やっぱり伊良部先生には癒されますね〜
既成概念・固定観念を打ち破る発想は、ミステリーで見事なトリックにだまされたような爽快感がある。もちろん伊良部本人は常識を打ち破ろうとしてるわけじゃなくてやりたいようにやってるだけなんだけどね。
凡人はそれが出来ないから患者になるしかない(笑)
なんたってダイエットに取り付かれた人に「太ってみれば」なんてとんでもないことを言ってしまうんですよ〜
ふつうの人がそんなことを言ったら絶対嫌われるけど、あの伊良部先生に言われると、なぜか素直に聞いてしまったりするのよね。
今回、伊良部のもとを訪れるのは最近マスコミで話題になった有名人を連想させる人々。そのせいか前2冊に比べると伊良部の暴走振りがおとなしく感じます。現実の出来事の制約にしばられているからかな?
新聞社会長で人気球団オーナー、株で儲けたIT社長、年齢を感じさせない美貌で理想の母親と言われる女優。マスコミに対しても強気で、怖いものなどないと思われる彼らを伊良部の元に通わせる原因は何か?(笑)
「オーナー」と「カリスマ稼業」の症状は想像できるけど、IT社長の心の病には笑ってしまいました。
最後の1編、タイトルにもなっている「町長選挙」には有名人は出てきません。東京都の離島の選挙の話。人口2500人という、小さくも大きくもない中途半端な島。伊良部先生にかかると物事が単純になるという、わかりやすいけど実行は難しい話。
そういえいば伊良部一郎の父親が医師会理事ということが出てきてから、伊良部先生もなんだか水戸黄門や浅見光彦みたいになってきました(笑)
いや、キャラは全然違うけど(笑)
「あの医師会理事伊良部先生のご子息!」とバレるところなんか特に。
でもそういう後ろ盾があると、どこでも入れるし誰とでも会えるから便利だよね。
次は泉田首相も診てもらってたりして(笑)
30代前半の働く女性5人を描いた短編集。
今の時代だと女性が一番揺れ動く世代。
言ってみれば六道の辻の中心に居るようなもの(笑)
それも後戻りできない分かれ道。
女性なら登場する5人の誰にでも共感できるところがあるのではないでしょうか。
女性の悩みを描いた小説は苦手という方も、書いているのが男性作家なので、
どろどろ度が少なく、読みやすいところもあります。
「ヒロくん」
武田聖子は大手不動産会社入社14年目で課長に昇進する。
部下はほとんど年下だったが、しかし一人だけ年上の男性社員が居た。
彼は何かと聖子に反発し、ついには見下す態度を取り始めた。
「女房とホステスと部下しか女を知らない男」いますね〜
上下関係でしか女性と応対することが出来ない男たち。
でも男同士でも上下関係でしか付き合えない人もいるから同じような気もするけど。
というより男同士ならお互いが年功序列に忠実だから軋轢が起きないって事かな?
「マンション」
石原ゆかりは大手保険会社広報課勤務の34歳。
同じ年の友人がマンションを購入したことで焦りを感じ、
自分もマンション購入を決意する。
しかしローンを抱えると、様々な制約に縛られることになる。
はたして不動産購入は自分を抵当に入れることなのか?
でも本当にマンション購入を宣言すると周囲は協力的になるものなんだろうか?
経験がないからわからないけど、面白いね。
「ガール」
滝川由紀子は広告代理店勤務の32歳。
20代の頃はお立ち台ギャルとして華やかな日々を送っていたが、
32歳になった今は「女性の歳は世間が教えてくれる」という状態になっている。
今まで当たり前に受け取っていた若さに付随する特権。
それが一気に奪われていく焦り。
そんな由紀子にとって不可思議な存在が先輩の光山晴美。
38歳にしてCanCanギャル(笑)
年下の男の子たちには「若作り」「おばさん」と揶揄されるが、
本人は気にも留めずにギャル系ファッション爆走中。
誰もが一度は通る道?(笑)
大人の女性になるのはなかなか厳しい道なんですよ。
それに日本人にとって大人のおしゃれは難しい。
若い時は何とかごまかして着こなしていた「洋服」というものが、
どうにも顔やスタイルと遊離してくる。
だから開き直った人は外出や正装は和服と決めてしまったりするのよね。
「ワーキング・マザー」
子育ては伝家の宝刀なのか?(笑)
平井孝子はシングルマザー。自動車メーカー勤務。
子育てにあわただしい時期は総務に居たが、
ひとり息子の小学校入学を機会に営業部へ復帰した。
一人で子供を育てていることを言い訳にはしたくないと、
仕事中心でがんばっていたが、自分の企画を横取りされそうになり、
ついに子育て中という切り札を使ってしまう。その結果は?
