マックノート彗星 その2

<ζ(1/2)の導出 Cos[ s=1/2, 2π/3代入, πテイラー] >
<y=log(sinx) を解にもつ微分方程式とその一般解>
<y=-log(sinx) を解にもつ微分方程式とその一般解>
<y=±log(x/sinx) を解にもつ微分方程式とその一般解>
< ζ(s)の美しい式 >
< ζ(s)の美しい式 その2>
<y=x/tanx を解にもつ微分方程式とその一般解>
<y=x/tanhx を解にもつ微分方程式とその一般解>


Cos[ 2π/3代入, πテイラー]でζ(1/2)を導出した。y=±log(sinx)を解にもつ微分方程式とその一般解を求めた。
y=±log(x/sinx)を解にもつ微分方程式とその一般解を求めた。ζ(s)の美しい式を出した。
y=x/tanxやy=x/tanhxを解にもつ微分方程式(広義のリッカチ)とその一般解を求めた。


2007/1/20         <ζ(1/2)の導出 Cos[ s=1/2, 2π/3代入, πテイラー] 

 「その1」の継続で、ここでは、Cos[ s=1/2, 2π/3代入, πテイラー]でζ(1/2)を導出する。

[ζ(1/2)の導出]Cos[ s=1/2, 2π/3代入, πテイラー]
もちろんまず
 f(x)=(cosx)/1^0.5 + (cos2x)/2^0.5 + (cos3x)/3^0.5 + (cos4x)/4^0.5 + ・・・ -------@

という母関数を考える。
@で xに2π/3を代入すると
 f(2π/3)
 =-1/2・(1/1^0.5 + 1/2^0.5 - 2/3^0.5 + 1/4^0.5 + 1/5^0.5 - 2/6^0.5 + 1/7^0.5 + 1/8^0.5 - 2/9^0.5 + ・・・ )
 =-1/2・{(1/1^0.5 + 1/2^0.5 + 1/3^0.5 + 1/4^0.5 + 1/5^0.5 + 1/6^0.5 + 1/7^0.5 + 1/8^0.5 + 1/9^0.5 + ・・・ )
       - (3/3^0.5 + 3/6^0.5 + 3/9^0.5 + 3/12^0.5 + ・・・)}
 =-1/2・{ζ(1/2) - 3/3^0.5(1/1^0.5 + 1/2^0.5 + 1/3^0.5 + 1/4^0.5 + ・・・)}
 =-1/2・{ζ(1/2) - √3・ζ(1/2)}
 =-1/2・(1 - √3)・ζ(1/2)      ------A

となりζ(1/2)が現れた。

 次に、@の右辺をx=πの周りテイラー展開すると次のようになる。

 f(x)=-(1-√2)・ζ(1/2) + (1-2^2.5)・ζ(-3/2)(x-π)^2 /2!- (1-2^4.5)・ζ(-7/2)(x-π)^4 /4!
      + (1-2^6.5)・ζ(-11/2)・(x-π)^6 /6! - (1-2^8.5)・ζ(-15/2)・(x-π)^8 /8!
        + (1-2^10.5)・ζ(-19/2)・(x-π)^10 /10! - (1-2^12.5)・ζ(-23/2)・(x-π)^12 /12!
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・          -------B

 こちらにもζ(1/2)が出た。ここでζ(s)の関数等式
  ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s) 
を利用して、Bのζ(-3/2),ζ(-7/2)・・・をすべて現実的なζ(5/2) ,ζ(9/2),・・・に直して整理整頓すると次のようになる。

 f(x)=-(1-√2)・ζ(1/2)
      + (2^2.5-1)・(4!/(2^6・2!・π^2))・ζ(5/2)(x-π)^2 /2!
        + (2^4.5-1)・(8!/(2^12・4!・π^4))・ζ(9/2)(x-π)^4 /4!
          + (2^6.5-1)・(12!/(2^18・6!・π^6))・ζ(13/2)・(x-π)^6 /6!
            + (2^8.5-1)・(16!/(2^24・8!・π^8))・ζ(17/2)・(x-π)^8 /8!
                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       -----C

これにx=2π/3を代入して整理すると、次となる。
 f(x)=-(1-√2)・ζ(1/2)
      + (√2-1/2^2)・(4!/(2^4・(2!)^2))・ζ(5/2)(1/3)^2
        + (√2-1/2^4)・(8!/(2^8・(4!)^2))・ζ(9/2)(1/3)^4
          + (√2-1/2^6)・(12!/(2^12・(6!)^2))・ζ(13/2)・(1/3)^6
            + (√2-1/2^8)・(16!/(2^16・(8!)^2))・ζ(17/2)・(1/3)^8
                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       -----D


