奇数ゼータ関数と偶数L関数の間に具体的な関連性を見つけました。偶数ゼータと奇数L関数の関連性を追及
する過程で、「問題U」と「逆問題Tその2」を解くことに成功し、奇妙な事実を発見しました。無限次元行列という
別視点の表現も提示。中心母等式に初等的証明を与えました。
これまでの様々な議論でもリーマン・ゼータとL関数はかなり深い関係がありそうに見えていましたが、根底のところ
において、どのように具体的に関係しいるのか、いま一つつかめませんでした。
研究の結果、奇数ゼータと偶数L関数はその最深部分において密接に絡まりあっていることがわかりましたので、
今回は、この両者の具体的な関連性を示します。
まず考察する二つの式を示します。
cosx/sinx=2(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・) ------@
1/sinx=2(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・・) -------A
@は、全ての奇数ゼータを生み出す中心母等式であり(その11参照)、Aは全ての偶数L関数を生み出す中心
母等式でした(その12参照)。まばゆいばかりの美しさを誇っていますね。
簡単に復習すれば、@の右辺の(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・)を重回微分(または重回積分)して
その結果にπ/2を代入すれば次々と奇数ゼータが生み出されます。
また、同様にAの右辺の(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・・)を重回微分(または重回積分)してその結果に
π/2を代入することで、次々と偶数L関数が算出されます。
さて@とAより、次のようになることは容易にわかります。
(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・)cosx=sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・ ------B
左辺の(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・・)は偶数L関数の生成母体ですが、右辺は奇数ゼータの生成母体と
なっている。
すなわち、B式は眺めているだけで、奇数ゼータとL関数がもうはじめから密接に関係しあっていること
がわかる、じつに恐ろしい式といえるのです。
ここでは積分方向を調べることにしましょう。
実際はBをそのまま直接積分するのは難しく成功しなかったのですが、@とAを積分した式をこれまで
の考察で得ていましたので、今回はそれをうまく利用することで(すなわち、迂回路を辿ることで)本質的な
式に到達することができました。
まずそこまでの過程を示します。
@を両辺積分した式は(積分範囲0〜x)、次のようになります(その11参照)。
log(sinx)=-Σ1/n・cos(2nx) - log2 ------C
(n=1〜∞)
Aを両辺積分した式は(積分範囲0〜x)、次のようになります(その12参照)。
1/2・log(cot(x/2)) =Σcos((2n-1)x)/(2n-1) -----D
(n=1〜∞)
さてDの左辺を変形して、
1/2[log(cos(x/2)) - log(sin(x/2))]=Σcos((2n-1)x)/(2n-1) -----E
(n=1〜∞)
またCより変数変換して、次のようになることは容易にわかるでしょう。
log(sin(x/2))=-Σ1/n・cos(nx) - log2 ------F
(n=1〜∞)
EとFより、log(sin(x/2))を消去して、
(cosx + 1/2・cos2x + 1/3・cos3x + 1/4・cos4x + ・・・・) + log2 + log(cos(x/2))
=2(cosx + 1/3・cos3x + 1/5・cos5x + 1/7・cos7x + ・・・・) -----G
となります。
あるいは、もちろん、次のようにも表せます。
(cosx + 1/2・cos2x + 1/3・cos3x + 1/4・cos4x + ・・・・) + log2(cos(x/2))
=2(cosx + 1/3・cos3x + 1/5・cos5x + 1/7・cos7x + ・・・・) -----G
これがBの両辺を1回積分した式(積分範囲0〜x)に相当するか、もしくはかなりそれに近い本質的な式と考え
られます。
このG式に、さらに積分を重ねていきπ/2を代入することで、全く興味深い一連の式を次々に導出していくことが
できます。
・
・
Bを6回積分----> L(8)=K7・ζ(7) + K5・ζ(5) + K3・ζ(3) + 「偶数ゼータの無限和]
Bを7回積分----> K7・ζ(7) + K5・ζ(5) + K3・ζ(3)=[偶数ゼータの無限和]
