ζ(3)の第3番目、第4番目の別表現を見つけました。さらにまたζ(5)の第3番目式を見出しました。
ζ(3)に関しては、これまで2個の別表現を見つけましたが、また別の3つ目の表現を発見しました。
まず、それを書きますと、次のようになります。
ζ(3)=(2π^2/7)[log2 + Σζ(2n)/{(n+1)・2^(2n)}] ----@
(n=0〜∞)
このように、非常にシンプルな式が見つかったのです。これまでの複雑なものに比べるとじつにすっきりしていますね。
KLINOWSKYらの次の重要な論文や、また私が出した2種類の式と比べて、特徴的なのはシンプルさとともに
その収束の遅さです。
収束は遅いのですが、すっきりしている分、ζ(3)の本質がより明瞭になっているともいえると思います。
[導出の方法]
導出の方法ですが、次の2式を利用しました。
ζ(3)=(2π^2/7)[log π - 1/2 - Σζ(2n)/{n・(n + 1)・2^(2n)}] ------A
(n=1〜∞)
(1/2)log(π/2)= ζ(2)/(2・2^2) + ζ(4)/(4・2^4) + ζ(6)/(6・2^6) + ・・・ -----B
Aは私が導いたζ(3)の中の一つであり、Bは、Sugimoto氏のHP(次)から取らせて頂きました。
一番下に載っている式です。--> http://homepage3.nifty.com/y_sugi/gf/gf22.htm
Bは容易に次のように変形できます。
log(π/2)= Σ2ζ(2n)/{2n・2^(2n)} -----C
(n=1〜∞)
さて、1/{n・(n + 1)}=1/n - 1/(n + 1) ですから、Aは次のように変形できます。
ζ(3)=(2π^2/7)[log π - 1/2 - Σ{ζ(2n)/2^(2n)}{1/n - 1/(n + 1)}]
=(2π^2/7)[log π - 1/2 - Σ{ζ(2n)/2^(2n)}(1/n) + Σ{ζ(2n)/2^(2n)}{1/(n + 1)}]
=(2π^2/7)[log π - 1/2 - Σ{2ζ(2n)/2^(2n)}(1/2n) + Σ{ζ(2n)/2^(2n)}{1/(n + 1)}]
=(2π^2/7)[log π - 1/2 - Σ2ζ(2n)/{2n・2^(2n)} + Σζ(2n)/{(n + 1)・2^(2n)}]
ここに、Cを代入して、
ζ(3)=(2π^2/7)[log π - 1/2 - log(π/2) + Σζ(2n)/{(n + 1)・2^(2n)}]
=(2π^2/7)[log π - 1/2 - logπ + log2 + Σζ(2n)/{(n + 1)・2^(2n)}]
=(2π^2/7)[ log2 - 1/2 + Σζ(2n)/{(n + 1)・2^(2n)}]
=(2π^2/7)[ log2 + ζ(0) + Σζ(2n)/{(n + 1)・2^(2n)}]
(n=1〜∞)
=(2π^2/7)[ log2 + Σζ(2n)/{(n + 1)・2^(2n)}]
(n=0〜∞)
終わり。
最後は、ほんとうにうまい形にまとまってくれるものです。
これまで見付けたζ(3)の3つの表示を、上から収束の速い順番に並べておきましょう。
それにしても、きれいに高速、中速、低速と並んだものです・・
追記 2003/10/8
Sugimoto氏が、ζ(2n)を使用しない式を示されているので紹介します。興味深い式です!またζ(5)の非常に
シンプルな式も示されています。--> http://homepage3.nifty.com/y_sugi/gf/gf24.htm
ζ(3)は3個くらいで終わりか?と思っていたのですが、ひょんなことから4個目が見つかりましたので報告します。
まず、その式を示します。次です。
ζ(3)=(π^2/6)[-logπ + 11/6 + 12Σζ(2n)/{2n・(2n+1)・(2n+2)・(2n+3)・2^(2n)}]
(n=1〜∞)
これは、収束は、これまでで最も速いものとなっています。
数値的な検証も行いましたが、正しい式となっています。収束が驚異的に速いので、検証は容易です。
ちなみにζ(2)=π^2/6、ζ(4)=π^4/90、ζ(6)=π^6/945、ζ(8)=π^8/9450、・・であり、
