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あーとだいありー 2003年8月前半

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 8月15日(金)

 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2003 in EZO=石狩湾新港地区特設会場(小樽市銭函5)
 一部ではなにもないとウワサされていた、アート関係者の出展ですが、ことしは、SUN STAGE(メインのステージ)のすぐ横にテントを張って、もちつきなんぞをやっています。
 右の写真のような「きのこ」が目印です。アートスペースのテント
 大きいのは、JAMANIさんがつくったそうです。いわれてみれば、たしかに−って感じ。
 ちなみに夜はあかりになります。
 ユニークなのは、タダの貸衣装です。劇団から借りてきたそうです。
「こんなのだれが着るんや」
というかんじのハデハデなものが多いですが、けっこう借りていく人が多いそうです。
 夜は、近藤寛史さんや吉川貫一さんらの映像作品も流しています。
 また、札幌の若手作家では随一の肉体派(?)野上裕之さんは、一昨年のロッパコのときのように、自転車をこいで人を運ぶというパフォーマンス(というか、コミュニケーションアートの一種か)をしているそうです。見かけたら声をかけてあげてください。
 あすは、高幹雄さんのライブペインティングもあります。
 12時ぐらいまであいているそうなので、のぞいてみてはいかがでしょうか。

 関連ファイル:■昨年のライジングサン・ロック・フェスティバル(画像多数)


 8月13日(水)

 空知管内栗沢町美流渡、滝川、富良野市山部とまわってきました(ほんとは旭川にも足を伸ばす予定だったけど、時間切れ)。

 富良野市アートフェスタアートファーム南陽館(富良野市山部南陽、旧山部第二小学校)
 山部はもともと富良野市とはべつの村だったところで、富良野市街地から南へ20キロぐらい離れています。
 そこの廃校跡で、1日から、ガラスや版画、モノクロ写真現像・焼き付けなど、さまざまなアートの教室が展開されていました。受講者は富良野を中心に、函館や本州の人もふくめ100人を超したそうです。
 いまは教室は終了し、受講生の作品と、その期間滞在したアーティストたちの作品とが、以前体育館だった空間などに置かれています。
 おもしろかったのは、版画家・矢田博次さんの、カラー写真50枚からなる「フラノノコヤ(トキノマチエール)」。農機具などが置かれている小屋を正面から撮影しています。方法論はベッヒャー夫妻を思わせないでもありませんが、あざやかで、時にはどぎつく、また時には錆びが時間の流れを感じさせ、ユニークな図鑑のような作品になっています。富良野で、ラベンダー畑などを撮らずに、こういうものに目を向けるという発想自体がおもしろいと思います。
 前庭には、旭川市在住なのになぜか現地スタッフになっている山谷圭司さんや、空知管内長沼町在住の伊藤隆弘さんの石彫が置かれてありました。

 ところで、この「南陽館」の一部は、画家で、第1回三岸好太郎賞の受賞者として知られる盛本学史さんのアトリエとしてもつかわれています。
 アトリエにおじゃまして、未発表作などを見せてもらいました。
 「光工場」という、たのしくて、何分見ていてもあきない連作がありましたが、とうぶん発表する予定がないそうです。うーん、ざんねん。

 以下、後日。

 8月12日(火)

 本日は、大量です。
 したがって、各項目は簡潔にいきたいと思います。
 分野別に書きます。「絵画」「書道」はここからジャンプしてください。
 ただ、このpassageの下にある端聡さんのレクチャーについては、若い人には読んでほしいと思います。

 まず、写真から。
 passage 札幌展札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階)
 浅野久男さんが組織するグループ展。先週、東川で野外展をひらき、一部はそこでの作品がそのまま巡回しています。
 昨年あたりまでは、あたらしい傾向の風景写真という共通項みたいのがあったようですが、今回はバラエティーにとんでいます。外国人3人も出品しています。
 そのほかは札幌の若手が多いのですが、中吉和子さんのような年配の方もいらっしゃいます。
 目を引いたのが松山敏さんの作品。ハワイの風景をCGで再構成した、色鮮やかな(サイケと言ってもいいくらい)幻想的作品です。ウエブサイトでごらんになった方はいらっしゃると思いますが、本物は迫力がちがいます。
 また、写真集「portrait」を出したばかりの福岡将之さんが、「TOKYO RIVER」と題したカラー13点を出品。コンクリートで完全に固められ、上を高速道路が走る東京の川を夜、大型カメラと長時間露光で追い、無機質で冷たい表情をとらえています。東京暮らしの長い人はもう慣れっこになっているのかもしれませんが、あの光景を異様だと思う感性が正常なんだと筆者は思います。
 山岸誠二さんは「ぽわぽわ」「ゆらゆら」の2点。前者は海面に反射した光の粒を、後者は湖岸に生える草を、それぞれピントをずらして撮った写真を多重露光しています。シンプルですが、うつくしいモノクロふうのカラー写真です。
 東京の岡本勧さんは、故意のピンぼけによるカラー写真。暖色がなまめかしいです。
 ほか、風間健介さん、佐藤オリエさん、大沢亜実さん、廣島経明さん、渡邉可緒里さん、宮田亜也さんなどなど。

 ところで、筆者が初日に行ったのは、端聡さんの講演があったためです。
 題は「現代美術における、写真の行方」というものでしたが、内容は、若いクリエイタ−たちに先輩がカツをいれるといった感じで、サイコーでした。
 いわく

「人も自分も評価するな。作品は観察せよ」

努力するな。努力してつくったものにおもしろいものなんてない」

「自分の好きなことだけやれ」。

 すごいですね。この迫力、岡本太郎みたいだ。
「自分がわかる範囲のものばかりに触れていると感性は絶対に伸びません。分からんもの、むずかしそうなもの、なんじゃコリャと思うものに挑戦しないと、だめなんです」
「好きなことだけやると、自己満足だって言われると思うでしょう。それでいいんです。めざすは超自己満足です。むしろ、他人がどう思うかなどと考えて作品をつくると、『自己満足だね』と言われますが、自分の好きなことだけやると言われません」
「好きなものはどんどんまねしてください。自分をごまかしてオリジナリティーを出そうたってだめです。まねしてまねして、そこから自分というものが出てくるのです」
 でもねー、自分の好きなことだけをやりぬくって、じつはすっごくむつかしいことですよね。

 17日まで。13日からは、サッポロファクトリー煙突広場そばの特設会場でも展示されます。
 なんだか、浅野さんは、ネイチャーフォトのコーナーもつくりたかった、なんて言ってましたが、もしその方向なら、passageも変質していくような気がします。

