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あーとだいありー 2004年1月後半
1月31日(土) 第4回 千展=ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図A) メンバーに水野スミ子さん(全道展会員、札幌)がいるので、彼女の教室展かと思いましたが、一般の「教室展」から想像される絵画展をはるかにうわまわるエネルギーに圧倒されました。 1点1点、完成度がどうのこうのというより、荒っぽい力が渦巻いているのです。作品は、熱い抽象で、段ボール紙をはりつけるコラージュを多用しています。 佐藤徳子さん「萌芽」や吉村千加子さん「光線」は、画用紙8枚をつなげて支持体にしています。だいたい200号相当だと思います。「光線」は、山火事のなかの白い裸木を思わせる絵ですが、魚の骨みたいにも見えます。 佐藤さんは「上弦」が、粗い布などをはりつけて、マティエールのおもしろさを狙っています。 同様の効果は、宮下拡さん「戦禍」の2点にも見られます。こちらは、貼り付けた段ボールや英字紙が、支持体をはみだしています。 また、伝法常子さん「樹皮」は、絵の具をぬった紙をばらばらに切ってもう一度紙に張るという技法で、はでな画面をつくりだしています。 永井漾子さん「連なる」の連作は、曲線が躍る抽象画です。 抽象ばかりではなく、自然のかたちにヒントを得たとおぼしき作品もあります。 赤石操さん「seed」は植物の種、真田由美子さんの作品は貝殻が、モティーフのようです。藤田博子さん「根元」も、植物のかたちがもとになっているように見えます。いずれも、かたちそのものの持つ生命感が主眼になっているようです。 こうなってくると、水野さんのエネルギッシュな絵が、むしろおとなしく見えてくるほどです。水野さんは11点の、題のない作品をならべていますが、例年の全道展出品作にくらべるとより抽象的になっています。アクリルの3点は、鍵盤楽器がこわれて中からクラッカーのように色とりどりの配線が飛び出てきているように見えますが、なにを描いているのでしょうか。 2月1日まで。 栗井典子作品展 ロシアからの贈り物 ペテルブルグ日記=ギャラリーユリイカ(中央区南3西1、和田ビル2階 地図B) これまで、墨による平面を発表してきた栗井さんですが、2度にわたる長期のロシア滞在をへて、画風が一変。コラージュと水彩で、色もふんだんにつかわれています。はしり書きのように色がたくさんつかわれています。 2月1日まで。 第41回はしどい展=札幌市資料館(中央区大通西13 地図C) 北星学園女子高校美術部恒例の絵画展。 昨年は、大作がすくなくて、北星女子らしくない展覧会でしたが、ことしは顧問の波田浩司さんが 「描け!」 と厳命したらしく、3人が、1.9メートル四方の大作に挑戦しています(ベニヤを2枚つなげたもの)。 近藤真衣さん(1年)「孤独」は、大都会の中のフクロウがモティーフ。あえて薄塗りです。 坂本奈津実さん(同)「be」は、きみょうに歪んだ室内に、後ろ向きの人物がひとり。手前にある黒い物体は、靴です。 吉田章代さん(2年)は、題にまよっていました。力強く走る馬がモティーフです。 ほかに、七々木恵美理さん(同)の「孤独」などが印象にのこりました。 波田さんも「羽の舞う日」(S100、F100)2点を出品しています。 2月1日まで。 ■01年「はしどい展」 ■02年(2月3日の項) 金沢一彦版画作品展=カフェ・ルネ(中央区南4西22 地図D) 金沢さんは札幌在住の版画家(道展などの会員)。童心あふれる銅版画を制作します。 今回は、版画13点と、ミニサイズ11点が展示されています。 筆者の記憶のことですからアテになりませんが、新作もまじっているようです。 「銀河へ」は、この作家に多い、乗り物を真横からとらえた奥行きのない構図の作品で、馬鉄がモティーフ。1輛(りょう)だけの車にいろいろな人が乗っています。御者がシルクハットをかぶり蝶ネクタイをしているのがなんとなくユーモラスを感じさせます。 「氷河」も、きみょうな動物と雪上車からなる隊列がすすんでいくのを真横から見た構図で、変わった鳥や天使なども配され、いちだんと幻想味の濃い作品になっています。 2月3日まで。 ■03年9月の個展 ■03年1月の個展 ■02年9月の個展 圓山彬雄の住宅 うちのそとからそとへ=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) めずらしく建築の展覧会。 100を超す住宅の模型が、スクリーンや、資料写真・図面などとともに、たくみに配置されています。会場全体のレイアウトという点でいえば、出色の展覧会ではないかと思います。 筆者は建築は門外漢なのですが、展示されている家の模型や写真はみな個性的で、冬場はどうしても室内に閉じこもりがちな道民に、なんとか外との接点をもってほしい−という建築家のねがいがつたわってきました。 ただ、会場奥にあったふるい洋風住宅の模型と写真は、この建築家のものではなく、田上義也ら先達のものです。こうした貴重な建築が近年どんどん姿を消している現状へのアピールというのは理解できますが、作者が明示されていないのは気になりました。 2月1日まで。 で、以下しるすことは、たんなる貧乏人のひがみなので、気にしないでください。 今回にかぎったことではないのですが、建築の展覧会というのは、いつも或る種のむなしさのようなものを感じてしまいます。 展示されている100を超す模型を見るのは、たのしいのですが、自分の住んでいる家より小さいものはほとんどありません。たまに、瀟洒な小住宅があると、こんどは敷地がやたらと広かったりします。 一般の勤め人にとって、建築家に設計を依頼して一軒屋をたてるということ自体が、ほとんど縁のないことのように思われるのです。 ご自身が手がけた家の場所を赤い点でしるした札幌市内地図が貼ってありましたが、中央区には26個も点がついているのに、白石区、清田区には1つずつしか貼ってありません。宮の森、山鼻、円山、真駒内(ここは南区)といった地区に集中しています。 こういう地区の、高層住宅ではなく、1戸建てで住んでいる人というのは、しょせん自分には関係のない人なのだと思います。 もっとも、絵や彫刻など美術品も、お金のある人しか買えないのも事実で、こないだ見た或る日本画家の大作なんぞ1戸建てなみの値段がついていましたが、そういう例外的な高額品をのぞけば、家よりはまだ安いですよね。 展示された、うつくしい家の写真を見るたび、ため息をつくしかないのでした。 |
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1月27日(火) まず、「Sスクール写真展」と「大川紅世の心展」という、若手のふたつの写真展について、展覧会の紹介を書きましたので、お読みください。 DESIGN LABORATORY EXHIBITION 2004=コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C) 北海道教育大学札幌校 視覚・映像デザイン研究室展(伊藤隆介さんの研究室です)の学生の展覧会。 映像が多いので、ちょっと時間がよけいにかかりますが、おもしろいです。 院生の大島慶太郎さんは、実験的な路線。パラパラ漫画は、「次の字がずれます」という字(ちょっとちがうかもしれない)がずれていく、コンセプチュアルアートのパロディーみたいなのがあって、わらえます。 佐竹真紀さん「ひととき」は、これまでの写真プリントによるアニメーションの技法をさらに洗練させた新作。彼女の場合、技法に目が行きがちですが、さいきん一貫して「超身の回り」ばかり題材にしているのも、筆者には気になるところです。 4年生では、大村敦史さん、広島祐介さん、近藤寛史さんらが、学生離れした完成度の映像を出品しています。近藤さんの「over dose」は、いつもながら音楽もカッコいい。ラストのほうは、凝視していると、ピカチュウのアニメみたいにたおれそうになります。 平面では、小川陽さん(4年)の「SEKAI」がおしゃれ。荒野のなかにコンビニがぽつんとあるというのは、世界のようであって、ちっとも現実味がないところがおもしろいと思います。 指導者の伊藤隆介さんは「版」シリーズの壁掛け型を出品しています。 詩人のフォトグラフィの世界 河村悟写真展『目覚めると雷鳴の巣のなかにいた』=ギャラリーたぴお(中央区北2西2 道特会館 地図A) 道外の方で、詩の朗読やステージの構成など幅広く活動している人のようです。 