「その5」の続きである。π/2代入のL(n)とζ(n)の繰り込み値の不思議の構造を整理整頓した。
この「その5」と同様に、いくつかのゼータの特殊値の構造を整理整頓しておく。きちんとまとめておくことは、どんな
場合でも一番大切なことである。
「火星 その1」の場合、L(2n)とζ(2n+1)の値の場合を見よう。
[A]と[B]を比較する形で見られたい。「火星 その1」の部分を抜きだし[A]としよう。
[A]*****************************************************************************
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
(0 < x < 2π)
表現の仕方は、「金星」と同じスタイルで書いていきます。最も本質的な点がわかりやすいスタイルと思うから
です。(この結果は「金星 その3」の<cosx/sinx=2(sin2x + sin4x +・・にπ/4を代入>と本質的に同値です。)
では、@を重回積分-重回微分した結果を書き下していきます。
[重回積分、重回微分した一連の式]
・
・
4回微分
{2sinx・sin(x/2)+4(2+cosx)cos(x/2)}/(sin(x/2))^5=2^4sinx + 4^4sin2x + 6^4sin3x + 8^4sin4x + ・・・・
3回微分
(2+cosx)/(sin(x/2))^4=2^3cosx + 4^3cos2x + 6^3cos3x + 8^3cos4x + ・・・・
2回微分
cos(x/2)/(sin(x/2))^3=-(2^2sinx + 4^2sin2x + 6^2sin3x + 8^2sin4x + ・・・・)
1回微分
-1/(sin(x/2))^2=2(2cosx + 4cos2x + 6cos3x + 8cos4x + ・・・・)
0回積分
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・・)
1回積分
log(2sin(x/2))=-(cosx/1 + cos2x/2 + cos3x/3 + ・・・)
2回積分
∫log(2sin(x/2))=-(sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 + ・・・)
3回積分
∫∫log(2sin(x/2))=(cosx/1^3 + cos2x/2^3 + cos3x/3^3 + ・・・) - ζ(3)
4回積分
∫∫∫log(2sin(x/2))=(sinx/1^4 + sin2x/2^4 + sin3x/3^4 + ・・・) - ζ(3)・x/1!
5回積分
∫∫∫∫log(2sin(x/2))=-(cosx/1^5 + cos2x/2^5 + cos3x/3^5 + ・・・) + ζ(5) - ζ(3)・x^2/2!
6回積分
∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
=-(sinx/1^6 + sin2x/2^6 + sin3x/3^6 + ・・・) + ζ(5)・x/1! - ζ(3)・x^3/3!
7回積分
∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
=(cosx/1^7 + cos2x/2^7 + cos3x/3^7 + ・・・) - ζ(7) + ζ(5) ・x^2/2! - ζ(3)・x^4/4!
8回積分
∫∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
=(sinx/1^8 + sin2x/2^8 + sin3x/3^8 + ・・・) - ζ(7)・x/1! + ζ(5)・x^3/3! - ζ(3)・x^5/5!
・
・
と、このように上下に延々と続いていきます。すべての∫は0〜xの定積分、またdx・・dxは略しました。
なお、”log(sin(x/2)) + log2” は、log2(sin(x/2)) とまとめました。
上の式の x にπ/2を代入すると、次のようになります。途中計算は省略。
[π/2代入の式]
・
・
4回微分
L(-4) = 5/2
3回微分
ζ(-3)=1/120
2回微分
L(-2) = -1/2
1回微分
ζ(-1)=-1/12
0回積分
2・{1 - 1 + 1 - 1 + 1 - 1 + ・・・}=1
よって、L(0) = 1/2
1回積分
1- 1/2 + 1/3 - 1/4 + 1/5 - 1/6 + 1/7 + ・・・=log2
2回積分
-L(2) =∫(0〜π/2) log(2sin(x/2))
3回積分
-(1-1/2^2)/2^3・ζ(3) - ζ(3) =∫(0〜π/2)∫log(2sin(x/2))
4回積分
L(4) - ζ(3)・(π/2)=∫(0〜π/2)∫∫log(2sin(x/2))
5回積分
(1-1/2^4)/2^5・ζ(5) + ζ(5) - ζ(3)・(π/2)^2/2!=∫(0〜π/2)∫∫∫log(2sin(x/2))
6回積分
-L(6) + ζ(5)・(π/2) - ζ(3)・(π/2)^3/3!=∫(0〜π/2)∫∫∫∫log(2sin(x/2))
7回積分
-(1-1/2^6)/2^7・ζ(7) - ζ(7) + ζ(5)・(π/2)^2/2!- ζ(3)・(π/2)^4/4!
=∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
8回積分
L(8) -ζ(7)・(π/2) + ζ(5)・(π/2)^3/3!- ζ(3)・(π/2)^5/5!
=∫(0〜π/2)∫∫∫∫∫∫log(2sin(x/2))
・
・
と、ζ(2n+1)とL(2n)が現れる式が並びます。
上で右辺の重回積分は最後の∫だけが0〜π/2の定積分で、他の∫はすべて0〜xの定積分。
念のための注意ですが、log2(sin(x/2)) は”log(sin(x/2)) + log2” とバラせますので、例えば、
∫(0〜π/2)∫log(2sin(x/2))はバラして書けば「(π/2)^2/2!・log2 +∫(0〜π/2)∫log(sin(x/2)) 」となります。
ここで、もちろんζ(s)はリーマン・ゼータ関数で次のものです。
ζ(s)=1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s + ・・・
またL(s)は、次で定義されるゼータ関数です。
L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
ζ(s)もL(s)もどちらもディリクレのL関数L(χ,s)の一種のゼータ関数であります。
簡単にいえば、ζ(s)は、全てのaに対しχ(a)=1としたときのディリクレのL関数L(χ,s)です。
このL(s)は、a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対しそれぞれχ(a)=0, 1, 0, -1としたときのL(χ,s)に一致します。
なお、整数論において重要な関数であるディリクレのL関数L(χ,s)は、次のように定義され、様々なディリクレ
指標χ(a)に対してL(χ,s)は色々と変ってくるゼータ関数です。
L(χ,s)=χ(1)/1^s + χ(2)/2^s + χ(3)/3^s + χ(4)/4^s + χ(5)/5^s + χ(6)/6^s + ・・・・
*****************************************************************************
上の[A]の結果は美しさと調和の見事さで際立っていたが、その微分側の構造の本質は次の[B]で明らか
になった。
[B]*****************************************************************************
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
(0 < x < 2π)
L(0)=1 - 1 + 1 - 1 + 1 - 1 + ・・・=1/2
ζ(-1)=1 + 2 + 3 + 4 + 5 + ・・・=-1/12
L(-2)=1 - 3^2 + 5^2 - 7^2 + 9^2 - 11^2 + 13^2 - 15^2 + ・・・=-1/2
ζ(-3)=1^3 + 2^3 + 3^3 + 4^3 + 5^3 +・・・ =1/120
L(-4)=1 - 3^4 + 5^4 - 7^4 + 9^4 - 11^4 + 13^4 - 15^4 + ・・・=5/2
ζ(-5)=1^5 + 2^5 + 3^5 + 4^5 + 5^5 +・・・ =-1/252
L(-6)=1 - 3^6 + 5^6 - 7^6 + 9^6 - 11^6 + 13^6 - 15^6 + ・・・=-61/2
・
・
という不思議は、初等的な実数範囲内の議論で@より自然に導出される。以下に示す。
まず右辺から考えよう。sinx,sin2x, sin3x, sin4x・・・各々のx=π/2の周りでのテイラー展開を並べよう。
sinx=1- (x-π/2)/2! + (x-π/2)^4/4!- (x-π/2)^6/6!+ ・・・
sin2x=-2(x-π/2) + 2^3・(x-π/2)^3/3!- 2^5・(x-π/2)^5/5!- ・・・
sin3x=-1+ 3^2・(x-π/2)/2! - 3^4・(x-π/2)^4/4!+ 3^6・(x-π/2)^6/6!- ・・・
sin4x=4・(x-π/2) - 4^3・(x-π/2)^3/3!+ 4^5・(x-π/2)^5/5!- ・・・
sin5x=1- 5^2・(x-π/2)/2! + 5^4・(x-π/2)^4/4!- 5^6・(x-π/2)^6/6!+ ・・・
sin6x=-6・(x-π/2) + 6^3・(x-π/2)^3/3!- 6^5・(x-π/2)^5/5!+ ・・・
・
・
これを縦に足していき、(x-π/2)^nの同じ次数の項をまとめると次のようになる。
sinx + sin2x + sin3x + ・・・
=(1-1+1-1+・・) + (-2+4-6+8-・・)(x-π/2)/1!+ (-1+3^2-5^2+7^2-・・)(x-π/2)^2/2!
