浅見シリーズはその中でもいくつかのジャンルに分けることが出来るのですが、
これはその中でも「告発もの」とでも呼べる骨太な作品。
上下巻の長さですが、一気に読める密度の濃い内容です。
タイトルに象徴されているのは長崎沖にある端島。通称「軍艦島」。
周囲1200mの小さな島ながら石炭採掘の島として石油エネルギーに変わるまで日本のエネルギー消費を支えた島。1974年の炭鉱閉山と共に無人島になる。
現在はむしろ廃墟として有名で、護岸工事で固めた垂直の海岸線と、その背後の高層アパートの組み合わせは特異な景観としてTVでも紹介されたので印象に残ってる方も多いのではないでしょうか。
忘れ去られようとする島にも最盛期には5000人を超える人々が生活し、そこにはまた戦争の傷跡もあった。
事件はこの島で終戦直後に起こった連続怪死事件と、現代に起こったある引退した刑事の殺人事件を絡ませて進みます。
背景となるのは拉致問題や靖国問題など、近代の日本と極東アジアの関係。当然、北の某国の問題も出てくる。
このまま追い詰めれば体制維持が出来なくなり危機的状況になる
そうなれば本当にミサイルが飛んでくる
ちょうどこの部分を読んだ翌朝、本当にミサイル発射のニュースが流れて驚きました。
この中で語られる内田氏の見解と主張。
右でも左でもなく、何かにこだわっているのでも、とらわれているのでもない、ふつうの人がふつうに考えていること。なぜか今はこういう意見がいっさい表に出てこないので、我が意を得た思いをしました。
知っていることでも見方を変えれば違うものが見えてくるという驚き。
内田さんの偏らない視点はいろんなことを気付かせてくれて刺激になります。
ラムさんにお借りしました。上下巻の長さなので私なら文庫落ちを待つところ。タイムリーに読めて感謝ですm(__)m
今年の春は花粉症の症状がほとんど出ることがなく、楽な年でした。
しかしこんな春が続くわけじゃない。
また花粉が増えれば辛い辛い数ヶ月を過ごさなければならない。
そんな花粉症の症状を食べ続けることで緩和することが出来る米、花粉症緩和米。
その開発をめぐる殺人事件。
「花粉症緩和米」って本当に開発されているんですね。
花粉症なのに知らなかった。
遺伝子組み換えによって米にスギ花粉に含まれるものと同じ成分を作り出させ、
それを食べ続けることによって体を花粉に慣らす。
花粉が体内に入っても過剰反応が起こらないようにするということらしい。
とっても簡単にまとめてしまいましたが。
でも、これだけを聞くと薬臭いお米を食べさせられそうな気がして
感情的に拒否反応が出るというのもわかる気がします。
しかし緩和米の真実とは?
それは本を読んでいただくとして、その他にも遺伝子組み換え食品とお米についても知らないことがいろいろ書かれてました。
お米は主食なのに知らないことって多いんですよね。
コシヒカリ、ササニシキというブランド名だけは知っていても
その特徴、どのように開発されたのかどういう歴史を持っているのか
背景については何も知らない。そういう知識を得られる楽しみもあります。
もちろん旅情的楽しみも。
プロローグに登場する秋田県羽後町の西馬音内盆踊り。
顔をすっぽり覆う黒い頭巾、彦三頭巾をかぶって踊る謎めいた祭り。
羽後町の公式ページに写真がありますけど、なるほど不思議な姿です。
社会派的内容なので浅見さんのキャラは控えめですが、
読み応えのある作品でした。
ラムさんにお借りしました。感謝(^o^)
今治の老舗の和菓子屋の娘であった美和は、地元の有力企業である村上造船の長男に嫁いでいた。しかし、しまなみ海道の開通と共に実家の和菓子屋が経営難に陥り、多額の負債を抱えてしまう。美和は夫である村上康彦に融資を頼むが、村上造船も経営が厳しく、すべての負債を負うことは出来なかった。融資を求める実家と嫁ぎ先の板ばさみとなり、追い詰められた美和は失踪。やがてその遺体は能島近くの海中で発見された。
一方、残された娘の咲枝は音楽の才能を見出され、今治から東京までレッスンに通っていた。そのレッスンの師・島崎香代子が浅見光彦の知り合いであったことから、浅見は村上咲枝と出会い、美和の死因に不審を持つ。
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冒頭で紹介される「全国お宝捜索隊」。その裏のエピソードが面白い。
誰が考えても胡散臭いし(笑)、ヤラセがありそうな番組ですよね(笑)
携帯電話がキーになっているところも内田作品には珍しいかも。
浅見さんもそろそろ持ちましょう(^.^)
でも最近、女子高生ヒロインが多いような気がするのは私だけでしょうか?(笑)
しまなみ海道は開通の年に訪れました。渋滞を覚悟して出かけたのですが、平日のせいか、ほとんど車も見かけない寂しさでした(^^;)
自動車道路は眺めがいいくらいで特に目新しいところもなかったのですが、途中で降りた島々がよかったです。地元の便には全面開通が望ましいのでしょうが、観光のためにはところどころで島に降りる楽しいかもしれません。そういうわけで、少しは土地鑑があったので読みやすかったですね。
尾道はいいところ(^.^)b
房総半島の先端、和倉から連絡船で5分ほどのところに浮かぶ美瀬島は別名「贄門島」とも呼ばれ、生贄の伝説がある孤島であった。浅見光彦の父である浅見秀一は21年前に海難事故に遭い、その美瀬島の人々に助けられた。しかし、生死の境をさまよう秀一が朦朧とする意識の中で聞いたのは「こんなにつづけて何人も送ることはない」という謎めいた言葉であった。
「旅と歴史」の取材で房総に向うことになった浅見光彦は、父の事故の様子を把握し、島の人々にあらためて礼を言うために美瀬島に渡ったが、そこで同行したライターが行方不明になってしまった。
閉ざされた島の中で次々に行方不明になる外来者。秘密めいた島の人々。導入部は横溝正史の世界のようにおどろおどろしい展開で、一気に惹き込まれます。
中盤にかかると頼朝の安房逃避行という歴史も絡んできますし、さらには、現在大きな課題となっている国際問題が関係しているらしいこともわかってきます。そしてクライマックスのシーン・・・
伝奇ロマンと歴史紀行、社会問題とスペクタクル。上下2巻をあっという間に読み切ってしまう面白さでした。ヒロインもなかなか積極的で、押されっぱなしの浅見さんを見ているのも楽しい(^^)
浅見光彦が述べる人間の尊厳についての記述は、とても納得。当然のことでありながら、こういう「歴史から現在を見る視点」を持っていないのが日本人なんですよね。
暗い小説が多い中で、人間や未来を信じてもいいような気になる前向きさが、お薦めです。
ところで、うちの近所では「おがら」は、まだたくさん売ってますよ。
右翼が起こした事件をきっかけに、「殉国七士の墓」に参拝することを考えた雪江夫人は、例によって光彦にお伴を命じた。「殉国七士の墓」に詣でた浅見親子は、そこで愛国を論じる老人、鹿島通泰に出会う。しかし翌日、その鹿島が殺されたことから、雪江夫人公認で、光彦の調査が始まる。榎木さんが「おかあさんといっしょ」とおっしゃったという、浅見親子二人旅シリーズ(笑)
浅見シリーズにしては珍しい、トリックがメインになる作品。
読みどころは浅見光彦の、自他共に認めるマザコンぶりでしょうか(笑)
旅にはけっこう出かけているのに、なぜか三河へは行ったことがないんですよね。遠出となると、関ケ原より西を考えてしまうし、近場というと浜名湖より東になってしまう。
ということで、三河は抜け落ちてしまってるんですね。きれいなところらしいので、出かけてみたいです。豊川稲荷の稲荷寿司も食べてみたい(^^)
日本長期産業銀行には「将門の椅子」と呼ばれるデスクがあり、そのデスクに座った人間は次々に謎の死を遂げていた。ニューヨーク支店にいた田中誠一は、突然の抜擢で「将門の椅子」に座るポストについていたのだが、彼もやはり将門ゆかりの地で死体で発見された。不良債権が嵩み、危機的状況にある銀行。その内部で何が起こっているのか。
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金融政策や銀行内部の不正が主なテーマなので難しかった。でも、次々に謎が出てくるので一気に読んでしまいました。浅見光彦も今回は地味に探偵役に徹しています。
平将門が関西では無名だというのは驚きだった(笑)
でも、この中にも書いてありますが、これほど銀行が非道・無策でも革命も一揆も起こらないのは個人がお金を持っているからなのかな?
