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エラリー・クイーン

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   Yの悲劇   九尾の猫   オランダ靴の謎  ギリシア棺の謎  シャム双子の謎
   
靴に住む老婆

(注)【 】内はネタバレ。すでに読んだ方は反転させて読んでくださいね。


ギリシア棺の謎

20年ぶりの再読なんですが、こんなに面白かったとは! 再認識しました。初読の時はややこしくてなかなか読み進めず、そのイメージで今まで敬遠してたのですが、損してました。

国名シリーズとしては4作目ですが、大学を出たばかりのエラリー・クイーンが最初に関わった事件という設定。この作品が発表された1932年には、他にも『Yの悲劇』『エジプト十字架の謎』が出版されているのですから、まさに黄金期の作品。徹底的に理詰めの推理過程も『Yの悲劇』を思わせます。

・・・ニューヨークのハルキス画廊の創立者ゲオルグ・ハルキスが亡くなり葬儀が行われた。しかし葬儀の後、遺言状が行方不明になっていることが発覚する。参列者や屋敷や捜索されたが、結局見つけることは出来なかった。唯一残る隠し場所と思われるのはハルキスの棺。ついに発掘されることになったが、そこで見つかったものは・・・

次々に緻密な推理が披露されるのですが、その度に新たに現われた証拠によって覆されてしまう。この犯人とエラリーの豪華な推理合戦をお楽しみください。本格ミステリーを堪能できますよ。それにしてもこの犯人は、犯罪者というよりほとんどマニア(^^;) この探偵にして、この犯人ありというか、どっちもどっち。でも楽しいです。

ネタバレ→【  それにしてもティーカップのトリックには参った。おまけにそれが作為のトリックだというのだから、すごい。エラリー意外は気付かないでしょうね。犯人もさすが警察関係者だけあってよくわかってる。 】



シャム双子の謎

山の頂上にある一軒家の屋敷で起る連続殺人。閉ざされた空間ものですが、その閉ざされ方が半端じゃない。

エラリーと父親のクイーン警視は休暇をカナダで過ごした帰りに山道に迷い込んでしまう。やっと抜け出せそうになった時、眼前の道路が炎に遮られているのを発見する。山火事によって下りの道を閉ざされたクイーン親子はひたすら頂上に向かうが、道路は断崖絶壁で止まっていた。しかしそこには1軒の大きな屋敷が建っていた。

暗い山道を迷ってたどり着いたら黒い屋敷があり、出てきた男は怪しい老人。ゴシックホラーそのままのような設定で思わずニヤついてしまいますが、これだけじゃありません。

その屋敷は引退した医学博士のもので、動物実験室があり、【謎の美女】まで隠れているんですよね。ここで当の医学博士が殺されるのですが、この謎解きはちょっと無理やりな気がしました。ジャンル的にはダイイングメッセージものです。

しかし、この小説の醍醐味は山火事に閉ざされた山頂の一軒家という設定でしょう。そしてなんといってもラスト。この時のエラリーはカッコイイのです!!



Yの悲劇

論理的推理の古典的名作です。
内容はニューヨークの名家に起こった連続殺人。一見、非常に綿密に計算された連続殺人事件に見えるのだが、そこには不可解謎が累積していた。その謎を1つ1つ解いていくと浮かんできたのはあまりにも意外な犯人と、想像もつかない犯罪の実行方法だった・・・。

 推理と謎解きに圧倒されてしまう結末です。「本当にこの解決しかないのか?」と、ちょっと疑いたくなるほど見事に説明されてます(^^)
様々な作家さんが、その論理性を突き崩そうと挑戦していますが、気持ちはわかる!


九尾の猫 

文庫版の後書きによると日本では人気の無い作品らしい。でもミステリー作家として、素晴らしいテクニックを披露しています。

 事件はマンハッタンで起こった連続絞殺事件。9人の被害者を出しながら、犯人像はもちろんのこと、被害者間のつながりすら見えてこない。

 この様な展開でありながら登場人物が極端に少ない。にもかかわらず、最後まで事件の背景が想像もつかないところはさすがです。


オランダ靴の謎   

世界的資産家の老婦人が緊急の手術のために手術室に運ばれてきた。担当医が手術を始めようとしたが、その時すでに婦人は絞殺されていた。たまたま手術を見学しようとしていたエラリーは、すぐに病院を封鎖、関係者から事情を聴取する。

まずはじめに登場人物の多さに驚き。そしてその関係者は、すべて病院内にいるために、事件後すぐに事情聴取が始まるんですが、人数が多いから読んでる方も、覚えるだけで大変。でもこれも【 仕掛けの1つ 】なんですよね。

下手な作家が書いたら、すぐ犯人がわかってしまうパターンなんですが、最後まで悩まされます。

↓ネタばれ注意↓
部屋に入った時に生きていた人間が、部屋から出た時には死んでいた。
その時いっしょに室内にいた人物がいたとすると、
どう考えてもその人間が犯人ですよね。
それが怒涛のような関係者の登場と、看護婦という職業で騙されました。

だいたい秘書が医者を偽物と気付かなかったと言うの、おかしいんですよね。
よく知らない人間ならともかく、ずっと近くにいる人物を見間違えるはずはない。
(人は五感で相手を認識するから、瞬間の印象で疑うよね)この点はずっと
「いい加減だな〜」と思いつつ読んでたんですが、それが伏線だったのね。

靴に住む老婆(「生者と死者と」) 

マザーグースの見立て殺人なんですが、この作品では陰惨なイメージではなく、どちらかというとギャグとして使われています。

コーネリア・ポッツは70歳になるが、未だに自身が築き上げた靴の製造会社の社長として君臨していた。彼女は2回による結婚で出来た6人の子供とニューヨークの広大な屋敷に住んでいた。しかし、その屋敷は巨大な靴のブロンズ像のある摩訶不思議な建物だった。

そしてその屋敷で、長男が2度目の結婚で生まれた弟と決闘をして殺してしまうという事件が起る。長男の銃には空砲が入れてあったはずなのに、いつの間にか実弾に擦りかえられていたのだった。ずっとエラリー達と行動を共にしていた長男にはすり替えは出来ない。いったい何が起ったのか?

ユーモア満載なので、最初に読んだ時はとまどいがあったんですが、今になって再読すると、読みやすくて面白かったです。ニューヨーク市警の捜査が甘いと感じるところはあるんですけどね。

でも二転三転するストーリーは最後まで息が抜けません。
エラリーファンには、ある意味印象的な作品・・・(-_-;)


(注)【 最初の決闘に使われた銃を調べれば、エラリーの指紋がついていないから、すり替えがわかると思うのですが? 】

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鮎川哲也 内田康夫 清水義範 奥田英朗 杉本苑子 永井路子 東野圭吾 宮部みゆき エラリー・クイーン