人間どんな立場でも1日は24時間なんだよね。難しい問題ですね。
こういうことも少子化の一因なんだろうな〜
「ひと回り」
小坂容子34歳。老舗文具メーカー営業部勤務。
入社12年目の彼女は新入社員の指導を担当することになった。
やって来たのは超イケメン22歳。
一気に活気付く女子社員。
その気持ちはひと回り年上の容子も同じ。
自制しながらも気持ちを募らせる容子は・・・
若くてきれいな男の子は、やっぱり見てるだけでも楽しいもの(^^)
この本はラムさんにお借りしました。
大好きな奥田作品なんだけど、「父親が元過激派」という設定が引っかかって
読もうかどうか迷っていたんですよ。
遅れてきた活動家の話というだけで、なんとなくストーリーが想像できる気がして。
実際に読んでみてどうだったか。
第1部はまったく予想通りの展開で、「やっぱりこうなっちゃうよね」と
思ってしまったけど、第2部に入って俄然面白くなりました。
父親のキャラクターも、いつまでもセクトや紛争にしがみついている人物ではないと
わかって来るしね。
特に集団が苦手というところで、とても共感(笑)
はい、私も苦手です(^^;)
マスゲームも嫌い。だから代表戦は行かない。・・・あ、話が逸れた(^^;)
もちろん現代では社会体制の存在は否定できないんだけど、
戦いは個人でやる方がいい。
そして戦いは自分より大きくて強いものとやるもの。
間違っても近所のおばさんなどと戦わないように(爆)
読んでいて、「子供はリアリスト」という言葉も思い出しました。
子供は力を持たないから現実に適応するしかない。
そんなに簡単には洗脳されないけど、生活習慣には簡単に染まるから、
そこは気をつけないとね(笑)
やっぱり南の島はいいね。
これがノースバウンドだと悲劇になりそう…
大学時代にイベント会社を興しパーティを主催して稼ぐヨコケン。一流企業に就職しながらミスを繰り返し、お荷物社員と言われているミタゾウ。成金娘の美女クロチェ。
同じ25歳の3人が絵画詐欺の利益10億円を横取りしようと計画するドタバタ系クライム・ノベル。
とにかく気軽に読める本。ただなにかもの足りないと感じてしまうんですよね。
10億円をめぐる駆け引きは面白いし、争奪戦も迫力があるのですが、「この作品ならでは」という驚きの要素が少し足りない。
そんな中で面白いのはミタゾウの存在。
キリバス共和国でのんびり暮らすのが夢で、ひとつのことに集中すると他の事はすべて頭の中から消えてしまう“過集中症”。いつも一般人とは逆の反応をするおかしな人物で、このキャラクターは奥田風と言えるかも。
まあ、そういう面白いキャラクターも登場するのだから、それで満足するべきなのかもしれませんが、今まで読んだ奥田作品が意外性と驚きの連続で充分以上に楽しめたので期待が大きくなってしまったようです。
「イン・ザ・プール」に続く精神科医・伊良部一郎の連作シリーズ。
「人間の宝物は言葉だ」
「言葉の力を思い知った。どうしてもっと早く対話しなかったんだろう」
私たちのまわりには、なんとなく距離を感じてしまう人がいる。
あるいはこちらが距離を置いてしまう人。
でも、話をしてみたら相手も同じことを考えていた、同じ悩みを持っていた、なんてことも少なくない。そしてその距離こそがストレスの原因になっていたりするんだけど、伊良部先生はあいかわらず人間関係の距離なんか関係なしに、いきなり密着状態(笑)
人と人が出会った時に、互いの心の中で繰り広げられる「どっちが上か?」という見えない、あるいは言葉上の競争。伊良部先生にはそれもない。だから患者が自分の弱みを見せられる。競争社会のストレスからも自由。
今回伊良部先生のもとを訪れる悩める(悩まされる?)患者は5人。
「空中ブランコ」
サーカスの空中ブランコ乗りである山本公平は、両親ともにサーカス出身という生え抜きで、空中ブランコのリーダーでもあるベテラン。しかしブランコからブランコへ乗り移る技で連続して落下してしまう。公平は新人の受け手のミスと決め付けて非難するが・・・
「ハリネズミ」
尖端恐怖症のやくざ。先が尖っているものはすべてが恐怖の対象。短刀どころか箸も使えず、スプーンで食事をしている。あまりの情けなさに病院を訪れることになった。
「義父のヅラ」
池田達郎の義父は大学医学部の外科の学部長なのだが、誰が見てもはっきりとわかるカツラを着けていた。達郎は義父の頭を見るたびに、そのカツラを剥ぎ取りたい欲求に駆られ、ついに抑えられなくなってしまった。