Bを6回積分----> L(6)=K5・ζ(5) + K3・ζ(3) + 「偶数ゼータの無限和]
Bを5回積分----> K5・ζ(5) + K3・ζ(3)=[偶数ゼータの無限和]
Bを4回積分----> L(4)=K3・ζ(3) + [偶数ゼータの無限和]
Bを3回積分----> ζ(3)=[偶数ゼータの無限和]
Bを2回積分----> L(2)=[偶数ゼータの無限和]
Bを1回積分----> log2=1 - 1/2 + 1/3 - 1/4 + 1/5 - 1/6 + ・・・・
註:Knは”ある定数”です。[偶数ゼータの無限和]は、厳密には「”偶数ゼータの無限和” + ”ある定数”」ですが、”ある定数”は略し
[偶数ゼータの無限和]の中に含めて表現しました。また、例えば、上に出ている三つのK3が全て等しいのではなく、全くてんでバラ
バラな定数を上のように表現していますので、そのように見てください。
上のようになっている。全く面白い結果です。
もちろん、上でのL(s)は、ディリクレのL関数L(χ , s)の一種の
L(s)=1/1^s - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
です。ちなみに、ζ(s)もL(χ , s)の一種です。
上を一般的に書けば、次のようになります。
n回(偶数回)積分のとき
---> L(n)=Kn-1・ζ(n-1) + Kn-3・ζ(n-3) +・・・+ K5・ζ(5) + K3・ζ(3) + [偶数ゼータの無限和]
n回(奇数回, n>=3)積分のとき
---> Kn・ζ(n) + Kn-2・ζ(n-2) +・・・+ K5・ζ(5) + K3・ζ(3) = [偶数ゼータの無限和]
註:Knは”ある定数”です。
ζ(3)=[偶数ゼータの無限和]ですので、上の一連の式を眺めればわかる通り、
n>=1のとき、
ζ(2n+1)=偶数ゼータの無限和
L(2n)=偶数ゼータの無限和
とこのように表現してもいいとは思いますが、じつは、次で述べる”微分側からのつながり”という観点から見れば、
上のような奇数ゼータと偶数L関数が絡まりあった表現の方がより本質的ともいえるのです。つまり、その方が、
演算(作用)による統一的な視点から眺めることができ、ゼータ関数とL関数の根源的な構造を知る上で有用である、
といえるからです。
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上では話の流れを重視したので、細かな点がややわかりにくかったかもしれません。
ここでは省略した点を少し詳しく述べます。
2回積分の場合を例にとって述べると、上では
L(2)=[偶数ゼータの無限和] -----H
となっていますね。これをもっと詳しく表現すれば、すなわちHは、
L(2)=∫log(cos(x/2))dx + ∫log2dx -----I
としたものです。右辺は0〜π/2の範囲の積分です。
なぜIの右辺が[偶数ゼータの無限和]になるかというと、その12でも少し言及しましたが、
log(cos(x/2))=-{(x/π)^2(1-1/2^2)ζ(2) + (x/π)^4(1-1/2^4)ζ(4)/2
+ (x/π)^6(1-1/2^6)ζ(6)/3 + (x/π)^8(1-1/2^8)ζ(8)/4 + ・・・・}---J
となることが示せるからです。
このJの両辺を一回積分したものは、項別積分していくと”偶数ゼータの無限和”となることは容易にわかるで
しょう。∫log2dx の項は定数となりますが、”偶数ゼータの無限和+定数”を、まとめて”偶数ゼータの無限和”と
しています。
では、なぜこのJ式が成り立つかというと、
cosx=(1-4x^2/π^2)(1-4x^2/9π^2)(1-4x^2/25π^2)(1-4x^2/49π^2)・・・・・ ---K
というきれいな無限積表現の公式が従来より知られているからです。このKが出発点です。
(「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R. Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社)より)
このKからJへと到達するには、Kの両辺のlogをとって、右辺バラバラにした各項にテイラー展開を逐次
適用して、ひたすら整理すればJが出ます。この証明は「log(πx/sinπx)式の初等的証明」と全く同様の
方法でできますので詳細は略します。
さて、Iのような形で、一つ上の結果を書き直したものを、次に示します。
・
・
Bを8回積分--> -L(8) + 63π/128・ζ(7) - 5π^3/256・ζ(5) + π^5/5120・ζ(3)
=π^7/645120・log2 + ∫∫∫∫∫∫∫log(cos(x/2))dx
Bを7回積分--> 8001/8192・ζ(7) - 15π^2/128・ζ(5) + π^4/512・ζ(3)
=π^6/46080・log2 + ∫∫∫∫∫∫log(cos(x/2))dx