 いかんいかん、簡潔にいくんだった。

 「歴代写真甲子園」〜懐古への旅〜=ほくでん料理情報館MADRE(中央区北1東4、サッポロファクトリー1条館3階)
 ことしで10回目をむかえた、上川管内東川町の「写真甲子園」。高校生たちが東川に泊り込んでいろいろな被写体にレンズを向けます。
 歴代の道内地区代表校の写真を3枚ずつ紹介しています。
 第1回から3回連続出場の函館白百合をはじめ、北星余市、札幌厚別、札幌静修、旭川凌雲、札幌北など、どれも若々しいです。ただ、テーマが書いてないのがざんねん。

 日常という名のリアル 真鍋裕美写真展=SAGATIK(中央区北1東4、サッポロファクトリー1条館3階)
 カラーとモノクロの、女の子の日常を撮った写真が大量。花の写真や身のまわりの人というのはよくある題材だけど、
「こんな日々をおくっていていいのかな」
という自問や焦燥、そして
「こんな日々でもいいのだ」
という気持ちの同居しているアンビヴァレンツな感じが、よくつたわってきて、若いときにしか撮れない写真だなーと、おもいました。
 17日まで。

 永井徹写真展 River Breeze=エルエテギャラリースペース(中央区南1西24、リードビル2階)
 根室管内の西別川の自然を撮り続けている写真家。
 護岸や堰などのほとんどない原始河川ですが、最近、バイカモが激減したことがニュースになりました。こんな北海道の辺境にも自然破壊がおよんでいるのです。
 しかし、およそ15点の作品(カラー)は、日本離れしたきびしい大自然をとらえています。
 真冬の霧氷、結氷する水面、やわらかい苔
 エンジュやカシワの木の質感を生かした額も作品にマッチしています。
 17日まで。

 フォトファン作品展〜ひとつめのたからもの〜富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館)
 若林直樹さんの教室展。
 分類すればネイチャーフォトということになるのでしょうが、コンテストで受けそうな瞬間狙いの作品ではなく、心象風景のようなさりげない作品が多いのが特徴です。
 そのためには、対象にぐっとせまって、露出をしぼって被写界深度を浅くし、背景をボケさせた写真が多くなっています。
 いささかはんらんぎみのネイチャーにくらべると、わたしたちのきもちにちかいところにある写真なのだなあ、という感じがしました。とくに、流氷原の上に月がかがやいている写真、すきだなあ。
 20日まで。

 写真同好会歩歩 第14回写真展札幌市資料館(中央区大通西13)
 倉本正一さんの指導するグループ展。ネイチャーが多いですが、祭りなどもあります。
 宮浦醴子さん「今朝の冬」は、湖岸のすすきに雪が乗っている場面をやや逆光ぎみにとらえています。こういうシャッターチャンスを逃さない姿勢には、敬服します。
 安藤裕さん「乱舞」は、おおぜいの子どもたちが白い丘の上で飛んだり跳ねたりしている一瞬をとらえたもので、姿態の変化におもしろみがあります。
 ほかに、河合玉枝、山田信子、田中公子、宮内英而さんが出品しています。
 17日まで。

 絵画

 斎藤由美子水彩画作品展札幌市資料館(中央区大通西13)
 道内の水彩画人口はかなりのものだと思いますが、そのほとんどのかき手が、つぎの3種類に分類されると言ってもいいすぎではないと思います。
  1. 繁野三郎の流れをくむ、穏当なリアリズム。道展に多い。
  2. 国井しゅうめいさんとその門下生の、透明感を生かしてさっと描いた人物や風景
  3. 八木保次さんの門下生に多い、フォービスム的な絵。大半が静物画。道彩展はほとんどこのタイプ
 だからダメだ、と言っているわけでは、もちろんありませんので、誤解しないでください。ただし、この3種にあてはまらないのが、宮川美樹さんや古田瑩子さん、栗山巽さんなど、ごくごくかぎられているという実態が、見る側にとってさびしかったりするわけです。
 前置きが長くなりましたが、この展覧会の斎藤さんの水彩は、いずれにもあてはまらない、あたらしいタイプのリアルな水彩画になっていると思います。
 それは、たとえていうと、薄曇の日中の、フラットな光線でとらえられた公園や路傍の花です。それぞれの葉や花がひとつひとつ丁寧に、陰翳は強調されずに描写されています。ただ詳細に描くだけでは、画面がうるさくなりますから、フォーカスをはずれた周辺のモティーフは、さりげなく薄い色で描かれています。
 「ひみつの花園T」「ひみつの花園U」は、道端に咲くタチアオイがモティーフ。ほかに、晩秋の知事公館の庭を描いた「秋葉をあつめて」など。
 「利休梅」は、ちょっと見には写真かと思ったほどです。
 「夏風薫る」「秋艶」「小春日和T」「小春日和U」はいずれも、道立近代美術館の北側のナナカマドを、季節を変えて描いています。「秋艶」では、まだ実だけが青いのですが、「小春日和U」では雪の季節になっています。ところが、ことしは、もう札幌市内のナナカマドの実が赤いんですよ! そりゃないよなー。
 「シャクナゲ」「フリージア」といった小品も、背景をフラットに塗るなどの工夫がほどこされ、見事なできばえです。
 18日まで。

 坂東宏哉個展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 平坦に塗った色面と、さまざまな文様をひっかいて描いた面とを、対比的に配置した抽象アクリル画26点。
 たぶん櫛などをつかって、黒の絵の具がかわくまえにいろいろな文様をかいているのだと思います。石器に刻まれた古代文字のようにも見えます。
 おそらく、この「ひっかき」によるモノクロームの部分が、画面すべてを覆っていたら、あまりおもしろくない絵になったかもしれません。それと対峙するように、鮮烈な色彩の面が地になっているからこそ、ひっかきが浮きでているのではないでしょうか。
 とりわけ「赤い砂(銘の棺)」などは、モノクロの「ひっかき」の部分が後退色のため、赤い地から数センチも引っ込んで見えます。絵を見るおもしろさがあります。
 地の部分は、重ね塗りをして、単調さをふせいでいることはいうまでもないでしょう。
 ほかに「群青の月」「赤い溝」など、色の対比がすてきでした。
 札幌在住、道展会員。

 板谷諭使展=同
 ベテランの多い全道展の絵画部では、1961年生まれというのはかなりの若手に属します。
 大作は、「鳥の見た夢」と「いつか海を見た」という題を持つ絵が4、5点ずつあります。この3年間に描かれたものです。どれも、ふしぎな世界を描いています。シュルレアリスムということになるのかもしれませんが、そのひとことでかたづけてしまってはつまらない。
 「鳥…」は、鳥の帽子を鼻までかぶった女性が登場します。背景には、古い木造の船や、巨大な昆虫の羽根が描かれていたりします。女性が針金のようなものに巻かれている絵もあります。
 一方、よりあたらしい「いつか…」は、人間は出てきません。小鳥が巨大に描かれ、やはり古い木の船に乗っています。船は地上にあったり、空中にうかんでいることもあります。
 こうしてことばで書いていても、ぜんぜん絵の魅力をつたえたことにならないな。これは実物を見てほしいです。
 旭川在住、全道展会員。
 19−31日には、深川駅前のアートホール東洲館でも個展がひらかれます。

