ゼータ関数のいつくかの点について その3

 ゼータに関するさらに興味深い式を見出しました。


2003/9/7  < 三角関数とζ(0)、ζ(1)、ζ(2)・・の調和のとれた関係式の発見 >

 ゼータ関数のその2の結果を利用することで、面白い式を見出しました。まず、その式を書きます。

   πx/tanπx=1-2{ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }  ------@
  
  美しい式です。π、三角関数、全ての偶数ゼータという現代数学で重要なものが全部ふくまれています。
 ζ(n)のnとx^nのnが一致しているというのもなにやら異様です。

 これは、私が独力で導いたものですが、じつは既に知られていることをYさんが指摘してくださいました。
 関数論の本にのっているそうです。ただ私は一歩すすめて、面白い事実とある美しい変形式を見つけました。

 念のため、私の導いた@の導出手順をまず示しておきます。
[@式の導出手順(証明)]
 ゼータ関数に関するいくつかの点について その2で、私は、次の式を導いていました。
  1/(1^2-x^2) + 1/(2^2-x^2) + 1/(3^2 - x^2) +・・・
                   =ζ(2) + ζ(4)x^2 + ζ(6)x^4 + ζ(8)x^6 +・・・     ----A
                                        (-1< x <1)
 さて、マグロウヒルの公式集()をながめていたところ、三角関数の部分分数展開の式のところにあった次式に
注目しました。

 cot x=1/x + 2x{1/(x^2-π^2) + 1/(x^2-4π^2) + 1/(x^2-9π^2) +・・・・・} ----B

 ここで、cotx=1/tanxです。
 このBですが、{ }の中の式が、A式の左辺と本質的に同じであることに気付きました。Bでx=πxと変数変換を
すればそのことが容易にわかります。x=πxとして、Bを変形していきましょう。
 cot πx=1/πx + 2πx{1/((πx)^2-π^2) + 1/((πx)^2-4π^2) + 1/((πx)^2-9π^2) +・・・・・}
      =1/πx + 2x/π{1/(x^2-1) + 1/(x^2- 4) + 1/(x^2-9) +・・・・・}
      =1/πx + 2x/π{1/(x^2-1^2) + 1/(x^2- 2^2) + 1/(x^2-3^2) +・・・・・}
      =1/πx - 2x/π{1/(1^2-x^2) + 1/(2^2-x^2) + 1/(3^2-x^2) +・・・}

 これにAを代入して、 
 cot πx=1/πx - 2x/π{ζ(2) + ζ(4)x^2 + ζ(6)x^4 + ζ(8)x^6 +・・・  }
となります。この両辺にπxをかけて、整理すると、
  πx/tanπx=1- 2{ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ } ----@
                                        ( 0 < |x| < 1 )
となり@が導かれました。
証明終わり。


 @式は、かなり美しいものですが、まだすこし乱れているともいえます。
私は、さらに秩序だった形に変形できることに気付きました。
次のように変形できます。

   πx/tanπx=- 2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ } ----C
                                             ( 0 < |x| < 1 )
 このふしぎさを味わってください。
 これは、普通にやっていても容易には出てきません。なぜなら、これは、現代数学が主張する驚くべき事実
  ζ(0)=”1 + 1 + 1 + 1 + 1・・・”=-1/2 -----D

を利用してはじめて得られるものだからです。

 簡単ですが、念のためその過程を示しておきます。
  πx/tanπx=1- 2{ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }  --------@
          =- 2{(-1/2) + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }
          =- 2{(-1/2)x^0 + ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }
          =- 2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }  <--Dを利用

 このようにCが得られました。
   πx/tanπx=- 2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ } ----C
                                             ( 0 < |x| < 1 )
 このCの調和のとれた形は驚異としかいいようがありません。

 今回@からCを導いたわけですが、最も重要なことは、C式の右辺の形は、
  ζ(0)=”1 + 1 + 1 + 1 + 1・・・”=-1/2

という、摩訶不思議な式の正当性を積極的に示しているということです!
 @とCによって、ζ(0)=”1 + 1 + 1 + 1 + 1+・・・”=-1/2 とならねばならぬことが示されているのです。

-----------------------------------------------------------------------------------
  さて、マグロウヒルの公式集()には、他の三角関数の類似の部分分数展開の式が多くのっています。
それらを用いて、私は次のような式も導きました。

  πx/tanhπx=2{-ζ(0) x^0 + ζ(2) x^2 - ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 - ・・・ } -----E

