提訴にあたって
2003年2月17日
放射能のゴミはいらない! 市民ネット・岐阜
代表・兼松秀代
核燃料サイクル開発機構は 1998年10月1日 動力炉・核燃料開発事業団(動燃)から改組されました。以下動燃時代の事業を「旧動燃」、改組以降は「核燃」とします。「動燃中部事業所」は現在の「核燃・東濃地科学センター」です。
【経過】
〈核燃に公開請求→地域、地名に関わるものは非公開〉
2001年4月13日
旧動燃が高レベル放射性廃棄物の処分予定地選定という具体的課題をもって 、全国各地で地質を調べた「広域調査地表調査シート(昭和61年度および昭和 62年度)」を、核燃の情報公開指針(動燃改革で打ち出された指針)により公開請 求。…@
4月17日
「広域調査地表調査シート(昭和63年度)」を公開請求。…A
旧動燃が高レベル放射性廃棄物の処分地選定という具体的課題をもって全国的 に地形や地質を調査した「東海・CA地域リモートセンシング調査」も公開請求・・・ B
5月7日
@とAの公開通知
6月5日
Bの公開通知
8月28日
@とAの公開準備完了通知(公開は8月31日から。地名にかかわる情報はマス キング)
2002年9月9日
Bの公開準備完了通知(公開は9月10日から。請求から一年半もかかった理由 は非公開部分のマスキング作業のためでした)
@、A、Bとも、地域や地名に関わるものは非公開でした。
〈法人情報公開法であらためて公開請求→再び非公開〉
10月1日
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下、法人情報公開法 )が施行
11月1日
法人情報公開法により@とBを情報公開請求
11月12日
「四国西部地域リモートセンシング調査」「CB地域リモートセンシング調査」「CC 地域リモートセンシング調査」「中国東部・CD地域リモートセンシング調査」を公 開請求…C
12月2日
@、Bについて法人文書開示決定通知書
「サイクル機構への信頼を損なうことにつながり、事業の適正な遂行に具体的な 支障を及ぼ すことになる」という理由で、前回と同じく、地名などは非公開にな りました。
12月11日
Cについて法人文書開示決定通知書
12月2日の開示決定通知書と同じ理由で地名などは非公開になりました。
【公開文書からわかったこと】
処分候補地が実際に選定されていた
1) @とAの
「広域調査地表調査シート」
29道府県が高レベル放射性廃棄物処分地選定の調査対象地域とされ、570地 点で調査が実施されていました。ただしAの調査は1988年度になされ、旧動燃 が処分地選定事業を行われなくなった年であるため提訴の対象外です。(北海 道の調査は1988年度に実施)
2) BとCの各地域「リモートセンシング調査」
調査目的は「高レベル放射性廃棄物地層処分のための地質環境等の適性調 査」であること。
調査の結果、「高レベル放射性廃棄物地層処分における地質環境的に良好な地域」、「適正地 区」、「地質環境的に良好な地域として望ましい候補地」等の表現で選定されていたこと。
調査方法はランドサット画像や航空写真を使って断層など地下の状況を反映するリニアメ ント(線上構造)を抽出し、活断層の規模や地形、河川などの地形の解析を行いました。 この結果を既存の文献と対比して、現地での調査内容を決めました。現地調査を経て下記の地域が処分候補地として選定されました。
しかし、報告書に県名が書かれていないために、県が特定できない地域もあります。
【公募との矛盾】
「東海・CA地域」は愛知、岐阜、静岡、長野を対象としながら、愛知と静岡は処分候補地としての適正に欠ける判断され、除外されました。高レベル放射性廃棄物処分実施主体・原子力発電環境整備機構は現在、全国の自治体を対象として処分地の公募を行っています。公募の根拠は核燃が1999年、国に報告した「将来十万年程度にわたって十分に安定で、かつ人工バリアの設置環境および天然バリアとして好ましい地質環境がわが国にも広く存在すると考えられる」(『わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性』)です。核燃の国への報告は、本報告書の処分候補地選定状況と明らかに矛盾すると考えます。
【文書の存在が分かった経緯】
1.土岐市への情報公開請求
核燃が過去に何をしていたのか知るために、土岐市に核燃に関する情報開示請求し、2000年11月13日土岐市の資料が開示されました。核燃が土岐市に提出した資料の中に、『中部事業所の業務概要』(日付なし。但し記載内容と添付の電気新聞記事から1988年1月と判断される)がありました。そこには
「中部事業所では、国の定める方針に沿って処分予定候補地の選定に資するため、
日本全国を対象とした地質環境調査」を実施しており、1988年度も調査を継続する
とありました。
内容の重大さに驚き、調査の時期、調査内容と結果など確認の必要を感じました。
2.質問主意書と答弁書で確認
知り合いを通じて社民党の福島瑞穂氏に政府に対して質問主意書を出してもらうようお願いしました。質問主意書は2001年2月26日、提出していただきました。政府からの答弁書は2001年4月13日付けでした。
3.答弁書で文書の存在がはじめて明らかに
旧動燃が処分地選定の事業をするということは原子委員会の報告書にもいてありますが、どんな調査をしているのかはこれまで分かっていませんでした。
答弁書では
1)処分地選定のための調査実施、報告書名と全国約570地点で実施していたことが判明
報告書の名称:
「広域調査地表調査シート(昭和61年度および昭和62年度)」 「広域調査地表調査シート(昭和63年度)」
2)同時期に別の方法で調査した22冊の報告書の存在が判明
(22冊個々には名前があるが、全体を統括した名称がないため「22冊の報告書」とします。)
の存在が明らかになりました。
国民の知らないところで処分場の選定が既に始まっていたことに心底驚き、怒りを覚えました。これが日本の原子力政策とりわけ高レベル放射性廃棄物処分政策の典型だと感じています。
【問題点ーなぜ提訴するのか】
@原子力行政の透明性
闇の中で行われた過去の処分候補地選定を開示させたい。
原子力事業は自主・民主・公開で進めているという国や事業者のことばとは裏腹に、国民が知って当然の情報を、知らされていませんでした。秘密裏に行われた処分候補地選定に驚きと怒りを持って提訴します。
知らせないことに原子力政策の問題の根幹があります。いま非公開処分取消を求めて提訴することが、今後の情報公開に影響を与えることを期待します。
A理由になっていない不開示理由
現在処分地選定事業をしている原環機構は「核燃からは公開された資料以外、引き継がれていない。公募の形を取っている以上、過去の調査に基づいて、候補地を打ち出すことはない」(中日新聞2003年2月14日)と明確に述べています。それならば、この文書が公開されてもどこも困ることはないはずです。
また、核燃はすでに処分地選定業務をしていないので地点や地域の公開が核燃の事業に支障をきたすこともありません。「地権者等の関係者との信頼を損なう」としていますが、もともと地権者の了解を取って調査したわけではないので、最初から信頼関係などないはずです。
B司法の場においても原子力はタブーではなくなった
東京電力の不正隠しも3274人が告発人になり、代理人は119人になりました。今年1月告発は受理され、東京地検特捜部が担当します。もんじゅ控訴審名古屋高裁金沢支部における住民側勝訴の判決があります。司法の場に置いても原子力はタブーではありません。
今回の情報公開訴訟も原子力に関わるものですがタブーなどありません。法人情報公開法に基づき不開示決定取消判決が得られるものと確信しています。
最後に、積極的に代理人を引き受けてくださった新海聡弁護士に感謝し、取消判決を勝ち取るため闘います。
以上
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