今回は「写真展」と銘打っていますが、カメラはつかっていません。印画紙の上に直接モノを載せて露光させるフォノグラムという技法をもちいています。 ちょっと見ると、水たまりの氷を取ってきて、写したようにも見えます。半透明なさまざまなかたちが、幻想的な光景をつくりだしています。 31日まで。 第21回大洋会道支部展=札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A) 左は、加我幸子さん(札幌)の大洋会賞受賞作「人間讃歌 congratulation」です。 搬入前の追い込みの時期に右腕を骨折したという加我さん。「力を抜いたのがよかったのかも」と言いますが、大変だったにちがいありません。 加我さんの絵では、現代の人間疎外の象徴として用いられることの多い携帯電話ですが、この作では、左の母親が、みどりごを抱きながら、笑顔で話しています。 大阪に住んでいる娘さんに、初孫が生まれたそうで、すなおなよろこびが絵に反映しているのでしょう。 画面では見えませんが、英字紙がコラージュされています。文字を読むと、阪神の快進撃だったり、松井選手の活躍だったりで、日本人のスポーツでの華々しい活躍への祝福もこめられているようです。 右は、植野徳子さん(同)が、これまでの静物画から一転して、「初めて描いた」という風景画「雨の日の景」。 やはり画面ではわかりづらいのですが、白いパステルで雨の線がさーっとひかれていて、よいアクセントになっています。 この絵が良いのは、右下のあじさいのような花、中央の木々、そして奥の島のような形が、それぞれ交響しあっていることだと思います。深みのある色彩も、空気感と奥行きをあらわすことに成功しています。 「家が中島公園のちかくにあるので、その風景をイメージして描いた。中央の青い部分は、池とも、地面とも、どのように解釈していただいてもかまいません」 とのことです。 岸巖さん(室蘭)「叢」は、都会を、黄色をメーンにして描いています。スタティックですが、構図にここちよいリズムがあります。 中村香都子さん(札幌)「時空に遊ぶ」は、青と茶で彩色された女性がテーブルの上にあごをつけてほっとしている場面。女性よりも、手前のテーブルがなんとなくつくりだす空気感が主役のようです。 瀬川裕子さん(同)「Communication」は、女性二人をモティーフにし、こなれた画面になっています。赤いソファ、白いカーテンの、画面への導入も、よく考えられていると思います。 蓑嶋キミさん(石狩)「追憶」は、パワフルな厚塗りが特徴。「夫婦木」は、金、銀の絵の具もつかって、巨木を描いています。 風景をよくする江頭洋志さん(室蘭)は「臼杵大仏(阿弥陀三尊)」という、地味な題材をえらびました。 ほかの出品者は次のとおり 綿谷憲昭、佐藤智恵、松平靜枝、岡田和子、鈴木ナオ、山崎まり子、豊岡猛、高橋みゑ、大井哲也、大浪靜江、大滝衣美、秋野隆、手塚陽子、増田雅恵、原田富弥 ■第20回展(画像あり) ■第19回展 ■第18回展(画像あり) 第5回グループF展=同 毎年恒例、札幌の道展会員・豊田満さんの引率で、欧州にスケッチ旅行した際の絵と、帰国後完成させた油彩の展覧会。 今回は、世界遺産として名高いモンサンミッシェル、港町のオンフルール、モネの「睡蓮」の庭園があることで知られるジヴェルニーなどに行ったようです。 時間に追われるツアーではなく、じっくりと腰を落ち着けて写生に励めたようで、じつにうらやましい旅行であります。 伊澤修子・杉村忍第1回姉妹展=同 さいきん、アイヌ民族の伝統的な工芸を紹介する展覧会があちこちでひらかれています。 アツシ織、マキリといった昔からあるもの、Yシャツに刺繍したものなどさまざまです。 それぞれの展覧会にも、出品者による個性のちがいがあるようです。 以上、31日まで。 つづきはあす。 |