  (πx)^2/(sinπx)^2=2{-1・ζ(0) x^0 + 1・ζ(2) x^2 + 3・ζ(4)x^4 + 5・ζ(6)x^6 + ・・・ } ---F
                                             ( どちらも 0 < |x| < 1 )

 これらも、完璧な秩序をなしています。美しいですね。 
ちなみに、tanhx={e^x-e(-x)}/{e^x+e(-x)}です。詳細は省略しますが、流れはCを導いたときと全く同じです。

 すべてをまとめておきましょう。
ゼータでの公式群1

  πx/tanπx=- 2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ }

  πx/tanhπx=2{-ζ(0) x^0 + ζ(2) x^2 - ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 - ・・・ }        

  (πx)^2/(sinπx)^2=2{-1・ζ(0) x^0 + 1・ζ(2) x^2 + 3・ζ(4)x^4 + 5・ζ(6)x^6 + ・・・ }
                                             ( すべて 0 < |x| < 1 )


「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R. Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社)  <----よくまとまっている素
晴らしい公式集です。

 [ひとりごと]
   上の一番目のtanπxの式で、x=ix (i は複素数)とおくと、次のtanhπxの式が出てくることを見抜いた読者は鋭いと思い
ます。

追記 2003/9/26
ここで示した次式は既に知られていました。
   πx/tanπx=- 2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ζ(8)x^8 +・・・ } 

 次の論文(1997年)に載っていました。よって、はじめての表式ではありませんでした。
http://www.ams.org/proc/1997-125-05/S0002-9939-97-03795-7/S0002-9939-97-03795-7.pdf

---------------------------------------------------------------------------------
ちなみに、現代数学では、
  ζ(0)=”1 + 1 + 1 + 1 + ・・・”=-1/2 
  ζ(-1)=”1 + 2 + 3 + 4 + ・・・”=-1/12 
  ζ(-2)=”1 + 4 + 9 + 16 + ・・・”=0 
  ζ(-3)=”1 +8 + 27 + 64 + ・・・”=1/120
     ・
     ・
です。神秘的ですよね。ちなみに、上を最初に示したのは、大数学者オイラー(1707-1783)です。
リーマン・ゼータ関数の定義
     ζ(s)=1+1/2^s+1/3^s+1/4^s+1/5^s+・・・・・
を考えてみると、ふしぎとしか言いようがありませんね。
 また
  ζ(1)=”1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 +・・・”=∞ 
  ζ(2)=”1 +1/2^2 + 1/3^2 + 1/4^2 +・・・”=π^2/6 
  ζ(3)=”1 + 1/2^3 + 1/3^3 + 1/4^3 + ・・・”= 不明
  ζ(4)=”1 + 1/2^4 + 1/3^4 + 1/4^4 + ・・・”=π^4/90 
  ζ(5)=”1 + 1/2^5 + 1/3^5 + 1/4^5 + ・・・”=不明
   ・
   ・
不明と書いたのは、現代数学をもってしても、nが正の奇数のζ(n)がどのようなものなのかさっぱりわかっていない
からです。未解決の難問として横たわっているのです。

 報告 奇数ゼータの具体例を発見しました---><ゼータ関数のいくつかの点について その4>



2003/9/10    < πx/sinhπx と πx/sinπx の2式を追加 >

 さらに、πx/sinhπx と πx/sinπx の2つでも、同類の式を導くことができました。
まずはじめにそれを示します。次です。

  πx/sinhπx= 2{(1-2^1)ζ(0)x^0 - (1-2^(-1))ζ(2) x^2
                        + (1-2^(-3))ζ(4)x^4 - (1-2^(-5))ζ(6)x^6 +・・・ }  ----A


  πx/sinπx=2{(1-2^1)ζ(0)x^0 + (1-2^(-1))ζ(2) x^2
                        + (1-2^(-3))ζ(4)x^4 + (1-2^(-5))ζ(6)x^6 + ・・・ }  ----B
                                             ( どちらも 0 < |x| < 1 )

 ここで、sinhx = {e^x-e^(-x)}/2 です。やはり、ここでも究極の秩序が保たれています。

ぜひ実際に紙に書いてみてください。右辺は完璧な調和のもとに成り立っていることがわかるでしょう。
(ちなみに、x=ixとおくことで、AとBは互いに行ったり来たりできます。)