Bを6回積分--> L(6) - 15π/32・ζ(5) + π^3/64・ζ(3)
=π^5/3840・log2 + ∫∫∫∫∫log(cos(x/2))dx
Bを5回積分--> -465/512・ζ(5) + 3π^2/32・ζ(3)
=π^4/384・log2 + ∫∫∫∫log(cos(x/2))dx
Bを4回積分--> -L(4) + 3π/8・ζ(3) =π^3/48・log2 + ∫∫∫log(cos(x/2))dx
Bを3回積分--> 21/32・ζ(3)=π^2/8・log2+ ∫∫log(cos(x/2))dx
Bを2回積分--> L(2)=π/2・log2 + ∫log(cos(x/2))dx
Bを1回積分--> log2=1 - 1/2 + 1/3 - 1/4 + 1/5 - 1/6 + ・・・・
註:右辺の積分は、「0〜xで重回積分した結果にx=π/2を代入したもの」を意味する。dx・・・dxも dx一個で表現。
このような形になります。
説明した通り、log(cos(x/2))はJの形に展開できますから、上の一連の式の右辺は全て”偶数ゼータの無限和”
となります。
次に微分側を見てみましょう。
微分の方向を調べます。
上でも表示しましたが、まずはじめに中心的な式(次式)を書いておきます。
(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・)cosx=(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・・) ------@
積分の場合と同様にやっていきましょう。
具体的な絡まり具合を見るには、@の両辺を重回微分した結果にπ/2を代入するだけでわかりますので、
その方法で見ていきます。
@を0回微分-----> 0=0
@を1回微分----> 6ζ(-1)=-L(0)
@を2回微分----> 0=0
@を3回微分-----> -120ζ(-3)=3L(-2) + L(0)
@を4回微分----> 0=0
@を5回微分----> 2016ζ(-5)=-5L(-4) -10L(-2) - L(0)
@を6回微分----> 0=0
@を7回微分----> 32640ζ(-7)=7L(-6) + 35L(-4) + 21L(-2) + L(0)
・
・
こんな風になりました。奇数回微分の行に注目してください。
これまでは、奇数ゼータなら奇数ゼータの理論の範囲で、あるいは偶数L関数は偶数L関数の理論の範囲で
しか独立的にわかっていなかった個々の特殊値が、じつは、上のように密接に繋がっているのです。
ゼータやL関数にかかる全ての係数は、@式に微分という演算を作用させることによって一意に決まります。
全く面白い結果です。計算は簡単ですので、ぜひ確めてください。
ちなみに、上で出たゼータやL関数の各々の特殊値は従来より知られており、次のようなものです。
ζ(-1)=-1/12、ζ(-3)=1/120、ζ(-5)=-1/252、L(0)=1/2、L(-2)=-1/2、L(-4)=5/2
上の関係式にこれらの値を当てはめ、きちんと式が成り立っていることをご確認ください。
上から意味のある行だけを抜き出すと、次のようになります。
6ζ(-1)=-L(0)
-120ζ(-3)=3L(-2) + L(0)
2016ζ(-5)=-5L(-4) -10L(-2) - L(0)
-32640ζ(-7)=7L(-6) + 35L(-4) + 21L(-2) + L(0)
・
・
これらを辺々、左辺のゼータの係数で割ると、次のようになります。
ζ(-1)=-1/6・L(0)
ζ(-3)=-1/40・L(-2) - 1/120・L(0) --------A
ζ(-5)=-5/2016・L(-4) -5/1008・L(-2) - 1/2016・L(0)
ζ(-7)=7/32640・L(-6) + 7/6528・L(-4) + 7/10880・L(-2) + 1/32640・L(0)
・
・
これらを一般的に書けば、次のようになります。
ζ(-n)=K-n+1・L(-n+1) + K-n+3・L(-n+3) + ・・・・・・ + K2・L(-2) + K0・L(0)
ここで、nは正の奇数で、Kは定数です。
ところで、よく見ると、ζ(n)=・・とだけ書けるのではなく次のように書くこともできます。
L(0)=-6・ζ(-1)
L(-2)=-40・ζ(-3) + 2・ζ(-1) --------B
L(-4) =-2016/5・ζ(-5) + 80・ζ(-3) - 14/5・ζ(-1)
L(-6) =32640/7・ζ(-7) + 2016ζ(-5) - 280ζ(-3) + 62/7・ζ(-1)
・
・
このようにL(n)=・・というようにも書けるのです。
したがって、Aのようにも書いてもよいし、またBのように書いてもOKということです。
最後に、微分の場合と積分の場合を合わせて表しておきましょう。
・
・