ζ(3)=1 + 1/2^3 + 1/3^3 + 1/4^3 + ・・・= 1.2020569031・・ですので、みなさんもよければ検証して下さい。
[導出の概略]
導出の方法ですが・・、ごく簡単に言えば、
< 奇数ゼータの特例の別シリーズを発見 >のまとめで、私は2種類のζ(5)の表示を提示しましたが、
その二つの式から、ζ(5)を消して計算していっていたら(計算は簡単です)、その途中で、4個目の式が出てきた、
ということです。
なぜ、その2種類の式を結びつけようなどとと思ったかというと、ζ(3)のときに2種類を結合させて非常に価値
の高い式
logπ=1 + Σζ(2n)/{2n・(2n + 1)・2^(2n-1)}
(n=1〜∞)
が求まりましたので、ζ(5)でも、「ζ(5)=ζ(5)とすればなにか面白い式が出てくるのではないか?」と予想し
たことから、行いました。まさかその式が”4個目のζ(3)表示”になるとは夢にも思いませんでしたが。
終わり。
これまでの4つの表示をまとめて、上から収束の速い順番に並べておきます。
追記2003/10/18
Sugimoto氏が「似たような式がある」と次の論文を送ってくださいました(2000年ですからついこの間!)。
これは奇数ゼータに関する重大な論文と考えられます。
この中で私の上の@とAとCは既に導かれていることが判明しました。よってこの三式は初めてのものではありません。
C、@、Aはそれぞれ論文のp.584(4.3)、p.594(5.15)、そしてp.573(2.4)のn=1の場合に対応しています。
ただし、方法論は全く異なっており、私の非常に初等的な方法とは違って、論文ではガンマ関数を用いるなど
高度な方法が使われているようです。
-----------------------------------------------------------------
さて、これらを眺めることでも、いろいろと空想がふくらみます。
注目したいのは、@とAです。
4個目が見つかったということは、@よりもさらに{ }内の分母の次元の高い式がもっともっと求まっていくはず、
ということを予想させます。
今回の@式は、< 奇数ゼータの特例の別シリーズを発見 >で示した2種類の手法から出た、2種類のζ(5)
の式から出たものです。ζ(5)=ζ(5)としてζ(5)を消して、出したのです。
そして、そのようにζ(5)=ζ(5)で@が求まったのならば、ζ(7)=ζ(7)ではもっと収束の速い式が求まる
のではないか?さらに、ζ(9)=ζ(9)ではさらに速い式が・・・と次々に求まっていくだろうと予想されます。
はたして、この予想は正しいのでしょうか?
収束の速さなどあまり重要なことではないのでは?という意見もあるかと思いますが、私はこの方面の研究も
重要だと考えます。
というのは、Aでは、偶数ゼータの無限和を無視した量(2π^2/7)[-logπ + 3/2 ]がζ(3)の近似値を
与え、さらに@では(π^2/6)[-logπ + 11/6 ]がζ(3)のさらによい近似値を与えているからです。
そして、これを極限に押しすすめることにより、ζ(3)の最終的な姿に肉薄できるはず、と思うからです。
奇数ゼータの分野は、まだ切り拓かれたばかりの未開の荒野といえると思います。
ひとりごと
ζ(3)=π^2/6[・・]の係数π^2/6がζ(2)であるのは偶然か・・
ζ(5)の3つ目の別表現が見つかりましたので、お知らせします。
まずそれを示します。次のものです。
ζ(5)=(π^4/96)[(4/5)logπ - 137/75)] + π^2ζ(3)/6
- 2π^4Σζ(2n)/{2n・(2n+1)・(2n+2)・(2n+3)・(2n+4)・(2n+5)・2^(2n)} ----@
(n=1〜∞)
収束性は、これまでで最速であり、数値的な検証も行いましたが、正しい式となっています。
[導出の方法]
今回の@式は、< 奇数ゼータの特例の別シリーズを発見 >で示した2種類の手法から出た、2種類のζ(7)
の式から出しました。ζ(7)=ζ(7)としてζ(7)を消して、出したのです。
つまり、一つ上のζ(5)での手法と類似の方法です。
じつは、私は、1種類のζ(7)しか求めていなかったのですが、驚くべきことに、あの佐藤郁郎氏がもう1種類の
ζ(7)を求めて送って下さったのです(< 奇数ゼータの特例の別シリーズを発見 >参照)。