 私は、上式は、次の2式をまず導いてから、変形で出しました。その流れは冒頭でやったのと全く同じです。
CからAが、DからBが導かれています。

  πx/sinhπx= 1- 2{ (1-2^(-1))ζ(2) x^2 - (1-2^(-3))ζ(4)x^4 + (1-2^(-5))ζ(6)x^6 - ・・・ }  ----C

  πx/sinπx=1 + 2{ (1-2^(-1))ζ(2) x^2+ (1-2^(-3))ζ(4)x^4 + (1-2^(-5))ζ(6)x^6 + ・・・ }  -----D


さて、A,Bの美しい形もさることながら、最も注目すべきは、C、DからA,Bへの移行において、ここでも、
次式の正当性が示されているということです。

    ζ(0)=”1 + 1 + 1 + 1 + 1・・・”=-1/2

 全く面白いものです。ゼータはやはり、究極の調和の世界に生きているにちがいありません。




2003/9/13       < log(πx/sinπx)の式の発見 >


 同類の式として、log(πx/sinπx)の式も見出すことができました。まずその式を書きます。

   log(πx/sinπx)= 2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ } -----@
                                             (  0 < |x| < 1 )

 なんと調和に満ちた式でしょう!右辺は、異様な美しさを放っています。
 ゼータのnとその係数の分母数とそして累乗のnという三つ全てが同じ値で一致している!のは摩訶不思議としか
いいようがありません。

 ただ、log(πx/sinπx)の部分分数展開式がマグロウヒル公式集にはのっていなかったので、この式は、上記一連の
ものとは全く違った方法で導き出しました。
その過程の概略は(複雑なので詳細は省略しますが)、その2で導いた
   1/(1^2-x^2) + 1/(2^2-x^2) + 1/(3^2 - x^2) +・・・
                   =ζ(2) + ζ(4)x^2 + ζ(6)x^4 + ζ(8)x^6 +・・・   ----A

という式を出発点としました。
 Aを変形していく過程で、リーマンが導いた、”1×2×3×4×・・・”=√(2π)という驚くべき式を利用し、その他にも
様々な変形を加えることで、@(つまり次式)に到達しました。

   log(πx/sinπx)= 2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ } 
                                             (  0 < |x| < 1 )
 これは、もうそのままで完全な秩序を有しています。
 これまでの上の一連の流れでは、ζ(0)を加えることではじめて完全な秩序を得ることができたのですが、この式は
はじめからそれさえも必要としていないのですから余計に異様な感じがします。
(無理にζ(0)を加えようとすれば、不可能であることはすぐにわかりますね)

 他のものと比べる意味でも、このページ導いたものすべてを並べてみましょう。


  πx/tanπx = - 2{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2+ ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ・・・ }


  πx/tanhπx = 2{-ζ(0) x^0 + ζ(2) x^2 - ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 - ・・・ }        


  (πx)^2/(sinπx)^2 = 2{-1・ζ(0) x^0 + 1・ζ(2) x^2 + 3・ζ(4)x^4 + 5・ζ(6)x^6 + ・・・ }


  πx/sinhπx = 2{ (1-2^1)ζ(0)x^0 - (1-2^(-1))ζ(2) x^2
                        + (1-2^(-3))ζ(4)x^4 - (1-2^(-5))ζ(6)x^6 +・・・ }


  πx/sinπx = 2{ (1-2^1)ζ(0)x^0 + (1-2^(-1))ζ(2) x^2
                        + (1-2^(-3))ζ(4)x^4 + (1-2^(-5))ζ(6)x^6 + ・・・ }


  log(πx/sinπx)= 2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ } 
                                             ( すべて 0 < |x| < 1 )


上記一群の式で、いま右辺の2{ Kn・ζ(n)・x^n の形のべき級数の式 }の形を、ゼータの”完全形式”と名付ける
と、上の右辺は全て完全形式となっていることがまず指摘できます。

 左辺に注目すると、今度は全部 πx/(三角関数 or 三角関数類似物) のような形になっているのですから面白い。

 上の一群の式の中でも特別なものとして青字の式、つまり、

  log(πx/sinπx)= 2{1/2・ζ(2) x^2+ 1/4・ζ(4)x^4 + 1/6・ζ(6)x^6 + ・・・ } -----@

 をあげることができるのではないかと考えられます。
 なぜなら、それ以外の式は完全形式へもっていくには、ζ(0)を利用しなければならなかったものですが@はそれさえも
必要としないという不思議さをもっているからです。