@を6回積分----> L(6)=K5・ζ(5) + K3・ζ(3) + [偶数ゼータの無限和]
@を5回積分----> K5・ζ(5) + K3・ζ(3)=[偶数ゼータの無限和]
@を4回積分----> L(4)=K3・ζ(3) + [偶数ゼータの無限和]
@を3回積分----> ζ(3)=[偶数ゼータの無限和]
@を2回積分----> L(2)=[偶数ゼータの無限和]
@を1回積分----> log2=1 - 1/2 + 1/3 - 1/4 + 1/5 - 1/6 + ・・・・
@を0回微分-----> 0=0
@を1回微分----> 6ζ(-1)=-L(0)
@を2回微分----> 0=0
@を3回微分-----> -120ζ(-3)=3L(-2) + L(0)
@を4回微分----> 0=0
@を5回微分----> 2016ζ(-5)=-5L(-4) -10L(-2) - L(0)
@を6回微分----> 0=0
@を7回微分----> 32640ζ(-7)=7L(-6) + 35L(-4) + 21L(-2) + L(0)
・
・
これらゼータやL関数にかかる全ての係数は、@式に微分(or積分)という演算を作用させることによって一意に
決まるのです。
また上から、微分側と積分側で対称的な形で式を抜き出しますと、次のようになります。
L(6)=K5・ζ(5) + K3・ζ(3) + [偶数ゼータの無限和]
L(4)=K3・ζ(3) + [偶数ゼータの無限和]
L(2)=[偶数ゼータの無限和]
L(0)=-6・ζ(-1)
L(-2)=-40・ζ(-3) + 2・ζ(-1)
L(-4) =-2016/5・ζ(-5) + 80・ζ(-3) - 14/5・ζ(-1)
L(-6) =32640/7・ζ(-7) + 2016ζ(-5) - 280ζ(-3) + 62/7・ζ(-1)
・
・
ここで、微分側はBの形で表示しました。
奇数ゼータと偶数L関数は、ある秩序(関係性)で絡まりあっていることがわかりました。
そして、その関係性は次式を重回積分(or重回微分)することにより、π/2代入で一意に決定される。
(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・)cosx=(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・・)
佐藤郁郎氏は氏の「奇数ゼータ・・」のコラム”その3”では上の積分の場合と同類の関係を既に導かれていた
わけですが、微分の場合の構造(すなわち、負の奇数ゼータと負の偶数L関数の関係性)は不明なままでした。
今回の結果により、微分や積分の演算(作用素)という観点に立った統一的な構造が明らかになったと考えら
れます。
上の考察で、奇数ゼータと偶数L関数は密接な関係があることがわかりました。では偶数ゼータと奇数L関数の
間でも同じようなことがいえるのではないか?という予想が自然に浮び上がってきます。
調べたところ、同じように深く関係しあった関係式を出すことができました。以下、報告します。
まず中心となる二式を並べます。
πx/tanπx=- 2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ } ----@
( 0 < |x| < 1 )
(πx/2)/cos(πx/2)= 2{L(1) x^1+ L(3)x^3 + L(5)x^5 + L(7)x^7 ・・・} -------A
( -1 < x < 1 )
この二式は、私がその3で導いていたものであり、その後の展開でも重要な役割を果たしてきたものです。
一言でいえば、@は偶数ゼータの母等式であり、Aは奇数L関数の母等式となっている。
ちなみに、@はx=0では定義できませんが、x-->0(0に限りなく近づける)ではちゃんと成り立っています。
さて、左辺の三角関数に注目して、次のような変形を行ってみます。
πx/tanπx
=πx・cosπx/sinπx
=πx・cosπx/sin(2・πx/2)
=πx・cosπx/{2sin(πx/2)cos(πx/2)}
=cosπx/sin(πx/2)・πx/2/cos(πx/2)
これより、
πx/tanπx=cosπx/sin(πx/2)・πx/2/cos(πx/2) -------B
となります。
このBと、@、Aより、次の等式が成り立ちます。
- 2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }
=cosπx/sin(πx/2)×2{L(1) x^1+ L(3)x^3 + L(5)x^5 + L(7)x^7 ・・・}
整理して、次の式が出ます。
-sin(πx/2){ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }
=cosπx{L(1) x^1+ L(3)x^3 + L(5)x^5 + L(7)x^7 ・・・} -----C
この式を見てください!