 第27回日本画藻花会展=同
 川井坦さん(道展会員)の指導するグループ展。
 道展会員の大塚さつきさんをはじめ、みなさんお上手です。大塚さんの「風景」は、白樺が13本ならび、遠くに山の見えるごくありふれた風景ですが、こういう風景はいいですね。
 大溝雅之さんの「佳景」は、宵闇が近づく林間の川を描いています。
 おもしろいのが越智次朗さんの「景」です。木々を描いた水墨画、ということになるんでしょうが、輪郭線をまったくもちいず、灰色の濃淡だけで風景をとらえているのです。モノクロでありながら非東洋的世界が現出しています。

 共振する空間展4=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館)
 阿部有未さん、久保千賀子さん、三条真知子さん、星こず枝さんと、ギャラリーオーナーの竹田博さんの計5人が出品。
 なんとなく妙でおもしろかったのが三条さんの「渦」。洗濯機がモティーフです。こういうのをまじめに油彩で描かれると、なんだかふしぎな感じですね。
 星さんは段ボールに黒鉛のようなものを塗って、段ボールの材質感というのかマティエールを出しています。「M」は158センチ四方という大作です。

 以上、16日まで。

 いちいの会油絵展=札幌市民会館2階ギャラリー(中央区北1西1)
 田中進さんという方の指導するサークルで、計14人がだいたい2点ずつの小品を出品していますが、緑色の諧調がゆたかな風景画が多く、たのしめました。
 佐藤勝子さんの「中秋の月寒」、金田慶子さん「忍路の集落」など、ふつうは気にも留めないようななにげない風景ですが、きっちりと遠近のある構図を決めています。小田正男さんの十勝岳を描いた絵なども、さまざまに緑が描き分けられていて良かったです。
 15日まで。

 間笑美展=ギャラリーミヤシタ(中央区南5西20)
 会場の左側の壁には、ようかんのような細長いキャンバスに、迷路のように走る縦と横の直線を描き、わずかな着彩だけをほどこした作品がならんでいます。一瞬、モンドリアンを連想しますが、あれよりずっとポップです。
 ただ、ほかに茶系の色などが塗られたものや、丸いキャンバスの作品もあり、とても同じ人が描いたとはおもえません。
 17日まで。

 原賢司油絵展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 北海道美術作家協会の会長。
 道美にはよくライラックの絵を出品していますが、この個展では、ライラック18点、ハマナスなどほかの花が26点(数え違っていたらすいません)で、意外な結果でした。
 そのほか、積丹などの風景画が数点。
 17日まで。

 イラスト。
 3(sun)展アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
 若手イラストレーター、佐々木尚さん(ひさしと読みます。男性です)の初個展。
 個展なのにどうして「3」なのか。グループ展をいれると3度目の発表で、太陽(Sun)のような女の子の絵があって、3つの種類の作品があって−といろんな理由があるようです。
 3種類の絵とは、オリジナルのキャラクター「マルメロ」をペンで描いた童画ふうのシリーズ、CGによる元気な女の子の絵、シャープペンシルでかかれた細密なイラスト作品。
 筆者は、マルメロが気に入りました。まるまっちくてかわいいヤツです。秋になると紅葉をもたらす「もみ爺」など、脇役陣も個性豊かです。
 12日で終了。
 なお、アートスペース201は、13−20日にお盆休みとなります。

 円山憧憬カフェ・ルネ(中央区南4西22)
 「円山散歩道」というミニコミ誌を発行している吉田陽二さんが円山界隈で撮影した写真と、みじかい文、それに、その誌面でイラストを描いている桜井比呂美さんの展覧会。
 わずか4点でしたが、桜井さんのイラストがかわいらしかったです。「初夏のハーモニー」は、マンションのバルコニーでシャボン玉を吹く家族を、「浅紅の春」は、桜色の遊歩道を駆けていく子どもたちを描いています。これは、いまは暗渠になってしまい、大半が遊歩道になっている界川のイメージなんだそうです。
 19日まで。

 書道
 竹内津代小品展・むらたけ会書展=スカイホール全室(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 竹内さんは北海道書道展会員のかな作家。札幌在住。
 全体的に、やわらかい筆致で小さくまとめた作品よりも、かすれなどを意に介さず押し切った硬質の作品がめだったように思いますが、いかがでしょうか。また、全体のバランスなど、周到に考えられているのが分かりました。
 全体で異彩を放っていたのが、宮古文恵さん。金子みすヾの詩を書いており、かなというよりも近代詩文の趣があります。
 17日まで。


 8月9−11日

 更新が大幅に遅れ、申し訳ありません。
 まず、12日までの展覧会。

 第9回 NAC展=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 伊勢幸広、鈴木勝、滝本宣博、林雅治、堀江隆司、前田英伸の6氏による、陶による造形をめざすグループ展。木村初江さんは、今回はお休みです。
 まず下のフロアから。
 鈴木さん(札幌)は初参加のようです。
 ことし3月の「生まれいづる土塊」展で木戸から陶片が剥落する大作を出していた鈴木さんだと思うのですが、道内にはしっとりした萩焼をつくる鈴木勝さんもおり、どうも筆者の中ではむすびつきません。
 今回は、6つの輪がつらなった「REINCARNATION(KAOS⇔KOSMOS)」と、好戦的な米国を皮肉った「終戦記念日を前に… アメリカンコーヒーセット」3点セット。後者は、しゃれこうべの形をした金色のシュガーポットなどです。
 滝本さん(上川管内東川町)は、昨年のNAC展、10日まで江別市セラミックアートセンターでひらかれていた「陶のかたち」展と同様、「ゆらゆら 顔に優しく息を吹きかけて下さい」というインスタレーション。マッチ棒のような細いかたちが15本ほどならびます。先端の顔が息で揺れると、底の部分がつながっている隣りの棒もゆらゆらゆれるのがたのしいです。
 林さん(後志管内倶知安町)は、先日の個展の延長線上にあるオブジェ。白い筒がにょきにょきとうごめいているようです。
 つづいて上の階。
NAC展の会場風景 堀江さん(夕張)は6枚の陶板。斜めにひかれた直線や丸などで構成されたシンプルなデザインですが、表面にぬりこまれた砂などが表情にいっそうの変化をあたえているようです。
 昨年からくわわった前田さんは、6つの部分からなる「cell A」と、9つからなる「cell B」。白い不定形の円盤(赤血球のようなかたちです)の上に、金属を塗ったパスタのような陶片が置かれています。前田さんなりの「細胞」の表現なのでしょうか。
 伊勢さん(岩見沢)は「立棺」と題した、人間型の作品が3点。田村隆一の詩や昨年亡くなった小谷博貞さんの絵とおなじ題名で、腕のない人間は、まるで囚われの身のようです。
 しかし、左側の女性の胸の部分や、中央の男性の陰部だけが、ハデに着彩され、しかも3人の顔が伊勢さんの家族そっくりなどという話を聞くと、不吉な作品というよりむしろほほえましささえ感じられます。