 AとDは等しいのでζ(1/2)を左辺にまとめて整理すると次のようになる。

(1/2+ √3/2-√2)・ζ(1/2)
 =(√2-1/2^2)・{4!/(2^4・(2!)^2)}・ζ(5/2)(1/3)^2
     + (√2-1/2^4)・{8!/(2^8・(4!)^2)}・ζ(9/2)(1/3)^4
       + (√2-1/2^6)・{12!/(2^12・(6!)^2)}・ζ(13/2)・(1/3)^6
         + (√2-1/2^8)・{16!/(2^16・(8!)^2)}・ζ(17/2)・(1/3)^8
             ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・       -----E

 これまでのものと違ったζ(1/2)の表式が得られた。logは自然対数。

ζ(1/2)値は、math worldに詳しい値があり次の通り。
 ζ(1/2)=-1.46035450880・・・

 ζ(1/2)は通常の意味では発散するが、解析接続された(繰り込まれた)意味としての値である。
 よって、
 Eの左辺=0.070371793・・
となる。
 これを目標値として、E右辺がこれに収束するか見よう。Excelで計算した結果、
ζ(5/2)=1.341487198・・
ζ(9/2)=1.054707511・・
ζ(13/2)=1.0120059・・
となる。
 これを利用して電卓で手計算すると、
Eの第1項目   =0.06507406・・
Eの第2項目まで=0.06988677・・
Eの第3項目まで=0.07032476・・

となり、急速に収束していく。

[終わり]

 まとめておこう。

テイラーシステム Cos[ s=1/2, 2π/3代入, πテイラー]

 (1/2+ √3/2-√2)・ζ(1/2)
  =(√2-1/2^2)・{4!/(2^4・(2!)^2)}・ζ(5/2)(1/3)^2
      + (√2-1/2^4)・{8!/(2^8・(4!)^2)}・ζ(9/2)(1/3)^4
        + (√2-1/2^6)・{12!/(2^12・(6!)^2)}・ζ(13/2)・(1/3)^6
          + (√2-1/2^8)・{16!/(2^16・(8!)^2)}・ζ(17/2)・(1/3)^8
              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





2007/1/20         <y=log(sinx) を解にもつ微分方程式とその一般解>

 ここではすこし道草をして発見したことについて述べる。ゼータ関数と微分方程式に関することである。
場の量子論の発散の困難の解消へ その3」でやっていたことと関連する。
 私は物理に興味があるためか、ゼータ関数を研究していても、なにか微分方程式との関連はさぐれないかといつも
思っている。

これまでの結果をすこし復習したい。「場の量子論の発散の困難の解消へ その3」では非常に面白い結果を得た。
そこではゼータの母関数cosx/sonxに着目し、それを解にもつ微分方程式とその一般解まで求めることに成功し、
その結果を「ハレー彗星 その8」でおしすすめた。

 さて、ここでは、
 y=log(sinx)
という関数に着目し、これを解にもつ微分方程式とその一般解まで求めたい。なぜこの関数に着目するかといえば、
これも、ゼータ関数の母関数になっているからであり、きわめてゼータで重要な関数だからである。
それは「ゼータ関数のいくつかの点について」シリーズで見たとおりである。
 私の初期のゼータ研究はこのlog(sinx)を中心に回っていたといっても過言ではない。なお、log(sinx)を1回微分する
とcosx/sonxになり、これも当然母関数になる。

「ゼータ関数のいくつかの点について」では、等式

 log(sinx)==-cos2x/1 - cos4x/2 - cos6x/3 - ・・・ -log2     -----A

を用いて、この両辺を重回積分してζ(s)の特殊値を求めていったのであった。
例えば、「ゼータ関数のいくつかの点について その5」では@の両辺を4回積分してζ(5)を求めている。
なお、このAはオイラー全集にも掲載されている式として、黒川信重教授の「数学の夢 素数からのひろがり」(岩波書店)
にも載っている。

 また、このlog(sinx)がゼータで重要だと思うのは、

 log(πx/sinπx)= 2{ζ(2)x^2 /2 + ζ(4)x^4 /4 + ζ(6)x^6 /6 + ・・・ }   -----B
                                            (  0 < |x| < 1 )

