ここでは一転して、ゼータ関数と微分方程式の関連を述べた。
L(χ,s)ゼータを生み出す微分方程式を発見。その微分方程式の「一般解からも中心母等式が構成される」という
事実を見出した。
物理サイトの「場の量子論の発散の困難の解消へ その3」の<中心母関数cosx/sinx を解とする微分方程式>
で私は、L(χ,s)ゼータの母関数であるcosx/sinx を特解にもつ微分方程式を求めていた。
それに関して、一般解まで求めていたが、その微分方程式のことがずっと気にかかっており、今回再考したところ
面白い事実を見つけたので報告したい。
まず「ゼータ惑星」で私が作った予想を書いておこう。
さて、上の@とAの式がゼータL(χ,s)の特殊値をつぎつぎと生み出していく母等式となっていることは、これまで
本サイトで見てきたとおりである。
sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・) -----B
というこのBも@と同値であり、@と同じL(χ,s)特殊値を生み出してくれる。
@やBは非明示な場合の特殊値(例えば、奇数ゼータζ(-3),ζ(-1),ζ(3),ζ(5),・・)を生み出し、
Aは明示的な場合の特殊値(例えば、偶数ゼータζ(-4),ζ(-2),ζ(0),ζ(2),ζ(4),・・)を生み出してくれ
るのであった。
cosx/sinxやsinx/cosxはゼータ世界における母なる役割をはたしているのである。
さて、私は「場の量子論の発散の困難の解消へ その3」の<中心母関数cosx/sinx を解とする微分方程式>
で、次の事実を見つけて満足していた。
特解であることは、方程式に放り込めばすぐに確認できる。
そのときは、これで満足していたのであるが、この裏にはもっと興味深い事実が隠れていた。
新たにわかったことは、
微分方程式 y´+ y^2=-1はy=cosx/sinxとともに、y=-sinx/cosx も特解としてもつ。
微分方程式 y´- y^2=1はy=sinx/cosxとともに、y=-cosx/sinxも特解としてもつ。
ということである。
なんと両方の微分方程式とも、”本質的に” cosx/sinx と sinx/cosx という母関数を二つとも特解と
して包含しているのである!
両方程式は、深い意味をもつ方程式なのであった。
(この際、-符号のあるなしは関係ない。なぜなら母等式をつくれば本質的に同じだから。)
特解となっていることは放り込めばすぐに確認できる。みなさんやってください。
上の微分方程式からゼータの卵 cosx/sinx や sinx/cosx がぽろりと生まれおちる。
そして、それらは生命をうけ
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
という美しい等式@を織りあげる(またはB)。
この@に重回積分-重回微分という作用素の栄養をたくさん与えると、ゼータは喜んで、現代数学で不明と
されるゼータの特殊値の姿をつぎつぎに明らかにしてくれたのであった。
その感動は「ゼータ惑星」で十分に堪能した。 なんという壮大な世界・・。
y´+ y^2=-1 ---C
または、
y´- y^2=1 ---D
このC、Dはゼータ関数L(χ,s)の中心母等式を特解としてもつ微分方程式なので、ゼータ世界での
中心的なものだと言える。ゼータの中心微分方程式と名付けたい。
一般解について少し言及しよう。
<中心母関数cosx/sinx を解とする微分方程式>で、私はCの一般解を求めていた。
y´+ y^2=-1 ---C
の一般解は次となる。
y=cosx/sinx + 1/{C(sinx)^2 - sinx・cosx} -----E
(Cは任意定数)
C(やD)は非線形であり、一般には解くのが困難である。
しかし、じつはCはある変換を加えれば線形の微分方程式へと変形できる「広義のリッカチの微分方程式」と
いう特殊なタイプとなっている(*)。
@の特解cosx/sinxを利用し、一旦ベルヌーイの微分方程式へと変換し、それを解く手順を遂行すれば自然に
一般解Eへと到達する。(詳細は略)
<中心母関数cosx/sinx を解とする微分方程式>では、Cの一般解しか求めていなかったが、今回Dの
一般解も、まったく同様の方法で求めることができたので記しておく。
y´- y^2=1 ---D
の一般解は次となる。
y=sinx/cosx + 1/{C(cosx)^2 - sinx・cosx} -----F
(Cは任意定数)
EやFが一般解となっていることは、放り込めばすぐに検証できる。
また、E,FでC=0とすれば、もう一つの母関数の特解が得られることを確認されたい。
とにもかくにも、強調したいのは一つの微分方程式(CやD)から、母関数が二つとも出てくることである。
