松波春香の実家は長崎の老舗のカステラ屋であったが、春香の父である公一郎が商売上の敵を殺した疑いで逮捕されてしまう。悩んだ春香は、作家内田康夫氏を通じて浅見に助けを求めた。
一方、浅見光彦は兄陽一郎からもたらされた代議士の依頼で長崎へ出向いていた。代議士の依頼はグラバー邸で起こった2つの殺人事件の調査であった。
内田康夫氏が自作に初登場した作品で、浅見光彦との関係が説明されている。
その説明があまりにリアルだったため、逆に浅見光彦を実在の人物と思いこんだ人もいるらしい(笑)
松波公一郎逮捕の決め手となった短刀の指紋のトリック。グラバー邸での連続殺人と、旅情と推理がミックスした人気の高い作品。
ところで、同じTBSのドラマ「砂の器」の和賀の本籍地が長崎でしたね。
ユタとは沖縄の神懸りする巫女のことで、現在でも沖縄ではその存在は生活の中に根ざしている。なかでも式香桜里は生まれた時から高い霊能力を持つ少女であった。そんな香桜里が滋賀県彦根市で行われた「ブクブク茶会」に南沖縄観光協会の職員として参加し、地元テレビのインタビューを受けた。
「ブクブク茶会」とは、彦根藩主であった井伊直弼の孫に当たる井伊直愛氏の夫人・文子氏が琉球王国の尚王家の出身であったことに因んで行われるようになった行事で、ブクブク茶は沖縄特有の嗜好品。
そしてその「ブクブク茶会」の様子がニュースで放送されると、風間と名乗る人物から、香桜里の連絡先を教えて欲しいという電話が入った。さらに男はインタビューをした記者の湯本総子からも情報を聞き出そうと動いていた。しかし1週間後、その風間が沖縄で殺されてしまう。風間が藤田編集長の知り合いの雑誌編集者であったことから、浅見が調査に乗り出す。
浅見光彦、貞操の危機! あ、違うのか〜(笑)
でも今回も迫られまくりの光彦さんです(^^)
沖縄の歴史と風俗、それに関する内田氏の視点が興味深い。
また噂の真相の休刊を予言したような本でもありますね。
井伊文子さんは新短歌の歌人で猫好きな方。
「井伊家の猫たち」は、ほのぼのとした良家の猫のエピソードと猫の短歌が収められたお薦め本です。
静岡県寸又峡で地元テレビ局の記者、久保一義が殺されていた。久保は殺される直前、記者仲間に「面白い人に会った」という伝言を残していた。そして近くのダムでも男の死体が発見される。"面白い人"とは、この男なのか? やがて、この連続殺人は秋田県大曲で起きたもう1つの事件につながっていく。
プロローグに隠された言葉が、最後になって活きてます。
ぼんやり読んでいると、真相に気がつかないかも(^^;)
今回の浅見さんは、秋田まで新幹線で出かけて行き、しかも現地でスズキを借りるという珍しい行動を取っています。スポンサーの関係かもしれないけど、ソアラが登場しないのはちょっと寂しい。もちろんヒロインが乗るシーンもない。
週間読売連載ということで、記者が主役だから、ヒロインの出番も少ないんですよね。
いろいろ珍しいことが多い浅見シリーズでした。
浅見陽一郎の東大テニス愛好会の後輩である望月世津子が、秋田県副知事の就任要請を受けた。おりしも秋田県では、県が出資した第3セクター「秋田杉美林センター」が欠陥住宅問題で破綻し、県政が大揺れに揺れているところであり、イメージアップのための人事でもあった。
しかし、その望月の元には、「秋田には魔物が棲んでいる」という謎の警告文と、焼死事件を報道する新聞記事の切り抜きが届けられていた。不安を感じた望月は陽一郎に相談し、陽一郎は光彦を副知事私設秘書として秋田に送りこみ、事件の真相を探らせることになった。
今回は、陽一郎兄さんの依頼で事件に取り組むという異例の展開。なにしろ刑事局長さんの全面協力があるので、調査活動も動きが多くて活動的。その点は他の浅見シリーズとは違う雰囲気があります。
それに、私設秘書ということで、珍しくもスーツ姿なのよね。う〜ん、見てみたい(^^)
でもやっぱり肩書きのある名刺は威力があるんですね。まして「副知事秘書」。
いつもは肩書きのない名刺を貰った相手が困るシーンばっかりだものね(笑)
でも、ラストは切なかったです。 【 浅見さん冷たいよ〜(笑) 】
山梨県甲府市にある宝飾品メーカー"ユーキ"、そのメーカーの専属宝石デザイナー白木美奈子が殺された。殺される前、美奈子は自分がデザインして売り出された指輪の宝石がグレードの低いものに差し替えられていることに気付き、同じ会社の宝石鑑定士・伊東木綿子に相談していた。一方、木綿子の元には恋人からの呼び出しがあったのだが、その恋人は約束の場所に現われず、謎のメッセージだけが残されていた。
日蓮と聞くと、つい、「すごいところに手をつけたな」と思ってしまうのですが、あくまで歴史上の人物として扱っているので、歴史として楽しめました。
陽一郎兄さんも出て来るし、事件の謎も複雑で、好きな1冊。
やっぱり伝説シリーズはいいですね。
浅見シリーズには珍しいキ○シーンもあったりして、積極的なヒロインに押しまくられている浅見さんも読みどころ(^w^)
それにしても冒頭のエピソードが実話だというのは驚き。山梨県民を敵に回してるような記述だけど、でも浅見光彦が行った所で、誉めてる所って少ないよね(笑)
京都で行われる国際生け花シンポジウム、その取材に出かけたフリーライターの高田哲郎が殺された。浅見光彦は、藤田編集長の依頼で殺された高田の代わりにシンポジウムの取材に行くことになったが、当然殺人事件の調査にも乗り出すことになった。高田は、シンポジウムの期間中に面白いことが起こると言っていたのだが、そこで起こったのは華道の新興流派日生会の牧原良毅による家元制度廃止の提案であった。そしてさらには牧原の秘書までが殺される事件が起こる。500年の歴史を誇る華道家元、丹野家に関わるミステリー。
単純な事件と思われたものが、調査が進むほどに複雑な背後関係を持っていることがわかり、やがて登場人物たちの過去につながっていく。幾重にも重なった人間関係は歴史小説を読んでいるようでした。京都の旧家なんてところは、いかにも裏側は複雑そうですよね。
伝統を受け継ぐ家元の家に関わる事件といえば、「天河伝説殺人事件」を連想しますが、「天河」ほど濃密な雰囲気でないのは、やはりヒロインが高校1年生という設定だからでしょうか。
京都の文化というと、裏と表の二面性を持つものというイメージがあります。
隠された裏の世界を充分に承知しながら、表には出さない。それでいて、裏の事情はさりげない言葉で匂わせる。コミュニケーションの高等技術ですよね。とても真似できない世界ですね(^^;)
音大生の北原千賀は死んでしまった仔猫を埋めるために平塚神社に行った。そこで胸を刺されて倒れている男を発見する。男は「オ・ン・ナ・ニ・・・ウ・シ・ク」とう言葉を残して息絶えた。現場か近いことから浅見光彦は事件に関わることになるが、そんな中、金沢に帰省中の千賀が殺されたことを知る。
自作解説にもある通りヒロインがいきなり殺されてしまうという意外な展開。ゆえに、今回の浅見氏は1人で金沢を巡る羽目になってしまいます(笑) 金沢の伝統工芸や名所がふんだんに取り入れられた1冊。第2章で、陽一郎氏がいきなり滝野川署に現れるというのも意外で楽しい。
藍色回廊とは、徳島県を東西に流れる吉野川中流地域以降を包括して命名された名前。県が地域活性化と個性化のために打ち出した構想の1つである。この地域は徳島藩が藍の生産を保護育成した中心地域にあたる。
浅見光彦は四国八十八ヶ所の取材で徳島へ向った。途中祖谷渓に向う祖谷川の細い渓谷道で12年前に起った車の転落事故の話を聞いた。しかもその事故は殺人事件で、浅見は偶然被害者の妹に出会ったことから事件の真相解明に乗り出した。事件の裏には吉野川河口堰の利権に関する問題があるようだった。