 @が正しいことを具体的で確めることができます。
どうやって?と思われるかもしれませんが、@から、ζ(2)やζ(4)が本当に出るかを計算するのです。
例えばζ(2)は両辺を2回微分しx-->0とすることで、またζ(4)は4回微分しx-->0とすることで求めることができます。
私は、実際にζ(2)とζ(4)を求めましたが、きちんとζ(n)=π^2/6、ζ(4)=π^4/90 と出ました。ζ(2)はそれほど難しく
はありませんが、ζ(4)の計算はかなり根気のいる計算となります。




2003/9/15     < πx/cosπx でも美は崩れていない! >

 上ではπx/sinπxやπx/tanπxの式を出しましたが、そうであれば πx/cosπx はどうなるのか?と当然思いますね。
 そして、それを導いたところ、なんと、ここでも世にも美しい式が待っていたのです!しかも少しだけ雰囲気を変えて!
まずそれを書きましょう。次式です。

 πx/cosπx= 2{2^1・ζ(1-) x^1+ 2^3・ζ(3-)x^3 + 2^5・ζ(5-)x^5 + 2^7・ζ(7-)x^7 +・・・} -----@
                                             ( -1/2 < 0 < 1/2 )                    

 導出の過程の概略ですが、マグロウヒル公式集にのっていた次の
 1/cosx= 4π{1/(π^2-4x^2) - 3/(9π^2-4x^2) + 5/(25π^2-4x^2) - 7/(49π^2-4x^2) +・・・・・}

という1/cosx の部分分数展開の式を利用しました。変数変換をした後、ひたすらテイラー展開したものをまとめあげると、

 πx/cosπx= 2{2^1・ζ(1-) x^1+ 2^3・ζ(3-)x^3 + 2^5・ζ(5-)x^5 + 2^7・ζ(7-)x^7 +・・・} -----@

という、これまでと雰囲気は少し違うがしかし完璧な秩序をもった式がまたまた現れたのです。
 サインやタンジェントの場合は偶数ゼータしか現れませんでしたが、このコサインでは奇数ゼータもどきのようなもの
が現れている。この奇数ゼータもどきを、”奇数ゼータ類似物”と名付けましょう。
右辺のζ(1-)、ζ(3-)、・・などは見慣れない記号ですが、私が勝手に次のように定義したものです。

 ζ(1-)=1- 1/3 + 1/5 - 1/7 +・・・・
 ζ(3-)=1- 1/(3^3) + 1/(5^3) - 1/(7^3 ) +・・・・
 ζ(5-)=1- 1/(3^5) + 1/(5^5) - 1/(7^5 ) +・・・・
    ・
    ・
という意味ですので、この記号をみたらこの右辺で置き換えてください。
”奇数ゼータもどき”という表現を使ったのも納得していただけると思います。

 ζ(1-)はこれは有名なライプニッツの式そのものであり、1- 1/3 + 1/5 - 1/7 +・・・・= π/4であることはあまりにも
有名です。
 また、驚いたことに、さらに、ζ(3-)、ζ(5-)・・の値は、オイラーがすべて求めているのです。ζ(1-)も含めて書くと
  1- 1/3 + 1/5 - 1/7 +・・・・=π/4
  1- 1/(3^3) + 1/(5^3) - 1/(7^3 ) +・・・・=π^3/32
  1- 1/(3^5) + 1/(5^5) - 1/(7^5 ) +・・・・=5π^5/1536          ----------A
  1- 1/(3^7) + 1/(5^7) - 1/(7^7 ) +・・・・=61π^7/184320
    ・
    ・
となります()。
 ただ奇数ゼータそのものζ(3)、ζ(5)、・・・はさがのオイラーでも求めることができませんでした。そして、現在で
さえもさっぱりわかっていないのですから、なんと数学は奥が深いのでしょうか。

 もう一度、@を書きましょう。次です。

 πx/cosπx= 2{2^1・ζ(1-) x^1+ 2^3・ζ(3-)x^3 + 2^5・ζ(5-)x^5 + 2^7・ζ(7-)x^7 +・・・} -----@
                                             ( -1/2 < 0 < 1/2 )
 究極の美を感じます。
 ここでもゼータは裏切らなかった!といえると思います。コサインにおいても先に定義した完全形式に則った
形で表現できることがわかったのですから。
 右辺がサイン-タンジェント類は偶数ゼータで表現され、コサイン類は奇数ゼータ類似物で表され・・と完全に分かれて
いるのはとても神秘的ですね。

