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東野圭吾2

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(注)【 】内はネタバレ。すでに読んだ方は反転させて読んでくださいね。

  真夏の方程式

最近のガリレオシリーズはあまり科学的な話でないのはわかってるけど、
タイトルと帯の文から、もう少し意外性のあるトリックかと思った。
まあ専門的トリックになっても理解できないんだけど(^^;)

導入部は海底資源開発の説明会というところから入っているので、
環境保護と開発がテーマかと思ったら、違いました。

ストーリーは、ほぼ予想通り。
最近の作品で続いてる青少年の孤独がテーマかしら。
 
それにしても日本人は二者択一が好きですね。
賛成か反対か、適か味方か、議論する前に二者択一を迫る。
そして一度賛否を決めてしまうと変えることを許さない。
そんな不毛な対立の構図を湯川先生に切り込んで欲しかった。

以下はネタバレしてます。


私の読み落としかもしれないけど、煙突の覆いは誰が外したんでしょう?
それも恭平君?
すでに一酸化炭素が発生してるわけだから、
子供ではかなり危険を伴うのではないかと思うのですが。
自分の家族を守るために人の子供を利用するというのは、
どんな理由をつけても卑怯だと思う

そういえば最近の東野作品でよく感じることだけど、
同情すべき理由があるように感じる犯人でも
よく考えると、かなり自己中心な考え方をしていることがわかりますね。
だから犯罪者になってしまうんだろうけど。

科学をちゃんと勉強していないと知らない間に共犯にされてしまうという教訓もあるのかな(笑)

それにしても恭平君はあのままでいいのか、後味の悪い終わり方でした。




  白銀ジャック

単行本を数年後に文庫化するのではなく、最初から文庫本で発売される
「いきなり文庫」の新作。

シーズンに入ったスキー場に脅迫状が届く。
内容はゲレンデの下に爆弾を埋めたというもの。
爆弾の位置を教えることと引き換えに身代金3千万円を要求していた。

営業中のスキー場で如何にして身代金の受け渡しが行われるのか?
犯人にとって危険な身代金受け渡しが何度も繰り返される謎などもあり、
伏線も適度に張られているし、全体にスピード感があって面白いです。

とにかく気軽に読める1冊。
休日にゆっくり時間をとって読むというより、新幹線の中などで読むのにちょうどいいですね。

「水戸黄門」のようですが、だからこそ何も考えずに読めて、私は好きですよ。


  プラチナデータ

タイトルと帯の宣伝文句からガリレオ的な科学物かと思ったら、物探しと追跡でした。

謎の宝物(ここでは、あるプログラム)を探しながら敵と味方がチェイスを繰り返すという、サスペンスの王道ですが、それにしては緊迫感が足りないかもしれません。

国民のDNAを登録して犯罪捜査に役立てようとする法案が成立。
しかしDNA検索システムに重大な欠陥があることが判明。
システムの開発者がひそかに欠陥を修正するプログラムを作っていたのだが、
その開発者が殺され、プログラムが行方不明になる。

実は事件全体の元となる、ある設定が苦手。
ミステリーとして扱いが難しい設定だと思いますね。
まあ、サスペンス小説だから、これもいいのかもしれませんが。
いろいろと納得できないところが多かったです。

読みながらテレビ朝日の人気刑事ドラマを思い出したわ〜

ちょっとネタバレ

あくまでミステリーでの話ですが、多重人格は作者がどのようにでも設定できるので、どうしても解決編で肩透かしになる印象がありますね。
スズランの存在もきちんと説明つけて欲しかった。





  新参者

東野さんは、しばらくパスしたいという状態だったんだけど、申し訳なかった。
やっぱり上手いわ〜

加賀恭一郎シリーズだから、もちろん現代の殺人事件の捜査だけど、
全体的には捕り物帳のような人情話が中心。

事件の舞台になっているのが小伝馬町とか人形町とか江戸の下町ということもあって、
宮部さんの茂七シリーズを思い出してしまいました。

宮部作品と違うのは、どこまでもいい話で終わるところかな。
宮部作品は表面的には優しい暖かい話に見えて、
底の底に人の世の冷酷さや残酷さが見えて、ひやっとするところがあるから。

事件は小伝馬町のマンションで一人暮らしの45歳の女性が絞殺されたというもの。
その部屋にあった証拠の品、殺された女性の関係者について、
それぞれ聞き込みをしていくのだけど、それが1つづつの章に分かれて語られます。