ζ(7)を求めるのはじつに大変な作業なのですが、佐藤氏はあっと言う間に計算されました。
私は、有難くその式を利用させてもらいました。上のようにして、ζ(7)を消去して式変形すれば、@式が出る
ことになります。氏の導出に深く感謝致します。
終わり。
ζ(5)のこれまでの結果をまとめておきます。収束の速い順に並べました。
追記2003/10/18
上記でも紹介した次の論文の中で、
上の@とAは既に導かれていることが判明しました。よってこの二式は初めてのものではありません。
@はp.580の(2.33)のn=2の場合に、Aはp.573の(2.4)のn=2の場合に対応しています。
KLINOWSKYらの論文
には、彼らの導いたζ(3)、ζ(5)、ζ(7)の面白い式が載っています。
これはEwell型とはまた別種のシリーズで、”B理論”から導かれているものですが、詳しくは論文を参照ください。
それらの式を、まず示しましょう。
ζ(3)=(-π^2/3)Σ(2n+5)ζ(2n)/{(2n+1)(2n+3)(2n+2)2^2n} (n=0〜∞) ζ(5)=(-π^4/180)Σ(28n^2+168n+269)ζ(2n)/{(2n+1)(2n+3)(2n+5)(2n+4)2^2n} (n=0〜∞)
ζ(7)
=(-π^6/7560)Σ(248n^3+2604n^2+9394n+11757)ζ(2n)/{(2n+1)(2n+3)(2n+5)(2n+7)(2n+6)2^2n}
(n=0〜∞)
この式を見ていて、私は、さらに興味深い形に書き換えられることに気付きました。
偶数ゼータを用いて、πがあらわに出てこない形にするのです。
例えば、一番上の式の係数-π^2/3は、-π^2/3=-2×(π^2/6)=-2ζ(2)と変形できるので、次のように
変形できます。
ζ(3)=-ζ(2)・2^(+1)Σ(2n+5)ζ(2n)/{(2n+1)(2n+3)(2n+2)2^2n} (n=0〜∞)
2番目、3番目の式も同様に変形すると、
ζ(5)=-ζ(4)・2^(-1)Σ(28n^2+168n+269)ζ(2n)/{(2n+1)(2n+3)(2n+5)(2n+4)2^2n} (n=0〜∞) ζ(7)
=-ζ(6)・2^(-3)Σ(248n^3+2604n^2+9394n+11757)ζ(2n)/{(2n+1)(2n+3)(2n+5)(2n+7)(2n+6)2^2n}
(n=0〜∞)
このように見事な規則性がたち現れたのです!
これらの式は、ほんとうに不思議です。当然、ζ(9)以降も同じような規則で表現できることは間違いないと予想
されます。(読者の厳密な証明を期待しています)
ちなみにζ(2)=π^2/6、ζ(4)=π^4/90、ζ(6)=π^6/945、・・です。
はじめの三式よりも、これら三式の方がよほど調和に満ちていることから、こちらの方がより根源的な表現に違い
なく、加藤和也さん(京都大学教授)流にいえば、「ゼータの心が表れているのはこちらの方!」ということになる
と思います。
偶数ゼータはみなだんごのように一丸になって、奇数ゼータを生み出そうとしているに違いありません。
まとめておきます。
ゼータはやはり生き物なのではないでしょうか?
これまで膨大な計算をしてきて、ますますその感を強くします。
偶数ゼータが先か奇数ゼータが先か?それは偶数ゼータが先でしょう。
偶数ゼータは、ゼータ木という木に群がる昆虫たちなのです。
おびただしい数の偶数ゼータが木に群がって、奇数ゼータを生み出しいる、そういうことなのではないでしょうか?
これまで導出した式を見ていると、そのように思えてし方ありません。
論文や私の式などで、右辺にπ^2nなどが現れていますが、ほんとうはこのような表現は、昆虫ゼータたちの
気持ちを反映していないのではないか?という考えが頭をもたげはじめています。
加藤和也さん流にいえば、「昆虫たちがあまりにかわいそう」となります。
ただ上ではたまたまうまくいきましたが、他の式ではなかなか難しい面もあり(規則性はあるようなのですが)、
さらに研究していかねばなりません。
追記2003/10/14
さらに、驚くべきことに、上式はさらに面白い形に変形できることに気付きました。
ζ(0)=-1/2ですから、次のようにできるのです。
じつは、偶数ゼータにはいくつものζ(0)がまとわりついていたのです!