社会派と見せかけて、その裏にある悲しい事情を描いています。でも、あの男はちょっと納得できないキャラだな。
内田康夫氏自らが浅見光彦と共に事件に巻き込まれ、カーチェイスまで見せてくれる異色の作品。
T大教授の松岡は内田の高校大学と通じての友人であった。その松岡の教え子達が伝説の「捕陀落渡海」を再現するイベントを計画していた。イベントの実行に不安を感じていた松岡は内田に立会いを頼んだ。内田は浅見光彦を誘って南紀へ向うが途中で女性が殺される事件に遭遇する。そして、その女性は「捕陀落渡海」再現イベントで僧役を演じる大学助手の妻であった。
小松美保子は立風会という画家グループに所属してプロの画家を目指していた。そんな美保子の絵がはじめて売れた。しかし代金も未払いのうちに買い手の老人が殺され、絵が行方不明になってしまう。雪江夫人が美保子と同じ立風会のメンバーだったことから浅見光彦は失われた絵の行方を探すことになった。浅見の調べで、絵を購入した老人は原発建設反対を地元選出の国会議員に陳情するために上京していたことがわかる。
老人が一見後、驚愕した美保子の絵の謎と、ホテルで自殺した政治家の謎。実際の事件を連想させるだけに緊張した展開で、現代の政治の謎と歴史の謎が絡み合った作品です。
浅見光彦初登場の作品。20年前の作品にしては浅見家の人々のイメージが変わってないところは驚き。でも佐和子は忘れられてたけど。そういえば浅見光彦は博士課程終了してたんだっけ・・・
芸備線三次駅の跨線橋で若い女性が死んでいた。女性は正法寺美也子という東京からの旅行者で、当日福山から新幹線で東京へ帰る予定であった。しかし彼女はなぜか予約していた新幹線には乗らず、反対方向の三次駅で殺されていた。
美也子が急に予定を変更したのは旅の途中で出会った誰かと待ち合わせがあったものと思われるが、怪しい人物は目撃されていなかった。調べが進むうちに、彼女は学生時代にも同じルートを旅していて、しかもその時の記憶を無くしていた事がわかる。記憶を無くした原因は、旅の途中で宿泊した民宿が土砂崩れに合い、同行の友人が亡くなるという事件が起ったことであった。
このときに亡くなった友人というのが浅見光彦の妹の祐子。事件を知った浅見は調査に乗り出し、殺された女性の持ち物から一冊の本が無くなっていることに気付く・・・
時刻表の隙間をぬった跨線橋での殺人は、当時のミステリー界の雰囲気を感じさせて、あらためて面白かったです。これは最初からプロットを練ってあるのがわかりますね。
あの伏線は…。
初登場とは言っても、浅見光彦の登場は途中からで、捜査の主体はあくまで警察。それも捜査の中心から外された刑事の単独行動で、浅見はそれに協力するという内容になっています。しかし伝家の宝刀を抜くところは例によって同じ。
いきなり浅見光彦が殺人容疑で捕まってしまうという意外な展開から始まります。
浅見は仕事の打ち合わせが遅れて、めずらしく深夜に帰宅することになってしまった。表通りで編集者の車を降り浅見家へ向かう路地を歩いていると、一人の男が倒れていた。近づいて声をかけたその時、ハイヒールの音が近づいてきて、そのまま気を失ってしまう。気が付いたところは警察署。それだけでも驚きだが、その上殺人容疑までかけられていた。
殺害されたのは会社役員の駒津良雄で、死体のポケットには「願」の1字を書いた紙片が残されていた。その後、駒津の友人の三輪昭二も佐渡島で殺されてしまう。そして佐渡島に「願」という地名の場所があることがわかり、事件との関係が注目された。
冒頭の展開だけでもわくわくなんですが、そこへ陽一郎兄が弟を貰い受けに自らやって来るのだから、兄さんファンにはたまりません。
ストーリーは二転三転、意外な結末が冒頭にシーンにつながってくる展開で気に入ってる作品です。
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