という驚くべき等式があるからでもあり、これは形もさることながら、私が3年ほど前奇数ゼータを求めた際に本質的
に重要な役割を演じてくれた等式である。「ゼータ関数のいくつかの点について その3」ではBを私が独自に導いた
状況と結果を記している。(既に知られている等式であることが後からわかったが)

 この5年間私はゼータ関数の様々な研究をしてきたが、Bはゼータ世界で最も重要な等式の一つと思う。
前置き終わり。

 これからが本題である。
 y=log(sinx)     -----@

を特解(特殊解)にもつ微分方程式を得るのは簡単である。@より、
  sinx=e^y   -----A

@を1回微分して、
 y´=cosx/sinx   -----B

よって、y´^2=(cosx)^2/(sinx)^2={1-(sinx)^2}/(sinx)^2=1/(sinx)^2 - 1
となるから、
  y´^2=1/(sinx)^2 - 1    -----C

である。CとAから、
 y´^2=1/e^2y - 1

と出る。よって、求める微分方程式は、

   y´^2=e^(-2y) - 1    ------D

と出た。
 まず微分方程式が求まったが、このような非線形の微分方程式となった。これが y=log(sinx) を特解にもつ微分
方程式である。
 Dは非線形であり、これを一般的に解くのは容易でなく、普通ならばきわめて難しい。
しかし、すこしの計算でなんと一般解がたちまちに求まってしまった。その過程を述べる。

 まず、これまでの多くの計算から、勘で
 y=log(cosx)    -----E

もDの特解になっているのでないか?と思った。そこで調べてみると、ほんとうにDの解になっていた。
EをDに放り込めば確認できるのでやっていただきたい。
 ここまででDは、y=log(sinx) と y=log(cosx) を解をもつとわかった。
Dは1階の微分方程式であるから、一般解は定数Cを一つ含むものとなる。それをひねり出せばよい。
 cosx=sin(x+π/2)
であるから、sin(x+C)が一般解となっているのではないかと予想した。その予想は正しく、
 y=log(sin(x+C))
をDに代入すれば、Dを満たすことがわかった。すなわち、Dの一般解は
  y=log(sin(x+C))

と判明した。
なお微分方程式
   y´^2=e^(-2y) - 1    ------D
は、右辺をテイラー展開することにより、
   y´^2=- (2y)/1!+ (2y)^2/2!- (2y)^3/3!+ (2y)^4 /4!- ・・・・    -----F

とも表現できるし、また
  y=-log√(y´^2+1)   -----G
とも表現できる。
つまり、D、F、Gはどれでも同じである。

 まとめておこう。

[y=log(sinx)を特解にもつ微分方程式に関する結果]

微分方程式 y´^2=e^(-2y) - 1 の一般解は、
 y=log(sin(x+C))
である。
 Cは任意の定数。





2007/1/20         <y=-log(sinx) を解にもつ微分方程式とその一般解>

 上のつづきで、さらに面白い事実を見つけたので報告する。
上でみた微分方程式
    y´^2=e^(-2y) - 1  -----@
と対称的な?微分方程式
   y´^2=e^(2y) - 1    ----A

の一般解はなんなのだろうか?とふと思った。Aが@に対して対称的なものとなっていることは、右辺のテイラー
展開を考察するとすぐにわかる。
 視察により、このAの一般解がy=-log(sin(x+C))であることがわかった。Cは任意定数。
非常に面白い結果である。

 なぜ面白いかといえば、一つ上でみたA式
 log(sinx)==-cos2x/1 - cos4x/2 - cos6x/3 - ・・・ -log2     -----A

から、y=log(sinx) も y=-log(sinx) もどちらも本質的に同じだからである。
Aの特解が y=-log(sinx) であるというわけである。

 つまりA式に着目した場合の母関数 y=±log(sinx) を特解にもつ微分方程式が二つ求まったのである。

なお微分方程式
   y´^2=e^(2y) - 1    ------A
は、右辺をテイラー展開することにより、
   y´^2= (2y)/1!+ (2y)^2/2!+ (2y)^3/3!+ (2y)^4 /4!+ ・・・・    -----B

とも表現できるし、また
  y=log√(y´^2+1)   -----C
とも表現できる。
つまり、A、B、Cはどれでも同じである。

y=-log(sinx) の場合を y=log(sinx)の場合とともにまとめておく。

[y=-log(sinx)を特解にもつ微分方程式に関する結果]

微分方程式 y´^2=e^(2y) - 1 の一般解は、

 y=-log(sin(x+C))

である。Cは任意の定数。


[y=log(sinx)を特解にもつ微分方程式に関する結果]

