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あーとだいありー 2004年11月−05年1月
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 (2005年1月2日)

 あけましておめでとうございます。

 未確認情報ですが、毎年道内で唯一移動展をひらいている全国公募展である行動美術の函館展が今回か次回で終了するということです。
 行動展は、戦後に二科展が三分裂した際に発足した有力公募展で、創立会員に田辺三重松と田中忠雄という道内出身の画家がいたこともあり、北海道との縁は深く、一時は札幌と函館の二会場で移動展がひらかれていたこともありました。
 函館の移動展の実務を担当してきた木村良さん、三箇三郎さん、近堂隆志さん、橋本克豊さん、宮本翠さんといったみなさん、おつかれさまでした。

 恒例ですが、北海道新聞の1月1日の紙面に、ことしひらかれる美術展の一部の日程が紹介されています。
  • 美術館に行こう! ディック・ブルーナに学ぶモダンアートの楽しみ方=札幌芸術の森美術館(4月2日−5月15日)、釧路市立美術館(5月21日−7月18日)
  • ロートレックとモンマルトル展=道立函館美術館(4月9日−5月15日)、道立旭川美術館(5月28日−6月26日)
  • 大(Oh!)水木しげる展=道立旭川美術館(4月9日−5月22日)
  • 黒澤明アート展=道立釧路芸術館(4月23日−6月22日)、道立函館美術館(7月9日−8月28日)
  • 生誕100年本郷新彫刻展=札幌彫刻美術館・札幌芸術の森美術館(5月21日−6月19日)
  • 円空展=道立近代美術館(6月7日−7月18日)
  • イサム・ノグチ展=札幌芸術の森美術館(7月2日−8月29日)
  • 柳宗悦の民藝と巨匠たち=道立帯広美術館(7月12日−9月4日)
  • 流行するポップ・アート=道立近代美術館(7月26日−8月28日)
  • 東京国立近代美術館工芸館所蔵作品展=道立釧路芸術館(8月27日−10月13日)
  • 生誕100年記念三岸節子展=道立三岸好太郎美術館(9月17日−10月26日)
  • 米坂ヒデノリ展=釧路市立美術館(10月1日−11月13日)
  • 書と写真に見る北海道展=道立函館美術館(10月22日−12月18日)
  • 昭和初期彫刻の鬼才たち=札幌芸術の森美術館(10月28日−1月15日)
  • 小野州一展=道立旭川美術館(11月12日−3月5日)
 小野州一展の会期が長すぎるような気がしますが、合ってるのかな。


 それでは、11月のつづき。
 かなりわすれているので、各作家のかたにはもうしわけありませんが、簡潔にいきます。

 小島和夫展ギャラリーどらーる(中央区北4西17、HOTEL DORAL) 地図D
 1945年室蘭生まれ、東京藝大卒の日本画家。
 院展特待、ということは、写実的な画風です。
 いちばん印象にのこった絵は「復活祭」でした。
 これは、218×173センチの大作です。ルーマニアに取材した人物画ということです。
 どうやら、父子のように見えます。父親は、ベレー帽のようなものを目深にかぶって、緑のカーディガンをはおり、さらに紫がかったベストを着ています。
 ちょっと腕の長さが不自然なような気がしますが、絵を損ねているわけではありません。
 手前に立つ男の子は小学生くらいでしょうか。こちらは、デービー・クロケット帽のようなものを頭に載せ、チェックのシャツの上に朱色のセーターを着ています。緑のひとみが柔和で、すてきです。
 背景には、聖人画のようなものが見えますが、判然としません。霧のような白い絵の具が漂うのは、小島さん独特の手法です。
 もともと東洋の絵画は、西洋と異なり、描きたくない背景は描かず、空白のままにするのが通例です。あるいは、絵巻物にあるように雲で隠すこともあります。しかし、西洋画と出会うことで生まれた院展の日本画では、そのようなやりかたは通用しません。小島さんの手法は、主要なモティーフをうきたたせ、周囲を神秘的にぼかすのに、むいているといえるかもしれません。
 ほかの、サイズの大きめの作品は「ソグド幻想」「沙路」「サマルカンドの男」「胡同(北京)」などと題されています。国内でも西洋でもない、アジアから東欧にかけての地域にロマンティシズムの題材をもとめる近年の院展の傾向に合致しているといえると思います。「サマルカンドの男」は、背景にあるターコイズブルーの青い文様が美しい。
 小品は、典雅な雰囲気を保った椿やアネモネなどの花鳥画です。
 11月1−30日