「ホットコーナー」
東京カーディガンズの三塁手・坂東真一はプロ入り10年目のベテランでゴールデングラブ賞の常連。しかし突然送球のコントロールが利かなくなり大暴投を繰り返す。原因はどうやらイケメンルーキーの存在。
「女流作家」
星山愛子は“恋愛のカリスマ”と言われる女流作家。デビュー8年、30冊以上の著作があるベストセラー作家だが、最近になって、原稿を書こうとすると吐き気を覚えるという症状に悩まされていた。
一番印象的だったのは「女流作家」。
どうも世の中、面白いものほどヒットしないような気がするんですよね。
いや、ヒットするものにはそれなりの理由があって、それはとても納得できるものなんだけど、なにかもの足りない。墓場まで持って行きたいような作品は、知る人ぞ知るという隠れた名作が多い。
営業畑の40代の課長5人を主人公に、その"部下、同僚、上司、妻、息子、親"との関係を、スケッチ風に描いた短編集。世代が近いのでテーマが身近。全話に思い当たるところがあって面白かったです。
マドンナ
42歳の営業課長荻野春彦は、異動でやってきた部下の倉田知美にときめいてしまう。その思いは次第に強くなるが・・・
・・・オチというか、ラストがさりげなくていいですね。奥さんのキャラクターもいい。やっぱり、たまにはドキドキしないとね。
ダンス
46歳の田中芳雄の悩みは、高2の息子が進学せずにダンサーになりたいと言い出したこと。職場でも、マイペースの同僚に悩まされる。
・・・「違う価値観のやつにもいてほしい」というのはよくわかります。
総務は女房
44歳の恩蔵博史は局長昇進前に、2年間だけ総務の課長になった。しかしそこは世界を相手にしている営業とはまったくの別世界だった。恩蔵は改革を思いついた。
・・・恩蔵タイプはよくいるな。退職するとボケるタイプよね(笑)
ボス
バンカラ気風の残る鉄鋼製品の営業課に女性部長が就任。さまざまな改革が断行され、以前の「男の職場」的雰囲気に馴染んでいた次長の田島らは、居心地の悪い思いをしていた。しかしその女性部長の行動には不思議なパターンがあった。女性部長の隠された秘密とは?
・・・これもわかる。すごくわかる! 女にはこんな楽しみがあるのよ。いいでしょ〜(^^)
パティオ
老齢を迎えた男親と息子の関係。
・・・親の老後について、「半分楽観的で、半分現実を見ないようにしている」というのはわかりますね。ただ娘と母親の場合は、もう少し現実的な話し合いが出来るような気がしますが。
精神科医・伊良部一郎が現代人の心の病を癒す連作短編集…なんて書くと、堅い小説だと思われそうですが、これが全然違っていて、笑えて癒される1冊です(^^)
伊良部一郎は伊良部総合病院の院長の息子。病院の地下で細々精神科の診療をしているんですが、これがかなり変わった性格の持ち主。徹底的な現実肯定派で、自分に正直で悩みがない。自然のままに生きてる。
そんな性格なので、深刻な問題を抱えてやってくる患者も、伊良部先生と話しているうちに、そのペースに巻きこまれて不思議と治ってしまうんですね(笑)
人間関係って、親しくても、というか親しいほど、相手に対して批判的になることってありますよね。この本の中でも、水泳中毒の夫を心配して、奥さんは必死に泳ぐのを止めようとする。でもそれって、本人が一番わかっているんだから、逆に心配してくれる相手に距離を感じてしまったりするんですよね。
その点、伊良部先生は違う(笑)
「僕にも教えてね」などと言っていっしょに泳ぎ、「豊島園のプールに行ってみない?」とまで誘い出す。それが自分の側に立ってくれてる人、味方だというという安らぎになるんですよね。どんなことでも、「面白そうだね。いっしょにやろうね」と言って味方になってくれる人。そんな人がいたら、いろんなことを話してみたいと思いませんか? それが伊良部先生です(笑)
(それにしても伊良部一郎って「大リーグで頑張ります」って名前だな・・・)
これはお薦め。
オヤジ狩りをする少年グループ。交通事故で妻を亡くして以来、精神安定剤に頼る刑事。やっと手に入れた郊外のマイホームで夫と子供二人で暮すパートの主婦。何の関係もなく暮していた彼らの人生が、1つの事件をきっかけに狂い始め、絡み合って、破滅へとなだれ込んでいく。