不況といわれても海外旅行に行き、高級品を買いまくってるものね。日本人選手が移籍した外国チームはどこもジャパンマネーで潤っているし、いったいこの国にはお金があるのかないのかわからないね。結局、上手く回ってないってことなのかな?
ドロドロ血で、血栓が出来てるみたいなもの?
でも銀行って破綻しても大丈夫なように消費者金融に資金を移しているんでしょう?
だから消費者金融は大量のCMを流しつづけるほど資金が潤沢なんだよね?
つまりは銀行が破綻しても銀行関係者は困らないようになってるのね。
でもそうすると、永遠にドロドロ血が続くような気もするんだけどね。
いずれ脳に血栓が出来る日も来るか・・・
ところで最後の方(ハードカバーなら327ページ)で、前原ひとみが浅見光彦のことを「あんな可愛い顔をしてて」って、言ってるんですよね。「ハンサム」とか「育ちが良さそう」「都会的でスマート」なんて描写はあったと思うんですが、「可愛い」というのは、はじめてのような気がします。浅見さん可愛かったのね。
北海道利尻島、その中央にそびえる利尻山で登山者が凍死する事件が起った。死んだのは東京から来た観光客で、日本有数の通信機メーカーの幹部社員・富沢春之だった。浅見光彦は兄陽一郎の要請で利尻に向かう。目的は北海道沖縄開発庁長官の秋元康博に会うこと。実は秋元から浅見刑事局長に直接「弟さんにお会いしたい」という要望があったのだった。秋元の用件はやはり凍死事件の謎を解くことであった。やがて富沢の会社と防衛庁との不正が発覚、事件は巨大な利権問題へとつながっていく。
巨大な利権がらみの事件ということで、まさにタイムリーな内容。それにしても公共事業の「当初の目的を失っても予算を遣いきってしまうまで事業を中止しない」というのは誰が考えても不合理。それがまかり通ってしまうのはなぜなんでしょうね。
今回は相手が大きいので、陽一郎兄さんとの連係プレーが多くて楽しかったです。
まあ、今となってはわかりやすい仕掛けと言えるでしょう。
奈良にある大和女子大の学生の長井明美は、畝傍考古学研究所の発掘調査のアルバイトをすることになった。発掘するのはホケノ山古墳。卑弥呼の墓という説もある箸墓古墳を含む纒向遺跡の古墳の1つで、平成七年から発掘調査が行われ「石囲い木槨」「画文帯神獣鏡」などの新しい発見がされている古墳である。
しかし、アルバイト初日から研究所の名誉顧問で発掘を指揮していた小池拓郎が行方不明になり、初瀬ダムで殺されて発見されるという事件が起こった。浅見光彦は学生時代に奈良を訪れ、小池とも面識があった事から事件の調査に乗り出した。
小池はまるで死期を予知していたように身辺整理をしていた。しかしただ1つ残された古い写真と手紙から浅見は小池の過去に遡っていく。最新の発掘調査の結果や調査に隠された事件を追いながら、飛鳥の観光と歴史の話が楽しめる1冊でした。
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