ハレー彗星 その3

 中心母等式 -1/2=cosx+cos2x+・・からもζ(0),ζ(-2),ζ(-4),・・の繰り込み値が自然に出ることを示す。
繰り込みは、フーリエ展開とテイラー展開の調和の上にたった現象であった。


2005/8/14    <-1/2=cosx+cos2x+・・とζ(0),ζ(-2),ζ(-4),・・の繰り込み値>

 予想L-4でのもう一つの中心母等式 -1/2=cosx+cos2x+・・ からも、その1その2での類似の手法で、
ζ(0),ζ(-2),ζ(-4),・・の特殊値(繰り込み値)が自然に出ることがわかったので、それを示す。

   -1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・     -------@
                                (0 < x < 2π)

 なぜ次のようになるのか?この不思議な式たちはなにを意味しているのか?ということ。

ζ(0)=1 + 1 + 1 + 1 + 1 + ・・・=-1/2
ζ(-2)=1^2 + 2^2 + 3^2 + 4^2 + 5^2 +・・・ =0
ζ(-4)=1^4 + 2^4 + 3^4 + 4^4 + 5^4 +・・・ =0
ζ(-6)=1^6 + 2^6 + 3^6 + 4^6 + 5^6 +・・・ =0
  ・
  ・
 これが意味することは、以下のようなことであった。
(s=-2,-4,-6,・・・はζ(s)の自明な零点である。)

  その1と本質的に同様であり、「@の右辺の各々の項cosx, cos2x・・のテイラー展開を足していったテイラー展開
と、左辺の直接的なテイラー展開を比較する」というやり方である。それを示す。

まず@の右辺の各々のcosx, cos2x・・の項のテイラー展開を足して合わせたテイラー展開の方から。

 右辺の cosx,cos2x, cos3x, cos4x・・・各々のx=πの周りでのテイラー展開を並べよう。
 cosx=-1 + (x-π)^2/2!- (x-π)^4/4!+ (x-π)^6/6!- ・・・
 cos2x=1 - 2^2・(x-π)^2/2!+ 2^4・(x-π)^4/4!- 2^6・(x-π)^6/6!+ ・・・
 cos3x=-1 + 3^2・(x-π)^2/2!- 3^4・(x-π)^4/4!+ 3^6・(x-π)^6/6!- ・・・
 cos4x=1 - 4^2・(x-π)^2/2!+ 4^4・(x-π)^4/4!- 4^6・(x-π)^6/6!+ ・・・
   ・
   ・
 これを縦に足していき、(x-π)^nの同じ次数の項をまとめると、次のようになる。

cosx + cos2x + cos3x + ・・・ 
=-(1-1+1-1+・・)+ (1-2^2+3^2-4^2+・・)(x-π)^2/2!
   - (1-2^4+3^4-4^4+・・)(x-π)^4/4!+ (1-2^6+3^6-4^6+・・)(x-π)^6/6!+・・・
=-(1-2^1)ζ(0) + (1-2^3)ζ(-2)・(x-π)^2/2!- (1-2^5)ζ(-4)・(x-π)^4/4!+(1-2^7)ζ(-6)・(x-π)^6/6!-・・・

よって、
cosx + cos2x + cos3x + ・・・ 
 =-(1-2^1)ζ(0) + (1-2^3)ζ(-2)・(x-π)^2/2!
             - (1-2^5)ζ(-4)・(x-π)^4/4!+(1-2^7)ζ(-6)・(x-π)^6/6!- ・・・  ------A

 次に、@の左辺の-1/2=f(x)という関数の直接的なテイラー展開をみる。

f(x)=-1/2のx=πの周りでのテイラー展開は、あっけないが、もちろん
 f(x)=-1/2
である。
 すなわち、-1/2=-1/2  ------B
である。

 @、A、Bより、次が成り立つ。
-(1-2^1)ζ(0) + (1-2^3)ζ(-2)・(x-π)^2/2!
       - (1-2^5)ζ(-4)・(x-π)^4/4!+(1-2^7)ζ(-6)・(x-π)^6/6!- ・・・ =-1/2   -----C

 これで準備OK。左辺と右辺を比較して、
 ζ(0)=-1/2
 ζ(-2)=0
 ζ(-4)=0
 ζ(-6)=0
   ・
   ・
と、教科書で示される値が次々に導かれる。
 ζ(0),ζ(-2),ζ(-4),・・の不思議な値に秘められたゼータの真意はこのようなことであった。
 ζ(0)を除くと、
 結局、自明な零点x=-2,-4,-6,・・の値、つまり、
ζ(-2)=1^2 + 2^2 + 3^2 + 4^2 + 5^2 +・・・ =0
ζ(-4)=1^4 + 2^4 + 3^4 + 4^4 + 5^4 +・・・ =0
ζ(-6)=1^6 + 2^6 + 3^6 + 4^6 + 5^6 +・・・ =0
ζ(-8)=1^8 + 2^8 + 3^8 + 4^8 + 5^8 +・・・ =0
  ・
  ・
という不思議は上のようなカラクリで導出されるのであった。