+ (2^3-4^3+6^3-8^3+・・)(x-π/2)^3/3!+ (1-3^4+5^4-7^4+・・)(x-π/2)^4/4!
+ (-2^5+4^5-6^5+8^5-・・)(x-π/2)^5/5!+ (-1+3^6-5^6+7^6-・・)(x-π/2)^6/6!+・・・
=(1-1+1-1+・・) -2(1-2+3-4+・・)(x-π/2)/1!- (1-3^2+5^2-7^2+・・)(x-π/2)^2/2!
+ 2^3(1-2^3+3^3-4^3+・・)(x-π/2)^3/3!+ (1-3^4+5^4-7^4+・・)(x-π/2)^4/4!
- 2^5(1-2^5+3^5-4^5+・・)(x-π/2)^5/5!- (1-3^6+5^6-7^6+・・)(x-π/2)^6/6!+・・・
=L(0) -2(1-2^2)ζ(-1)(x-π/2)/1!- L(-2)(x-π/2)^2/2!
+ 2^3(1-2^4)ζ(-3)(x-π/2)^3/3!+ L(-4)(x-π/2)^4/4!
- 2^5(1-2^6)ζ(-5)(x-π/2)^5/5!- L(-6)(x-π/2)^6/6!+・・・
よって、
sinx + sin2x + sin3x + ・・・
=L(0) -2(1-2^2)ζ(-1)(x-π/2)/1!- L(-2)(x-π/2)^2/2!
+ 2^3(1-2^4)ζ(-3)(x-π/2)^3/3!+ L(-4)(x-π/2)^4/4!
- 2^5(1-2^6)ζ(-5)(x-π/2)^5/5!- L(-6)(x-π/2)^6/6!+ ・・・ -----A
が得られた。
美しい姿である。
このように@右辺のテイラー展開の係数にゼータの繰り込み値L(0),L(-2),L(-4),・・やζ(-1),ζ(-3),ζ(-5),・・
がのってくるのである。
次に@の左辺に着目してそのテイラー展開を求める。
<cos(x/2)/sin(x/2)=・・式からL(0),L(-2),L(-4),・・・を導出する>で左辺の1/2・cos(x/2)/sin(x/2)=f(x)
という関数のx=π/2の周りでのテイラー展開も実行した。すなわち次のように計算した。
1/2・cos(x/2)/sin(x/2)
=f(π/2) + f´(π/2)・(x-π/2)/1!+f´´(π/2)・(x-π/2)^2/2!
+ f´´´(π/2)・(x-π/2)^3/3! + f´´´´(π/2)・(x-π/2)^4/4! + ・・・
=1/2 - 1/2・(x-π/2) + 1/4・(x-π/2)^2
- 1/6・(x-π/2)^3 + 5/48・(x-π/2)^4 - ・・・ -----B
@、A、Bより次が成り立つ。
f(π/2) + f´(π/2)・(x-π/2)/1!+f´´(π/2)・(x-π/2)^2/2!
+ f´´´(π/2)・(x-π/2)^3/3! + f´´´´(π/2)・(x-π/2)^4/4! + ・・・
=L(0) -2(1-2^2)ζ(-1)(x-π/2)/1!- L(-2)(x-π/2)^2/2!