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1月25日(日) 中村仁美・渡邉可緒理写真展=Live&Cafe Tone(北区北23西10) 昨年、写真展「aeroscape」をひらいた若手ふたり。 中村さんのモノクロ。風景写真は、孤独な木や空、螺旋階段などをうつして、ますます露出はアンダーぎみ。でも、これが、心象なのだなってことは、よくわかるように思います。 カラービーンズみたいなカラフルな画面を構築する渡邉さんも、今回はやや心象風景っぽく、さまざまなモノを超アップで撮っています。「a loom」は、ガラス容器の中に入ったポプリが被写体。すごくほっと和める写真でありながら、どこか不安で孤独な心を感じさせます。 ただ、会場のつごうもあるんだろうけど、ひとり7、8点しかないのはちょっとざんねん。 31日まで。 会場は、地下鉄南北線北24条駅の4番出口を出て、ひたすら西方向にあるくと、つきあたりに「清美屋食堂」が見えてきます。そのすぐ裏です。駐車場4台分あり。 近年はやりの、古い民家を改造した2階建てのカフェで、下のフロアでは定期的にライブもやっています。 なによりすてきなのは、窓の外に、広大な北大第二農場がひろがっていること。藻岩、手稲の山々も見えます。なにせ「清美屋食堂」にはその名も「一望山荘」というアパートがついているくらいです。西日がはいる時間帯もうつくしそう。 ただしこの広大な土地も、いずれは北大の最先端研究をになう各種施設が建設されることが決まっています。 |
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1月24日(土) ’04月菴の杉吉貢−裸婦素描画展=月菴(中央区南3西26 地図D) 杉吉さんは滝川の画家。舞台美術など、幅広い活動をしています。 今回は、ふるい民家を改造したとおぼしき、知る人ぞ知るギャラリーが会場。作品はオール裸婦という、これまたおもいきった構成です。しかも、モデルはかなりの美人で、ナイスバディのようです。 かもいのあたりにはりめぐらせた長い和紙の巻紙に20体あまりの、寝そべったり体をくねらせたりさまざまな格好をした裸婦がさらりとした墨の線で描かれています。また、墨画、水彩の裸婦およそ20点が展示されているほか、陳列しきれなかったたくさんの水彩画もあります。 額装は1点もなし。竹の棒のあいだに、珈琲袋のような粗い布を渡し、糸で絵の四隅を固定する−といった、「軸装」とよぶにはあまりにユニークな方法で展示されている絵ばかりなのもおもしろいです。 25日まで。 新聞各紙によると、写真家のヘルムート・ニュートンさんが、交通事故で亡くなりました。 1920年ベルリン生まれ。読売新聞によるとユダヤ系だそうです。オーストラリアに亡命し、戦後はパリやモンテカルロを拠点に世界的に活躍しました。とくに、ファッション、ヌードで名高く、「エル」「マリクレール」「ヴォーグ」「プレイボーイ」などで仕事をしています。 代表作は「ビッグヌード」のシリーズで、これは、4人のうつくしく無表情な女性たちが、左のページでは最新のモードを身にまとい、右のページではまったくおなじ体勢で、全裸でいるというものです。女性の衣服の下を見たい−という男性の欲望を、これほどまでにあけすけに物語った写真は、以前にはなかったものでしょう。 晩年も、非常にでかい写真集を出版、見本が、今はなきパルコブックセンターの「アートロゴス」に飾ってあったことがありました。 |
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1月23日(金) 水谷のぼる作品展=喫茶&BARアルペン(中央区大通西11 登記センタービル) 小樽在住の彫刻家ですが、今回は彫刻が3点、クレヨン画が12点という構成。 絵は、山好きの人らしく、「山の道具たち」や「春香山銀嶺荘」(大小2点)、ふたりの人物を描いた「食卓にて」などです。 クレヨンというと子どもの画材というイメージがありますが、重ね塗りができるなど、なかなかおもしろい発色をしています。 もっとも、どの絵も、輪郭のなかをぬりつぶすような描法で描かれ、陰翳や奥行きにとぼしいところは、好みがわかれそうです。クレヨンは、発色はおもしろくとも、立体感を出すのにはむいていないのかもしれません。 24日まで。珈琲400円。 第13回教職員OB美術展=札幌市資料館(中央区大通西13、地図C) 1991年11月に第1回がひらかれて以来、毎年ギャラリーノルテでひらかれてきたということですが、ちょうど1年前に同ギャラリーが閉鎖されたため、例年よりやや時期を遅らせ、会場もうつしての開催となりました。 絵画52、版画3、彫塑1、工芸8、書8、写真9の計81人が1点ずつを出品しています。 