つれづれ日録


12月31日(日)
 今年もあと残すところ数時間。いろいろお世話になりました。
 小生は27日で仕事納めでしたが、2日からまた仕事です。
 2000年は、なかなか美術館やギャラリーへの足が遠のいてしまい、行っても最終日だったりしたのですが、2001年はなるべく早く行くことをここに誓います。
 池田緑さんから、2001年春の東京での個展のDMなど一式届きました。ありがとうございました。
12月27日(水)
 終日吹雪。この24時間で雪かき3回。
 さて、さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階)で開催中の恒例の年越し展覧会「00〜01展」を見ました。毎回参加者が増えて6回目の今年は68人。もちろん、ここで全員に触れるわけにはいきませんが、こういう小品展は、いつもと違うタイプの作品を出している方が少なからずいるのが楽しみですよね。いわゆるタブローばかりではなく、壁掛けオブジェの出品が多いのも面白いところです。
 たとえば、彫刻家の国松明日香さん。大学卒業のころはむしろ注目を浴びた版画を、久しぶりに出品しています。やはり彫刻の松隈康夫さんは、これは赤い蝋に金具のワッシャーをちりばめているのでしょうか。不思議な平面作品です。工藤悦子さんはレントゲン写真を丸く切り抜いたユニークなコラージュですし、丹野信吾さんは紙粘土でしょうか。原色の大胆な配置は大作と共通していますが。谷口一芳さんはふくろうの版画。高橋英生さん、竹内豊さん、斎藤洪人さんといったベテラン勢も、ふだんより肩の力を抜いて取り組んでいるようです。
 個人的な好みで言えば、北浦晃さんの「斜里岳午後」とか中野邦昭さんの「雪晴れ」のような、かちっとした風景画、好きだなあ。
 遅くなりましたが、小樽文学館から「館報」、清水さんから「CHONZA」届きました。ありがとうございます。小樽文学館の中野重治展は懐かしいです。
さいとうギャラリーの「00〜01展」風景

さいとうギャラリーの「00〜01展」。左は工藤悦子さんのコラージュ。普段の、青い生命の世界と、ぜんぜん違う

12月25日(月)〜26日(火)
 札幌の西岡という、南の住宅地に住んでいる私は、都心部へ出るときは直通のバスを利用することが多いのですが(地下鉄に乗り継ぐより安いため)、この2日間は道路の渋滞がひどく、なかなかバスが進みません。夏なら40分足らずで着くはずが、25日は1時間10分たっても豊平をノロノロ。頭に来て豊平3の8で下車し、東豊線の学園前まで歩きました。きょうはさらに早いバスで出たせいか、渋滞はややマシでしたが、それでも1時間20分かかりました。
 まあ、私はバスに乗ってるのがきらいではないし、読書がはかどるのはいいことなんですが。
 ローカルな話題でごめんなさい。
 右は24日に撮影した北星女子中のクリスマスツリーです。
 タイミングはずれですね。
北星女子中のクリスマスツリー
12月24日(日)
 休み。吹雪の中を午後2時過ぎに外出。
 大通のローソンで年賀はがきを受け取り(そう、まだ書いていないのです)、三越でクリスマスケーキと鶏の脚を買い、大丸藤井スカイホールで終了間近の小谷博貞展を見る。
 北海道美術界の重鎮小谷さん(1915年生まれ)の個展は5年ぶりとのことで、近作の油彩やコラージュが並んでいるほか、小谷さんの初の教え子という小野寺百合子さんの彫刻、吉田さんと早川尚さんの版画が、会場を飾っていました。いずれも小谷さんがモデルです。
 油彩はいずれも「風景」と題され、緊密な構成の抽象画です。いつもの茶を主体にした作品のほかに、白と青の目立つ絵もありました。ほかに1948年と78年の作品も並んでいました。48年の、人物をモチーフとした作品は、重々しい色彩がどこか鶴岡政男を思い出させます。いかにも戦後という時代を反映しています。
 いただいた紙片には、20世紀は「戦争の世紀」でありました、と書いてあります。今世紀最後の時期に開かれている個展らしい言葉です。今世紀を生き抜いてきた小谷さんの言葉だと、説得力があります。
 小谷さんの個展は、残念ながらきょうで終わりですが、来年2月1日から4月15日まで道立近代美術館でも開かれます。道内の美術家の個展が同館で開かれることはそうめったにありません。 

