1/(n^k・e^(2nπ))を調べた。
< 比較 >
数学の巨人・佐藤郁郎氏は、フーリエシステムや当サイトで提示した問題に関して、広い見地から次サイトで論じて
おられる。きわめて興味深い考察である。ぜひ参考にしていただきたい。
その佐藤氏に「その7」の結果を伝えたところ、ご自身の論考との整合性をとるため「その7」の1/(n^k・e^(nπ))を
1/(n^k・e^(2nπ))の形に書き直してほしいと依頼されてきたので、ここではその形に全面的に書き直した。
もちろん本質的には同等である。
また佐藤氏は馬^k/e^(2nπ)もフーリエシステムで求められないか?と問われたが、考えた結果、これは求めることが
できないとわかった。(k >=1)
1/(1^k・e^(2π)) + 1/(2^k・e^(4π)) + 1/(3^k・e^(6π)) +・・ -----A
は求まるのに、
1^k/e^(2π) + 2^k/e^(4π) + 3^k/e^(6π) +・・ ------B
が求まらないのである。(厳密には「現時点では」というほうが正確)
一見ふしぎなことに見えるが、これはシステムの性質によっている。
フーリエシステムは「既存のフーリエ級数の公式を利用する」ことをするわけだが、適当な公式が存在しないと計算する
ことができない。システムでは、フーリエ級数のような三角関数の母関数を部分積分で次々に微分していく。その微分
を用いて、Aの場合は、
sinx/(cosh(a)-cosx)=2{sinx/e^(a) + sin2x/e^(2a) + sin3x/e^(3a) + ・・} (-π<= x<=π, a>0)
や
sinh(a)/(cosh(a)-cosx)=1 + 2{cosx/e^(a) + cos2x/e^(2a) + cos3x/e^(3a) + ・・} (-π<= x<=π, a>0)
という適当な公式を計算途中で利用できるように強引にもっていける。どんな整数k(>=1)の場合でも、これら公式を
組み込めるようにできる。よってAが求まる。ところが、Bを出せる、適当な公式が公式集を見ても見当たらない!
ひょっとしたら、どこかに存在するのかもしれないが、現時点ではない。
h(x)を上公式の左辺のような明示的な関数として、例えば、もし万一、
h(x)=1^3・sinx/e^(a) + 2^3・sin2x/e^(2a) + 3^3・sin3x/e^(3a) + ・・
や
h(x)=1^3・cosx/e^(a) + 2^3・cos2x/e^(2a) + 3^3・cos3x/e^(3a) + ・・
という公式が存在したら、この場合は、
1^k/e^(2π) + 2^k/e^(4π) + 3^k/e^(6π) +・・ ----B
このBのk=1と2と(Aの全てのk)の場合が求まることになる。
いま述べたことは、以下に示すシステムの計算過程を追ってもらえば、簡単にわかるであろう。
ところが・・驚いたことに、佐藤郁郎氏は馬^k/e^(2nπ)の値を求められたようである。
さて、以下、1/(n^k・e^(2nπ))の積分表示を求めていく。次のものである。
1/(1^k・e^(2π)) + 1/(2^k・e^(4π)) + 1/(3^k・e^(6π)) +・・ ----@
フーリエシステムを用いて求めるが、その際、フーリエ級数の公式
sinx/(cosh(a)-cosx)=2敗inx/e^(an) (-π<= x<=π, a>0)
sinh(a)/(cosh(a)-cosx)=1 + 2把osx/e^(an) (-π<= x<=π, a>0)
を(他の公式とともに)利用することになる。狽ヘn=1〜∞の和。(この公式は、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、
岩波書店)p.250を参照)
@のk=1,2,3,4の場合、すなわち、次を順に求めていく。
1/(1・e^(2π)) + 1/(2・e^(4π)) + 1/(3・e^(6π)) +・・
1/(1^2・e^(2π)) + 1/(2^2・e^(4π)) + 1/(3^2・e^(6π)) +・・
1/(1^3・e^(2π)) + 1/(2^3・e^(4π)) + 1/(3^3・e^(6π)) +・・
1/(1^4・e^(2π)) + 1/(2^4・e^(4π)) + 1/(3^4・e^(6π)) +・・
まずは、k=1の場合から。
k=1の場合、すなわち、
1/(1・e^(2π)) + 1/(2・e^(4π)) + 1/(3・e^(6π)) +・・ ----@
の積分表示を導出する。
[1/(n・e^(2nπ))導出]
@の形から、Cos級数
f(x)=cosx/(1・e^(2π)) + cos2x/(2・e^(4π)) + cos3x/(3・e^(6π)) + ・・・ ----A
を考える。周期は2πである。
直交性の性質より、
1/(1・e^(2π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/(2・e^(4π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/(3・e^(6π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/(1・e^(2π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/e^(2π) + sin2x/e^(4π) + sin3x/e^(6π) + ・・・)(sinx/1) dx
