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内田康夫2

   タイトル一覧

(注)【 】内はネタバレ。すでに読んだ方は反転させて読んでくださいね。

 天河伝説殺人事件

新宿の高層ビルの前で男が毒殺された。大阪へ出張に出掛けたはずのサラリーマンが何故東京で殺されたのか? さらに彼は吉野天河神社のご神体を模した五十鈴を持ってた。男と天河神社をつなぐものは何なのか?

一方、能の水上流宗家の後継者が舞台で謎の死を遂げる。それに続いて宗家が吉野の山の中に消えていった・・・宗家を最後に見たのが浅見光彦だったことから、事件の謎に関わる事になった。

能の歴史と吉野の歴史、神気に満ちた山奥の神社。宗家に隠された秘密、華やかな道具立てのミステリーです。



 皇女の霊柩

東京で殺された妻籠出身の女性、その3日後には馬籠で東京出身の女性が殺された。2つの殺人をつなぐ和宮の祟りとは何か?

昭和33年に行われた和宮の遺体の発掘調査と、中仙道を通って江戸へ下向する和宮の為に馬籠に残されていたという棺の謎とは?・・・
となるはずなんですが、あまり和宮に関する謎は出て来ません。有吉佐和子さんの「和宮様御留」で語り尽くされていますからね。



 崇徳伝説殺人事件

主な舞台は京都。前半は老人ホームの不正に関する事件なので社会派です。

怨霊の取材で京都を訪れた浅見光彦は取材先の崇道神社で、人違いから老人ホームの不正に関係した証拠写真を渡される。その後、本来なら情報を受け取るはずだったライターと、情報を渡した女性が殺されて発見された。そしてホームの経営者までも・・・。後半の事件にちょっと崇徳上皇が絡んできます。

崇徳上皇の母・待賢門院璋子という人はたいへん興味深い人です。白河法王の養女で鳥羽天皇の皇后になったにもかかわらず、白河法王の子を産んでしまいます。白河法王と鳥羽天皇は祖父と孫という関係。生まれた子が、あの崇徳天皇。

白河法王は崇徳天皇を即位させる為に鳥羽天皇を強引に退位させるわけですが、この退位後がまたすごい。上皇となった鳥羽と璋子は1つの御殿で暮らし始めるのですが、そこに白河上皇まで同居してたんですね。

寝殿作りの寝殿に璋子、西の対に白河、東の対に鳥羽が暮らしていたと言われています。逆妻妾同居です。しかも3人は仲が良くて、特に鳥羽と璋子はラブラブ。次々に子供が生まれます。その1人が後白河天皇になります。

しかし、白河上皇が亡くなるとこの関係も終わり、鳥羽上皇は17歳の美福門院得子という女性に夢中になります。この得子がなかなかの政治家で、鳥羽と璋子の間を裂き、崇徳と後白河を対立させ、時代は保元の乱へとなだれ込んでいきます。

待賢門院璋子は平安貴族文化の最期の大輪の花といえるでしょうね。京都の法金剛院は璋子が再興した寺院です。とても美しいお寺なので、機会があったら行ってみてくださいね。



 遺骨

テーマは脳死問題と臓器移植法です。
淡路島へ向かうフェリーの中で、浅見光彦は訳あり気な40代の男と出会った。東京から来たというその男は、淡路島に父の遺骨を納めに来たと言う。だが数日後、その男が殺され、友人と名乗る男が寺に遺骨を引き取りに来た。

しかし、遺骨はすでに親類という女性に引き取られた後だった。その女性の行方がわからない上に、名前を使われた友人までが殺される。遺骨の中身は前医師連盟会長の過去に関係する物らしいのだが・・・。

殺人事件の謎よりも事件の背景に隠された大きな謎の解明が主でした。浅見光彦もストレートに事件を追っています。今回は政治的な問題が絡んでくるので、陽一郎兄さんの出番が多い。
嬉しいです〜(^^)

↓既読の方は反転させて読んでね。

この医師連盟会長のように犯罪を立証できない、政治的・モラル上の行動で糾弾されるべき人間が、あきらかに刑事事件として裁かれるような犯罪を犯したら、物事がはっきりしていいでしょうね。被害者には気の毒ですが。



  箱庭             

浅見ファミリーのファンにはとても楽しめる1冊。
いつも事件に関わることを母からきつくとがめられている光彦が、
珍しく雪江夫人公認で真相究明に乗り出す。
しかもその事件には浅見陽一郎も深く関わっているというのだから、
楽しめるシーンの連続です(^^)
終盤のデパートのシーンなんか、思わずにやけてしまった私なのでした。

発端となった事件は宮島と岩国という、安芸周防の有名観光地で起こります。
特に岩国の描写は魅力的で、すぐに旅に出かけてしまったくらいでした。
光彦氏と同じ宿に泊まりましたけど、
小説のとおり、眺望のいい宿で大満足でした。
錦帯橋も想像以上に素晴らしいものだったし、
岩国はお気に入りの観光地になりました。