小谷博貞展

小谷博貞さんの「風景」

 さて、本日で終わりの個展ということで、ギャラリーミヤシタでの林亨展をもう一度。ようやく作者本人に会えたので、その際の話は別項で。林亨展(2000年12月)
 ギャラリー紀(南5西24)では、札幌と東京を往復して絵や舞台美術に活躍している碓井良平さんの素描展。この夏、3ヶ月ほどニューヨークに滞在したときに描きまくった抽象画やコラージュの作品が大量にありました。碓井さん、とにかくセンスがいいんだよな。そして、とにかく「量がかけちゃう人」なんだと思う。とくに入り口に飾ってあった「マンハッタンの夜」とか、自分自身の目でニューヨークを発見した初々しさがあふれています。
 こないだの私信でデリダのアルトー論「基底材を荒れ狂わせる」(みすず書房)を薦められたので読んでいたのですが、さすがフランス現代思想、何が書いてあるのかサッパリ。どこが面白いのか聞き出そうと思ったけど、残念ながら本人がいませんでした。
 吹雪のなか帰り着いたら家の前の道がない。雪かき40分。疲れたあ。
 八木伸子さんから書簡。ありがとうございます。
 あしたはたぶん更新しません。

碓井さんの個展。手前は「市場と人種」

12月23日(土)
 休み。疲れていたので、自宅で休養。
 表紙のデザインを作り変えるとともに「20世紀の文化」という少し大げさな題のテキストを書いて、追加しました。
「20世紀の文化とは」
12月22日(金)
 芸術の森美術館で、23日から始まる「北の創造者たち2000「美術スル」見方」のオープニングパーティー。
 オープニングパーティーというのはいろいろな知り合いに会えるし作者本人の話も聞けるのは良いのですが、作品と静かに向き合うにはちょっと不向きかも。みんな昼からビールをのんでいる。いいなあ。あたしゃこれから仕事だよ。
 ところで、帰りがけに、となりの工芸館で見た「北のクラフト」。これはおすすめ!
 
金工の作家のうち、立体はけっこう道展とか各種グループ展で見かける顔ぶれが多いんですよ。たとえば、上杉愛さん、神谷ふじ子さん、川上りえさん(おお、美術館と工芸館、同時制覇だ!)、武田亨恵さん…。おおっ、と思ったのは、七宝作家の充実ぶり。堤恭子さんと飯沢能布子さんはよく見るとしても、エッチングや窯変などの技法を取り入れた加藤みゆきさん、七宝板と木の板を組み合わせた能登誠之助さん、さまざまな形の七宝板を張り合わせた佐藤哲子さんなど、こんなに七宝作家が並ぶのは、札幌ではめったにないことじゃないでしょうか。
 なんといっても七宝の魅力は深く澄んだ色彩。美術館に行った人は、ぜひ工芸館にも足を伸ばしてほしいです。24日で終わりですが。
 ほかに西野由希子さんのジュエリー「CAGE」シリーズが面白かった。かごのようなデザインがユニーク。
 女流書作家集団から会報が届きました。ありがとうございます。

