ζ(s)の繰り込みの意味を、解析接続とは別の初等的観点から明らかにする。
ζ(-1)=-1/12,ζ(-3)=1/120,ζ(-5)=-1/252,・・・などは、現代数学では複素関数論における解析接続
で意味付けされるとしているが、初等的・具体的イメージとしてはまるではっきりしない。
また、これらの値を最初に導いたのはオイラーだが、その初等的?な導き方も、黒川信重氏(東工大教授)あたり
の著作でしきりに紹介されるが、いまひとつすっきりしない。
これまで「いくつかの点」から「ゼータ惑星」のシリーズにかけて延々と研究してきた私も、気にはなっていた。
もちろん「いくつかの点」で発見し「ゼータ惑星」で発展させた私独自の重回積分-重回微分の理論(統一的法
則性)で美しい形でそれらの値を導出できることがわかったのだが、生命体ゼータの真の意図をくみとるまでに
はいたらなかった。
しかし、今回ある式を考察している最中に、そのゼータの心を読みとることができたのである。
なぜ次のようになるのか?この不思議な式たちはなにを意味しているのか?
ζ(-1)=1 + 2 + 3 + 4 + 5 + ・・・=-1/12
ζ(-3)=1^3 + 2^3 + 3^3 + 4^3 + 5^3 +・・・ =1/120
ζ(-5)=1^5 + 2^5 + 3^5 + 4^5 + 5^5 +・・・ =-1/252
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・
ある考察から、この不思議さの意味がわかってきたのであるが、一言でいえば、
フーリエ展開式(中心母等式)をテイラー展開の面からも支持したいというゼータの強烈な欲求から、負の奇数
点での値が確定されているのであった。
それも、まったく初等的に説明できる。次で示したい。
まず次の2式に注目していただきたい。
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
(0 < x < 2π)
sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・) -----A
(-π < x < π)
@がよく出てきた。Aはじつは@と同値なのである。@でx=π-tと変数変換するとAになる。
よって、あまり突っ込んだ考察をくわえていなかった。
(@とAの初等的証明は「地球 その3」参照。)
今回、ある必要性からこのAをいろいろと実験中に、ひょっんなことから、まったく自然に、ζ(-1)=-1/12,
ζ(-3)=1/120,ζ(-5)=-1/252,・・・が出てくることがわかったのでそれを以下示したい。
再度、Aの両辺を2で割った形で書く。
1/2・sin(x/2)/cos(x/2)=sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・ -----A
(-π < x < π)
右辺の sinx,-sin2x, sin3x, -sin4x・・・各々のテイラー展開を並べよう。
sinx=x - x^3/3!+ x^5/5!- x^7/7!+ ・・・
-sin2x=-{2x - (2x)^3/3!+ (2x)^5/5!- (2x)^7/7!+ ・・・}
sin3x=3x - (3x)^3/3!+ (3x)^5/5!- (3x)^7/7!+ ・・・
-sin4x=-{4x - (4x)^3/3!+ (4x)^5/5!- (4x)^7/7!+ ・・・}
・
・
これを縦に足していって、同じxの次数の項をまとめると、次のようになる。
sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・
=(1-2+3-4+・・)x - (1-2^3+3^3-4^3+・・)x^3/3!
+ (1-2^5+3^5-4^5+・・)x^5/5!- (1-2^7+3^7-4^7+・・)x^7/7!+ ・・・
=(1-2^2)ζ(-1)x - (1-2^4)ζ(-3)x^3/3! + (1-2^6)ζ(-5)x^5/5!- (1-2^8)ζ(-7)x^7/7!+・・・
このように係数にきれいにζ(-1),ζ(-3),ζ(-5),・・・がならぶ。
上で、(1-2^3+3^3-4^3+・・)がなぜ(1-2^4)ζ(-3)などとなるかと言えば、次のよう変形できるからである。
1-2^3+3^3-4^3+・・
=(1+2^3+3^3+4^3+・・)-2(2^3+4^3+・・)
=ζ(-3)-2・2^3(1+2^3+・・)
=ζ(-3)-2^4ζ(-3)
=(1-2^4)ζ(-3)
この変形はゼータの数学のあちこちででてくるので覚えておいていただきたい。
結局、
sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・
=(1-2^2)ζ(-1)x - (1-2^4)ζ(-3)x^3/3! + (1-2^6)ζ(-5)x^5/5!- (1-2^8)ζ(-7)x^7/7!+・・・ -----B
とできた。
いまはAの右辺に注目した変形でBが出たが、今度はAの左辺に着目してそのテイラー展開を求めてみる。
これは普通にテイラー展開の公式にあてはめて計算すると、x=0の周りの1/2・sin(x/2)/cos(x/2)のテイラー
展開は
1/2・sin(x/2)/cos(x/2)=1/4・x + 1/8・x^3/3! + 1/4・x^5/5! + ・・・ -----C
となる。
よって、A、B、Cより次が成り立つ。
(1-2^2)ζ(-1)x - (1-2^4)ζ(-3)x^3/3! + (1-2^6)ζ(-5)x^5/5!- (1-2^8)ζ(-7)x^7/7!+・・・ -----D
=1/4・x + 1/8・x^3/3! + 1/4・x^5/5! + ・・・
これで準備はOKである。Dの左辺と右辺を比較して、
(1-2^2)ζ(-1)=1/4 -----E
- (1-2^4)ζ(-3)x=1/8 -----F
(1-2^6)ζ(-5)=1/4 -----G
・
・
となる。
Eより、ζ(-1)=-1/12
Fより、ζ(-3)=1/120
Gより、ζ(-5)=-1/252
このように教科書に示されるリーマン・ゼータの負の奇数点での特殊値(繰り込み値)が自然に出てきてし
まうのである!