道展や全道展などの会員クラスもけっこういますが、せいぜい20号ほどの小品です。 また、教職員OBを網羅しているわけでないのは、もちろんです。 絵画では、斎藤洪人さん(全道展会員)「東大雪」や香取正人さん(新道展会員)「秋」のように、ふだんとなんらかわらない作品を出している人もあれば、種市誠次郎さん(道展会員)「りんごとビンなど」のような、道展の作品とはちがう、おだやかな静物画もあります。 坂口清一さん(全道展会員)「雪肌」は、青の上に白を塗り、白い絵の具の層をひっかいて描いたユニークな作です。 今本哲夫さん(新道展会員)「冬の犬吠崎」は、題から受ける印象と異なり、わりとおだやかな印象の風景画です。 ほかに、香西富士夫(道展会員)「はな」、辻井秀郎「野菜売りの少女(インド・ブッタガヤ)」、村谷利一(道展会員)「岬」といった名前がみえます。 筆者の知らない人では、小田正男さん「川辺の工場(江別)」が、いかにも寒そうな大気のなか煙突から立ちのぼる煙を描いて安定した力量をみせています。わずかにピンクを帯びた空の色がきいています。山田定雄さん「懐古」は、けっして手慣れた筆致ではなさそうですが、レンガつくりのサッポロビール工場を、丁寧に、いとおしむように描いていて、好感をいだきました。 また、小尾喬さん「岩内港をたずねて」は、魚網を入れる樹脂製のケースのスリットまで描き出した、リアルなタッチが目をひきます。 版画は、浅野ナさん(全道展会員)が、ネパールの新聞紙を支持体にした作品を出していますが、版画というよりクレパス画に見えます。 彫塑は、小野健壽さん「森の番人」のみ。 工芸は、伊藤恵さんの人形が、目録では「24面体」になっていますが、じっさいにならんでいるのは「雪ん子」でした。 加藤五十和さん「付しこの夢」は、ふたつの壺を鎖でつないだめずらしい作品。三浦哲さん「札幌の土で」は、焼き締めの壺ですが、題のとおりだとしたらこれまためずらしいですね。 中村矢一さん(道展会員)は伝統的な技法による「器(鍛金)」。道展に出しているレリーフよりも職人魂みたいなものが感じられて好きです。 25日まで。 OIL&COPPER=さいとうギャラリー(中央区南1西3、ラ・ガレリア5階 地図B) 飯田キリコ、石井裕子の両氏による展覧会。イラスト的な絵ですが、なかなか一筋縄ではいかない個性があります。 石井さんはリトグラフ。手彩色のものも多くあります。「cuisine」など、厨房にコックさんがあふれ帰って、それはそれはにぎやかです。 飯田さんは油彩が中心ですが、ひとくちにイラストといえない、妙な感じがあります。子どもたちが水の中で泳いでいる「CHILDREN OF THE WATER」、裸の男のすぐ前に裸の少年が立っている場面を描いた「表面張力」など、いったいなんの情景を描いたのかわからないところがおもしろいと思いました。 おなじ会場で、4人によるイラスト展「4 pieces of puzzles」もひらかれています。 25日まで。 |
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1月22日(木) 第14回 新孔版画札幌展=スカイホール(中央区南1西3、大丸藤井セントラル7階 地図B) 「プリントゴッコ」による、毎年1月恒例の版画展。 ますます表現技法が多彩になってきているように感じました。「プリントゴッコ」イコール年賀状という認識は、どうやら完全にあらためなくてはならないようです。 たとえば、高畑滋さんの「花萌ゆる」はクレヨン画のようなタッチだし、藤原守さんの「凱旋門−パリ−」などは淡彩スケッチを思わせるし、千葉定是さん「風の相」の2作や長澤惠美子さん「深海創」などは木版による抽象画のようだし、とにかく表現の幅が多彩なのです。 審査員をひきうけるなど、指導的な役割を果たしている渡会純价さん(札幌。日本版画協会監事、全道展会員)「風の図」は、銅版画のよう。といっても作風はがらりと変わり、薄い色の地に、黒い線が軽妙に躍ります。ミロやクレーを思わせつつも、独自の世界です。 道外勢でも、コンテの太く粗い筆跡を思わせる線が効果的な沼尻康之さんの「北の踏切」、絵の具のマティエールがおもしろい安齊孝さん「八幡坂」、モノクロのコラージュのような杉原賢司さん「追憶」など、さまざまなタイプの作品がありました。