 関連テキスト:■昨年のようす ■2001年の様子

 10日で終了した展覧会について。

 銀彩の輝き=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1)
 1890年ごろから米国で始まり、1920年ごろにはすたれてしまったガラス工芸「シルバー・オーバレイ」を、米国在住の原登美枝さんがコレクションしたもの。硝子に銀で模様を細工した、皿などです。
 つやのあるガラスと銀は、年代を感じさせません。意匠も、スズランなどで、アールデコなどとくらべても古くさくありませんでした。
 「いまもつづいている技法だったらコレクションしてなかったでしょうね」
と話す原さんは、全国で紹介の展覧会をひらいているそうです。

 第十回 辻井京雲個展 −余白の風景札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
 辻井さんは札幌の初夏、道教大教授。近代詩文・漢字の大作計20点が、市民ギャラリーのおおきな展示室の空間に負けていません。力のこもった書展でした。
 とぼしい経験から筆者の印象を述べると、辻井さんの作品は、パワフルななかにも、まとまりを重視したところがあったと思います。
 ところが、今回は、かなりパワー優先というか、破調をおそれない豪胆さを感じました。
 宗左近の詩に材を得た「宇宙の外へ萌えでて行こう」という作品がありましたが、この詩行がはらむスケール感こそが、辻井さんのいまの心境にマッチしているのではないかと思います。この作品では、とくに「宇」の字の墨痕に、作者の呼吸が凝縮されているような感がありました。
 淡墨による「雲夢」にしても、この漢字が行書なのか草書なのかを問うてもむだなような気がします。そこにあるのは、作者の造型感覚と、わきおこってくる気合のようなものだからです。この二文字を見ていると、本来ただの記号に過ぎない文字に、生命を吹き込むということが、いったいどういうことなのかが分かるような気がおぼろげながらします。大げさな物言いかもしれませんが。
 あるいは、工藤直子の詩「いけしずこ」。ひらがなの擬音だけでつくられたこの詩は、活字で読んでもおそらくたのしいでしょうが、こうして書の作品になると、作者の中でいったん内在化されたリズムが、線や飛沫として露呈してくるわけです。いわば、作者の中で詩が生きられているといえるでしょう。臨書ばかりだとどうしても造形的な方向にばかり行ってしまう危険性があります。近代詩文には、みずからの好む題材と出会うというプロセスがあるのが、見る者にとってのおもしろさです。
 むろん臨書もありますが、とちゅうから自身の感慨を書きだしたユニークな作品(「臨・賀蘭汁造像記」)もあります。
 辻井さんは1944年(昭和19年)、空知管内雨竜町生まれ。日展会友、毎日書道展審査会員。国内外での発表多数。

 他の作品は次のとおり。
 「砂塵の中へ 花海の砦を探し求め砂嵐の中を我ら彷徨す也 一九九九年九月(自作)」
 「もし明日世界が滅びるとしても今日わたしは自分の庭にりんごの苗木をうえよう M・ルターのことば」
 「破天荒」
 「臨・斐将軍詩 斐将軍大制六合猛将清九垓戦馬若龍虎騰陵何壮或」
 「獨」
 「銀河濃し耳を沙漠に湖の音 角川春樹句」
 「雨の蓋さっと持ち上げ虹立てり 嵩文彦句」
 「たましひの餘白埋めて瀧逸る 藤木倶子句」
 「風は自分で起こすものだ 宮城谷昌光「香乱記」より」
 「臨・灌頂記 民長波羅真主観音手満般若香継船長馬頭諸公」
 「貌」
 「琴の音を抱くたび雪のふかまりし 島本研二句」
 「薔薇よ汝を刺で刺せ 丸山薫詩」
 「胸ふかく鶴は栖めりきKAOKAOと 佐藤鬼房句」
 「陽炎の野へ船旅の如く行く 田湯港句」
 「歩いても歩いても惜しげもない大地ふとっぱらの大地 高村光太郎詩」

 日本現代工芸美術展北海道会展=同
 前週の「選抜展」につづき、所属する33人が1、2点ずつ出品しています。
 伝統工芸のように、制約のなかでどれだけ新味を出していくかという側面がすくなく、現代の視点で割り切って見られるところがおもしろさといえると思います。
 となると、やはり迫力を感じたのが、古家智子さん(帯広)の、2メートル四方はあるかと思われるインスタレーション「騰、騰」です。壁から床へとござのようなものを垂らした上に無釉の陶片を散らした作品は、力に満ちています。
 中秋勝広さん(札幌)の鋳金作品「連作・北の街T」「連作・北の街U」は、みがいたところとごつごつしたところの差がおもしろいと思いました。
 安井幾久子さん(小樽)のガラス作品「黄砂」は、透明なオブジェのなかに何かが閉じ込められているような、ふしぎな作品。
 わりあいあたらしいメンバー・市川萌さん(札幌)「時空」は、大きなひろがりのある画面を作り出しています。

 他の出品作は次のとおり。
 ●陶芸
 伊藤英実(渡島管内七飯町)「彩雲残映」
 石川幸子(帯広)「円かなるとき〜夕」
 石川久美子(函館)「Dulcamera U」
 岩崎貞子(岩見沢)「風樹」
 岩間幸子(函館)「stupa」
 海野真紀(帯広)「混淆−春」
 柿崎直人(渡島管内森町)「凛々と 03」
 金子章(帯広)「游」
 木村クニ(同)「希望」
 小橋由実(函館)「偽善」
 佐藤留美子(帯広)「光彩」
 佐山由紀江(同)「十勝野−きざし」
 谷口光伸(檜山管内乙部町)「霾天」
 松本京子(帯広)「碧海の詩」
 三浦千代志(函館)「跡」
 宮川祐美子(帯広)「胎生」
 山中佳寿美(同)「風雪の日本海〜'03」
 横田惠子(札幌)「雪動T」「雪動U」
 吉田邦廣(函館)「深海の森」
 ●鋳金
 折原久左エ門(函館)「連作−道標T」「連作−道標U」
 中川眞一郎(乙部)「微風」
 丸山裕淑(渡島管内松前町)「顕−2003春−」
 ●染
 笹島和子(函館)「賛歌−縄文」
 庄司光江(函館)「創世」「夏の夜」
 田中和子(七飯)「凍土(ツンドラ)」
 ●硝子
 佐藤博子(札幌)「MEDITATIO−V」
 安井顕太(小樽)「黒一筆紋大皿」
 ●七宝
 関原範子(札幌)「道」
 ●鍛金
 田部隼夫(札幌)「思うままに」「連」