眺めるだけで、偶数ゼータと奇数L関数が密接にからまり合っていることがわかるという素晴らしい等式に
なっています。
「偶数ゼータの無限和」と「奇数L関数の無限和」は根底においてこんな形で繋がっていたのです。
さて冒頭での「奇数ゼータと偶数L関数の関係」での場合と同じように、偶数ゼータと奇数L関数の具体的な
関係式を、C式の両辺を重回微分することによって次々と規則的に導くことができます。
それを調べることにしましょう。
(Cのそれより重回積分ではどこまでも「偶数ゼータの無限和=奇数L関数の無限和」という結果に終始することが直観されるので、積分方向の
考察は行っていません。)
さて、Cに重回微分を行っていきます。
途中経過は略し、重回微分を行った等式に、x-->0とした結果を記します。
Cを0回微分--> 0=0
Cを1回微分--> -π/2・ζ(0)=L(1) ------D
Cを2回微分--> 0=0
Cを3回微分--> π^3/8・ζ(0) - 3πζ(2)=-3π^2・L(1) + 6L(3) ------E
Cを4回微分--> 0=0
Cを5回微分--> -π^5/32・ζ(0) + 5π^3/2・ζ(2) - 60πζ(4)
=5π^4・L(1) - 60π^2L(3) + 120L(5) ------F
・
・
このように規則だった結果が次々と現れてきます。
ここで、次のように思われる読者がおられるかもしれません。
「奇数ゼータと偶数L関数の関係」の場合は、ζ(n)=・・とか、あるいはL(n)=・・の形で書けたのに上の一連の
式では左右ともに複数のζ(n)とL(n)が現れてる、少し違っている・・と。
しかし、本質的には、同じなのです。
なぜなら、上のDをEやFに利用することで、Eでは、「ζ(2)=複数のL関数の和」とでき、また同様にFでは、
ζ(4)=「複数のL関数の和」とできるのは自明だからです。
念のためD、E、Fをそのような形で書き直しておきましょう。
ζ(0)=-2/π・L(1)
ζ(2)=11π/12・L(1) - 2/π・L(3)
ζ(4)=-127π^3/2880・L(1) + 11π/12・L(3) - 2/π・L(5)
・
・
と、このような形になります。
「奇数ゼータと偶数L関数の関係」の場合と同じような形になりましたね。
もちろん逆にL(n)=・・の形でも表せ、その形で表現すると次のようになります。
L(1) =-π/2・ζ(0)
L(3) =-11π^3/48・ζ(0) - π/2・ζ(2)
L(5) =-361π^5/3840・ζ(0) -11π^3/48・ζ(2) - π/2・ζ(4)
・
・
このように偶数ゼータと奇数L関数は根底のところできれいに結びついている。
そして上式全ての右辺の係数は、C式を重回微分することで一意に決まります。
ここまで来て気付いたのですが、偶数ゼータと奇数L関数に関してここで見出した事実はある意味間接的に
すでにわかっていた事実とも言えるのかもしれません。
というのは、マグロウヒル公式集を眺めて、ベルヌ−イ数とオイラー数がもとよりかなり密接に関係しあっている
ことがわかるからです。少し説明しましょう。
ベルヌ−イ数は次の級数で定義されます(別の定義もありますが)。
1-x/2・cotx/2=B2・x^2/2! + B4・x^4/4! + B6・x^6/6! + ・・・・・・ ------G
(|x| < π)
また、オイラー数は次のように定義されます(別定義もあります)。
secx=1 + E2・x^2/2! + E4・x^4/4! + E6・x^6/6! + ・・・・・・ ------H
(|x| < π/2)
ここで、secx=1/cosxです。
Gでベルヌ−イ数B2nが定義され、Hでオイラー数E2nが定義されます。
ここで、偶数ゼータとベルヌ−イ数は関係しており(I)、また奇数L関数とオイラー数が関係している(J)ことを
