原告勝訴
情報公開取消訴訟差し戻し審名古屋地裁判決報告
(2004年12月19日)
旧動燃(現核燃)が1986年から88年にかけて行った高レベル放射性廃棄物処分候補地選定報告書等の部分非公開決定の取消を求め、名古屋地裁で争っていた裁判の判決が2004年12月17日にあり、原告の訴えが全て認められ、勝訴しました。
◆主文
1 被告が原告に対してなした、別紙目録1ないし3記載の一部不開示
決定のうち、同目録1記載の「調査対象地区を具体的に示すことに
つながりうる情報」、同目録2及び3記載の「調査対象地域等を具
体的に示すことにつながりうる情報」をそれぞれ不開示とする部分
を取り消す。
2 訴訟費用は、差戻前の第1,2審及び当審を通じ、被告の負担とす
る。
(※旧動燃の職員氏名も不開示ですが、職員の氏名の公開は提訴
の対象外です。原告が求めた全ての開示が命じられました。)
◆核燃主張
非公開部分が開示され、調査対象地区や調査対象地域等が明らかになると、それらの地域に高レベル放射性廃棄物が持ち込まれるなどの誤解や疑念を生じさせ、ひいては核燃の事業である高レベル放射性廃棄物ガラス固化体の中間貯蔵施設立地に重大な影響を及ぼすおそれがあるので法第5条4号に該当する。
すでに訴訟に関連して新聞やテレビが、核燃が処分候補地を選んでいたなどと誤った報道をした。また、原告も核燃が現在も処分地選定をしているなど誤解し、それをHPに掲載し閲覧に供した。
◆原告主張
そもそも、情報を公開したことによって生じる「誤解や誤った報道」は情報を公開することと法的に因果関係を持つ事柄ではない。
被告が主張する「おそれ」は確率的可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が必要である。しかし被告の言う「誤報」は「誤報」ですらなく、「誤報のおそれ」を不開示理由とすること自体に合理的根拠がない。
新聞やテレビが高レベル放射性廃棄物処分候補地を選んでいたなどと報道したことは、調査目的、調査方法、報告書の文言に照らして常識的な表現で誤報道ではない。
原告も誤解はしていない。被告の「誤解」とは被告の活動を批判する日弁連や市民団体の活動を言うもので、合理性はない。
被告の不開示の本音は反対運動による事業の困難さを指す。しかし反対派に対する説明や説得の負担を事業遂行の支障とはできない。事業を巡り意見が対立する事業は公開されないことになり、情報公開法の第一条の目的を没却することになる。
◆判決は上記原告の主張を認め、公開を命じました。
◆判決の意義
1.情報公開法の意義を改めて説く
情報を公開して国民に説明する責務を全うし、国民の批判を仰ぎ理解を得るように定めたのが情報公開法の趣旨である。国民の理解を得ることが困難になるという理由で情報を非公開することは、情報公開の説明責任を放棄する等しいと厳しく指摘した点。
2.原子力には情報公開が不可欠
原子力は、国民生活に与える影響が大きく多様な議論があるからこそ、業務内容について国民の理解と信頼を得るために情報公開が必要である。情報公開によって疑念や誤解、批判的な報道、運動などが予想されるとしても、それは開示されたことによるものではない。
※判決の意義としてあげた部分は主として判決の28ページから29ペー
ジをご覧ください。PDFのポイントとした部分です。
◆原告の願い
1.被告の主張する「誤報」は誤報ではないと、事実認定で負けまし
た。控訴することなく情報を公開すべきです。
2.原子力行政や事業者は積極的に情報を公開していると常々述べて
いますが、現実にはこの訴訟のように重要な情報や必要な情報は
公開されません。
今後はこの判決をふまえ、情報公開法の趣旨に則り、知らせたい
情報だけでなく全ての情報を公開し、批判を受けるところからスタ
ートべきです。
判決文 PDF (2856KB)
判決文ポイント抜粋(205KB)
◆勝訴、その後
・2005年1月、控訴断念。原告勝訴確定。
・2005年1月28日 原告への提訴報告書5冊と約570地点の地質調査データシート開示
・
原子力機構:「法人文書不開示処分取消請求事件に係る対象報告書の原告への開示について」
・2005年3月30日 関連報告書の開示
・原子力機構:「
地層処分にかかわる調査報告書の公開について」
1月、3月分を併せた
「適正地区等に関する自治体リスト」(処分候補地自治体リスト)
◆処分候補地調査で核燃理事長、岐阜県知事に謝罪
ところが、虚偽の説明!!
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