どれもそれほど目新しいエピソードではないし、
朝のテレビ小説みたいなところはあるんだけど、
なにより話の持って行き方が上手いから、ついホロリ。

人情話が中心でも、それぞれの品物が事件の真相にどう関わってくるのかという
謎解きの楽しみもありますよ。

続きはちょっとネタバレ

各章は
「煎餅屋の娘」「料亭の小僧」「瀬戸物屋の嫁」「時計屋の犬」「洋菓子屋の店員」
「翻訳家の友」「清掃屋の社長」「民芸品屋の客」「日本橋の刑事」



「瀬戸物屋の嫁」の嫁姑のケンカが、実の母娘のようだと思っていたら、あの結末。
価値観が違うだけで、素の人間がひねくれてるわけじゃないところがいいよね。

「時計屋の犬」と「清掃屋の社長」の秘書の話は予想がつく展開。

そんな中であまり同情したくないのが第八章の一家だったけど、
やっぱりという結末でしたね。

殺された女性も、そういう理由で離婚を考えていたなら、
もっと前からしっかり準備していればよかったのに。
翻訳家の友達が気の毒でしかたなかったです。






  聖女の救済

ガリレオシリーズの長編。

不倫の末に離婚を言い出した夫が自宅で毒入りコーヒーを飲んで死亡。
最も動機があると思われる妻は、その時、自宅から遠く離れた北海道にいた。

毒物の入ったコーヒーは、殺された夫が、自宅に一人で居る時に、自分で入れたもの。
しかしコーヒーの粉からは毒物は検出されなかった。
では、いつどのようにしてコーヒーに毒物が入れられたのか?

容疑者とされている人物が本当に犯人なのか?
ではどうやって毒物を入れることが出来たのか?

アリバイトリックというより、いわゆる遠隔殺人トリックかな。
でもなんというか、謎解きされても半信半疑(^^;)
今回はややこしい物理法則はないけど、
その分、いろいろ突っ込みたくなるトリックですね。

このシリーズも最初はSF的な不可思議な謎が多かったけど、
だんだん人間関係のトラブルが主になって、サスペンス劇場的になりましたね。

とにかく、さらっと読める1作です。
長編なのでもう一捻りあるとよかったけど、それでも充分面白かったです。

小説の内海薫は冷静で有能、まともな刑事で好感持てました。
むしろ草薙が・・・(笑)

あと、この妻の行動が大阪のおばちゃんまんまでウケました(笑)

続きはちょっとネタバレです。反転させて読んでください。


男子厨房に入るべからずで、世の中、食を牛耳っている人間が一番強い。

でも1年間も浄水器を誰にもまったく触らせないって可能なんだろうか?

草薙の恋心は水遣り用空き缶を保存なするための方便だったのかな。





  ガリレオの苦悩

あまり期待しないで読んだので、かなり面白く読めました。

内海薫って、ドラマのためのキャラじゃなかったんですね。
でも、もしかしてすでにドラマ化の話があって、
そのために作ったということもあるのかな?

彼女が前面に出てきた時はどうなることかと不安に思ったけど、
ドラマほど、くどくなく、ポイントポイントでキャラを活かすところはさすがに上手いです。

トリックは一層専門的になってきてるので適当に読み流しましたが…(^―^;)

以下は各話の感想。
ネタバレはしていませんが、先入観を持ちたくない方は読まないほうがいいかも。


「落下る」
マンションのベランダから女性が落下して死亡。
自殺か他殺か論議が分かれたが、容疑者と目される男は落下の瞬間、
まさにそのマンションの下で、落下の様子を目撃していた。

いくらなんでもそのトリックはないだろうと思ったら、あの結末。
よかった(笑)
これドラマで放送されたそうですね。
あの実験してるところは見たかったかも(笑)

「操縦る」
離れ家が突然出火。焼け跡からそこに住んでいた男の刺殺死体が見つかった。
容疑者は体が不自由な上に、ずっと母屋にいたことがわかっている。

ものすごく専門的な機械トリックと、心理トリックのような動機の対比が見事。

「密室る」
斬新な密室です。
これも見てみたいですね。どう見えるのか。

「指標す」
ダウジングで自分のを判断する少女の話ですが、
これは理化学じゃなくて心理学ですよね。
でも、わからないことはわからないというのは科学ということ
事件は解決してるけど、でもちょっと不満・・・

「撹乱す」
不特定の人物を事故に見せかけて殺すという脅迫状が
警察に送られてきた。犯人は湯川準教授に挑戦。

ガリレオにはめずらしく同時進行系の事件。
トリックの原理はわからないけど、たぶんこういうことだろうと予想したとおり。
推理より駆け引きが面白いです。
これは2時間スペシャル用かな。