思い出しておきましょう。n=0, 1, 2,・・・として、
ζ(2n)=(-1)^(n+1)・{2^(2n-1)・B2n・π^2n}/2n ------I
また、
L(2n+1)=(-1)^n・E2n・π(2n+1)/{2^(2n+2)・(2n)!}
奇数L関数とオイラー数の関係に関しては、佐藤郁郎氏のコラムを参照しました。
このように偶数ゼータとベルヌ−イ数、奇数L関数とオイラー数は密接に関連している。
G、Hの左辺の三角関数を関連づけて変形していけば、C(orそれに同類の式)に到達できることは容易に
推測できるでしょう。
これが、「数ゼータと奇数L関数に関してここで見出した事実はある意味間接的にすでにわかっていた事実
とも言えるのかもしれません。」と述べた理由です。(「奇数ゼータと偶数L関数」では言えないと思いますが)
さて、話を戻して、再度[ζ(n)=・・の式]と[L(n)=・・の式]を考察したいのです。
[ζ(n)=・・の式] ζ(0)=-2/π・L(1) ζ(2)=11π/12・L(1) - 2/π・L(3) ζ(4)=-127π^3/2880・L(1) + 11π/12・L(3) - 2/π・L(5) ・ ・
[L(n)=・・の式]
L(1) =-π/2・ζ(0) L(3) =-11π^3/48・ζ(0) - π/2・ζ(2) L(5) =-361π^5/3840・ζ(0) -11π^3/48・ζ(2) - π/2・ζ(4) ・ ・ じつは、この2組の式集合を見ているだけで、私がその9で提示した「問題U」と「逆問題Tその2」が自然に解決
されてしまうのです。
その問題をもう一度書きますと、次のものです。
結果は、どちらの問題とも肯定的解決です。 すなわち、 偶数L関数は、奇数L関数の無限和で表現できる。
奇数ゼータは、奇数L関数の無限和で表現できる。
となります。理由を述べますと・・、
[理由] まず「問題U」から述べます。
と表現すると、上の[ζ(n)=・・の式]でわかる通り、偶数ゼータの一つ一つは、奇数L関数の有限和で表現
できるのだから、それをJに代入していくことで、偶数L関数が「偶数ゼータの無限和」で表現できること、
すなわち(簡潔に書いて)、 L(2n)=ΣL(2n+1) とできることは自明だからです。
次に、「逆問題Tその2」を述べます。
本サイトのこれまでの考察(その4〜その7)で、奇数ゼータが「偶数ゼータの無限和」で表現されることは
わかっていました。すなわち(簡潔に表現して)、
ζ(2n+1)=Σζ(2n) -------K
となります。
よって上の問題Uと全く同様に考えて、奇数ゼータが「偶数ゼータの無限和」で表現できる。
すなわち(簡潔に書いて)、
ζ(2n+1)=ΣL(2n+1) とできることになります。
以上。
追加2004/1/9 <偶数ゼータと奇数L関数の間に潜む奇妙な秩序>
一つ上での関係式を眺めていて、奇妙な事実を見出しました。
上で、出てきた2組の式をもう一度書きます。
[ζ(n)=・・の式]
ζ(0)=-2/π・L(1)
ζ(2)=11π/12・L(1) - 2/π・L(3)
ζ(4)=-127π^3/2880・L(1) + 11π/12・L(3) - 2/π・L(5)
・
・
[L(n)=・・の式]
L(1) =-π/2・ζ(0)
L(3) =-11π^3/48・ζ(0) - π/2・ζ(2)
L(5) =-361π^5/3840・ζ(0) -11π^3/48・ζ(2) - π/2・ζ(4)
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この[ζ(n)=・・の式]と[L(n)=・・の式]は本質的に同値であることは、上で述べた通りです。
この二つの式群を眺めていて気付くことはないでしょうか?