これは親の周りに子供達がまとわりついている様子をしめしているのか。昆虫達のなかむつまじい姿を見ているよう
です。これまでΣの中に現れていた1/2^2nの正体はじつはζ(0)^(2n)であったのだと確信した次第です。
ゼータはやはり生き物でした。
追記2003/10/12
上の「右辺にπを含まない、ゼータだけの形にする」という強硬な考えをゼータプログラムと名付けましょう。
「影響を受けた」としてこの考えを早速実行に移され、Sugimoto氏はζ(5)の右辺がゼータばかりの、昆虫達が
からまりあっているような不思議な式を出されています。
これまで、私はζ(3)の4種類の表示を見出しましたが、さらに別種のもの二つを見出しました。
ただし、形があまり美しくないので、簡単な紹介にとどめます。今回、見つけたものは次の二つです。
ζ(3)=(π^2/17)[(-49/20)logπ + 5753/1200
+ 12Σζ(2n)(32n+49)/{2n・(2n+1)・(2n+2)・(2n+3)・(2n+4)・(2n+5)・2^(2n)}] ---@
(n=1〜∞)
ζ(3)=(π^2/15)[(-173/60)logπ + 17941/3600
+ 4Σζ(2n)(64n^2+192n+173)/{2n・(2n+1)・(2n+2)・(2n+3)・(2n+4)・(2n+5)・2^(2n)}] ---A
(n=1〜∞)
狽フ中の分子(赤字)に注目してください。
<ζ(3)の4番目の別表式を見出しました>で示した4種類の表記では、分子にはこんな式はかかってこなかった
のです。形が少し乱れていると感じる所以です。
ただし収束でいえば、これまでの4種類と比べてもより速く、@はこれまで見つけたものの中で最速のものと
なっています(次元は分母のnの多項式の次数が6次、分子が1次ですから、結局5次ですね)。
ちなみに、Aは(4次ですから)これまでみつけた4種類の中の最速のものと同等の速さです。
導出方法ですが、<ζ(5)の3番目の別表式を見出しました>での3種類のζ(5)の式のうち、一番上の式と
二番目の式を用い、それらからζ(5)を消去して@式を出しました。同様に、一番上の式と一番下の式を用いて
出したものがA式です。
正直なことをいうと、やはり、分子にこのようなnの多項式(赤字のもの)が出現するのはあまり嬉しくない。
できれば、これまでのように、分子ばかりでどんどんと次元が高まっていく収束速度の速いものを見つけたい、
というのが本音です。
谷山・志村予想
フェルマー予想解決の鍵となった谷山・志村予想とはどんな予想なのでしょうか。
谷山・志村予想は、現代数論の世界であまりにも重大で、かつあまりにも難しい問題でした。
難解な予想なのですが、感覚的に理解させてくれる記述があります。
「フェルマーの最終定理」(サイモン・シン著、青木薫訳、新潮社)に、谷山・志村予想についてバリー・メーザー
(数学者)が語った箇所があります。
「見事な予想でした。どの楕円曲線もモジュラー形式が付随しているというのですから。しかしはじめの
うちは無視されていましたね。あまりにも時代に先駆けていたからです。最初に提示されたときは相手
にもされなかった。まさに仰天するような理論だったのです。あっちには楕円の世界、こっちにはモジュ
ラーの世界。この二つの世界はそれぞれ精力的に研究されてはいたが、あくまでも別の世界だった。
楕円方程式を研究している数学者はモジュラー形式のことには詳しくなかっただろうし、その逆も言えた
でしょう。そこに谷山=志村予想が登場して、完全に別の二つの世界に橋が架かっているという壮大な
推測をしたのです。そう、数学者という連中は、橋を架けるのが大好きなのです」
なんと素晴らしい説明でしょうか!
感じだけは十分に伝わってきますし、数学者が仰天するのもよくわかります。
この予想が日本人によって提示された予想であることは我々の誇りにしてよいでしょう。
この谷山・志村予想を1994年プリンストン大学のワイルズが証明することで(半安定な楕円曲線という
条件下で)、あのフェルマー予想が350年ぶりに解かれたのでした。
話が前後しますが「谷山・志村予想が正しければ、フェルマー予想が正しい」ことは1986年にリベットにより示さ
れていたのです。
それに刺激されてワイルズが谷山・志村予想の証明にとりかかったのですが、このリベットの仕事がフェルマー
予想解決に決定的な意味をもつ出来事であったことを忘れてはなりますまい。
M.S.
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