登場人物が追い詰められていく過程が、あまりにリアルなので、自分が追い詰められてるような気がしてしまいます。事件といえるものは1つしか起こらないのですが、彼らが巻きこまれる出来事すべてに裏があるので、加速度をつけて落ちていく感じなんですよね。
でも、ここれだけ落ちていく話なのに、読後感がさわやかなんですよ。読み終わった直後は「OUT」に似てるなと思ったんですが、そのさわやかさが違いました。「OUT」は最後までどろどろだものね。
人間、どうしても失えないと思っていたものを失ったり、行きつく所まで行ってしまうと、突き抜けてしまうものなのかもしれませんね。
ネタバレ・心に残ったセリフ →【
「これまで穏やかでいられたのは追いつめられたことがなかったからなのだ」
「心底タイムマシンが欲しかった。時間を逆戻りさせることができるなら、全財産を差し出してもいい」
「これから自分に訪れようとしているのは、ほとんど目眩を覚えるくらいの、孤独と自由なのだ」 】
ネタバレへ
川谷信次郎は、下町で小さな鉄工所を経営しているが、工場の向かいにマンションが新築されたことから、マンション住民との騒音トラブルに悩まされている。
藤崎みどりは、都市銀行の小さな支店で窓口業務をしているが、セクハラ被害で退職を考えている。
野村和也は、定職に就かずカツアゲやパチンコで暮していたが、窃盗事件を起こしたことから、やくざに追われることになってしまう。
これだけでも充分不幸な3人が、さらに最悪の事態に巻きこまれていく。
読んだ感想は、素直に「いい人たちだな〜」ということでした。
とにかく、この3人は、人の言うことは何でも信じてしまうんですよね。
それが結果として最悪の事態につながってしまう・・・本当に気の毒。
でも、こういうことって、実は世の中でたくさん起きているのかもしれない。
ただ、小説としては事件が起こるまでがちょっと長すぎる気がしました。
ネタバレ→【 個人的意見ですが、36〜40章を最初に持ってきて、41章から後をラストにした方がよかったんじゃないでしょうか。そうすれば、年齢も職業もバラバラな4人組が、なぜ強盗として追われてるかという興味につながるので。
でも、銀行強盗の後の3人には笑えてしまった。たしかに人質連れてバスに乗る犯人はいないよね。 】
奥田さんが作家になる前に連載していたスポーツエッセイ集。
東京ドームの野球中継では、バックネット裏の観客ばかり気になり、ボクシング中継ではリングサイドの観客を観察して楽しむという、ふつうとはちょっと(…かなり)違った視点から見たスポーツ話。
なんとなく清水義範作品に似てるなと思ったら、奥田さんご本人がインタビューで、
「清水義範の『永遠のジャック&ベティ』や『蕎麦ときしめん』などを読んだ時には、しゃれてるなあと思いましたね。「こういうのを書いてみたい」とは思いました。
」とおっしゃってたんですね。それなら、似てると言っても失礼じゃないですね。
バックネット裏の観客は私も気になります。いつだったか、東京ドームの中継でピクリとも動かないご夫婦を見つけた時は、ずっと注視してしまいました(笑) 最初は人形かと思ったくらい動かなかったんですよ(笑)
他にも、アジア大会の大らかさは好きだし、インタビューで泣かない選手が好きというのも同感。「箱根駅伝高視聴率の秘密」は素直に納得。笑えるところも共感するところもあって面白かったです。
体育の時間のサッカーの独自解釈については、同じことを言った某有名監督が居ましたね。たとえば、W杯最終予選のような重要な試合で、1点取られたら出場できなくなるという試合展開。時間は後半45分を過ぎようかというところ。敵の放ったシュートがゴールの枠内に。キーパーは反応出来ず、ヘディングは届かない。
こんな時、どうするか? 「手で止めろ」って言ったんですね。もちろんハンドで退場だし、エリア内ならPKだけど、確実に1点入るより、入らない可能性を残した方がいいってことですね。PKだって失敗することはけっこう多いし、FKならなおさら。1人減っても残りはロスタイムだけだから、手を使っても止めた方が戦術的に有利と言えるんですね。
こういうところがサッカーの国際性(笑)で、他のスポーツのファンに理解されないところかも(笑) あ、でも、もちろんこれは特別の試合でのことで、ふつうのリーグ戦でやったらダメなのよ←時々わかってない選手もいる。試合が始まって10分なのに手を使うヤツもいるし(笑)
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