 北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース作品展 七月展 2003
 事情があって「七月展」なのに八月にひらかれることになりました。
 毎年学生が自分たちでおこなっているもので、院生から1年生まで計141人が出品しています。
 ただ、全体的には、おもしろかったんだけど
「そもそもじぶんのやっていることは何だ」
と考えている人が例年に比べるとすくないような気がして、正直なところ、ちょっとものたりなさがのこりました。


 8月7、8日(木・金)

 5、6日のつづき。
 10日で終わる展覧会から。

 第30回 馬齢会展=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 絵画グループ展。一昨年亡くなった砂田友治さん(独立美術、全道展会員)の小品「人とカラス」が展示されています。
 土井義範さん(全道展会友)の「人々(記憶)」が目を引きました。
 球を持つ女性の背景は白が基調で、ポピーの花やSL、三角錐などが配され、その上には赤と緑に塗られた太陽がかがやいています。記憶という題にふさわしい雰囲気を持った絵だと思いました。土井さんは、構成に意を用いた人物画・室内画などを描いていますが、ここ数年では一番すきな作品です。
 佐々木一次さん「眠り」は、裸婦がクロームグリーン系の色に塗られ、ユニークです。
 高梨美幸さん「祈り」は、教会の前にあつまった群衆がモティーフ。どういう情景なんでしょうか、気になります。
 ほかに、葛西実、木戸久美子、佐々木和子、佐竹秀之、松原宏之、三井哲、元茂章子、安木尚博、渡辺佳津子の各氏が出品。

 大島潤也展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 「札幌の美術」の延長線上にある、壁掛け型の彫刻。何点か新作と、ふるい作品がくわわっています。
 生命の原形のようなものを感じさせるかたちですが、新作は、シイタケのかさを真上から見たようなかたちでもあります。
 会場中央にならんだ平面作品は、今回の出品作をデジタルカメラで撮って画像をプリンターで出力したもの。立体と平面の互換性などについて考えさせられます。
 札幌の美術2003はこちら。画像あり。

 第八回石蓮会書展=同
 21人のうち20人が漢字の臨書。
 喪乱帖、蘭亭序、張玄墓誌など、殷代から唐にいたるもので、日本のものはありません。
 「年代の古い順に陳列してあります」と書いてありますが、じっさいには新しい順からならんでいます。

 傳展 2003=同
 札幌の長谷川傳さんの油彩個展。
 すべて20号以下。題が長いものが多く、大量破壊兵器、イラクといった語が散見されますが、絵自体は人物や風景をデフォルメしたもので、風刺的ではありません。


 8月6日(水)

 西村和 作陶展三越札幌店9階ギャラリー(中央区南1西3)
 伝統的な文様をほどこしたうつわが出品されています。昨年の「茶碗展」などが、ライトでモダンな感じだったのにくらべると、格調高い? 個展です。
 シャープな斜めの直線が交叉する「網代麻の葉文」、半円形が規則的に重なり合う「青海波文」、七宝文、総亀甲文、子持亀甲文…。これらの文が半円皿などにあしらわれています。象嵌という技法をもちいるのだそうで、細い線の部分は釉薬をぬりわけているとのこと(でいいんですよね、西村さん)。さらに、ちがう色の土をはめこんでこまかい文様をつくります。筆者のような不器用かつずぼらな人間にはぜったいできそうもない、精緻きわまる作業です。
 「平面はまだいいんです。水さしなど、1周して丸の大きさがあわなくなったり、もう大変です」
 文様は伝統的なものではありますが
「古くさいのと紙一重だけど、伝統的でありながら新しいものをつくりたい」
と西村さん。
 札幌在住、伝統工芸展準会員。
 11日まで。
 ご自身のサイト「穏やかな日々」はこちら

 吉田玲銅版画展 「Le rythme n'arrête jamais」アリアンスフランセーズギャラリー(中央区南2西6、南2西6ビル2階)
 99年からパリに滞在し、一色多版刷りの銅版画の工房で制作にとりくんでいます。
 札幌では、昨年夏につづく里帰り個展。女性ですが「あきら」という名前です。
 フランス語で「四月」「インスピレーション」などと題された抽象作品が10点ほどならんでいます。
 フランス語のタイトルは、日本語で「やまないリズム」という意味。
 頭から離れない音楽とか、あるいは音楽が聞こえてきて自分のあたまの中にむすぶ映像やかたち、色。そういうものを表してみた、ということです。
 なるほど、本来は見えない精神を吉田さんなりに具現化すると、こういうかたちになるんですね。
 縦横に走る細い線、その上に、腐蝕による模様がかさなり、さらに太い線が木の枝のようにおおいかぶさっています。平面なのに奥行き感がある作品です。
 「工房の主人の奥さんが日本人で、口コミで日本人の作家もあつまってくるんですよ」
と言う吉田さん。しばらく帰国する予定はないとのこと。
 それにしてもフランスでこのサイトをごらんになっていたというのは、うれしいなあ。
 9日まで。

 8月5日(火)

 第33回グルッペ・ゼーエン七つの個展札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3)
 毎年書いていることですが、大学の同窓のメンバーが毎年グループ展を欠かさずひらいているということに、まず敬意を表したいと思います。並み大抵の団結力、実行力ではできないことでしょう。
 ことしは、7人のメンバーが、時計台ギャラリーの7部屋をひとつずつつかって、個展形式で展覧会をひらいています。これは、3年ぶりです。