 さて、このような式が得られたら、私は検算の意味で、いつもその正しさを具体的に確めたくなります。
ζ(1-)、ζ(3-)、ζ(5-)の三つを実際に計算で確めました。
 ζ(1-)は、両辺xで割ってからx=0とするだけで簡単に確認できます。
ζ(3-)、ζ(5-)の場合は@の両辺をxで割った式に対して、それぞれ2回微分、4回微分してx-->0とすれば
ζ(3-)=π^3/32、ζ(5-)=5π^5/1536 ときちんとAと同じ値が求まりました。

-------------------------------------------
@はもう少し別に書きかえることもできます。
 x=2t とおくと、
 (πt/2)/cos(πt/2)= 2{ζ(1-) t^1+ ζ(3-)t^3 + ζ(5-)t^5 + ζ(7-)t^7 ・・・}
となります。x に戻して表現すると、

 (πx/2)/cos(πx/2)= 2{ζ(1-) x^1+ ζ(3-)x^3 + ζ(5-)x^5 + ζ(7-)x^7 ・・・}
                                                 (  -1 < x < 1 )
となります。全く美しい形です。

 まとめておきましょう。

 πx/cosπx= 2{2^1・ζ(1-) x^1+ 2^3・ζ(3-)x^3 + 2^5・ζ(5-)x^5 + 2^7・ζ(7-)x^7 +・・・}
                                                (  -1/2 < x < 1/2 )

 (πx/2)/cos(πx/2)= 2{ζ(1-) x^1+ ζ(3-)x^3 + ζ(5-)x^5 + ζ(7-)x^7 ・・・}
                                                 (  -1 < x < 1 )

 上でζ(1-)、ζ(3-)、・・は、下記の意味です。
 ζ(1-)=1- 1/3 + 1/5 - 1/7 +・・・・
 ζ(3-)=1- 1/(3^3) + 1/(5^3) - 1/(7^3 ) +・・・・
 ζ(5-)=1- 1/(3^5) + 1/(5^5) - 1/(7^5 ) +・・・・
    ・
    ・
「なっとくするオイラーとフェルマー」(講談社、小林昭七著)


2003/9/15    < 偶数ゼータと奇数ゼータ類似物の対称的な式を発見 >

 偶数ゼータと奇数ゼータ類似物は、対称的な美しい関係で結ばれていることを発見しました。
その美しい関係式をまず書きます。次です。


 πx・{ (2^(-1)-1)ζ(0)x^0 + (2^1-1)ζ(2) x^2 + (2^3-1)ζ(4)x^4 + ・・}/{ (1-2^1)ζ(0)x^0
                                 + (1-2^(-1))ζ(2) x^2 + (1-2^(-3))ζ(4)x^4+・・}

               =2^1ζ(1-)x^1 + 2^3ζ(3-) x^3 + 2^5ζ(5-)x^5 + ・・・      --------@


  まさに驚愕としかいいようのない式です。
 HPでの表記のし方はわかりにくいかもしれません。ぜひ紙の上に書き下してください。
 そこに不思議な対称性が現れていることに驚かれると思います。

  なおζ(1-)、ζ(3-)、・・は、次の意味です。私は、”奇数ゼータの類似物”(下記の「追記」参照)と呼んでいます。
 ζ(1-)=1- 1/3 + 1/5 - 1/7 +・・・・
 ζ(3-)=1- 1/(3^3) + 1/(5^3) - 1/(7^3 ) +・・・・
 ζ(5-)=1- 1/(3^5) + 1/(5^5) - 1/(7^5 ) +・・・・

 @の導出の道筋を示しておきましょう。
[@導出の手順]
 このページ上方で導出した次のAとBの2式を利用します。

 πx/sinπx = 2{ (1-2^1)ζ(0)x^0 + (1-2^(-1))ζ(2) x^2
                        + (1-2^(-3))ζ(4)x^4 + (1-2^(-5))ζ(6)x^6 + ・・・ }  ----A

 (πx/2)/cos(πx/2)= 2{ζ(1-) x^1+ ζ(3-)x^3 + ζ(5-)x^5 + ζ(7-)x^7 ・・・} --------B

 このA、Bとさらに高校で出てくる公式 sin2x=2sinx・cosx  ----C
の三つを組み合わせます。Cでx=tπ/2とおけば、sinπt=2sin(πt/2)・cos(πt/2) となりますが変数をxに戻せば、
      sinπx=2sin(πx/2)・cos(πx/2)