y´+ y^2=-1 ---C
または、
y´- y^2=1 ---D
これらはL(χ,s)のゼータ世界にもっとも深く関係した微分方程式だといえるだろう。
L(χ,s)はディリクレのL関数と呼ばれる古典的に最も重要なゼータ関数である。
(リーマン・ゼータ関数ζ(s)もそれに含まれる)
L(χ,s)について詳しく知りたい読者は、「解決!フェルマーの最終定理」(加藤和也著、日本評論社)を
勧めたい。やや高度だが、こんな素晴らしい本はちょっとない。
ところで、いま2種類の特解のみを考察したが、EまたはFのCの値を様々に変化させるとまた色々な特解
が構成されるわけだが、それらもゼータ世界になんらかの形で関係しているのではないか?
そんなことをふと思った。
この興味ある問題は、今後の課題としたい。
(追記2005/9/28 この課題は次以降であっさりと解決された。私の予想は正しかったわけである)
(*)「演習 微分方程式」(寺田文行他著、サイエンス社)
私は、上の微分方程式に本質的な臭いを感じ、これはもっと別の分野(数学や物理)にもあらわれているに違いない
と思った。
そこで、数学研究家でゼータやカオスで素晴らしい研究をされているSugimoto氏(氏のサイトはこちら)に質問した。
「この微分方程式を見て、なにかピンとくるものがありませんか?」と。
すると、
Sugimoto氏は「佐藤氏が今年の春に似たような微分方程式を書いていた」として次のサイトを紹介くださった。
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/279_max.htm 佐藤氏とは日本のオイラー・佐藤郁郎氏である。なんとパンルヴェ方程式に似ているではないか!
上の一般解はもっとシンプルな形に変形できることに気付いた。
すなわち、
微分方程式 y´+ y^2=-1 ---C
の一般解
y=cosx/sinx + 1/{C(sinx)^2 - sinx・cosx} -----E
(Cは任意定数)
は次のように変形できる。
y={Ccosx + sinx}/{Csinx - cosx} -----I
(Cは任意定数)
EからIの導出は簡単である。次のようにする。
[EからIの導出]
y=cosx/sinx + 1/{C(sinx)^2 - sinx・cosx}
=cosx/sinx + 1/[sinx{Csinx - cosx}]
=cosx{Csinx - cosx}/[sinx{Csinx - cosx}] + 1/[sinx{Csinx - cosx}]
=[cosx{Csinx - cosx}+1]/[sinx{Csinx - cosx}]
=[Csinx・cosx - (cosx)^2+1]/[sinx{Csinx - cosx}]
=[Csinx・cosx + (sinx)^2]/[sinx{Csinx - cosx}]
=sinx[Ccosx + sinx]/[sinx{Csinx - cosx}]
={Ccosx + sinx}/{Csinx - cosx}
[以上]
また、微分方程式 y´- y^2=1 ---D
の一般解
y=sinx/cosx + 1/{C(cosx)^2 - sinx・cosx} -----F
(Cは任意定数)
は次のように変形できる。
y={Csinx + cosx}/{Ccosx - sinx} -----J
(Cは任意定数)
導出も上と同様にできる(略)。
まとめておきたい。
眺めていると気付くが、A1でC-->∞にすると、 y´+ y^2=-1の本頁冒頭の特解 cosx/sinx となり、
C-->0にするともう一つの特解 -sinx/cosx となる。
また、B1でC-->∞にすると、 y´- y^2=1の本頁冒頭の特解 sinx/cosx となり、C-->0にするともう一つの
特解 -cosx/sinx となる。面白い関係である。
それにしてもA1とB1は美しい対称的な形である。ゼータの世界は、きれいなものであふれている。
読者は驚かれるかもしれないが、上記のAとBはさらにきれいな形に書き換えることができるのである。
だから上で<・・その1>としていた。
まず結論から書こう。A1、B1と並べる形で示す。次のように極めてシンプルな形に書けるのである。
ここまで来れば究極的な感じがするが、たいへんきれいである。
導出は簡単である。念のため、A1-->A2だけ示しておく。
[A1-->A2の導出]
Cをいま C >= 0 とおくと、
y={Ccosx + sinx}/{Csinx - cosx}
=[√(C^2+1){cosx・C/√(C^2+1) + sinx・1/√(C^2+1)}]/[√(C^2+1){sinx・C/√(C^2+1) - cosx・1/√(C^2+1)}]