  ダイイングアイ

1999年に「小説宝石」に連載されたものを単行本化。

面白いことは面白い。ただ、すご〜く面白いというわけではないです。

ガリレオシリーズがドラマになるとはまったく予想も出来なかったけど、
こちらはそのまま2時間ドラマになるような話。

冒頭は交通事故のシーン。
車に撥ね飛ばされた被害者の視点から描く描写がやや際物めいてますが、
その体に受ける衝撃、突然命をむしりとられる無念さや悲劇性は重く伝わります。

そしてその1年後、加害者の雨村慎介は被害者の遺族に襲われて
事故の記憶の一部を失う。

自分が起こした交通死亡事故、そんな重大な記憶が抜け落ちていることに
もどかしさを感じた雨村は、なんとか事故の詳細を思い出そうとするが、
自身の断片的な記憶と関係者の話との食い違いに気がつく。
あの日、本当は何が起こったのか。
一人で調査を始めた雨村の前に謎めいた人物が現れる。

謎めいてるといえば、登場する人物がすべて謎めいてるんですけどね。
だからそれぞれの人物像がわかりにくい。
では、そんなわかりにくい人物像に裏があるかというと、そうでもない。
ただ設定が雑なだけのような気がしてしまうのも残念。

とにかく、なんだか訳がわからないうちに終わる本。
細かいところはネタバレで。

ただ、この10年で日本人は本当に変わったということは感じました。
自分のやったことに責任を感じない人が増えたよね。
この中に出てくるある人物が今時の人なら、「関係ない」で終わってるかも。


以下はネタバレで書いてます。反転させて読んでね。



被害者の目に獲り憑かれた上原ミドリ。
10年後の今の話なら「あたしが悪いんじゃない」で、さっさと忘れそう。
飲酒運転でスピードオーバーだから逃げるのは逃げるだろうけど、
自責は感じないんじゃないかな。
少なくともあそこまでは。

ミドリがああいう行動に出たのは、
美菜絵の霊が憑いたというよりミドリの精神の問題だと思いますね。

ただ、獲り憑かれたにしろ、自責の念にしろ自分が運転する車で人が死んだのだから、
精神がおかしくなるのはわかるけど、
それがなんで突然色仕掛けになるのかわからない(笑)

刑事までやられるんだから、余程のパワーだったのね〜

その刑事があっさり消えてしまうのも納得いかない。
謎のセクシー女より、その方が大事件でしょうが。

そういえば、被害者の恨みのこもった目を見てしまったゆえに、
精神を病んだ加害女性の話はずいぶん前にニュースかなにかで見た記憶がありますね。






  赤い指 

加賀恭一郎シリーズ。
介護問題と少年犯罪というあらすじを読むと、とても重苦しい内容に思えるのですが、
それは動機や背景として扱われているだけで本質は倒叙ミステリー。

ということで、介護や子育てについて深く考察するというより、
犯罪隠蔽のミスと、それを暴く警察の捜査が主。
でも仕掛けられたトリックを見破るのは、かなり難しいことではないでしょうか。

99年に短編として雑誌に発表されたものを長編に書き直したものだそうですが、
やはりアイデアは短編のものだと思ってしまいますね。
ただ、前原昭夫の両親のこと、それに対する昭夫の気持ちや対応を描くとすると、
この長さは必要でしょうけど。

印象に残るのは、男にとって母親は永遠に尊い存在なんだろうということ。
これが母と娘なら全然違う話になるような気がします。
それは晴美と母親の関係に一部描かれているのかもしれませんが。



  殺人の門                      角川書店

田島和幸は歯科医の息子として金銭的には何不自由のない暮しをしていたが、母親が祖母を毒殺したという噂が広がったことから父親が歯科医院を続けることが出来なくなり、一家は破滅した。和幸はその原因が同級生の倉持のある行動によると考え、倉持に殺意を抱く。しかし殺意を実行できないまま倉持から離れられない生活が続いていた。

自分は騙されやすいと思ってる人は読んでみた方がいいかもしれません。
でも、自分の意思をはっきり持っている人間には意味のない話。

殺したいという気持が実際の行動に移るきっかけは何か、ということがテーマなんでしょう…たぶん。でも詐欺の手口を紹介する小説、あるいは、ものごとや人間の本質が見えない人の内面を描いた小説にも読めます。

結局、騙される人というのは、自分で行動を起こさない、考えない、決めない、というなんですよね。「あの人がこう言った」「○○さんがやってくれる」ということに頼ってしまう。和幸の「いつか殺すために倉持から離れられない」ということも、つまりは倉持に依存してる自分への言い訳のような気がしました。

ネタバレ→ 【  由希子も最初に出て来た時は、正義感の強い女性かと思ったけど、美晴を薦めるところなんか考えるとけっこう適当な人だね。まあ、倉持の嫁だからね。良い人ではないか。
祖母が毒殺されたという噂が広まったとしても、町内のうわさでいちいち警察が動くかな? そんなにフットワーク軽くないでしょう。
それに噂が広まってどうしようもないのなら、噂が破滅する前に引っ越せばいいと思いませんか? 会社員と違って歯科医ならどこでもやっていけると思うけど。財産もあるんだし。誰かの悪巧みに嵌っても、思惑通りに破滅してやることはない。 
 】