となります。これより、 sin(πx/2) ={(πx/2)/cos(πx/2)}÷ {πx/sin(πx)}
という式が簡単に導けるので、この右辺にAとBを代入すると、

 sin(πx/2)
 ={ζ(1-)x^1 + ζ(3-) x^3 + ζ(5-)x^5 + ・・}/{(1-2^1)ζ(0)x^0 + (1-2^(-1))ζ(2) x^2 + (1-2^(-3))ζ(4)x^4 + ・・}

という式が出ます。さて、上式で、x/2=t とおいて変数変換すると(そしてt をx に戻すと)
 sinπx
 ={2^1ζ(1-)x^1 + 2^3ζ(3-) x^3 + 2^5ζ(5-)x^5 + ・・}/{(1-2^1)ζ(0)x^0
                            + 2^2(1-2^(-1))ζ(2) x^2 + 2^4(1-2^(-3))ζ(4)x^4 + ・・} ---D
が出ます。
 ここで、Aの式で sinπx=・・としたものをDに放り込み、少し変形すれば@が導かれます。
終わり。

 @をもう一度書いておきます。

 πx・{ (2^(-1)-1)ζ(0)x^0 + (2^1-1)ζ(2) x^2 + (2^3-1)ζ(4)x^4 + ・・}/{ (1-2^1)ζ(0)x^0
                                 + (1-2^(-1))ζ(2) x^2 + (1-2^(-3))ζ(4)x^4+・・}

                              =2^1ζ(1-)x^1 + 2^3ζ(3-) x^3 + 2^5ζ(5-)x^5 + ・・・ 

  ながめるだけでなく、ぜひ紙に書いてみてください。
 偶数ゼータと奇数ゼータ類似物の間に、こんな見事な対称性がひそんでいたのです。


追記2003/9/17
 上の”奇数ゼータ類似物”は、ディリクレのL関数の一種なのでは?との指摘をYさんがしてくださいました。
調べると、たしかに、そうであることが判明しました。
 持っている加藤和也さん(京都大学教授)の著書「解決!フェルマーの最終定理」(日本評論社)によれば、
ディリクレのL関数は、
  1- 3^(-s) + 5^(-s) - 7^(-s) +・・・・ や 1- 2^(-s) + 4^(-s) - 5^(-s) +・・・・
をその例とするもので、一般には、ディリクレ指標χに対して、L(χ, s)=Σχ(n)・n^(-s)  (Σはn=1〜∞)
とおいてディリクレのL関数と呼ぶのだそうです。

ですから、私の定義したζ(1-)、ζ(3-)、・・などは、じつはディリクレのL関数の一種だったのです。
そんなこととはつゆ知らず、ひたすら考察をかさねるうちに、重要な関数に到達してしまっていたようです。




2003/9/21       < (πx)^2/(cosπx)^2の式 >

 上で、(πx)^2/(sinπx)^2の式を求めましたが、では(πx)^2/(cosπx)^2はどうなるのか?との疑問から、
これも求めました。結果だけを書きます。
 
 (πx)^2/(cosπx)^2=2{ 1(2^2-1)ζ(2) x^2 + 3(2^4-1)ζ(4)x^4 + 5(2^6-1)ζ(6)x^6 + ・・・ }
                                                 ( -1/2 < x < 1/2 )

 あるいは、同じことですが、次のようにも表現できます。
  
 (πx/2)^2/(cos(πx/2))^2
          =2{ 1(1-2^(-2))ζ(2) x^2 + 3(1-2^(-4))ζ(4)x^4 + 5(1-2^(-6))ζ(6)x^6 + ・・・ }
                                                  ( -1 < x < 1 )

 上の<πx/cosπx でも美は崩れていない!>での結果と、またサインの結果も合わせて載せておきます。

 (πx)^2/(cosπx)^2=2{ 1(2^2-1)ζ(2) x^2 + 3(2^4-1)ζ(4)x^4 + 5(2^6-1)ζ(6)x^6 + ・・・ }
                                                 ( -1/2 < x < 1/2 )

 (πx/2)^2/(cos(πx/2))^2
          =2{ 1(1-2^(-2))ζ(2) x^2 + 3(1-2^(-4))ζ(4)x^4 + 5(1-2^(-6))ζ(6)x^6 + ・・・
                                                  ( -1 < x < 1 )

