スワン彗星 その10

馬^k/e^(2nπ) を求める
馬/e^(2nπ)を求める



2008/8/30             <馬^k/e^(2nπ) を求める>

 「その8で、フーリエシステムでは馬^k/e^(2nπ)の積分表示が求まらない旨を書いたが(kはk>=1の整数)、
じつは求まることがわかったので、示すことにする。あること簡単なことを見落としていた・・。
その8では、次のように書いた。
*********************
 また佐藤氏は馬^k/e^(2nπ)もフーリエシステムで求められないか?と問われたが、考えた結果、これは求めることが
できないとわかった。(k >=1) 

  1/(1^k・e^(2π)) + 1/(2^k・e^(4π)) + 1/(3^k・e^(6π)) +・・ -----A
は求まるのに、
  1^k/e^(2π) + 2^k/e^(4π) + 3^k/e^(6π) +・・       ------B
が求まらないのである。(厳密には「現時点では」というほうが正確)

一見ふしぎなことに見えるが、これはシステムの性質によっている。
フーリエシステムは「既存のフーリエ級数の公式を利用する」ことをするわけだが、適当な公式が存在しないと計算する
ことができない。システムでは、フーリエ級数のような三角関数の母関数を部分積分で次々に微分していく。その微分
を用いて、Aの場合は、
  sinx/(cosh(a)-cosx)=2{sinx/e^(a) + sin2x/e^(2a) + sin3x/e^(3a) + ・・}   (-π<= x<=π, a>0)

  sinh(a)/(cosh(a)-cosx)=1 + 2{cosx/e^(a) + cos2x/e^(2a) + cos3x/e^(3a) + ・・}   (-π<= x<=π, a>0)

という適当な公式を計算途中で利用できるように強引にもっていける。どんな整数k(>=1)の場合でも、これら公式を
組み込めるようにできる。よってAが求まる。ところが、Bを出せる、適当な公式が公式集を見ても見当たらない!
ひょっとしたら、どこかに存在するのかもしれないが、現時点ではない
h(x)を上公式の左辺のような明示的な関数として、例えば、もし万一、
 h(x)=1^3・sinx/e^(a) + 2^3・sin2x/e^(2a) + 3^3・sin3x/e^(3a) + ・・

 h(x)=1^3・cosx/e^(a) + 2^3・cos2x/e^(2a) + 3^3・cos3x/e^(3a) + ・・
という公式が存在したら、この場合は、
  1^k/e^(2π) + 2^k/e^(4π) + 3^k/e^(6π) +・・    ----B

このBのk=1と2と(Aの全てのk)の場合が求まることになる。
**********************************

 このように「現時点ではない」と書いたのだが、公式集にはなくとも、
  sinx/(cosh(a)-cosx)=2{sinx/e^(a) + sin2x/e^(2a) + sin3x/e^(3a) + ・・}   (-π<= x<=π, a>0)
  sinh(a)/(cosh(a)-cosx)=1 + 2{cosx/e^(a) + cos2x/e^(2a) + cos3x/e^(3a) + ・・}   (-π<= x<=π, a>0)
両辺をk回微分すれば、簡単に
 h(x)=1^k・sinx/e^(a) + 2^k・sin2x/e^(2a) + 3^k・sin3x/e^(3a) + ・・
 h(x)=1^k・cosx/e^(a) + 2^k・cos2x/e^(2a) + 3^k・cos3x/e^(3a) + ・・
が出るとわかる!しかもh(x)は明示的な初等関数として出る! 収束が気になるがこの場合は無限回の微分が可能。
上のk=2の場合の三角関数の級数が存在したら、Bのk=1の場合、つまり

 馬/e^(2nπ)= 1/e^(2π) + 2/e^(4π) + 3/e^(6π) +・・

が求まる。ここではこれを求めよう。



2008/8/23               <馬/e^(2nπ)を求める>

1/e^(2π) + 2/e^(4π) + 3/e^(6π) +・・      ----@
の積分表示を導出する。

[馬/e^(2nπ)導出]
 @の形から、Cos級数
 f(x)=cosx/e^(2π) + 2cos2x/e^(4π) + 3cos3x/e^(6π) + ・・・      ----A
を考える。周期は2πである。
直交性の性質より、
 1/e^(2π) =(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
 2/e^(4π) =(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
 3/e^(6π)=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
   ・
   ・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
 1/e^(2π)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/e^(2π) + 2^2sin2x/e^(4π) + 3^2sin3x/e^(6π) + ・・・)(sinx/1) dx
 2/e^(4π)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/e^(2π) + 2^2sin2x/e^(4π) + 3^2sin3x/e^(6π) + ・・・)(sin2x/2) dx
 3/e^(6π)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/e^(2π) + 2^2sin2x/e^(4π) + 3^2sin3x/e^(6π) + ・・・)(sin3x/3) dx
   ・
   ・
これらを縦に足し合わせて
1/e^(2π) + 2/e^(4π) + 3/e^(6π) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/e^(2π) + 2^2sin2x/e^(4π) + 3^2sin3x/e^(6π) + ・・・)(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3+ ・・) dx  ---B

 ここでフーリエ級数の公式
  sinx/(cosh(a)-cosx)=2{sinx/e^(a) + sin2x/e^(2a) + sin3x/e^(3a) + ・・}   (-π<= x<=π, a>0)
2回微分すると、次式を得る。
  sinx{2-(cosh(a))^2-cosh(a)cosx}/(2(cosh(a)-cosx)^3)
                       =-2{sinx/e^(a) + 2^2sin2x/e^(2a) + 3^2sin3x/e^(3a) + ・・}     ----C
それと公式
  sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・=(π-x)/2           (0 <x<2π)           ----D
を利用する。
 Cでa=2πとしたものとDをBに代入して、整理すると、

1/e^(2π) + 2/e^(4π) + 3/e^(6π) +・・
            =1/(2π)∫(0〜π) (x-π){2-(cosh2π)^2-cosh2π・cosx}sinx/(cosh2π-cosx)^3 dx    ----E

左辺の積分表示が求まった。

今回の馬^k/e^(2nπ)のk=1の場合を求めるには、(すくなくとも)2回微分が必要となった。
一般に、k=mの場合を求めるには、すくなくとも(m+1)回微分が必要となるのである。

[終わり]

Eの検証に関しては左辺のExcel数値計算の結果と、右辺の定積分の値が一致することで確認した。(その際、定積分
を計算できるフリーの計算ソフトBearGraphを用いた)

 今回の方法が適用できるとわかったので、フーリエシステムの可能性がさらに拡大したといえるだろう。
ある条件を満たすフーリエ級数の公式(微分しても収束するもの)を用いれば、いくらでも利用可能な公式を増産してい
けるからである。
佐藤郁郎氏のサイト
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/651_s27.htm
には、今回のΣn/{exp(2πn)}のみならず、Σn^k/{exp(2πn)}の明示的な値が求められている。参照されたい。

[馬/e^(2nπ)導出]

馬/e^(2nπ)型cos級数から導出

1/e^(2π) + 2/e^(4π) + 3/e^(6π) +・・
            =1/(2π)∫(0〜π) (x-π){2-(cosh2π)^2-cosh2π・cosx}sinx/(cosh2π-cosx)^3 dx


さらに
 馬^k/e^(2nπ)= 1^k/e^(2π) + 2^k/e^(4π) + 3^k/e^(6π) +・・
のkが2以上の場合も求めたいが、本質的に今回やったことと同じであるし、微分が複雑化していくので、これ以上は
略したい。





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