+ 2^3(1-2^4)ζ(-3)(x-π/2)^3/3!+ L(-4)(x-π/2)^4/4!- ・・・ -----C
@の左辺のcos(x/2)/sin(x/2)=f(x)をn回微分したf(π/2), f´(π/2),f´´(π/2), f´´´(π/2),f´´´´(π/2),・・
が登場していることに着目されたい。またC右辺ではテイラー展開の係数に繰り込み値の特殊値がのっている。
Cは深い意味を表す式である。
Cの左辺と右辺の同次数の(x-π)^nの項同士をくらべると、0回微分の値f(π/2),1回微分の値 f´(π/2),2回微分
の値 f´´(π/2),3回微分の値f´´´(π/2),4回微分の値 f´´´´(π/2),・・はそれぞれL(0),ζ(-1),L(-2),ζ(-3),
L(-4),・・・に対応している。
つまり、[A]で「@の両辺を0回微分してx=π/2を代入するとL(0)が出た。1回微分してx=π/2を代入するとζ(-1)
が出た。2回微分してx=π/2を代入するとL(-2)が出た。3回微分してx=π/2を代入するとζ(-3)が出た。・・・」となっ
ているのはCをみると当然!となる。
[A]での微分側の結果は、このC式が元になっていたのである。
具体的な特殊値の値では、BとCから、
L(0)=1/2
-2(1-2^2)ζ(-1)/1!=- 1/2より、ζ(-1)=-1/12
- L(-2)/2!= 1/4より、L(-2)=-1/2
2^3(1-2^4)ζ(-3)/3!=- 1/6より、ζ(-3)=1/120
L(-4)/4!= 5/48より、L(-4)=5/2
・
・
などと次々に出てくる。
A式はきれいなので、もう一度、書いておこう。
sinx + sin2x + sin3x + ・・・
=L(0) -2(1-2^2)ζ(-1)(x-π/2)/1!- L(-2)(x-π/2)^2/2!
+ 2^3(1-2^4)ζ(-3)(x-π/2)^3/3!+ L(-4)(x-π/2)^4/4!
- 2^5(1-2^6)ζ(-5)(x-π/2)^5/5!- L(-6)(x-π/2)^6/6!+ ・・・
あるいは同じだが、
1/2・cos(x/2)/sin(x/2)
=L(0) -2(1-2^2)ζ(-1)(x-π/2)/1!- L(-2)(x-π/2)^2/2!
+ 2^3(1-2^4)ζ(-3)(x-π/2)^3/3!+ L(-4)(x-π/2)^4/4!
- 2^5(1-2^6)ζ(-5)(x-π/2)^5/5!- L(-6)(x-π/2)^6/6!+ ・・・
*****************************************************************************
この[A]と[B]の比較で、「火星 その1」で見た不思議、@をn回微分してπ/2代入すると(n=0, 1, 2,・・)なぜか
L(-2n)とζ(-(2n+1))の値が求まるその不思議の理由がわかったといえる。
つまり、
@の中心母等式(フーリエ展開式)にテイラー展開という作用を加えると、ゼータ特殊値がべき級数の係数と
して現れるという構造が、私の理論(予想L-4)の裏側に潜んでいたからなのである。
@を2n回微分してπ/2代入すると、L(-2n))値が生まれてくる。
@を(2n+1)回微分してπ/2代入すると、ζ(-(2n+1))値が生まれてくる。
以上。
「土星 その1」の場合、L(2n+1)とζ(2n)の値の場合を見よう。
[A]と[B]を比較する形で見られたい。「土星 その1」の部分を抜きだし[A]としよう。
[A]*****************************************************************************
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
(0 < x < 2π)
では、@を重回積分-重回微分した結果を書き下していきます。
一つ上であげた@の[重回積分、重回微分した一連の式]の x にπ/2を代入すると、次のようになります。
[π/2代入の式]
・
・
4回微分
ζ(-4)=0
3回微分
L(-3) =0
2回微分
ζ(-2)=0
1回微分
L(-1) =0
0回積分
ζ(0)=-1/2
1回積分
L(1) =π/4
2回積分
(1-1/2)ζ(2)/2^2 + ζ(2) =π/2・(π/2) - 1/2・(π/2)^2/2!
3回積分
-L(3) + ζ(2)・(π/2)=π/2・(π/2)^2/2! - 1/2・(π/2)^3/3!
4回積分
-(1-1/2^3)ζ(4)/2^4 - ζ(4) + ζ(2)・(π/2)^2/2!=π/2・(π/2)^3/3! - 1/2・(π/2)^4/4!
5回積分
L(5) -ζ(4)・(π/2) + ζ(2)・(π/2)^3/3!=π/2・(π/2)^4/4! - 1/2・(π/2)^5/5!
6回積分
(1-1/2^5)ζ(6)/2^6 + ζ(6) - ζ(4)・(π/2)^2/2! + ζ(2)・(π/2)^4/4!
=π/2・(π/2)^5/5! - 1/2・(π/2)^6/6!