 πx/cosπx= 2{2^1・ζ(1-) x^1+ 2^3・ζ(3-)x^3 + 2^5・ζ(5-)x^5 + 2^7・ζ(7-)x^7 +・・・}
                                                 ( -1/2 < x < 1/2 )

 (πx/2)/cos(πx/2)= 2{ζ(1-) x^1+ ζ(3-)x^3 + ζ(5-)x^5 + ζ(7-)x^7 ・・・}
                                                  ( -1 < x < 1 )

 πx/sinπx=2{(1-2^1)ζ(0)x^0 + (1-2^(-1))ζ(2) x^2
                        + (1-2^(-3))ζ(4)x^4 + (1-2^(-5))ζ(6)x^6 + ・・・ }
                                                  ( -1 < x < 1 )

 (πx)^2/(sinπx)^2=2{-1・ζ(0) x^0 + 1・ζ(2) x^2 + 3・ζ(4)x^4 + 5・ζ(6)x^6 + ・・・ }
                                                  ( -1 < x < 1 )

ζ(1-)、ζ(3-)、・・は次の通りで、これらはディリクレのL関数の一種です。
 ζ(1-)=1- 1/3 + 1/5 - 1/7 +・・・・
 ζ(3-)=1- 1/(3^3) + 1/(5^3) - 1/(7^3 ) +・・・・
 ζ(5-)=1- 1/(3^5) + 1/(5^5) - 1/(7^5 ) +・・・・
   ・
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数学の研究へ




  次は、日本が誇る世界的数学者 広中平祐氏が、20世紀中には解けないだろうといわれていた世紀の大難問
「特異点解消の問題」を解いた瞬間です。感動的なので、長いが引用します。

 「・・私はそれから数ヶ月にわたって取り組んでみたが、解決のめどは杳(よう)として立たなかった。
 その頃、こんな言葉を耳にした。ハーバード大学のボット教授がいった言葉だが、

  「スリープ・ウィズ・プロブレム」(Sleep with problem.)

  という言葉である。難しい問題を解こうとする時、その問題と一緒に寝起きするような気持ちで取り組む
 ことが大事だというほどの意味だ。

  私はその間、文字通り特異点解消の問題と寝たのであるが、とはいうものの一層、その難解なことを
 自覚したにすぎなかった。まさに、やればやるほど底知れぬ迷界に引きずる込まれていくような感じだった。
  私はひとまず、問題から目を離してソッポを向くほかなかった。
  ・・・・・・・・・・・
  私が再度、問題解決へ挑戦を試みたのはパリから帰ってハーバード大学の博士号をとった(1960年6月)
 後だった。その頃、私はブランダイス大学の講師になっていた。
  私はこの時も、本腰を入れて特異点解消の問題と取り組んだが、またまた兜をぬがなければならなかった。
  しかし、ブランダイス大学に勤めてから二年目、助教授になったころから、少しずつだが独自のアイディアが
  生まれてきたのである。

  だが、ちょうどその頃、私は、いささかがっかりさせられることに遭遇した。
  フランスの数学界を代表する一人に、シュバレーという人がいた。
   ・・・・・・・・・・・・・・・
  そのシュバレーが、特異点解消の問題に対して否定的である、ということを私の知人から知らされた
 のである。
 その時、私はザリスキー教授とは違ったやり方で一次元の特異点を解消し、その方法にたって理論を
 発展させれば、おそらく二次元、三次元の特異点解消もできるに違いないと考えていたのである。
 その頃、シュバレーは、
 「特異点解消の問題がそう簡単に解けるわけがないよ。たとえ誰かがいつかそれを解いたとしても、
 その頃にはもう、代数幾何学の一般論が大いに発展していて特異点解消の価値はうんと少なくなって
 いるだろう」といったらしい。
  ・・・・・・・・・・・・・
 そう楽々と解ける問題でないことは、二度体当たりして撥ね返された私が、誰よりも強く思い知らされて
 いる。それだからこそ、私は一層、挑戦のしがいのある問題だと闘志を燃やしていたのだが、「役に立た
 ない」などと決めつけられては、これはもう、立つ瀬がないのである。がっかりしないわけにはいかなかった。

  それより後のことだが、敬愛するグロタンディエクからも、やはり私は、張り詰めた気持ちを挫かれるような
 言を浴びたことがある。
  ある時、私はケンブリッジからパリに帰るグロタンディエクを空港まで見送った。空港へ向う車中、私は
 グロタンディエクに、特異点解消の話をした。 