={cosx・C/√(C^2+1) + sinx・1/√(C^2+1)}/{sinx・C/√(C^2+1) - cosx・1/√(C^2+1)}
と変形できる。ここで、√(C^2+1)を斜辺とする直角三角形を描くことにより、
C/√(C^2+1) =cosθ,1/√(C^2+1) =sinθとできる。
よって、上式は
y={cosx・cosθ + sinx・sinθ}/{sinx・cosθ - cosx・sinθ}
=cos(x-θ)/sin(x-θ)
となる。
もし、C < 0の場合であっても、C=-C1などとおいて、上と同様の変形を加えれば次が出る。
y=cos(x+θ)/sin(x+θ)
よってθは正負どちらでもとり得る任意定数(ラジアン角度)としてよい。
したがって、一般解は
y=cos(x+θ)/sin(x+θ)
(θは任意定数)
の形で代表させた。
以上。
導出は以上だが、これはB1-->B2もまったく同様である。
またじつは、θは任意よりをθを”θ-π/2”などと変えることで、
y=cos(x+θ)/sin(x+θ) -----A2
(θは任意定数)
は
y=-sin(x+θ)/cos(x+θ) -----A3
(θは任意定数)
と、分母、分子を入れ替えることもできる。A2とA3は同値。
また同様にして、
y=sin(x+θ)/cos(x+θ) -----B2
(θは任意定数)
は
y=-cos(x+θ)/sin(x+θ) -----B3
(θは任意定数)
とも表現できる。B2とB3は同値である。
まとめておきたい。
この二つの微分方程式は同値ではないが、兄弟のように近しいものだといえる。
さらに、考察をめぐらせているとこのシンプルな一般解はまさにゼータ世界に直結する意味をもつことが
わかるのだが、次に書きたい。
上記一般解からL(χ,s)ゼータの中心母等式が導けることがわかった。
これら解を見ていると、すぐに気付くことがある。それは、この一般解からも、L(χ,s)ゼータ特殊値を生み出
す中心母等式を容易に作ることができるということである。
冒頭の予想L-4での一つの中心母等式は、
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
(0 < x < 2π)
sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・) -----A
(0 < x < 2π)
も中心母等式である。
ただしこのAは@と同値であり、@と同じL(χ,s)特殊値を生み出す。
さて、@とAはもちろん次のように書き換えることができる(x=2Xと変数変換)。
cosx/sinx=2(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・) -----B
(0 < x < π)
sinx/cosx=2(sin2x - sin4x + sin6x - sin8x + ・・・) -----C
(0 < x < π)
さて、
微分方程式 y´+ y^2=-1 の一般解は、
y=cos(x+θ)/sin(x+θ) -----A2
(θは任意定数)
である。
また微分方程式 y´- y^2=1 の一般解は、
y=sin(x+θ)/cos(x+θ) -----B2
(θは任意定数)
である。
BとCの左辺は cosx/sinx や sinx/cosx となっているが、この事実からこの一般解A2やB2からも、同じ
中心母等式が成り立つということは、当然のごとくわかってしまう(BやCのx に x+θを放りこめばよい)。
つまり、次の式が成り立つ。
(-θ < x < π - θ)
sin(x+θ)/cos(x+θ)=2{sin2(x+θ) - sin4(x+θ) + sin6(x+θ) - sin8(x+θ) + ・・・} ---E
(-θ < x < π - θ)
BやCに重回積分-重回微分という作用素(演算子)を作用させれば、次々に非明示なL(χ,s)特殊値が飛び
出してくることは「ゼータ惑星」で何度も見てきた。
そのことより、DやEに重回積分-重回微分を作用させれば、同様の特殊値が飛び出てくるのはもはや当然の
ことである。すなわち、「ゼータ惑星」で様々なqπ/kを代入していった結果とまったく同様の結果がもたらされるの
である。
もちろん位相がθだけずれているので、当然そのズレ効果が加味されてくるが本質的には予想L-4と変らない。
(ただもっと別の意味で何か出てくる可能性もある。そのときは、また報告したい。)
はじめゼータ母関数 cosx/sinx や sinx/cosx を特解に持つ微分方程式に興味があってその方程式の
一般解をためしに求めてみたら、なんとそれもゼータの母関数となっていたのである!