 不知火海

殺人事件ではありません。
アパートの隣の住人が、謎の荷物を預けたまま失踪。その住人の過去に関する謎解きです。それなりにまとまっているので、気軽に読める1冊です。



 はちまん

八幡神社を巡っていた老人が殺された。その老人の息子が浅見光彦の姪の学校の教師という関係から、浅見は老人の死の謎を追う事になる。

旅と歴史の仕事もしているフリーの女性カメラマン小内美由紀は、長野で取材中、八幡神社を巡っているという老人と出会って話を聞いた。どうやら老人は八幡神社にまつわる人探しをしているらしかった。

一方、小内美由紀の婚約者は文部官僚であったが、サッカーくじ法案を巡る省内の対立から高知県教育庁生涯学習課長に左遷されてしまった。そこでは前任者が謎の事故に遭っており、裏にはさらに深い企みが隠されているらしかった。

珍しく冒頭から黒幕が登場する展開。すべては終戦の時の"八幡の誓約"に関係してくるという内容です。戦争と政治家、戦争責任と戦後教育、難しい問題をテーマにしていますが、書かれている内容は実に冷静で公平で納得できるものでした。日本人は100%肯定か否定かを要求する事が多いけど、「反対だけど、ここは認める」という姿勢も大切ですよね。

最近の内田作品は政治的な巨悪をテーマにすることが多いので、ラストの犯人の扱いは難しいですね。不満を持つ方も多いようですが"小説"としての役割を考えると、私はこれで良いと思いました。



 神戸殺人事件

神戸に取材で来ていた浅見光彦は、取材相手の松村明男と夜の神戸の街を歩いている時に1人の女性を救った。その女性はヤクザ風の男に追われていたのだが、浅見に救われた後、名乗りもしないで姿を消してしまった。

しかし翌日、松村が殺され、浅見は容疑者として警察に連行されてしまう。さらに芦屋の豪邸に取引に来ていた美術商が殺される事件が起こる。2つの事件をつなぐのは、あの夜の謎の女性であった。

例によって、浅見光彦が逮捕されそうになって正体がばれると言うお約束もありますし、悩み多い美しい社長令嬢も登場します。でもその他は意外な展開で、珍しくなかなか先が見えませんでした。それというのも、ちょっと変わった事件なんですよね。

だからこの結末は私は納得できなかったです。この手の事件はきちんと刑事事件として判決を下した方がいいのです、そうしないと禍根は断てません。このままだと、また亜希は同じようなことで苦しむことになりそうな気がします。横山も無残です。



 讃岐路殺人事件

雪江夫人が四国巡礼中に交通事故で記憶喪失になってしまった。さいわい東京に戻った雪江夫人は無事記憶を取り戻したが、ある日、新聞で事故の加害者である女性が自殺したことを知る。

自殺の原因が自分の事故にあるのではないかと心配した雪江夫人は光彦を高松へ送りこんだ。光彦がたずねた女性の実家には、なぜか刑事が張り込んでいて、自殺の裏にはさらに深い事情があるようだった。

浅見光彦が全面的に活躍するので楽しい1冊。特に後半はスリリング。
陽一郎兄さんは影でしか登場しないけど、それもまたカッコイイです。



 記憶の中の殺人

会社社長の財田啓伍が殺された。財田家の墓の隣が内田家の墓だったことから、浅見光彦は事件に関わることになる。しかしなぜか兄・陽一郎は財田家の事件の話になると警戒するそぶりを見せた。今回の殺人事件は27年前、軽井沢で起こった出来事に発端があるらしかったが、その出来事には陽一郎ばかりでなく光彦も関係しているらしい。

幼年時代の浅見光彦や陽一郎兄さんの初恋が描かれている点で、興味深い作品です。謎の妹、佐和子のエピソードも語られてます(^^)

ところで、「財田」は「たからだ」だったんですね。ずっと「ざいた」と読んでました(^^;)



 竹人形殺人事件

第1章がいきなり「浅見家の醜聞」なのである(^^) 
浅見陽一郎は、衆議院法務委員会のメンバーである瀬木山に、料亭に呼び出される。用件は、福井県に作られた大観音像の用地取得に関する不正問題の捜査に、手心を加えてほしいというものだった。

もちろん陽一郎は断るが、そこで瀬木山側が出してきた切り札が、亡くなった浅見の父親の愛人問題だった。その証拠に持ち出されたのが、浅見の父親から愛人に贈られたという越前竹人形。陽一郎は、この竹人形の入手ルートを探るため、光彦を福井へ送り込む。しかしそこに待っていたのは、人形師の殺人事件だった。

浅見兄弟の連携プレーということで、好きな1冊です。特に第1章、父親の醜聞と、それを知った母親の気持ちを推察した陽一郎の、ファザコン・マザコン炸裂が楽しい。実は一番動揺してるのは、陽一郎本人なんですよね。さらにブラコン疑惑まで発覚。大丈夫か〜兄さん?



内田康夫   

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