  いつになく、その時の私は興奮していたようである。無理もない。その時には、私は二次元、三次元の
 特異点解消を独自のやり方で成し遂げ、あとはこれだけ解けさえすれば、四次元もまず大丈夫だろうと
 いう段階にまで来ていたのだ。
 ・・・・・
  私は、一瞬も口を休めず、夢中になって隣席のグロタンディエクにしゃべりかけた。
 が、私の期待は見事に裏切られたのである。

  グロタンディエクは、別段、喜んだ様子もなかった。それどころか、私の熱弁の大半を左から右へと聞き
 流していたのである。合槌をほとんど打たなかったのはそのせいだし、何よりも最後に口をついて出た言葉が、
 私の話にほとんど耳をかさなかったよき証拠であった。
 彼はいったのである。
 「四次元の特異点解消が大嘘であることを証明するには、かくかくすればよし・・・」と。

 私はさながら鉄槌で頭を殴打されたかのような衝撃を覚えた。
 他の人ではない。半年間であるが直接に私が師事した、しかもこよなく敬愛しているグロタンディエク
 がいう言葉である。あいた口がふさがらないというのは、このことであろう。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  しかし、こうしたことが重なる一方で、逆に私を励ましてくれる人もいたのである。

 その一人は、ザリスキー教授だった。ブランダイス大学で教鞭をとるかたわら、ハーバード大学の
 セミナーに出席していた私は、ある日、構内でザリスキー教授とすれ違った。私は彼が相変わらず
 多忙の身であることを知っていたから、挨拶の言葉を交わしただけで行き過ぎようとした。

  だがその時彼は、私を引き止めて、「今、何をやっているのか?」と、聞いた。
 「特異点の問題を再考しています」
 私が答えると、ちょっと考えてから、
 「You need strong teeth to bite in.」(お前は歯を丈夫にしておかなければならない)

 こう彼はいって、私の肩を叩いたのだ。
 ・・・・・・・彼が日本語を知っていたら、「褌を締めて、かかれ」とでもいうところであろう。
 ザリスキー教授は、自ら取り組んだ問題であるだけに、特異点解消の重要性を知悉(ちしつ)して
 いたに違いない。いずれにせよ、ありがたい激励の言葉であった。

  私はまた、フランスのトムという数学者が、ある時いった言葉も、一つの発奮材料として、ときどき
 自分にいい聞かせていた。

 「代数幾何をやっている連中は、みんな腰抜けばかりじゃないか。だってそうだろう?
 手強い問題とみると、この問題を解いても意味がない。そういいだすのが代数幾何学者の
 常套手段なんだからね。」

  暴言ではなく、トムのこの指摘はある程度まで当たっていた。私は、彼のいう「腰抜け」にはなるまいと
 心に誓った。

  ブランダイス大学に就職して二年目、こうして決意を新たにして特異点解消に取り組んでから しばらく
 たったある夜、私はついに最後の一線を解き、問題解決の全貌をつかんだのである。

  前述したように、この「特異点解消」は、一次元、二次元、三次元の段階まではザリスキー教授に
 よって解明されていたわけである。私がやろうとしたのは、一般次元まで解明できる理論を創ることで
 あった。私は、私の信条とする「根気強さ」で何度かチャレンジし、ついにザリスキー教授とはまったく違う
 方法で一般次元まで解明したのである。

  私は受話器を取って、ザリスキー教授の自宅の電話番号を力強く回した。誰かに報告しておかなければ、
 昂ぶった気持ちがどうにも鎮まらない気がした。

 「すべての次元で解けそうです」
 電話を取ったザリスキー教授に、私はいった。ザリスキー教授の声はいつもと変わらず冷静そのものだった。
 どちらかというと口数の少ない彼は、その時も、「慎重にやるんだぞ」こう短い忠告を与えただけで、
 受話器を静かに置いた。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  」  「学問の発見」(広中平祐著、佼成出版社)
                                                  註:”・・・・・”のところは略しました。


  この数ヵ月後、広中氏は「標数0の体の上の代数的多様体の特異点の解消」という長い論文を完成する。
 (論文は電話帳の厚さに匹敵する長大さ)
 1970年、特異点解消の偉業に対し、広中氏は数学界のノーベル賞と言われるフィールズ賞を受賞した。
                                                            M.S.