 米原眞司展江別市セラミックアートセンター(江別市西野幌114)
 米原さんは1961年東京都武蔵野市生まれのガラス作家です。
 江別市セラミックアートセンター多摩美大でガラスを学び、88年から道立工業試験場野幌分場に勤務。その後、江別に工房を設置し、現在にいたっています。
 吹きガラスで作った球体の表面に、ガラス繊維や、色ガラスを重ねたものを溶着させる独特の技法で、国内外で注目されているということです。
 作品は37点。一部、壁掛けタイプもありましたが、ほとんどは球体で、、いわば球体の抽象画といえそうだと思いました。
 つかわれている色は、白や赤など、それほど多くないのですが、それらが織りなす縞模様を見ているといつまでも飽きません。
 作品そのものが持っている力が感じられました。
 10月30日−11月14日


 杉田光江展Gallery 門馬アネックス(中央区旭ヶ丘2 地図E)
 杉田さんは札幌のいけばな作家ですが、 植物の種子を大量にもちいたインスタレーションな杉田光江展の会場風景どを発表し、美術の領域でもさかんに活動しています。
 2001年には、1個人・1グループとともに、草月美術館で大規模な展覧会もおこなっています。1999−2000年には道立旭川美術館の企画展「ふわふわワンダーランド」にも出品しました。
 さて、この会場は、いままでも多くの作家にサイトスペシフィックでユニークな展示を誘発してきましたが、今回の杉田さんも、東から日光が差し込む細長いスペースを有効に活用しています。
 つかわれているのは、北見の友人から送ってもらったという、ホリジウムという園芸植物の種子。綿毛がすりガラスの窓を覆っていて、なんともふしぎな光の効果をもたらしています。
 左の写真ではわかりませんが、入り口附近には、水を入れた円筒の容器が置いてあり、水には赤いもみじがうかんでいました。
 設置には3日もかかったそうですが
「こんないいところで作業に没頭できて、ほんとに幸せ。最高でした」
と笑顔でした。
 ただし、ギャラリー前の道路工事と会期がかちあってしまったのが、ちょっと残念だったかも。
 11月5−13日

■札幌の美術2004(04年3月)
■北海道抽象派作家協会展(03年4月)
■「キャバレーたぴお」展(02年)
■01年2月の個展
■「キャバレーたぴお」展(01年8月)


 北海道浅井学園大学・北方圏アートプロジェクト/文部科学省学術フロンティア推進事業 国際美術展2004道立近代美術館(中央区北1西17 地図D
 おそろしく長いタイトルだけど、図録の「ご挨拶」によると、こういうことのようです。
北方圏に住む人々の生活・文化の質(QOL)を豊かに発展させるため、現代美術が共通項としてどう成り立っているかを検証するものです。
この「アートプロジェクト」が活動を開始してから約4年が経過しました。その間、カナダ、中国、韓国、スウェーデンを訪問し、関係者にこのことを熱心に問いかけ討論をし、理解と協力を得ています。
北方圏アートプロジェクトは、日本を含め北方圏5カ国で活動する制作者30名、さらに作家作品研究者6名、合計36名による大規模な研究です。これまでに展覧会を6回開催しました。今回の「国際美術展2004」展は、その集大成として開催するものです。
 札幌市は、北方圏都市会議などもひらいており、市民にとって「北方圏」という概念はあんがいなじみのふかいものではないかと思います。
 たとえば、札幌の街燈はオレンジ色のものが多いですが、これは板垣元札幌市長が同会議で得た知見が元になっているようです(つまり、冬でもあたたかく感じる効果がある)。
 もっとも、各国の作家選定は、道浅井学園大学と交流のある大学関係者が中心となっているので、ここであまりお国柄を論じても意味がないでしょう。また、それぞれの作品がことさら「北方的」な雰囲気をただよわせているわけでもありません。