・
・
と、ζ(2n)とL(2n+1)が出る式が並びます。ζ(s)はもちろんリーマン・ゼータ関数。
L(s)は、次で定義されるゼータ関数です。
L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
ζ(s)もL(s)もどちらもディリクレのL関数L(χ,s)の一種のゼータ関数です。
ζ(s)は、全てのaに対しχ(a)=1としたときのディリクレのL関数L(χ,s)に一致。
L(s)は、a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対しそれぞれχ(a)=0, 1, 0, -1としたときのL(χ,s)となります。
ζ(2n)やL(2n+1)は昔からよく知られており、ζ(2)=π^2/6,ζ(4)=π^4/90,ζ(6)=π^6/945,・・・・
また、L(1)=π/4,L(3)=π^3/32,L(5)=5π^5/1536,・・・・です。
これらを上に代入すれば式がすべて成り立っていることは容易に確められます。
上の結果は、「火星 その1」での<cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )の重回積分-重回微分にπ/2を代入>
に完全に対応した結果となっていることに注目してください。
まったく面白い対称性をなしていますね。一方は非明示的な場合、もう一方は明示的な場合になっている。
それでいて形がほとんど同じ!今後も、この対比の妙を味わっていくことにしましょう。
ここでは、π/2を代入したらζ(s)とL(s)の値が明示的に求まる場合の特殊値ζ(2n)とL(2n+1)がどんどんと出てくる、
ということがわかりました。
********************************************************************************
上の[A]の結果は美しい秩序が際立っていたが、その微分側の構造の本質は次の[B]で明らかになった。
[B]*****************************************************************************
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
(0 < x < 2π)
L(-1)=1 - 3 + 5 - 7 + 9 - 11 + 13 - 15 + ・・・=0
L(-3)=1 - 3^3 + 5^3 - 7^3 + 9^3 - 11^3 + 13^3 - 15^3 + ・・・=0
L(-5)=1 - 3^5 + 5^5 - 7^5 + 9^5 - 11^5 + 13^5 - 15^5 + ・・・=0
L(-7)=1 - 3^7 + 5^7 - 7^7 + 9^7 - 11^7 + 13^7 - 15^7 + ・・・=0
・
・
なぜこのようになるのか?この不思議な式たちはなにを意味しているのか?
s=-1,-3,-5,-7,・・・はL(s)の自明な零点となっているのであるが、これが意味することを以下示す。
「@の右辺の各々の項cosx, cos2x・・のテイラー展開を足し合わせたテイラー展開と、左辺の直接的なテイラー
展開を比較する」というやり方で、L(-1),L(-3),L(-5),・・・を導出する。
それでは示していく。
まず@の右辺の各々のcosx, cos2x・・の項のテイラー展開を足し合わせたテイラー展開の方から。
右辺の cosx,cos2x, cos3x, cos4x・・・各々のx=π/2の周りでのテイラー展開を並べよう。
cosx=- (x-π/2)/1!+ (x-π/2)^3/3!- (x-π/2)^5/5!+ (x-π/2)^7/7!- ・・・
cos2x=-1 + 2^2・(x-π/2)^2/2!- 2^4・(x-π/2)^4/4!+ 2^6・(x-π/2)^6/6!- ・・・
cos3x= 3・(x-π/2)/1!- 3^3・(x-π/2)^3/3!+ 3^5・(x-π/2)^5/5!- 3^7・(x-π/2)^7/7!+ ・・・
cos4x=1 - 4^2・(x-π/2)^2/2!+ 4^4・(x-π/2)^4/4!- 4^6・(x-π/2)^6/6!+ ・・・
cos5x=-5・(x-π/2)/1!+ 5^3・(x-π/2)^3/3!- 5^5・(x-π/2)^5/5!+ 5^7・(x-π/2)^7/7!- ・・・
cos6x=-1 + 6^2・(x-π/2)^2/2!- 6^4・(x-π/2)^4/4!+ 6^6・(x-π/2)^6/6!- ・・・
cos7x= 7・(x-π/2)/1!- 7^3・(x-π/2)^3/3!+ 7^5・(x-π/2)^5/5!- 7^7・(x-π/2)^7/7!+ ・・・
cos8x=1 - 8^2・(x-π/2)^2/2!+ 8^4・(x-π/2)^4/4!- 8^6・(x-π/2)^6/6!+ ・・・
・
・
これを縦に足していき、(x-π/2)^nの同じ次数の項をまとめると、次のようになる。
cosx + cos2x + cos3x + ・・・
=(-1+1-1+1-・・)+ (-1+3-5+7-・・)(x-π/2)/1!+ (2^2-4^2+6^2-8^2・・)(x-π/2)^2/2!