これは予想L−4での出方よりも、もっと明確な意味合いをもって出てきたと言える。
Aの「直接的なテイラー展開式」と「sinx,sin2x・・・の個々のテイラー展開を経由した式」の一致という意味
合いを含んでいる。
つまり、これはテイラー展開とフーリエ展開の二つ世界を橋渡ししようとゼータが意図している現象の現れ
と言える。面白いではないか。
上はAを考察したが、じつは@からも、まったく同様の論理を用いることにより、ζ(-1),ζ(-3),ζ(-5),・・・の
繰り込み値が出ることがわかったので、それを示す。
@を2で割った形で書くと、次のようになる。
1/2・cos(x/2)/sin(x/2)=sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・ -----@
(0 < x < 2π)
これは私の予想L-4の中心母等式の一つであることはいうまでもない。
右辺の sinx,sin2x, sin3x, sin4x・・・各々のx=πの周りでのテイラー展開を並べよう。
sinx=-(x-π) +(x-π)^3/3!- (x-π)^5/5!+ ・・・
sin2x=2(x-π) - 2^3・(x-π)^3/3!+ 2^5・(x-π)^5/5!- ・・・
sin3x=-3(x-π) + 3^3・(x-π)^3/3!- 3^5・(x-π)^5/5!+ ・・・
・
・
これを縦に足していき、(x-π)^nの同じ次数の項をまとめると、次のようになる。
sinx + sin2x + sin3x + ・・・
=-(1-2+3-4+・・)(x-π) + (1-2^3+3^3-4^3+・・)(x-π)^3/3!
- (1-2^5+3^5-4^5+・・)(x-π)^5/5!+ ・・・
=-(1-2^2)・ζ(-1)・(x-π) + (1-2^4)・ζ(-3)・(x-π)^3/3!- (1-2^6)・ζ(-5)・(x-π)^5/5!+・・・
よって、
sinx + sin2x + sin3x + ・・・
=-(1-2^2)・ζ(-1)・(x-π) + (1-2^4)・ζ(-3)・(x-π)^3/3!- (1-2^6)・ζ(-5)・(x-π)^5/5!+・・・ -----A
が得られた。
いまは@の右辺に注目した変形でAが出たが、今度は@の左辺に着目してそのテイラー展開を求めてみる。
1/2・cos(x/2)/sin(x/2)に普通にテイラー展開の公式を適用して計算すると、x=πの周りのそのテイラー展開は
1/2・cos(x/2)/sin(x/2)=-1/4・(x-π) - 1/48・(x-π)^3 - 1/480・(x-π)^5 - ・・・ -----B
となる。
よって@、A、Bより、次式が成り立つ。
-(1-2^2)・ζ(-1)・(x-π) + (1-2^4)・ζ(-3)・(x-π)^3/3!- (1-2^6)・ζ(-5)・(x-π)^5/5!+・・・
=-1/4・(x-π) - 1/48・(x-π)^3 - 1/480・(x-π)^5 - ・・・
これで準備OK。左辺と右辺を比較して、
-(1-2^2)・ζ(-1)=-1/4
(1-2^4)・ζ(-3)/3!=- 1/48
- (1-2^6)・ζ(-5)/5!= - 1/480
・
・
となる。上より、
ζ(-1)=-1/12
ζ(-3)=1/120
ζ(-5)=-1/252
・
・
このように予想L-4の中心母等式の一つ@からも、自然にζ(s)の負の奇数点での値(繰り込み値)が自然に
出てくるのである。
正しいフーリエ級数の@式をテイラー展開という側面からも支持できるようにζ(-1),ζ(-3),ζ(-5),・・・の
繰り込み値が決まっていたのである。なるほど!
それにしても、初等的な実数範囲の議論で、こんなにも自然に導出されるふしぎ・・
ζ(s)の繰り込みの仕組みはこのようになっていたのであった。
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
(0 < x < 2π)
sin(x/2)/cos(x/2)=2(sinx - sin2x + sin3x - sin4x + ・・・) -----A
(-π < x < π)
この2式が(これらは同値)、ゼータにおいていかに本質的かをいまさらながら思い知る。
ゼータは、この式を中心にうごいているのであった。
上の議論は奇抜なところなどなにもない。自然そのものである。「いくつかの点」シリーズ以来延々とやってきて
感じることは、
ゼータは自然さを好む
ということである。
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