 A室は、丸藤信也さん(札幌)。
 抽象画の大作がならびます。前回の個展が、小品ばかりだったので、よけい迫力を感じるのかもしれません。
 円筒のような色の帯の上に、服の織地を思わせる細く白い線を描きいれていく手法は変わっていませんが、白い線の「かさね」が、まるでトレーシングペーパーが画面を覆っているようにも見える作品があり、斬新でした。
 B室は野崎嘉男さん(岩見沢)。
 野崎さんも、丸藤さんとおなじく道内の戦後の抽象画をになってきたひとりで、1990年代なかばあたりから、正方形を規則正しく画面にならべて、そのなかに渦巻きとか矢印など落書きのような模様を「ひっかき」によって描きいれるという手法による「記シリーズ」を、ずっとつづけています。
 いわば、ミニマルなペインティングと、即興的なドローイングを一枚の画面におさめたような絵画なのですが、この1、2年は、正方形が凹型になったり、やや画面が動的になるきざしをみせています。ことしは、これまでフラットに塗られていた地の部分に、ぼかしやにじみが取り入れられ、風景を思わせます。
 C室は西村久子さん。
 染織です。「ふぁー」と題した、重さをまるで感じさせないシリーズをつづけています。今回は「ふぁー 光と風と」。
 以前のあざやかなレインボーカラーは後退し、四角などの模様がランダムにならぶあっさりしたデザインのシルクオーガンジーとなっています。会場奥に、まるでハンモックのようにつるされた3枚の布は、空調による風でゆらゆらとうごき、じつにすずしげです。
 3階にうつり、D室は照井栄一個展。
 絵画です。照井さんだけ、1970年代からの旧作も展示しています。
 新作は、昨年影を潜めていた照井さんならではのモティーフである紙風船が復活し、抽象的な色帯のなかでいくつもふわふわと浮かんでいます。
 札幌市内の風景を描いた小品もあります。いわゆる具象作品を出品しているのも照井さんだけです。
 E室は多田紘一さん。
 木彫です。6点ほどならんでいました。
 会場には題がついていないようでしたが、案内状に「遥々」と題して印刷されていた、小さな木とアーチをくみあわせたような作品が、風景のようなスケールを感じさせて良かったと思います。
 F室は玉木憲治さん(岩見沢)。
 版画です。もう長いこと「徊シリーズ」と題し、おなじような形の反覆による効果をねらった作品を制作しています。丸がややつぶれたようなかたちの青が、完全に規則的ではないならびかたをしているところに、軽快さが感じられます。
 G室は井上象元さん。
 絵画です。毎年岐阜から参加しています。
 「游」と題したシリーズ。ティッシュペーパーをちぎって貼ったような、あるいは鳥の羽根のような白い点が、青の色班のならぶ地に点在し、錯視とでもいうべき奥行き感を生んでいます。リズミカルです。
 9日まで。

 関連テキスト:■昨年のもよう
 ■2001年のもよう
 ■ことし6月の丸藤信也個展

 陶のかたち江別市陶芸の里セラミックアートセンター(江別市西野幌114の5)
 1949−58年生まれで、道内陶芸の第一線で活躍する中堅作家たちの新作をあつめた展覧会。
 ことしせめて1回はセラミックアートセンターに行こうと思っている人は、この会期中がいいんじゃないかと筆者は思っています。
 脂の乗り切った陶芸家たちがあつまり、見ごたえのある展覧会になりました。
 全体を通していえることは、インスタレーション的な見せ方を志向する作家が多いということです。これは、図録の図版からではわかりません。
 たとえば、木村初江さん(札幌)の「あかり」。ペーパークレイという薄く白い陶をとおして電灯のあかりが漏れるという作品です。図録では3点の写真が載っていますが、じっさいの展示では、白い砂を敷き詰めた上にあかりが点在しています(6個くらいあったはず)。
 高野陽子さん(同)の「座って椅ッ子」も、この作者らしい、遊び心いっぱいのたのしいいす6点が、会場の床に直接置かれています(すわりたかった…)。
 福盛田眞智子さん(江別)は、この手の展覧会ではいつもインスタレーション的な大きな作品を発表しているという印象がありますが、今回の「ビル街」も、一枚一枚の陶板が自然釉で張り付いたのでしょう、それがビルのように積みあがり、異色の風景になっています。
 荒関雄星さん(後志管内京極町)は、本領は釉薬の流れ方もダイナミックな「窯変壺」にあり、いかにも薪窯らしい変化がたのしめますが、おなじかたちで大きさのことなる「シリーズ「玉 U」や、「入子十段」も、マトリョーシカ的なたのしさが感じられます。なお、窯変窯と入子十段は野幌の粘土をつかっているそうです。
 7日から大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)で開催されるNAC展のメンバーでもある滝本宣博さん(上川管内東川町)の「ゆらゆら」。息を吹きかけるとかすかにゆれるほそくてうすい陶の板ですが、会場では、円を描くように配置されていました。

 尾形香三夫さん(石狩管内新篠津村)の練り上げ技法の見事さについては、このサイトでも何度かご紹介しています。
 加藤博泰さん(小樽)「おいでよ 僕のベッドへやわらかな…」は、題だけ読むとなんだろうと思いますが、寝台がやわらかくくねっていく様子を4つの過程で見せるものです。ユーモラスな作品です。ほかに「SONOBA」。
 昨年のギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル)での大規模な個展も記憶にあたらしいタニグチススムさん(札幌)は、「素源」と題したうつわを8点も出品しています。手びねりによる荒々しいうつわは、題のとおりやきものの始原を目指して土と格闘する作者の精神の反映のようです。
 南正剛さん(上川管内美瑛町)の「W−3」など3点は、ギャラリー山の手(西区山の手7の6)での個展にも出品されていたように記憶しますが、土そのものの表情を表現しようという作者の意志が感じられます。フォルムからすると三角錐の花器といえそうですが、表面は、いわゆる「景色」とはまたちがった荒々しい深みをたたえています。
 堂前守人さん(函館)の作品ははじめて見たように思います。図録のほかに「黒かきおとし白つめ草文壺」と「黒かきおとし赤つめ草文皿」を出品しています。題からわかるとおり、かきおとしや、線をきざむ手法で、植物文などを描いており、木版画のような味わいがあります。
 長瀬貴子さん(江別)もうつわ4点。タタラ、ろくろ成型ということですが、モノクロのモダンなオブジェです。

 10日まで。

 関連ファイル、リンク:
 ■尾形香三夫さんのサイト「混沌窯」
 ■木村初江さんのサイト「アトリエHK」
 ■北海道陶芸会の公式サイト
 ■南正剛さんのサイト

 ■南正剛さんの5月の個展
 ■尾形香三夫さんの昨年の個展(画像あり)
 ■木村初江さんの昨年12月の個展 ■昨年6月の個展(画像あり)
 ■昨年のNAC展(画像あり)
 ■昨年の荒関雄星展
 
 なお、セラミックアートセンターは、江別駅−野幌駅−同センター−野幌運動公園−北広島、というバスと、新札幌駅−野幌駅南口−同センター−野幌運動公園というバスが出ていますが、いずれも本数はすくないです。野幌駅からタクシーで行くと1000円くらいだと思いました。
 駐車場は広大です。

 
 8月4日(月)

 5日で終わる展覧会について、初日に見に行ったにもかかわらず、書いていませんでしたので、ここでふれておきます。
 関係者のみなさま、お待たせしてすいませんでした。

林雅治個展の会場風景 林雅治個展 陶による造形=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)
 下の写真は、中央部分だけで、両側の壁に、数十本の陶による管が立てかけてあります。
 写真だけ見ていると、ムーミンに出てくるニョロニョロの行進みたいな感じですが、じっさいには、もうちょっとなまめかしいです。化粧土で覆った白い表面から、肌色の断面が見えて、やはりこれまで林さんがつくってきたインスタレーションと同様、人間の器官のようなのです。
 そう考えると、なにやら生命の原形質のうめきとも解釈でき、見ていて飽きません。
 林さんは後志管内倶知安町在住。
 7日からおなじ会場で始まるNAC展にも出品します。