さらに「ザ・テンコク」というカテゴリーもあり、その幅広さにはおどろかされずにはおれません。中国、台湾からの出品も目立ちました。 以前北見にいた太田道子さん「MOON GARDEN」は、月影をうつす水色の水面と無人のベンチが印象的な、心なごむ一作です。 見代ひろこ展=同 油彩19点、日本画3点、版画7点からなる、東京在住の画家の個展。同時開催の「新孔版画札幌展」にも毎年出品しています。 油彩は、写実をちょっとラフにしたタッチで、人物、風景、静物などを描いています。光のとらえかたに、感覚の鋭さを発揮しています。 「武蔵野の春」「早春の宿場町」など、おだやかでなつかしい風景もいいですが、老夫婦の日常をスナップ写真のようにとらえた「ふたり」は、しみじみ味のある1枚。おばあさんの持つ金色の大きなやかん、障子からさしこむやわらかな光…。 一方、版画は、万人にうけいれられそうな細密なタッチです。森の中に腰をおろす麦藁帽子の少女のちかくに白馬がちかづく「湖畔」といった、叙情的な作品もあります。 日本画は3点とも人物画です。 いずれも25日まで。 |
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1月21日(水) きのうのつづき。 まず、「展覧会の紹介」に「春陽会道作家展」「楢原武正展」を追加しました。こちらもお読みください。 みのりの庭=道立文学館(中央区中島公園 地図F) 人形劇の舞台美術などに活動の幅をひろげている札幌の造形作家・小林重予さん。箱シリーズの発表や「札幌の美術」への出品などはありましたが、本格的な個展としては札幌ではじつに7年ぶりとなるそうです。 南国の植物を思わせる有機的な立体の数々(ほとんど新作の24点)からなるインスタレーション「みのりの庭」を中心に、 ・ロシア沿海地方の少数民族ウデヘ人に会いに行ったさいの絵日記、 ・02年8月から毎日1枚ずつはがき大の大きさに描いている日記画 ・「憧れの記憶」と総タイトルのついた平面27点 ・装丁した本の原画 などなど、バラエティーに富んだ展示内容になっています。 さらに、先日同館でおこなったワークショップ「『想いの種』を育てる」に参加した23人のボックスアートとテキストも展示されています。種をテーマにした文章は、詩人やプロの作家もびっくりのイマジネーションがゆたかにつづられていて、おどろかされました。 インスタレーションは、小林さんによると、さいきんガラス用バーナーを使ってガラスを作品に導入しているのだそうで、よいアクセントになっています。 絵日記は冊子型ですが、自由に見ることができます。小さなマトリョーシカや、飴まで貼り付けてあって、小学校のころに作った自由研究のノートを思い出しました。 平面がこれほどたくさんならぶのは、小林さんの展覧会ではめずらしいと思います。「憧れの記憶」は、インドネシア・バリ島の伝統的な画法によるもので、竹を割って筆代わりにし、すりへっていくと尖端をけずっていくそうです。すずりのかわりにココナツの殻を使って墨をすって描かれています。 日記画のほうは、全国各地からじぶんあてに投函したものもあります。切符や石が貼り付けられたり、作品のエスキスが描かれていたり、とにかくユニークです。 「これ、毎日かくの、たいへんじゃない?」 「ぜんぜん。楽しくて。どうしても枚数があわないのは、1日2枚かいちゃった日があるみたいなのよね」 と笑う小林さんですが、お客さんがあまりにすくなくてびっくりしているそうなので、ぜひ見に行ってください。 個人的には、これまで小林さんの作品には、どうも根付的というか手工芸的な感じがしたのですが、今回はそういう「こまかくしあげる」的な意図を超えて、小林さんがほんらいもっている向日性、肯定的なあかるさに満ちていて、ついつい長居をしたくなるたのしい展覧会になっています。 24日午後2時からタップダンスショー、25日午後1時半から小林さんのセミナー、同3時15分から朗読会があります。 25日まで。 New Point=大同ギャラリー(中央区北3西3、大同生命ビル3階 地図A) 昨年までの「お正月展」を主宰していた畑野天秋さんが 「若い衆、これからはまかせたぞ」 と言ったかどうかはわかりませんが、運営を後輩にひきつぎ、あらたにスタートしたのが、このグループ展。ジャンルや所属を問わない、いい意味でのいいかげんさは、この展覧会にもひきつがれているように感じられました。 