+ (1-3^3+5^3-7^3+・・)(x-π/2)^3/3!+ (-2^4+4^4-6^4+8^4-・・)(x-π/2)^4/4!・・・
+ (-1+ 3^5-5^5+7^5-・・)(x-π/2)^5/5!+ (2^6-4^6+6^6-8^6+・・)(x-π/2)^6/6!・・・
+ (1-3^7+5^7-7^7+・・)(x-π/2)^7/7!+ (-2^8+4^8-6^8+8^8-・・)(x-π/2)^8/8!+ ・・・
=-(1-2^1)ζ(0) - L(-1)・(x-π/2)/1!+ 2^2(1-2^3)ζ(-2)・(x-π/2)^2/2!
+ L(-3)・(x-π/2)^3/3!- 2^4(1-2^5)ζ(-4)・(x-π/2)^4/4!
- L(-5)・(x-π/2)^5/5!+ 2^6(1-2^7)ζ(-6)・(x-π/2)^6/6!
+ L(-7)・(x-π/2)^7/7!- 2^8(1-2^9)ζ(-8)・(x-π/2)^8/8!+ ・・・
よって、
cosx + cos2x + cos3x + ・・・
=-(1-2^1)ζ(0) - L(-1)・(x-π/2)/1!+ 2^2(1-2^3)ζ(-2)・(x-π/2)^2/2!
+ L(-3)・(x-π/2)^3/3!- 2^4(1-2^5)ζ(-4)・(x-π/2)^4/4!
- L(-5)・(x-π/2)^5/5!+ 2^6(1-2^7)ζ(-6)・(x-π/2)^6/6!
+ L(-7)・(x-π/2)^7/7!- 2^8(1-2^9)ζ(-8)・(x-π/2)^8/8!+ ・・・ -----A
次に、@の左辺の-1/2=f(x)という関数の直接的なテイラー展開をみる。
f(x)=-1/2のx=π/2の周りでのテイラー展開は、あっけないが、もちろん
f(x)=-1/2
である。
すなわち、-1/2=-1/2 ------B
である。
@、A、Bより、次が成り立つ。
-1/2 =-(1-2^1)ζ(0) - L(-1)・(x-π/2)/1!+ 2^2(1-2^3)ζ(-2)・(x-π/2)^2/2!
+ L(-3)・(x-π/2)^3/3!- 2^4(1-2^5)ζ(-4)・(x-π/2)^4/4!
- L(-5)・(x-π/2)^5/5!+ 2^6(1-2^7)ζ(-6)・(x-π/2)^6/6!
+ L(-7)・(x-π/2)^7/7!- 2^8(1-2^9)ζ(-8)・(x-π/2)^8/8!+ ・・・ -----C
これで準備OK。Cが恒等的になりたつから、左辺と右辺を比較して、
ζ(0)=-1/2
L(-1)=0
ζ(-2)=0
L(-3)=0
ζ(-4)=0
L(-5)=0
ζ(-6)=0
L(-7)=0
ζ(-8)=0
・
・
と、教科書で示される値が次々に導かれる。
L(-1),L(-3),L(-5),・・の不思議な値に秘められたゼータの意図はこのようなことであった。
同時に、ζ(0),ζ(-2),ζ(-4),・・まで得られるのであった。
ゼータ世界の構造が、フーリエ展開とテイラー展開に大きく影響を受けて決定されているという事実を示し
ているのである。
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この[A]と[B]の比較で、「土星 その1」で見た不思議、@をn回微分してπ/2代入すると(n=0, 1, 2,・・)
なぜかL(-(2n+1))とζ(-2n))の値が求まるその不思議の理由がわかったといえる。
つまり、
@の中心母等式(フーリエ展開式)にテイラー展開という作用を加えると、ゼータ特殊値がべき級数の係数と
して現れるという構造が、私の理論(予想L-4)の裏側に潜んでいたからなのである。
@を(2n+1)回微分してπ/2代入すると、L(-(2n+1))値が生まれてくる。
@を2n回微分してπ/2代入すると、ζ(-2n)値が生まれてくる。
以上。
それでは、頁を変えてπ/3代入の場合を見てみましょう。
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