1/(2・e^(4π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/e^(2π) + sin2x/e^(4π) + sin3x/e^(6π) + ・・・)(sin2x/2) dx
1/(3・e^(6π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/e^(2π) + sin2x/e^(4π) + sin3x/e^(6π) + ・・・)(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
1/(1・e^(2π)) + 1/(2・e^(4π)) + 1/(3・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/e^(2π) + sin2x/e^(4π) + sin3x/e^(6π) + ・・・)(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3+ ・・) dx ---B
ここでフーリエ級数の公式
sinx/(cosh(a)-cosx)=2{sinx/e^(a) + sin2x/e^(2a) + sin3x/e^(3a) + ・・} (-π<= x<=π, a>0)
sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + ・・=(π-x)/2 (0 <x<2π)
でa=2πとしてBに用いて、整理すると、
1/(1・e^(2π)) + 1/(2・e^(4π)) + 1/(3・e^(6π)) +・・=(1/2)∫(0〜π) (1-x/π)sinx/(cosh2π-cosx) dx ----C
となる。
左辺の積分表示が求まった。
[終わり]
Cの検証においては左辺のExcel数値計算の結果と、右辺の定積分の値が一致することで確認した。(その際、定積分
を計算できるフリーの計算ソフトBearGraphを用いた)
k=2の場合、すなわち、
1/(1^2・e^(2π)) + 1/(2^2・e^(4π)) + 1/(3^2・e^(6π)) +・・ ----@
の積分表示を導出する。
[1/(n・e^(2nπ))導出]
@の形から、Cos級数
f(x)=cosx/(1^2・e^(2π)) + cos2x/(2^2・e^(4π)) + cos3x/(3^2・e^(6π)) + ・・・ ----A
を考える。周期は2πである。
直交性の性質より、
1/(1^2・e^(2π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/(2^2・e^(4π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/(3^2・e^(6π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/(1^2・e^(2π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1・e^(2π)) + sin2x/(2・e^(4π)) + sin3x/(3・e^(6π)) + ・・・)(sinx/1) dx
1/(2^2・e^(4π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1・e^(2π)) + sin2x/(2・e^(4π)) + sin3x/(3・e^(6π)) + ・・・)(sin2x/2) dx
1/(3^2・e^(6π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1・e^(2π)) + sin2x/(2・e^(4π)) + sin3x/(3・e^(6π)) + ・・・)(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
1/(1^2・e^(2π)) + 1/(2^2・e^(4π)) + 1/(3^2・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1・e^(2π)) + sin2x/(2・e^(4π)) + sin3x/(3・e^(6π)) + ・・・)(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 +・・) dx
Sin-Cos移動の法則(部分積分)より、右辺は次のように変形できる。
1/(1^2・e^(2π)) + 1/(2^2・e^(4π)) + 1/(3^2・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/e^(2π) + cos2x/e^(4π) + cos3x/e^(6π) +・・)(cosx/1^2+cos2x/2^2+cos3x/3^2 ・・) dx ---B
ここでフーリエ級数の公式
sinh(a)/(cosh(a)-cosx)=1 + 2{cosx/e^(a) + cos2x/e^(2a) + cos3x/e^(3a) + ・・} (-π<= x<=π, a>0)
cosx/1^2 + cos2x/2^2 + cos3x/3^2 + ・・=(π-x)^2/4 -π^2/12 (0 <=x<=2π)
でa=2πとしたものをBに用いて、整理すると、
1/(1^2・e^(2π)) + 1/(2^2・e^(4π)) + 1/(3^2・e^(6π)) +・・
=∫(0〜π) {(x-π)^2/(4π) -π/12}{sinh2π/(cosh2π-cosx) - 1} dx ----C
となる。
左辺の積分表示が求まった。
[終わり]
Cの検証においては左辺のExcel数値計算の結果と、右辺の定積分の値が一致することで確認した。
k=3の場合、すなわち、
1/(1^3・e^(2π)) + 1/(2^3・e^(4π)) + 1/(3^3・e^(6π)) +・・ ----@
の積分表示を導出する。
[1/(n・e^(2nπ))導出]
@の形から、Cos級数
f(x)=cosx/(1^3・e^(2π)) + cos2x/(2^3・e^(4π)) + cos3x/(3^3・e^(6π)) + ・・・ ----A
を考える。周期は2πである。
直交性の性質より、
1/(1^3・e^(2π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/(2^3・e^(4π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/(3^3・e^(6π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/(1^3・e^(2π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2・e^(2π)) + sin2x/(2^2・e^(4π)) + sin3x/(3^2・e^(6π)) + ・・・)(sinx/1) dx
1/(2^3・e^(2π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2・e^(2π)) + sin2x/(2^2・e^(4π)) + sin3x/(3^2・e^(6π)) + ・・・)(sin2x/2) dx
1/(3^3・e^(6π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2・e^(2π)) + sin2x/(2^2・e^(4π)) + sin3x/(3^2・e^(6π)) + ・・・)(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
1/(1^3・e^(2π)) + 1/(2^3・e^(4π)) + 1/(3^3・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^2・e^(2π)) + sin2x/(2^2・e^(4π)) + sin3x/(3^2・e^(6π)) + ・・・)(sinx/1 + sin2x/2 + ・・) dx
Sin-Cos移動の法則(部分積分)より、右辺は次のように次々と機械的に変形できる。
1/(1^3・e^(2π)) + 1/(2^3・e^(4π)) + 1/(3^3・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1・e^(2π)) + cos2x/(2・e^(4π)) + cos3x/(3・e^(6π)) +・・)(cosx/1^2 + cos2x/2^2 + ・・) dx
1/(1^3・e^(2π)) + 1/(2^3・e^(4π)) + 1/(3^3・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/e^(2π) + sin2x/e^(4π) + sin3x/e^(6π) +・・)(sinx/1^3 + sin2x/2^3 + ・・) dx ----B
ここでフーリエ級数の公式
sinx/(cosh(a)-cosx)=2{sinx/e^(a) + sin2x/e^(2a) + sin3x/e^(3a) + ・・} (-π<= x<=π, a>0)
sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 + ・・={π^3-π^2・x+(x-π)^3}/12 (0 <=x<=2π)
でa=2πとしたものをBに用いて、整理すると、
1/(1^3・e^(2π)) + 1/(2^3・e^(4π)) + 1/(3^3・e^(6π)) +・・
=(1/(12π))∫(0〜π) {π^3-π^2・x+(x-π)^3}sinx/(cosh2π-cosx) dx ----C
となる。
左辺の積分表示が求まった。
[終わり]
Cの検証においては左辺のExcel数値計算の結果と、右辺の定積分の値が一致することで確認した。
k=4の場合、すなわち、
1/(1^4・e^(2π)) + 1/(2^4・e^(4π)) + 1/(3^4・e^(6π)) +・・ ----@
の積分表示を導出する。
[1/(n・e^(2nπ))導出]
@の形から、Cos級数
f(x)=cosx/(1^4・e^(2π)) + cos2x/(2^4・e^(4π)) + cos3x/(3^4・e^(6π)) + ・・・ ----A