やはり中心になっているのは若手で、40代以上は、藍色に塗った枝をたばねて床の上にたたせている金子辰哉さん(写真の奥に見えます)と、廃品を利用した彫刻2点「春」「秋」を出品している橘井裕さんだけだと思います。 右の写真の手前に見えるのは、若手彫刻家・中村修一さん「reproduce」。ブロンズかと思った黒っぽい立体は、レンガ粘土です。ようするに、やきものなんですが、ずっしりと存在感があります。さわってもいい作品です。 右にちらっと見えるのが、やはりさわってもOKの、八子晋嗣さんの木彫「ゆきぼっこ」で、楽器としても使用できるよう、ばちも2本ついています。 その奥にあるのが、渡邊慶子さんの版画「September 雲間より」「December thin ice 薄氷」。画面を上下に二部する構図がはっきりしてきたようです。 さらにその奥が、水戸麻記子さん「カウボーイ」。この写真では絵柄は見えませんが、化石に馬乗りになった男の周囲を、仮面をかぶった半裸の男が、らっぱや木琴やたいこを持って練り歩いているという、ユーモラスな油彩です。水戸さんの絵って、やっぱりなんかヘンです。それがたのしいんだけど。 奥の正面にあるのが前川アキさん「Stream」。ピンクの色面のなかを赤い線が縦横に走る、スマートな画面構成。もう1点「Balance」は青系が主体です。 國松希根太さんは初参加。流木を素材に、かるく着彩したユニークな壁掛けの彫刻です。 下のフロアでは、八子直子さんが風変わりな壁掛け型インスタレーション「空日記」を展開しています。糸やフェルト、虫ピンなどをつかった、女性の日記のような作品です。 また、最近とみに活溌な発表をつづけているヴェトナム人のDam Dang Laiさんが、ふすまを支持体にした抽象画「初夢」と、アフリカの民族彫刻をおもわせる「TOTEM」を出品しています。 ほかに、石川亨信、小林光人、澁谷美求、高野理栄子、友野直実、本田詩織、山田恭代美の各氏も出品しています。 27日まで。 ■お正月展2002年 ■中村修一・前川アキ2人展 (2003年) ■友野直実・中村修一展 (02年) ■水戸麻記子展 MITORAMA ] (02年) ■Dam Dang Lai展 (03年) (以上すべて画像あり) |
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1月20日(火) 千住博展=さっぽろ東急百貨店9階特設会場(中央区北4西2、地図A) 現代日本画壇を代表する、ニューヨーク在住の画家による個展。 札幌のデパートの中では、三越、丸井今井、大丸が美術展に熱心で、東急、西武、ロビンソンはあまりやらないので、今回の個展はちょっと意外な感じがします。 版画が20点、日本画が19点。 代表的なシリーズである「ウォーターフォール」も数点ありました。 これはおもしろいです。大きなものは、絵の具を上から垂らしているみたい。モリス・ルイス(米抽象表現主義の画家)につうじるものがあります。 といって、やみくもに垂らしているのではありません。水が落ちる水面は、場所によって微妙にずれています。瀑布の位置が、場所によって手前から奥へとずれていることで、絵画空間にそれとなく奥行きが生じているのです。 この絵を、複数枚、かぎられた空間に展示することによってインスタレーション的な効果が生まれるのでしょう。 もう1つ、おもしろいと思ったのは、鹿や寺院をモティーフとした作品の描法です。「風の銀河」など、陰翳がなくてフラットな塗り方だなー、と思ってたら、日本画もおなじで、リトグラフかシルクスクリーンみたいな描き方なんですよね。それぞれのモティーフが、あえて平板に描かれています。「竹林」なども、奥行きを欠いた画面構成の中で、いかに一瞬のうごきをあらわすかに、主眼がおかれているように、筆者には思えました。 21日まで。 |