なんと、次のように右辺の係数が美しい秩序でもって並んでいるのです!
同じ色に注目してください。
[ζ(n)=・・の式]
ζ(0)=-2/π・L(1)
ζ(2)=11π/12・L(1) - 2/π・L(3)
ζ(4)=-127π^3/2880・L(1) + 11π/12・L(3) - 2/π・L(5)
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[L(n)=・・の式]
L(1) =-π/2・ζ(0)
L(3) =-11π^3/48・ζ(0) - π/2・ζ(2)
L(5) =-361π^5/3840・ζ(0) -11π^3/48・ζ(2) - π/2・ζ(4)
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この神秘的な秩序はいったいなんなのでしょうか?きわめて秩序だった美しい並びといえます。
これは、容易に次のようになっていることが予想されます。ζ(n)=・・だけで書くと、
[ζ(n)=・・の式]
ζ(0)=-2/π・L(1)
ζ(2)=11π/12・L(1) - 2/π・L(3)
ζ(4)=-127π^3/2880・L(1) + 11π/12・L(3) - 2/π・L(5)
ζ(6)=A・L(1) - 127π^3/2880・L(3) + 11π/12・L(5) - 2/π・L(7)
ζ(8)=B・L(1) + A・L(3)- 127π^3/2880・L(5) + 11π/12・L(7) - 2/π・L(9)
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ここで、A、Bはもちろん”ある定数”です。
無限にこの規則が続いているのだろうと予想されます。
こういうのを見ていると、裏側に深い構造が控えているではないか・・と感じます。
ζ(0)、ζ(2)、ζ(4) ・・・を無限次元縦ベクトルの要素と見て、またL(1)、L(3)、L(5) ・・・も同様にその
ように見ると、一つ上の右辺の係数はある無限次元の行列の要素と見ることができます。
上の「ζ(n)=・・の式」またはL(n)=・・の式」は行列を用いても表現できるのですが、このことを説明します。
「ζ(n)=・・の式」を例にとって行列を用いて表すと、次のようになります。
Web上では、うまく行列が表現できずに、申し訳ありません。下を無限次元行列と思って見てください。
下を行列Mと名付けましょう。
行列M
註:A,Bはまだ計算できていませんが、ある定数です。
同じ色の文字が全て一致しているという、この奇妙な秩序に再度注目してほしいと思います。
さて、(L(1) L(3) L(5) ・・・)の縦ベクトルLに上の行列Mを作用させると、(ζ(0) ζ(2) ζ(4) ・・・)という
縦ベクトルがζ得られるということです。
すなわち、ζ=M L ------@
となります。
行列の規則に則って計算すれば、下記の一連の式が得られることをご確認ください。
[ζ(n)=・・の式]
ζ(0)=-2/π・L(1)
ζ(2)=11π/12・L(1) - 2/π・L(3)
ζ(4)=-127π^3/2880・L(1) + 11π/12・L(3) - 2/π・L(5)
ζ(6)=A・L(1) - 127π^3/2880・L(3) + 11π/12・L(5) - 2/π・L(7)
ζ(8)=B・L(1) + A・L(3)- 127π^3/2880・L(5) + 11π/12・L(7) - 2/π・L(9)
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このように、ベクトルと行列の演算という考えに帰着させると、次の「L(2n)=・・の式」は、縦ベクトルζに
Mの逆行列M^(-1)を左から作用させればLが出るのは@より容易にわかるでしょう。
すなわち、
L=M^(-1) ζ ------A
となります。
Mが逆行列をもつことは、すなわち行列式detMに関して「detMは0でない」ということです。これも重要な
観点でしょう。(厳密にいえば、ここも予想ですが正しいでしょう。)
このように、
-sin(πx/2){ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }
=cosπx{L(1) x^1+ L(3)x^3 + L(5)x^5 + L(7)x^7 ・・・}
という式をひたすら重回微分して求めていった事柄が、無限次元ベクトルと無限次元行列の演算と関連づけられた
わけですが、こういう別視点から眺めるのはとても面白いことです。
ここでは、ある別観点からの見方を提供したということで、一つ上の議論と本質的に違っているわけではあり
ません。
しかし、こういう別視点というのは、ときとして新しい理論発生の端緒を与えるとも限らないので、できる限り
提供しておいた方がよいのです。
冒頭で奇数ゼータと偶数L関数の関係性をさぐる上で考察した次式(@)は、非常に重要な式でした。
そしてこれは、かなり複雑な過程を経て導出したものでした。
ところが・・ひょんなことから、@式は全く初等的にその成立を証明できることに気付きましたので、今回はそれを
示します。