 初等的な実数範囲内の議論で、こんなにも自然に自明な零点での値ζ(-2n)が導出されることに注目いただ
きたい。



2005/8/18          <ζ(s)の繰り込みについてのまとめ>

 一つ上を書いた直後、ある決定的な事実に気付いたので、それを述べたい。
それは、予想L-4にも関係する重大な事実であるが。

「ハレー彗星」でのこれまでの議論をふりかえると、本質的には次の2式で尽きていることがわかる。

   cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・)  -----@
                                    (0 < x < 2π)

    -1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・         -------A
                                      (0 < x < 2π)

つまり、
ζ(-1)=1 + 2 + 3 + 4 + 5 + ・・・=-1/12
ζ(-3)=1^3 + 2^3 + 3^3 + 4^3 + 5^3 +・・・ =1/120
ζ(-5)=1^5 + 2^5 + 3^5 + 4^5 + 5^5 +・・・ =-1/252
  ・
  ・
という不思議は、初等的な実数範囲内の議論で@より自然に導出される。
詳しくは、cos(x/2)/sin(x/2)=・・式からも、繰り込み値が自然に出るを参照されたい。

 一方、
ζ(0)=1 + 1 + 1 + 1 + 1 + ・・・=-1/2
ζ(-2)=1^2 + 2^2 + 3^2 + 4^2 + 5^2 +・・・ =0
ζ(-4)=1^4 + 2^4 + 3^4 + 4^4 + 5^4 +・・・ =0
ζ(-6)=1^6 + 2^6 + 3^6 + 4^6 + 5^6 +・・・ =0
  ・
  ・
という神秘は、初等的な実数範囲内の議論でAより自然に導出される。
詳しくは、一つ上の-1/2=cosx+cos2x+・・とζ(0),ζ(-2),ζ(-4),・・の繰り込みを参照されたい。

 さて、この@とAを冷静にふりかえろう。
例えば、@でのcos(x/2)/sin(x/2)=・・式からも、繰り込み値が自然に出るを復習すれば、
そこでは、f(x)=1/2・cos(x/2)/sin(x/2)という関数のx=πの周りでテイラー展開を実行している。
すなわち、少し厳密に書けば、次のように計算していた。

1/2・cos(x/2)/sin(x/2)
f´(π)・(x-π) + f´´´(π)・(x-π)^3/3! + f´´´´´(π)・(x-π)^5/5! + ・・・ 
=-1/4・(x-π) - 1/48・(x-π)^3 - 1/480・(x-π)^5 - ・・・ 

 本質的には次のようにしていたわけである。

 f´(π)・(x-π) + f´´´(π)・(x-π)^3/3! + f´´´´´(π)・(x-π)^5/5! + ・・・ 
 =-(1-2^2)・ζ(-1)・(x-π) + (1-2^4)・ζ(-3)・(x-π)^3/3!- (1-2^6)・ζ(-5)・(x-π)^5/5!+・・・

 さて、@の左辺のcos(x/2)/sin(x/2)を、(2n-1)回微分したf´(π), f´´´(π),f´´´´´(π),・・が登場している
ことに着目しよう。いま1回微分の値f´(π),3回微分の値 f´´´(π),5回微分の値f´´´´´(π),・・が、それぞれ
ζ(-1),ζ(-3),ζ(-5),・・・に対応しているという重大な点に注目されたい。

 これで、「いくつかの点」シリーズ以来、重回積分-重回微分の理論を用いて、cos(x/2)/sin(x/2)の(2n-1)回微分
π代入値が(n=1, 2,・・)なぜかζ(-(2n-1))値となって出てきたのであるが(-->「火星 その6」,「土星 その1
を見よ)、そのゼータの不思議のカラクリがここではじめてわかったのである!

つまり、
 @という中心母等式(フーリエ展開式)にテイラー展開という作用を加えることにより、不思議な特殊値がべき級数の
係数として現れるという構造が、私の重回積分-重回微分の理論(予想L-4)に裏側に潜んでいたということである。
そしてそれは当然一つ上のAの-1/2=cosx+cos2x+・・とζ(0),ζ(-2),ζ(-4),・・の繰り込みにも全く同様に
適用される。

 ゼータ世界は、フーリエとテイラーという2世界の調和の上に成り立っているのであった。

 ゼータの不思議は、@、Aというフーリエ展開式に、テイラー展開という作用を与えることでひき起こされ
る。

 ここまでくれば、予想L-4でπ/nを代入することにより、様々なL(χ,s)特殊値がとび出してくる不思議な現象も、
統一的に理解できる道が見えてきた。
 それも「ゼータ惑星」で見た予想L-4周辺でのある秩序に則って出現してくるという構造になっている。

 一つ具体的にいえば、@やAにπ/2を代入することにより、L(χ,s)の一種のゼータ関数L(s)の特殊値がどん
どん出てきたのであるが(-->「火星 その1」,「土星 その1」を見よ)、
その不思議も、もはや@、Aの中心母等式(フーリエ展開式)を、π/2の周りでテイラー展開することで出てきて
いたのだと容易に理解されるのである。

 L(s)の不思議な特殊値も、ζ(s)特殊値と同様この「ハレー彗星」の「その1」〜「その3」と同様の方法で、
出現してくるに違いない。

 ほんとうに出現してくるかどうか。実験してみることにしよう。「その4」以降で示したい。





その1
その2
その4
その5
その6
その7
その8

ゼータ系の彗星群

数学の研究