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1月19日(月) 「天地(あめつち)」 竹内敏信写真展=富士フォトサロン札幌(中央区北2西4、札幌三井ビル別館 地図A) 風景写真家として活躍する竹内さんが、四半世紀にわたって撮りつづけてきた日本の風景のなかからよりすぐった51点を展示しています。 著者自身による文章には「風景に神宿る」などという題がついています。また、「日本の渓流の水質の美しさは世界最高だと思います」などというキャプションもあって、どうもナショナリスティックなにおいがしてこないでもありません。ご本人は意識なさっていないでしょうが、「日本の風景は世界に冠たるうつくしさをもっている」という言説は明治以降に(たぶん三宅雪嶺あたりから)はじまった一種のイデオロギーであります。だいたい、「日本」っていうくくりかたをするのも、「風景」を独立した対象として見るのも、自明のことではないですからね。 ただ、むつかしいことはぬきにしても、たしかに、うつくしいんですよね。「雲の彼方に」なんかは、雲海と富士山の取り合わせが横山大観の絵みたいでどうにも大げさですけど、紅葉をとらえた「火炎滝」、氷のうごきを長時間露光で写してふしぎな世界を現出させた「湖面の妖魔」(屈斜路湖)、雪をかぶった連山とふしぎな雲を微妙な光のもとに撮った「妖雲残照」(知床連山)など、どれをとっても、大自然の生んだ一瞬の美がみごとに撮影されています。歌登(宗谷管内)の写真に「梅雨の頃」という題をつけるのはどんなものかと思うんですけど。 とりわけ、素人が撮ると、だいたい 「どうも実感より暗い」 「ウロコみたいで、きれいでない」 ということになりがちな桜の写真がばっちり撮られているのはさすがとしかいいようがありません。散って、地上をながれていく桜の花びらを撮った「花流 豪雨の後」(明治神宮)もユニークです。 20日まで。 東京の富士フォトサロンでは終了。20−25日名古屋、3月2−12日福岡、4月16−22日大阪の富士フォトサロンに巡回します。 中川多理 人形展=ザリガニヤ(中央区大通西12、西ビル 地図C) だいたい3つのスペースに大別されていまして、右には「見通し」と題された、ガラスと木の箱に入った作品がおいてあります。人形の両ひざの部分と、頭部だけをくみあわせた作品で、添えられた蝉の抜け殻がアクセントになっています。 中央には、中川さんとしてはめずらしい、少女の関節人形です。 左側には、過去の展示や、作品制作時のようすを撮ったサービス版の写真が、「37 水面下」「48 ふたご」などと題されて、壁にピン止めされています。よく見るとただのスナップばかりではなく、わたしたちが見ていない、試験制作時の写真とか、コラージュなどもあります。人形の「現在」と「過去」が、多重的に表されたユニークな展示だと思います。 31日まで。 ■3月のグループ展(画像あり) |
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1月17・18日(土・日) 『器』前むらみちこ・見上潔美=SAGATIK(中央区北1東4、サッポロファクトリー1条館3階 地図G) 見上さんのほうは、天目、粉引などのオーソドックスな茶碗。 前むらさんのほうは、猫や天使のイラストが器の表面いっぱいに描かれています。支持体が、たまたま紙じゃなくて、土だったという感じ。和風の絵付がしてある陶芸はときおりありますが、こういうのはめずらしいと思いました。 25日まで。 榎木孝明絵画展 アジア“光と風の原風景”=ほくでん料理情報館MADRE(中央区北1東4、サッポロファクトリー1条館3階 地図G) 有名な俳優の水彩スケッチ。バングラディッシュやスールー海など、ふつうなかなか観光客の行かないところのなにげない風景をとらえているのには、好感が持てました。30日まで。 佐藤雅英「札響を撮る」=札幌市写真ライブラリー(中央区北2東4、サッポロファクトリー・レンガ館3階 地図G) うーん…。 芸術関係者の肖像写真などでは定評のある佐藤さんなんですが…。 もうしわけないですが、筆者の目には、今回の写真展には、首をかしげたくなるというか、ふきだしたくなるところがありました。 これは、佐藤さんのせいではないような気がします。 蝶ネクタイつけて、いかにも芸術やってますみたいなマジメな顔して、カッと眼をみひらいている−。そんな肖像が、21世紀にはいかにも時代錯誤というか、浮いて見えるんですよ。 まあ、女性はわりとやわらかい表情をしてましたが。 男性の時代がかった顔つきには、クラシック音楽という分野の特性が象徴されているかのようです。 まあ、筆者にはどうでもいいことなんですけど。 18日で終了。 |