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展覧会の紹介

楢原武正展 大地/開墾 2004年1月13日(火)〜25日(日)
ギャラリー大通美術館
(中央区大通西5、大五ビル 地図A

 廃物をもちいた巨大なインスタレーションで、道内の現代美術に確たる存在感をしめしてきた札幌の楢原武正氏。
 市内の貸しギャラリーでは最大級の面積となるギャラリー大通美術館で、3年ぶりとなるインスタレーションの個展をひらいた。

 筆者は1995年以前の作品は写真でしか知らないのだが、物量のもたらすおどろき、という観点からすると、やはり、1997年の旧リーセントギャラリー、98年のリーセント美術館(いずれもCAIの前身)、99年のCAI(現代芸術研究所)における個展のあたりがいちばん強烈だった。
 とりわけ、99年は、ギャラリー空間全体を、廃品によるトンネルに作り変えた。廃坑の坑道を思わせる巨大な作品に、度肝を抜かれたことは、いまも鮮烈な記憶として残っている。
 また、3年前におなじ会場でひらかれたインスタレーションは、「宇宙樹」を思わせる全体のフォルムに感動をおぼえた。

 今回の個展は、物量という点では、楢原さんの個展としてはやや物足りなさがのこる。もちろん、会場を埋め尽くす廃品の量は、ものすごいし、1942年生まれの作家にこれ以上の物量作戦を求めるのも、やや筋違いという気もするのだが。
 作品のアクセントになっているのは、6本の柱。5本が、むかって左側のほうに、横一列にならび、もう1本がやや離れたところに立っている。
 さらに、メーンの作品と離れたところに、さらに1本の柱が屹立している。
 この柱を見るとわかるのだけれど、柱は錆びた小さな釘のおびただしい集積からなっている。
 楢原さんの作品はただ廃品を運び込んだだけではなくて、それぞれの“部品”が日常の膨大な行為の集積からなりたっているのが特徴なのだが、そのことがよくわかる柱なのだ。
 この細い柱は、02年夏のCAIの企画グループ展「安堵感」でお目見えし、昨秋の北海道立体表現展でも、今回と同様、廃品の海の上に5本の柱がならんでいた。

 ただし、地面の廃品は、立体表現展もふくめたこれまでの発表と、いささか様相が異なっていたというのが、筆者の印象である。
 丹念に針金を巻いた木片などの数が減って、ただの金属板や、黒く塗った空き缶などの割合が増えたように思うのだ。
 その結果として、“行為の集積”的な部分が、いまひとつ見えにくくなっているような気がする。
 つまり、「大地/開墾」という題を連想させる部分がさらにすくなくなって、近未来の廃墟のような様相がつよまっているようにも思われるのだ。
 それは、見る者に、いまだおとろえぬ驚異的なパワーで圧倒しつつも、或る種のニヒリスティックな感慨を与えずにはいられない。
 題名に象徴される肯定的な面と、暗い照明のなかにうごめく否定的な面。そのいずれにも偏らぬごく細い道の上を、楢原氏の芸術は疾走しているのかもしれない。

■楢原武正展 大地/開墾2001-2
■CAIの企画5人展「安堵感」(02年夏)
■03年2月の個展
■祭りフェスタ(03年7月グループ企画展)
■北海道立体表現展(03年9月)