 DAM DANG LAI Sculupture Exhibition=同
 こちらはベトナム人美術家の彫刻展。
 どうしてベトナム人が札幌に住んでいるのかというと、札幌からフエの大学に留学していた女性とあちらで結婚したからだそうです。
 作品は、トーテムポールに似たものなど、曲線を生かして変化に富んだ木彫が多いです。民族性を見ようと思えば見ることはできますが、筆者はむしろ、阿部典英さんや砂澤ビッキらの彫刻と、よく似ているというほどではないのですが、どこか通底するものがあるように思えました。自然に対して畏敬の念を払って見ているというところに、共通点があるのかもしれません。

 芸術団Jam. 14アートスペース201(中央区南2西1、山口中央ビル)
 学生時代のグループ展は、就職したり家族を持ったりしているうちに消滅してしまいがちだけど、このグループはよくもっているほうだと思います。もっとも、ことしは出品者が半減して4人になりました。
 八子晋嗣さんが健闘しています。木彫の楽器で、専用のばちでたたくと木魚のようにぽくぽくと鳴る「こぶこぶ」をはじめ、木の曲線を生かしたトルソ「新樹」、さまざまな木片やあかりをコラージュした「混」と「沌の2点組みなどを出品しています。
 福沢等さんは「エンゼルフィッシュ」と題した油彩の大作、木村真哉さんは油彩と、「花舞兜(かぶと)」と題した陶のオブジェ、加藤裕一さんは、アクリル板を何枚か重ねて奥行き感を出したさわやかな絵画を出品しています。

 T-shirt EXHIBITION 2003=同
 100種類のTシャツが勢ぞろい!
 いやー、絵は高くて変えなくっても、Tシャツならなんとかなるって人多いよね。
 いろんな人が出してましたが、allôさんのは写真をさりげなくあしらっていてオシャレ。
 Clip Createさんは「ART on INATINCT」というロゴで5枚も出していて、統一感があります。
 奈さんは、絵を全体の左下にもってきたという時点ですでにほかよりめだってると思います。
 意外なところでは、彫刻家の桂充子さんが出品していました。

 オリジナルポストカード展 アートスペース2003F=同
 こちらはさらに膨大! なんと2003枚あるそうです。
 じっくり見ていると30分はあっという間ですので、ぜひ見ていってください。1枚150円。なお、展示だけなら、18−24日、新札幌のサンピアザ光の広場でもおこなわれます。

 2日の「コン・プラ」に2枚写真を追加しておきました。
 なお、会場になった「狸小路」は、札幌でもっとも古い商店街です。鹿児島でいうと「天文館通り」、小樽なら「都通り」にあたります。

 8月2日(土)
 狸小路3丁目  狸小路1丁目
 狸小路の夏祭りに合わせて2、3日に、1−7丁目でひらかれている「コン・プラ」に行ってきました。
 麦藁帽子をかぶったたくさんの生徒たちが、ARTの値段としては超破格値で、なんだかよくわからん物体や、ポストカードなどを、自転車に乗せて売っていました。
 7台の7色の自転車は、交代で丁目を移動しています。センター的機能をはたしているのが3丁目ですが、どの丁目に行っても、高専の生徒がいて、小さな旗を無料でもらえます。1−4年生の計65人の有志が参加しているとのことで、その行動力にはあらためておどろかされました。
 筆者としては、杉野公亮くんのパラパラ漫画をゲットできたことが最大の収穫でした。これ、まだ見たことのない人はぜひ!
 やみつきになりますよ。

 大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階)でのふたつの展覧会については、あした書きます。
 街まで出る人はお見逃しなく。

 8月1日(金)

 きのうのつづき。
 まず、3日で終了の展覧会から。

 岡部亮展TEMPORARY SPACE(中央区北4西27)
 北広島の若手彫刻家、ですが、4年ぶりとなる今回の個展では、壁面の大半を素描が占めています。
 どうやら沖縄にしばらく滞在していたらしいのです。そこで撮影した城址のおびただしい写真も見せてもらいました。
 遠い土地から帰ってから、風景に対する意識が変わった。地形をよく認識するようになったのである。
 住み慣れた土地の道路の下がどいういう地形なのか、坂道は何の傾斜なのか、それまでの私は理解していなかった。そして、その風景なり地形なりを「量」として捉えることはとても大事なことであると思った。
 壁にこんな文章が貼ってありました(上のは一部)。
 筆者も、地形、好きですからね。このきもち、よくわかります。
 ただし、じっさいの素描作品は、紅葉山砂丘(石狩市と札幌市の境あたりにある砂丘)を描いた「砂丘」8点、樹木や、地元にして故郷の北広島・西の里の風景が十数点ずつあるのですが、「歯」を描いたものがなんと170点以上ならんでいるのです。
 「歯」は風景や地形とあんまり関係なさそうだけど。すごいこだわりだな。
 歯を模した木の彫刻も数点ありましたが、素描のほうが目立っていました。
 もういちど、じぶんの目と手から、みずからの作品世界を再構築していくためのステップといえるのでしょうか。

 第4回島田青丘書展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階)
 とにかくスケールの大きな書を書く人です。
 スカイホール全室に、墨象がわずか18点。
 書いたときの息遣いが感じられる作品ばかり。しかも、墨象というと、どうしてもジャガイモの塊みたいな字が連想されますが、作風はバラエティーにとんでいて、見ていてあきることがありません。
 「温故知新」が丸みをおびたやわらかさが魅力なら、「譲 T」や「無窮」などはずっしりとした重量感でおしています。
 「適」は淡墨による、運筆のかさなりぐあいにうつくしさが感じられ、「倹 U」はたくまざるユーモアをたたえています。
 「楽山」は、スピード感が魅力です。
 墨象は、見るとエネルギーをもらえる感じがするのですが、みなさんはいかがですか。