(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・)cosx=(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・・) ------@
[@の証明]
三角関数の加法定理より、
sin(x+y)=sinx・cosy + siny・cosx ------A
sin(x-y)=sinx・cosy - siny・cosx ------B
A+Bより、
sinx・cosy =1/2・{sin(x+y) + sin(x-y)} -----C
となる。
Cを用いると、
sinx・cosx=1/2・{sin2x + sin0}
sin3x・cosx=1/2・{sin4x + sin2x}
sin5x・cosx=1/2・{sin6x + sin4x}
sin7x・cosx=1/2・{sin8x + sin6x}
・
・
上を全部辺々足していくと、
(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・)cosx
=1/2・{sin2x} + 1/2・{sin4x + sin2x} + 1/2・{sin6x + sin4x} + 1/2・{sin8x + sin6x} + ・・・・
=(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・・)
となる。よって、@は証明された。
証明終わり。
なんという簡明な証明でしょうか!高校生でも十分証明できます。
(ただ、この証明というのは@という等式に一度辿りついた後に気付く証明であって、一番最初にこの証明から
いきなり@式を出す人はおそらくいないだろうと思います。)
そして、この証明に気付いてすこしした後、次の奇数ゼータの母等式Aと偶数L関数の母等式Bも全く同様に
して出せることがわかりました。
全く簡単ですので、読者自身で確認してください。
cosx/sinx=2(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・) ------A
1/sinx=2(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・・) -------B
本サイトでは現代数学で不明とされている奇数ゼータと偶数L関数の特殊値を、AやBの中心母等式に
重回微分-重回積分の演算を施すことで導出できることを示してきましたが、その最も重要な母等式が高校生
でもわかる初等的方法で証明できる式であったとは、ただただ驚くばかりです。
なおAにπ/4を、Bにπ/2を代入すると、L(0)=1/2が出てきます。
[追記2004/5/5]
上で「読者自身で確認してください。」としたAとBの証明も念のため載せておきます。
[A式の証明]
三角関数の加法定理より、
cos(x+y)=cosx・cosy - sinx・siny ------C
cos(x-y)=cosx・cosy + sinx・siny ------D
D - Cより、
sinx・siny =1/2・{cos(x-y) - cos(x+y)} -----E
Eを用いると、
sinx・sin2x=1/2・(cosx - cos3x)
sinx・sin4x=1/2・(cos3x - cos5x)
sinx・sin6x=1/2・(cos5x - cos7x)
sinx・sin8x=1/2・(cos7x - cos9x)
・
・
上を全て縦に辺々足していくと、
sinx(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・)
=1/2{(cosx - cos3x) + (cos3x - cos5x) + (cos5x - cos7x) + (cos7x - cos9x) + ・・・}
=1/2cosx
よって、これより、
cosx/sinx=2(sin2x + sin4x + sin6x + sin8x + ・・・・)
が成り立つ。よって、Aが証明された。
[終わり]
次に、B式を証明します。
[B式の証明]
Eを用いると、
sinx・sinx=1/2・(cos0 - cos2x)
sinx・sin3x=1/2・(cos2x - cos4x)
sinx・sin5x=1/2・(cos4x - cos6x)
sinx・sin7x=1/2・(cos6x - cos8x)
・
・
上を全て縦に辺々足していくと、
sinx(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・)
=1/2{(cos0 - cos2x) + (cos2x - cos4x) + (cos4x - cos6x) + (cos6x - cos8x) + ・・・}
=1/2cos0
=1/2
よって、 1/sinx=2(sinx + sin3x + sin5x + sin7x + ・・・・)
が成り立つ。
よって、Bが証明された。
[終わり]
以上のようにA、Bも全く簡単に証明されてしまうのです。
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