その一般解からも中心母等式が作られるという異様な秩序が出現しているのであった。
ゼータの世界はほんとうに美しい。人間の想像力をこえている・・・
注目した形で、上での結果を書き換えておきたい。 冒頭の予想L-4での一つの中心母等式は、 cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
(0 < x < 2π)
sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・) -----A
(0 < x < 2π)
も中心母等式である。
さて、これらの左辺y1= cos(x/2)/sin(x/2) と y2=sin(x/2)/cos(x/2) を特解とする微分方程式は、
次のようになる。
y1= cos(x/2)/sin(x/2)を特解とする微分方程式は
y´+ 1/2・y^2=-1/2 ---B
である。
そして、このBの一般解は
y= cos(x/2+θ)/sin(x/2+θ) ---C
(θは任意定数)
また、y2=sin(x/2)/cos(x/2)を特解とする微分方程式は
y´- 1/2・y^2=1/2 ---C
である。
そして、このCの一般解は
y= sin(x/2+θ)/cos(x/2+θ) ---D
(θは任意定数)
である。
まとめておきたい。
註:上はcos(x/2+θ)/sin(x/2+θ) などと表現しても同じことであるが、次の中心母等式とのからみで上のように表現した。
@とAの左辺は cos(x/2)/sin(x/2) や sin(x/2)/cos(x/2) となっているが、この事実からこの一般解
CやDからも、同じ中心母等式が成り立つということは、当然のごとくわかってしまう(@やAのx に x+θを放りこ
めばよい)。
つまり、次の式が成り立つ。
(-θ < x < 2π - θ)
sin{(x+θ)/2}/cos{(x+θ)/2}=2{sin(x+θ) - sin2(x+θ) + sin3(x+θ) - sin4(x+θ) + ・・・} ---E
(-θ < x < 2π - θ)
上より、DやEに重回積分-重回微分を作用させれば、同様の特殊値が飛び出てくるのは当然のことである。
すなわち、「ゼータ惑星」で様々なqπ/kを代入していった結果とまったく同様の結果がもたらされる。
もちろん位相がθだけずれているので、当然そのズレ効果が加味されてくるが本質的には予想L-4と変らない。
(ただもっと別の意味で何か出てくる可能性もある。何か出たらそのときは報告したい。)
一つ上でも言ったとおり、ここでも次のように言える。
はじめゼータ母関数 cos(x/2)/sin(x/2) や sin(x/2)/cos(x/2) を特解に持つ微分方程式に興味が
あってためしにその方程式の一般解を求めら、なんとそれもゼータの母関数となっていた!という事実。
そしてその一般解からも中心母等式が作られるという世にも不思議な秩序が出現しているのであった。
BとCの微分方程式は、次のような神秘的な形にも表現できる。
なんとも美しい形である。ゼータは何を語りかけているのだろうか?
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