 花鳥風月のアンティーク・ルームと森迫暁夫の絵=4プラホール(中央区南1西4)
 「花鳥風月」といえば、狸小路にほど近い南2西7のM’sスペースにある、レトロ家具愛好者にはたまらないお店ですが、そのお店ごと引っ越してきたみたいな会場です。
 それもそのはず、この展覧会の期間中はお店を休んで商品をこちらに運んできているんだそうです。
 1950−60年代ふうのソファや電気、なつかしいサイドボードや扇風機のある部屋にならんでいるのが森迫さんの絵です。
 札幌でも、イラストレーターをめざしている若者はかなりたくさんいると思いますが、森迫さんの絵ぐらい、見た瞬間に
「あ、森迫さんだ」
とわかる個性の持ち主はあまり多くありません。
 はなやかな装飾性、メルヘン調の幻想性、かわいらしいとうじょう人物などが合わさって、森迫さんならではの童画の世界をつくりあげているのです。
 ほとんどの絵は板に油彩。
 「フライドポテトとコーラ」というユニークな動物の絵もありますが、「ミズノウツワ」は魚たちが繰り広げる海底の世界を描き、見ていて心がいやされます。「メトロチックノーミー」はギターを抱いて眠る女の子の絵です。
 「お話のつづき」など、キャンバスに砂で下地をつくって描いた3点はマティエールに特徴があります。

 日本現代工芸美術展北海道会選抜展札幌市民ギャラリー(中央区南2東6)
 現代工芸美術家協会に所属する会員のうち6人をえらんで、展示しています。昨年の選抜展は、陶芸だけでしたが、ことしは陶芸、染織、ガラスの3つの分野なので、印象がだいぶことなります。
 伊藤英実さん(新道展会員)は、陶芸9点。建物のようなかたちをした「彩雲」シリーズがユニーク。
 金子章さんは、十勝の現代陶芸の先駆者。「北の息吹」など、やわらかさを感じさせる造形です。
 笹島和子さんは染色。タペストリーが4点、あかりが2点。「秋・山湖」は深い青が印象的です。
 函館の庄司光江さんも染色で、「創世」「夏の夜」の2点だけの出品です。
 田中和子さんも染色。「凍夜」シリーズなど、丸まった布を配置して、インスタレーション風の展示です。ほか、暖簾、タペストリーなど。
 安井顕太さんは小樽の若手・中堅ガラス作家でも活動がめだつひとりです。工芸の王道を行く「虹彩大皿」から、ランプに似た風変わりな「soul'95」まで多彩な作品がならんでいます。

 第28回北海道平和美術展=同
 絵画、彫刻、漫画、写真、書道、工芸など何でもござれの、アマチュアによる大アンデパンダン展といったおもむきですが、けっこう見たことのある作家もまじっていて、あなどれません。もっとも、そういう作家は、旧作も多いんですが。
 まず油彩から。市町村名のない人は札幌。
 三宅悟さん(小樽)「海辺のバス停」。こないだ古屋ギャラリー(小樽)で見た小品に似てる。あの拡大バージョンでしょうか。人びとがたのしいんだか孤独なんだかわからない、独特の雰囲気は三宅さんならでは。ほか「浴室」などは旧作。
 坪野秀子さん「イラクレポート1991」「パイロットが見た花火1991」はいずれも旧作だけど、以前の湾岸戦争を思い出させてくれる作品でした。
 富田幸衛さん「抗議する人々」「主張する人々」。イラク戦争反対のデモ行進がモティーフ。こういうテーマがはっきりした絵はいまどきめずらしいので、かえって新鮮だったりします。いかにも盛り上げて描くのではなく、デモ隊を正面からとらえているので、落ち着いた感じがします。
 澤田弘子さん「25時」。全道展でおなじみの「木材人間」より、背景にならぶ青い塔のほうが目立つし、気になります。
 工藤英雄さん「鉄屑」。道展会友。旧作です。ちなみに展覧会事務局です。
 黒田孝さん「monument T」「monument U」。新道展会員。おそらく旧作です。
 佐々木俊二さん「疑影」。全道展会友。変容する人間像を描きます。たぶん旧作。
 水彩。
 山崎賢六郎さん、中山清さん(石狩)が堅実。桜井龍三「はまなすの咲く家」はおちついたたたずまいをみせています。
 日本画。
 高田陽子さん(那覇市)「賑やかな 晩夏」は、蕗の下にムックリをかなでる女の子がいるという話。
 銅版画。
 山田小百合さん「時」はサイロのある風景を、すなおな筆致で描写。
 菅間慧一さん「アッシジの街」も丁寧なタッチで好感が持てます。
 彫刻
 水谷のぼるさん(小樽)「闇」。映画の「ロード・オブ・ザ・リング」の登場人物にヒントを得たという人物の立像。丸みをおびてきたフォルムに、作風の微妙な変化がうかがえます。
 橘井裕さんは「僕の先生も僕も僕の教え子たちもたたかい続ける忘れようとして覚えられない希望の夢のために」。どんどんタイトルが長くなってきます。金網とか、阪神タイガースのマークとか、かなりニギヤカな作品。
 ほか、田中隆行さんが「女U」を出品しています。
 石炭画でおなじみの早川季良さん(空知管内上砂川町)「炯眼」は、木、正体不明の知恵の輪のようなリング、2体の子どもの風変わりな「小説の母」でした。

 第14回アトリエ金曜会=同
 香取正人さん(新道展会員)の教室展。
 佐々木良子さん「ライラックの咲く頃」など、庭の絵が多いですが、まとまっています。
 高橋和子さんは色の重ね方が効果を挙げつつあります。

 宮崎亨展さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)
 パワフルな油彩。
 人間とは何か、生きていくとはどんなことか、などなどの苦悩や考察が、作品のベースにあるように思われるので、なかなか絵の前を立ち去りがたい感じです。
 男の顔だけが地面に突きささっている「断裂」、男のまわりに空気の渦が巻いている「いやらしい空気」、男の頭からへびのようにちいさな顔がいくつも突き出している「暗い力」など。

 陶林房 四人展=石の蔵ぎゃらりぃ はやし(北区北8西1)
 脇本寛子、安田陽子、中野未佳子、白崎かなえの4氏による陶芸展。
 脇本さんはかわいらしいオブジェや置物、安田さんは猫、中野さんは白い化粧土をかけたうつわ、白崎さんは灰色の中に青い土を組み入れた長皿などを出品しています。

 横山郁子プリザーブドフラワー展=同
 特殊加工を施して長期保存がきくようになった花を、染料でそめたブーケやオブジェなど。薄紫色のバラなど、ユニークな作品です。
 http://www.pepper-m.com

 以上、すべて3日まで。
 ひきつづき4日までの展覧会。
 高山洋夫展=パークギャラリー(中央区南10西3、パークホテル)
 砂で凹凸をつけた自作の変形キャンバスで、独特の抽象画をうみだしている札幌の画家高山さん。
 宇宙を感じさせるユニークな絵画。「抽象画はわからん」という人も、なにかクルものがあるんじゃないでしょうか。
 作品はいずれも「沈黙の音」と名づけられています。
 これまで、比較的黒を基調としたなかに、まばゆい赤や金の筆がぱっと走るというタイプが多かったですが、今回は、鮮烈な赤、黄色、緑が組み合わされた絵などがあり、目を引きました。