12月20日(水)
 2日間続けて仕事帰りに飲みに行ってしまい、ページの更新ができませんでした。すいません。
 さて、二条市場近くにコツゼンと現れたthis is galleryで山岸誠二展。3年前のギャラリーユリイカでの初個展と同じ、ロールの印画紙を感光させて作った平面作品3点を出品していました。勢いの良い線や飛沫のような点は、デッキブラシに現像液をつけて描いたもの。現像液には定着液を混ぜているそうです。薄い灰色の部分は弱い光を当てて浮かび上がらせており、濃い色の線や点と、微妙な奥行き感をかもし出しています。
 今年だけで6回も個展・グループ展に出品、陶芸などいろんな分野に進出している山岸さんですが、個人的には、この印画紙を使った作品が好きだな。
 ギャラリーユリイカでは「クリスマステン・12」。職場の同僚だった大島香さん、カワシマトモエさん、ばばのり子さんが毎年この時期に開いてきた3人展も今年が最後。お疲れ様でした。クリスマスっぽい作品が並びますが、カワシマさんはごく小さな正方形の抽象画の連作を出しています。
12月19日(火)
 会社では新年号製作がピークを迎えています。
 2カ所で開催中の長倉洋海写真展へ。なかなか良い。戦いの悲惨さと子どもたちの笑顔。と言ってしまえば紋切り型になるけれど。こういう現実を伝えるメディアとして写真はやっぱり強い。
 大同ギャラリーで「6つの視点」展。石塚春枝、北村葉子、木下幾子、渋谷美智子、松本真智子、宮口洋枝によるグループ絵画展。6人とも少しずつ画風が変わっているのが見て取れます。木下さんは一貫してデッサンとクロッキーしか発表しないという珍しい人だけど、ますます一気呵成というか速い線をかくようになったみたいだし。
 太い色の帯が縦横に力強く走るのが特徴だった石塚さんは、それらの帯のほとんどを真紅で塗り込めてしまっていました(右)。
12月18日(月)
 某古本屋へ。
 ここは美術書の宝庫で(たぶん札幌で最多。だから教えられません。都心や月寒じゃないよ)、小生の狙いは、みすず書房の李禹煥と水星社のマレービッチと岩波の森村泰昌だったのですが、残念ながらありませんでした。その反動か「美を脳から考える」「アヴァンギャルドの理論」「絵画論の現在」「三岸好太郎(匠秀夫)」「ゲルニカ物語」「東京ミキサー計画」と6冊も買ってしまった。読めるんだろうか…。
 一昨年、キリンのかぶりものを使った大パフォーマンスを札幌で繰り広げた谷川よしみさんから手紙。19日パーティーって、あしたじゃないか。私あての手紙は北海道新聞に送っても届かないおそれ大につき、みなさんよろしく。

12月16日(土)
 ようやく今年最後の時計台ギャラリーへ。
 小林伸好、村上晴香、西川雅則の3氏による「漆三人展」が良かった。たしか3年前の「三人展」のときは、実用的な器が中心だったように記憶しているけれど、今回はオブジェもかなり出品している意欲的な内容でした。西川さんの連作には、石やブロンズの彫刻なんかとは違う、独特の質感がありました。
 中間弥生、中村友子、山田好子三人展は、小品ばかりだったのが、個人的にはちょっと残念だったかな。
 「act21」入手(同ギャラリーが年4回出しているフリーペーパーの老舗)。主宰の荒巻義雄さん(もちろん架空戦記シリーズの作者でもあります)がデュシャンとグノーシスうんぬんについて書いています。
 美術館学芸員3人から激励のメール。ありがとうございます。
 清水一郎さんからは「CHONZA」最新号いただきました。こちらもありがとうございます。
 あしたはたぶん更新しません。

12月15日(金)
 来年12月に道立近代美術館で開かれるグループ展「HIGH TIDE」が「文章の書き手」にも加わってもらおうということなので、実行委に出かけました。どんな展覧会になるか固まるまでにはまだまだ議論を尽くさなくてはならないようです。
 その前に、コンチネンタルギャラリーで、道教育大岩見沢校の古谷卓馬、百貫正剛両氏の卒業制作展を見ました。すべて臨書なので、私のような素人には何も言えません。賛助出品の中野層雲さんのおおらかな線に惹かれました。

12月14日(木)
 スケジュール表を一部変更。スケジュール表からも、展覧会の紹介のページに飛べるようにしました。
 展覧会の紹介のページにある「D.HISAKO」展に、絵葉書をスキャナーで読み込んで取り入れようとしたけれど、アドビ・フォトデラックス(レタッチソフト)の異様な重さにキレる。何かうまい方法はないものか。

