはなさそうです。