L(2)、L(3)を求めた。
フーリエシステムを用いて、L(s)の値をいくか求めよう。
L(s)は、ディリクレのL関数L(χ,s)の一種のゼータで、
L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
で定義される。L(s)は、リーマン・ゼータζ(s)と兄弟分の関係にあるものである。
ちなみにζ(s)もL(χ,s)の一種のゼータである。
s=1での
L(1)=1 - 1/3 + 1/5 - 1/7 + ・・・=π/4
はライプニッツの公式として有名である。
L(2)から求めたい。L(2n)はこれは奇数ゼータζ(2n+1)と同様、現代数学でも正体がつかみきれていないものである。
[L(2)導出]
L(2)=1/1^2 - 1/3^2 + 1/5^2 - 1/7^2 +・・ ----@
@の形に着目して、関数(サイン級数)
f(x)=sinx/1^2 - sin3x/3^2 + sin5x/5^2 - sin7x/7^2 +・・ -----A
を考える。周期は2πである。
フーリエ級数の直交性を用いて、
1/1^2=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sinx dx
-1/3^2=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sin3x dx
1/5^2=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sin5x dx
・
・
さらに、これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/1^2=(2/π)∫(0〜π) (cosx/1 - cos3x/3 + cos5x/5 - ・・)・(cosx/1) dx
-1/3^2=(2/π)∫(0〜π) (cosx/1 - cos3x/3 + cos5x/5 - ・・)・(cos3x/3) dx
1/5^2=(2/π)∫(0〜π) (cosx/1 - cos3x/3 + cos5x/5 - ・・)・(cos5x/5) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて、左辺は@から
L(2)=(2/π)∫(0〜π) (cosx/1 - cos3x/3 + cos5x/5 - ・・)・(cosx/1 + cos3x/3 + cos5x/5 + ・・) dx ----B
ここでフーリエ級数の公式
cosx/1 - cos3x/3 + cos5x/5 - cos7x/7 + ・・=π/4(-π/2<x<π/2)、0(x=π/2)、-π/4(π/2<x<3π/2) ----C
cosx/1 + cos3x/3 + cos5x/5 + ・・=(log|cot(x/2)|)/2 (0 <x< 2π、ただしxはπでない)
を用いてBを計算していく。(この公式は、例えば「数学公式U」(森口・宇田川・一松著、岩波書店)を参照)
Bの積分範囲0〜πと、Cの場合分けに注意しながら計算していく。
L(2)=(2/π){∫(0〜π/2) (π/4)(log|cot(x/2)|)/2 dx +∫(π/2〜π) (-π/4)(log|cot(x/2)|)/2 dx}
=(1/4){∫(0〜π/2) log|cot(x/2)| dx - ∫(π/2〜π) log|cot(x/2)| dx}
=(1/4){-∫(0〜π/2) log|tan(x/2)| dx+ ∫(0〜π/2) log|tan(x/2+π/4)| dx}
=(1/4)∫(0〜π/2) log|(tan(x/2+π/4)/tan(x/2)| dx
すなわち、
L(2)=(1/4)∫(0〜π/2) log|(tan(x/2+π/4))/tan(x/2)| dx ----D
と求まった。
[終わり]
Dは、定積分の値が計算できるフリーの計算ソフトBearGraphで数値的にも検証済み。
次にL(3)を求める。これは、L(3)=π^3/32と正体が分かっているものである。
[L(3)導出]
L(3)=1/1^3 - 1/3^3 + 1/5^3 - 1/7^3 +・・ ----@
@の形に着目して、関数(コサイン級数)
f(x)=cosx/1^3 - cos3x/3^3 + cos5x/5^3 - cos7x/7^3 +・・ -----A
を考える。周期は2πである。
フーリエ級数の直交性を用いて、
1/1^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cosx dx
-1/3^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos3x dx
1/5^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・cos5x dx
・
・
さらに、これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/1^3=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^2 - sin3x/3^2 + sin5x/5^2 - ・・)・(sinx/1) dx
-1/3^3=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^2 - sin3x/3^2 + sin5x/5^2 - ・・)・(sin3x/3) dx
1/5^3=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^2 - sin3x/3^2 + sin5x/5^2 - ・・)・(sin5x/5) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて、左辺は@から
L(3)=(2/π)∫(0〜π) (sinx/1^2 - sin3x/3^2 + sin5x/5^2 - ・・)・(sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 + ・・) dx ----B
ここでフーリエ級数の公式
sinx/1^2 - sin3x/3^2 + sin5x/5^2 - ・・=πx/4 (-π/2<=x<=π/2)、 π(π-x)/4 (π/2<=x<=3π/2) ---C
sinx/1 + sin3x/3 + sin5x/5 + ・・=π/4 (0<x<π)、0 (x=π)、-π/4 (π<x<2π)
を用いてBを計算していく。Bの積分範囲0〜πと、Cの場合分けに注意して計算する。
L(3)=(2/π){∫(0〜π/2) (πx/4)(π/4) dx +∫(π/2〜π) (π(π-x)/4)(π/4) dx}
右辺は簡単に計算できて、
L(3)=π^3/32
と出る。
[終わり]
フーリエシステムはさまざまなパターンが可能である。
(私もまたすべては把握できていないのだが、思いついたところから、紹介している)
一つ上ではCos級数で出したが、ここではSin級数でL(3)を出してみよう。上記二つとは違ったひねりが加わる。
[L(3)導出]
L(3)=1/1^3 - 1/3^3 + 1/5^3 - 1/7^3 +・・ ----@
関数(サイン級数)
f(x)=sinx/1^3 + sin3x/3^3 + sin5x/5^3 + sin7x/7^3 +・・ -----A
を考える。周期は2πである。各項の符号がすべて+である点に注目!
フーリエ級数の直交性を用いて、
1/1^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sinx dx
-1/3^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・(-sin3x) dx
1/5^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・sin5x dx
-1/7^3=(2/π)∫(0〜π) f(x)・(-sin7x) dx
・
・
2番目、4番目でそれぞれ-sin3x、-sin7xを掛けた点が工夫(ひねり)である。
これらの右辺を部分積分する。f(x)はAであるから、簡単な計算から次となる。
1/1^3=(2/π)∫(0〜π) (cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・)・(cosx/1) dx
-1/3^3=(2/π)∫(0〜π) (cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・)・(-cos3x/3) dx
1/5^3=(2/π)∫(0〜π) (cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・)・(cos5x/5) dx
-1/7^3=(2/π)∫(0〜π) (cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・)・(-cos7x/7) dx
・
・
これらを縦に足し合わせて、左辺は@から
L(3)=(2/π)∫(0〜π) (cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・)・(cosx/1 - cos3x/3 + cos5x/5 - ・・) dx ----B
ここでフーリエ級数の公式
cosx/1^2 + cos3x/3^2 + cos5x/5^2 + ・・=π(π+2x)/8 (-π<=x<=0)、 π(π-2x)/8 (0<=x<=π) ---C
cosx/1 - cos3x/3 + cos5x/5 - ・・=π/4 (-π/2<x<π/2)、0 (x=π/2)、-π/4 (π/2<x<3π/2) ----D
を用いてBを計算していく。Bの積分範囲0〜πと、C、Dの場合分けに注意して計算する。
L(3)=(2/π){∫(0〜π/2) (π(π-2x)/8)(π/4) dx +∫(π/2〜π) (π(π-2x)/8)(-π/4) dx}
右辺は簡単に計算できて、
L(3)=π^3/32
と出る。
[終わり]
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