  幻夜                       集英社

これはお薦め! 裏の裏にまた裏があるという現代版陰謀小説。

運命の日、水原雅也は自殺した父親の通夜の席に居た。父の幸夫は不況で工場経営に行き詰まり、負債を抱えて首をくくったのだ。さらにその席で、追い討ちをかけるように叔父の俊郎が借金返済を迫ってきた。
そして未明、阪神淡路地方を未曾有の大地震が襲う。つぶれかけた工場から抜け出した雅也はそこで倒れている叔父を発見し、そのポケットから借用書を抜き取った。しかし叔父にまだ息があることに気付き、思わず叔父の頭に瓦を振り下ろしていた。しかし、その場を立ち去ろうとした雅也の前に一人の若い女性、新海美冬が立っていた。
不思議な共犯となった二人は東京に出る。そして美冬は成功を収めるためにあらゆる手段を使って伸し上がろうとし、雅也はその影となった。
                    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
美冬が繰り出す策略は現代だから犯罪だけど、歴史時代なら名参謀と言われそうなもの。あるいは「スパイ大作戦」か?
美冬は諜報活動をしたら成功しそうですね。

ただ、歴史小説なら時代の感覚の違いで納得出来るけど、現代でこういう騙しのテクニックを使われると、やっぱりすっきりしない。歴史上では、強くて目的を達成するために非情になれる女性は好きなんですが・・・。

最終的に、これは男のロマンで、雅也の気分はきっと騎士のようなものなんだろうな。
シリーズ3作目もあるのかな? こうなったらぜひ読みたい。

ネタバレ
【   これで美冬の過去は葬られたのかな?
雅也と加藤刑事が死んだら真相を知る人もいないものね。
整形したあとでは、似てないことは理由にならないし。
あとはDNA鑑定くらいですか。でも遺品も残っていないとしたら鑑定も出来ないだろうし。

でも、成功すればするほど、有名になるほど過去を暴こうとする人間は増えるんだよね。
同級生はいるわけだから、これからも危機はありそう。
キーは曽我の遺体?
なんとなくシドニィ・シェルダンを思い出しました。
  】

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 手紙                             毎日新聞社

両親を亡くし、弟と二人暮しの武島剛志は、弟の大学進学資金を盗むため、1人暮しの老女の家に押し入り、その老女を殺してしまう。強盗殺人の罪で服役中の兄が弟に宛てた手紙は、弟の生活を破壊することにもなってしまう。

被害者の家族の苦しみを描いた作品が多い中で、犯人の家族の苦しみを描いたもの。
一般人の感覚では、犯人の家族というと、どうしても犯行に至る何らかの責任の一端を負っているのではないかと言う気持ちがあるので、加害者の家族には同情しにくいのですが、実際の差別は想像以上なのでしょうね。

日本人が犯行を思いとどまる第一の理由は、自分が犯罪を犯して捕まったら家族が苦しむということだそうですが、これだけ犯罪が増えた現在では、それも昔の話なのかもしれません。この本を読んで思いとどまる人が増えるといいですが。

それにしても、この弟は出来過ぎじゃないですか〜(笑)
頭が良く、容姿が良くて、歌の才能があるんだよ。それだけで充分じゃないか(笑)
これだけ才能のある弟なら、別に進学しなくても成功しただろうに。
兄の剛志が、自分の社会感、考えだけで行動してしまったのは弟にコンプレックスでもあったのかな?



 ゲームの名は誘拐                   光文社

プランナー佐久間駿介は、大手自動車メーカーの新車の宣伝プロジェクトに参加していた。しかしプランがほぼまとまったところで、社長自らの決断で企画は白紙に戻され、佐久間はプロジェクトメンバーから外された。自分を否定されたことで頭に来た佐久間は、酔って社長宅の周りをうろついていたが、そこで社長の家から若い娘が塀を乗り越えて抜け出してくるのを見つけた。娘を尾行した佐久間は、彼女が社長の娘であることを知り、誘拐と計画する。

すべては佐久間の視点から描かれているので、被害者の家族や警察の動きは一切わかりません。でも、そこがミソ。これによって、ある仕掛けができるのですね。読者も視点を変えて読むと、より楽しめます。やっぱり東野さんは上手い!

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 鮎川哲也 内田康夫 清水義範 奥田英朗 杉本苑子 永井路子 東野圭吾 宮部みゆき エラリー・クイーン