12月13日(水)
 休み。妻子を置いてギャラリー巡り。
 杉吉篤個展(ギャラリーユリイカ)。
 油彩は旧作が多いが、人間の形にスタイロフォームを切り抜いてそこに布を張って絵をかいた作品など相変わらずユニークで、作者の脳の中をのぞいてみたくなるような作品ばかり。ただ「雪の帝国」など、植物や自然よりも都会風景などが多くなってきたような気がする。
 佐野哲也・最上愼一 写真による二人展「moving+still」(さいとうギャラリー)。 
 画家の木嶋良治さんに会い、肺炎の話など聞く。
 よしみ展2000(this is Gallery)。電信柱をモチーフにした小品は会場の片隅で、中央には同じ大きさの人を2000人は描いたであろうと思われる巨大なドローイング作品。
 ここで山岸誠二さんに会い、終日車に乗っけてもらった。
 米坂ヒデノリの世界(ギャラリー大通美術館)。木彫の作品に「ブロンズ 6000000円」とあるので首をかしげていたら「ご希望ならこの値段でブロンズに鋳造いたします」とのこと。写真の「あしおと」と「謳うトッカリ」は「北の彫刻展」(道内の代表的彫刻家を招待して隔年で札幌彫刻美術館が開く)の出品作。めんこい(北海道弁でかわいい)ですよね。
 荻野慶子・春木香利−ニューヨークで出逢った二人の女性(朱夏)
。宝石と抽象画のジョイント展。アクリル板に挟まった小品が床や机上に散らばりなかなか展示がユニーク。春木さんは自由にどんどん絵がかけちゃうタイプの人なんだと思う。願わくはもうちょっと大きな作品が見たい。
高嶺格展(CAI)
  D.HISAKO展(札幌市資料館)。
 道都大学中島ゼミ展(市民ギャラリー)。学生による染織とシルクスクリーンが中心。「静電気発生装置」は必見です(写真撮り忘れた)。笑えます。
 林亨「眼を閉じて」(ギャラリーミヤシタ)。前回の延長線上にある、正方形の平面連作。ただし文字は書かれていない。画面を自由に走る細い線と、画面を縁取る太く明るいラインが、同じ色になっている。 

「雪の帝国」

下は米坂さんの作品。右が「あしおと」。左が「謳うトッカリ」

しゃれた春木さんの抽象画

12月12日(火)
 きょうも最高が氷点下6・3度。極寒。
 道立近代美術館で「北の日本画展」を見る。会場が広くなって、出品者もずいぶん増えた。感想はいずれまた。

12月11日(月)
 夕方5時、NHKの温度計が氷点下7・5度。寒い。歩道は凍ってテカテカ!
 工芸ギャラリー愛海詩の佐藤さんから手紙をいただき、スケジュールに追加。アートスペースの赤木さんから、小生の名がこのホームページのどこにもないという指摘をいただき、恥ずかしながら、自己紹介のページを書き換え。ありがとうございます。
 「美術手帖」12月号は「20世紀の美術」特集。各国ごとに、10年で1作品を選ぶというやり方は、一昨年の「ユリイカ」増刊「20世紀を読む」と同じだぞ。

 追記。
 読売夕刊に、がんで余命2ヶ月を宣告されて「最後の個展」を東京・銀座で開催中の今井俊満氏の言葉。
「彼女(=渋谷のコギャル)たちは、今の日本文化を象徴している。そもそも日本では、ドロップアウトした人間だけが生き残る。一休もそう。西行もそう。体制側は全部だめ。美術界における体制なんかは最悪です」
 さすがアンフォルメルの旗手。辛辣。
 朝日夕刊にサニーデイ・サービス解散の記事。残念。

 12月10日(日)
 ホームページ・ビルダーとの数日にわたる格闘のすえに、ようやくこのページが転送できました。みなさま、どうぞごひいきに。

12月9日(土)
 大丸藤井スカイホールで、札幌市内の陶芸家・木村初江さんの個展。
割とこの人はいい意味で自分のやりたいことをやっている感じで、いわゆる器だけでなく造形作品の発表も精力的に行っています。  今回は、器や陶板が中心ですが、会場の中心に、秋のNAC展(道内の陶芸家によるグループ展)で発表した作品を、天地さかさまにして再発表(右の写真の手前のです)。
 うーん、三つのろうとが組になって危うい感じで床に立ち、くぼんだところには水がたまっており、こっちの方がいい感じです。

 大丸藤井では「第24回北玄12人展」なる書道展も開催。
 書道展といえば同じ社中の人どうしが開くことが多いのですが、これは漢字、かな、近代詩文とさまざまで、けっこう楽しめました。
 とくに川口ヤ子さんの虚子の句を書いた作品などは、かなでありながら近代詩文的なアプローチをした作品のようで、興味深かったです。かなの作品は素人目にはどれも似たように見えがちですが全体の字の配置などにも意を用いた作品は面白い。
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