 現代美術が、一般的な人々のQOLにどこまでふかく関与しているかどうかは、いささか疑問ものこりますが(QOLをいうなら、手工芸とかお稽古ごとのほうが、合っているかもしれない)、その点で筆者の印象にのこったのが、スウェーデンのTryggve LINDBERGさんのプロジェクトです。過疎地にコミュニティバスを走らせて「交通弱者」の足の問題をとりあげています。
 というのは、今年(2005年1月)から、筆者のすんでいる渡島管内八雲町でも町内コミュニティバスの実験がはじまるんですよ。おとなりの長万部でも、町長が関心をしめしています。
 札幌あたりだとそれほど切実に感じられない問題かもしれませんが、道内ではすでに、ジェイ・アール北海道バスなどが不採算路線から撤退したため自治体自身がバス運行にとりくみ始めざるをえないところも出ています。
 ほんとうは、じっさいにバスを走らせたかったそうで、実現しなかったのはとても惜しいと思いました。
 北方圏というのは「人口密度が低い」というのも、意外な共通点かもしれませんし。

 ほかにIngrid ACKEWALD、Micael NORBERGの両作家は、家族の問題をとりあげていました。そこには、家族の問題が社会の問題に通じるという視点があるように感じられました。

 もうひとつ特徴的なのは、複数の大学から参加している韓国はべつとして、中国はハルピン、スウェーデンはウメオ、カナダはアルバータと、いずれも首都以外から参加しているんですね。
 これが、どういうふうに作品に影響しているのか。あんまり関係ないかもしれないけれど。
 10月31日−11月21日


 椎名澄子展ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20 地図D
 東京藝大を卒業した札幌の彫刻家。
 テラコッタを素材に、人体と植物や風景が融合したような、ふしぎな魅力とあたたかさをたたえた作品を作っています。
    椎名澄子「翼果」 椎名澄子「霽月」
 今回は10点。
 左は「翼果」。椎名さんにはめずらしい首ですが、瞑目した表情はなんともやすらかです。
 右は「霽月(さいげつ)」。「北の彫刻展」出品作の、エスキス的な作品です。
 ほかに、ひざを抱えて座る女性を模した「つぼみ」など、やさしさのある作品がならびます。
 10月27日−11月14日

■北の彫刻展2004
■13人の小品展(04年1月)
■椎名澄子展(03年11月 画像あり)
■北海道立体表現展(03年9月)
■しかおいウィンドウアート(03年夏)
■椎名澄子展(02年7月 画像あり)
■椎名澄子展(01年8月)


 松山敏展 Awesome Testimony千歳鶴 酒ミュージアム(中央区南3東5 地図G)
 ハワイで撮った浜辺や山、鳥などの写真を、パソコンで加工して再配置し、美しいユートピアの世界を現前させる札幌のPhotographix作家。
 レタッチソフト(Photoshop)をばりばり駆使しています。とはいえ、実物を派手に加工しているのではなく、それぞれの鮮やかさ、輝かしさが増しているのだと思います。
 とくに西洋人には、なにかholyなものを感じさせるらしく、海外からの引き合いも多いとのこと。じっさい、作者のサイトの掲示板は、英語の書き込みのほうが多い状態です。
 たしかに、夕空に鴎が飛び、椰子の木のしげる入江に舟が浮かんでいる情景を描いた「HOW FRAGILE YOU ARE」を見ていると、その完璧な美しさに、これは一種の天国であるなあ、などの思いを深くします。
 「大吟醸の思いやり」は、めずらしく茶目っ気を感じさせる作品で、下のほうを流れる川に日本酒のびんが冷やしてあります。
 10月30日−11月29日

□作者のサイト


 もみじ窯 香西信行作陶展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図)
 札幌の陶芸家ですが、空知管内栗山町にじぶんの穴窯があり、自然釉をかぶったダイナミッ香西信行さんの巨大な「焼き締め水盤」クな景色のうつわはここで生まれています。 
 香西さんの個展では毎回、巨大な作品が展示されるのがたのしみですが、今回は「焼締水盤」。水をたたえて、もみじを浮かべているのがおもしろい。窯の名前にちなんだわけではないようですが。
 自然釉をかぶったぐい飲みや茶碗、壺など、あたたかみのある色合いのうつわも、見逃せません。
 相当窯には慣れてきたようですが、絶対に、完全には思い通りにならないところが、陶芸のおもしろさであるという意味のことを話しておられました。
 11月9−14日

