となりはドロボウ * エッセイ民話 * Mog

 
*** その1 ***
 
           古今東西をとわず、どこの世界にもドロボウはいた、
農村とて例外ではない。     昔、むかし、Long years ago の話じゃあ、
コンバインもねぇ、バインダーもねぇ、カマで刈ってワラでゆわえて、
それを「はぜかけ」 言うて、横にわたした木にぶらさげた、
これはその前の話じゃ、
刈った稲たばが田んぼの全面にある時の話じゃ、

 毎年のように、隣の田との境の1通りがなくなるんじゃ、その分畦を越えて
隣の田へ行っとるんじゃ、夜の間に、・・・
被害者の農家が出張所へ来て愚痴をたれたそうな。
「そりゃあ、警察の領分じゃ」 言いよったら、中の1人が 「ちょっと待て、
良ぇ考えがある」 と言ったとか。 
 後日、種もみを渡し、「今年は全部このもみを撒けぇよ」
「他の品種は、撒くなよ」と教えたとか。

 田植えもまわりと同じようにやった、同じように青々と生育して、同じ色の
稲穂を垂れた、そして同じように稲を刈り取った、
そして、そして、当然のように今年も1列きれいに
なくなっていた。 被害農家が出張所へ報告にきたそうな。
「よし・よしそれで良ぇんじゃ」と帰したとか。

 乾燥も済み、籾摺りも済んで、盗人農家が出張所へ相談に来て、
「えらいもち米が交ぜって、検査に通るじゃろうか?」 と聞いたそうな、
ことの次第を知っている職員は、
「もち米とうるち米を選り分けたら、銘柄で検査します」 と厳しいことを言うたとか。
とうとう、この年は検査に出さなんだ。1袋の30Kgでも、粒選りが
できるもんじゃない。

 うるち米は稲穂が黄色に稔る、  もち米は稲穂が茶色に稔る、しかし
ヒメノモチだけはうるち米と同じ黄色の稲穂で、田では見分けが付かない、
これを乾燥すると、もち米らしく「はぜて」 て白くなる。
味が良いので、この地方では時々植えられていた品種である。

 翌年から、稲たばが畦を越すことはなくなったそうな。


*** その2 ***
 

           後年、玄米の容器が紙袋になり、量も30kgになったことから、
(米の)検査場所の混乱に乗じて、盗難が時々出るようになった、
30kgなら簡単に持てて、乗用車にもほうり込めるようで、

 また、平和ボケした農村の無用心の悪さから、納屋(なや)・物置・作業場等から
米を盗むのも増えた、折りから、自動精米(とうせい)機がどんどんできて、
だれでも気軽に白米にできるようになったもので。


*** その3 ***
 

           いやいや、もっとひでぇ盗人も出た、コンバインが普及して、農協等が
刈り取りから、出荷まで、請け負うようになってからの話しじゃ、
婆様がふと見ると自分の家の田んぼに、コンバインが入って、バリバリ刈って
いるではないか、てっきり農協が来てくれたと思い、婆様、「お茶でも出さにゃあ」
と、家に帰って再び来てみると、もういない、
「早えぇ、もんじゃ、よう働く」 と感心していたが、夕方、息子が帰っていわく、
「刈り取りゅう、頼んだこたぁ、ねぇで」 、実に、堂々としたドロボーだった。

         むかし、ちょっと昔、ごっそり。

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