を考える。周期は2πである。
直交性の性質より、
1/(1^4・e^(2π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
1/(2^4・e^(4π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos2x dx
1/(3^4・e^(6π))=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
・
・
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/(1^4・e^(2π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^3・e^(2π)) + sin2x/(2^3・e^(4π)) + sin3x/(3^3・e^(6π)) + ・・・)(sinx/1) dx
1/(2^4・e^(4π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^3・e^(2π)) + sin2x/(2^3・e^(4π)) + sin3x/(3^3・e^(6π)) + ・・・)(sin2x/2) dx
1/(3^4・e^(6π))=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^3・e^(2π)) + sin2x/(2^3・e^(4π)) + sin3x/(3^3・e^(6π)) + ・・・)(sin3x/3) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて
1/(1^4・e^(2π)) + 1/(2^4・e^(4π)) + 1/(3^4・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^3・e^(2π)) + sin2x/(2^3・e^(4π)) + sin3x/(3^3・e^(6π)) + ・・・)(sinx/1 + sin2x/2 + ・・) dx
Sin-Cos移動の法則(部分積分)より、右辺は次のように次々と機械的に変形できる。
1/(1^4・e^(2π)) + 1/(2^4・e^(4π)) + 1/(3^4・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/(1^2・e^(2π)) + cos2x/(2^2・e^(4π)) + cos3x/(3^2・e^(6π)) +・・)(cosx/1^2 + cos2x/2^2 + ・・) dx
1/(1^4・e^(2π)) + 1/(2^4・e^(4π)) + 1/(3^4・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (sinx/(1^1・e^(2π)) + sin2x/(2^1・e^(4π)) + sin3x/(3^1・e^(6π)) + ・・・)(sinx/1^3 + sin2x/2^3 + ・・) dx
1/(1^4・e^(2π)) + 1/(2^4・e^(4π)) + 1/(3^4・e^(6π)) +・・
=(2/π)∫(0〜π) (cosx/e^(2π) + cos2x/e^(4π) + cos3x/e^(6π) +・・)(cosx/1^4 + cos2x/2^4 + ・・) dx ----B
このSin-Cos移動の法則の美しい流れを味わっていただきたい。まったく機械的な変形でOK!
ここでフーリエ級数の公式
sinh(a)/(cosh(a)-cosx)=1 + 2{cosx/e^(a) + cos2x/e^(2a) + cos3x/e^(3a) + ・・} (-π<= x<=π, a>0)
cosx/1^4 + cos2x/2^4 + cos3x/3^4 + ・・={2π^2(π-x)^2 -(x-π)^4-7π^4/15}/48 (0 <=x<=2π)
でa=2πとしたものをBに用いて、整理すると、
1/(1^4・e^(2π)) + 1/(2^4・e^(4π)) + 1/(3^4・e^(6π)) +・・
=(1/(48π))∫(0〜π) {2π^2(π-x)^2 -(x-π)^4-7π^4/15)}{sinh2π/(cosh2π-cosx) -1}dx ----C
となる。
左辺の積分表示が求まった。
[終わり]
Cの検証においては左辺のExcel数値計算の結果と、右辺の定積分の値が一致することで確認した。
この頁のすべての場合をまとめておく。
1/(n^k・e^(2nπ))
比較の意味で、一つ前の 「スワン彗星 その7」の1/(n^k・e^(nπ))も載せておく。
1/(n^k・e^(nπ))
この二つを比べると面白いことに気づかれるであろう。
右辺積分中の赤文字に注目いただきたい。結局、1/(n^k・e^(2nπ))では、1/(n^k・e^(nπ))の積分中の右側関数
のπが2πに変わっているだけ!なのである(左辺のπ->2πと連動)。あとは、まったく同じである。
フーリエシステムの計算過程を追えば、当たり前のこととわかるが、しかし、もし上記式をはじめた見た人がいたら、
なんともふしぎだ・・と思うにちがいない。
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