■大滝村北海道陶芸展移動展(04年1月)
■北海道陶芸会35周年展(03年11月)
■03年10月の個展(画像あり)
■北海道陶芸会展(02年11月)
■02年の個展(画像あり)
■01年の個展


 神様のつぶやき 山岸せいじ個展The Prestige Gallery(中央区北7西22)
 BORDERLAND 山岸せいじ個展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図)
 さいとうギャラリーでの山岸せいじさんの個展の会場風景肩書はフォトグラファーですが、美術と写真の領域にまたがって精力的に発表をつづけている札幌の山岸さんの個展が、2会場でひらかれていました。
 2000−02年ごろは
「来た話は拒まない」
という方針だったため、グループ展が多くなったようです。
 一時は、立体のほか、印画紙に直接光を当てた作品や、絵の具の飛沫による巨大な絵画など多彩な作風を見せていましたが、2004年に入ってからは、写真を素材にした、わりあいシンプルな作品が大半になっています。
 ただし、インクジェットプリントのため誤解されやすいのですが、写真そのものはデジタルカメラではなくネガカラーで撮影しているそうです。
 プレステイジのほうが「ぐるぐる」「ふくっ」「ゆら」「ほぉー」など。
 DMにも使われていた、旧作150枚を組み合わせた大作「過去でも未来でもなく」は、これらのなかでは異質な作品です。
 さいとうは「ひょろひゅる」「さらら」など。「ゆんらる」は鴨、「しゃっしゃ」は麦畑がモティーフだそうですが、ピンをはずして撮られた写真は、ぼわーっとしたあいまいさとおだやかさをたたえています。かたちがはっきりせず、色だけがあいまいに浮遊する世界です。
 個展のタイトル「ボーダーランド」について山岸さんは
「ちがうもの、たとえばプラスとマイナスとかの境界が、あいまいだという感覚が、自分のなかにあるんです。今回の写真も、きれいに見えるときもあれば、気持ち悪くも見える。その時々、気分で見え方がちがう。それは見る人の好みで見てほしい」
と話していました。また
「自分で作品を作っているという感じがあまりない」
とも語っていました。

■追悼 今井和義の一首を描く(04年4月)
■さらけだしexhibition(03年9月)
■passage(同8月)
■BLUE STONE(同5月)
■03年の通路(画像あり)
■noise of matters 啄ばむ春の(同4月)
■03年春の北海道抽象派作家協会展
■第22回存在派展(02年12月)
■閉塞形状展(同11月)
■SUMMER WAVE(同8月)
■夕張リレーション(同 画像あり)
■02年春の北海道抽象派作家協会展 (画像あり)
■02年4月の個展 (画像あり)
■山岸誠二・山岸美津子展(02年3月)
■第21回存在派展(01年12月)
■石川亨信・山岸誠二2人展(同8月)
■01年6月の個展
■素材の対話展(同5月 画像あり)
■2000年12月の個展 (画像あり)


 第24回存在派展アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル 地図)
 札幌の金子辰哉さんが主宰する、息の長い現代美術展。大御所・楢原武正さんも毎年小品を出品しています。
 ことしの金子さんは、前衛書道を思わせる淡墨の作品。
 林玲二さんが、旧式のコンピュータ用印刷用紙を使って、重厚なマティエールを現出させていた抽象画のシリーズ「連画ドローイング 土/振動尺へのオマージュ」が、一区切りつきました。やっと用紙の在庫がなくなったそうです。左に穴の開いたコンピュータのプリント用紙って、もう10年ぐらい見ていないような気がしますが、そういう軽い支持体で、林さんはいかにも存在感のある作品を作ってきたのでした。

■第23回
■第22回
■第21回
■金子辰哉さんの個展(03年9月)
■金子さんが出品していた「北海道抽象派協会展」(03年4月)