微分方程式 y´^2=e^(-2y) - 1 の一般解は、

 y=log(sin(x+C))

である。Cは任意の定数。





2007/1/21       <y=±log(x/sinx) を解にもつ微分方程式とその一般解>

 次に、y=log(x/sinx)を特解とする微分方程式とその一般解を求めたい。上で、次の式を見た。

 log(πx/sinπx)= 2{ζ(2) x^2 /2 + ζ(4)x^4 /4 + ζ(6)x^6 /6 + ・・・ }   -----@
                                            (  0 < |x| < 1 )

 これはゼータ世界で重要な役割を演じる等式であることを指摘したが、この左辺 log(πx/sinπx)つまり
y=log(x/sinx) を解にもつ微分方程式をここでは求めよう。

 さて、
  y=log(x/sinx)     -----A
より、
 x/sinx=e^y
とできる。よって、
 1/(sinx)^2=e^2y/x^2     ------B
 
 またAより、y=logx - log(sinx)
この両辺を微分して
  y´=1/x - cosx/sinx
よって、cosx/sinx=1/x - y´
この両辺を2乗して、
 (cosx)^2/(sinx)^2=1/x^2 - 2y´/x + y´^2  
ここで(cosx)^2=1- (sinx)^2 だから
  1/(sinx)^2 - 1=1/x^2 - 2y´/x + y´^2     -----C

BをCに代入して
  e^2y/x^2 - 1=1/x^2 - 2y´/x + y´^2
よって、求める微分方程式は次のようになる。

 y´^2 - 2y´/x + (1-e^2y)/x^2 + 1=0   -----D

 これがy=log(x/sinx)を特解とする微分方程式であるとわかった。非線形の微分方程式である。

 さて、任意定数Cをふくむ一般解を求めたい。Dは非線形であり形も複雑であるから、ふつうに考えれば一般解
を求めるのはほとんど不可能と思えるのであるが、ここでもすぐに一般解が求まった。上方でのy=log(sinx)の場合
と同様の類推がここでも成り立っていたからである。
すなわち、y=log(x/sinx)が特解なら、y=log(x/sin(x+C))が一般解でないか?と予想した。その予想は当たり、
Dの一般解は
  y=log(x/sin(x+C))      -----E

とわかった。Cは任意定数。
 EがDの解となっていることはDに代入すれば簡単に確認できる。

上方のy=±log(x/sinx)の場合と同様に、ここで y=-log(x/sinx) の場合も調べよう。
詳細は略すが、y=log(x/sinx)と全く同様にして、y=-log(x/sinx)を特解とする微分方程式は次となる。

 y´^2 + 2y´/x + (1-e^(-2y))/x^2 + 1=0   -----F

Dとの対称性を味わっていただきたい。

以上をまとめておこう。

[y=log(x/sinx)を特解にもつ微分方程式に関する結果]

微分方程式 y´^2 - 2y´/x + (1-e^2y)/x^2 + 1=0 の一般解は、

 y=log(x/sin(x+C))

である。Cは任意の定数。


[y=-log(x/sinx)を特解にもつ微分方程式に関する結果]

微分方程式 y´^2 + 2y´/x + (1-e^(-2y))/x^2 + 1=0 の一般解は、

 y=-log(x/sin(x+C))

である。Cは任意の定数。





2007/1/23             < ζ(s)の美しい式 >

 上で私は次の式がゼータ世界で最も重要なものの一つであると豪語した。

 log(πx/sinπx)= 2{ζ(2) x^2 /2 + ζ(4)x^4 /4 + ζ(6)x^6 /6 + ・・・ }   -----@
                                            (  0 < |x| < 1 )

 この式はいくら眺めても飽きない不思議さをもつが、それのみならず実用面でも素晴らしい働きをすることは当サイト
で何度も見てきた。
 さて、これを1回微分した式に興味をもった。そこから美しい式がとび出したので紹介したい。
@の両辺を1回微分すると、次のようになる。(右辺は収束半径内で項別微分OK)

 1/x - π(cosπx/sinπx)=2{ζ(2) x + ζ(4)x^3 + ζ(6)x^5 + ・・・ }   -----A
                                            (  0 < |x| < 1 )

 Aにx=1/2を代入して整理すると次が得られる。

 1/2=ζ(2)・(1/2)^2 + ζ(4)・(1/2)^4 + ζ(6)・(1/2)^6 + ・・・    -----B

 なんと美しい式か!収束も速く、たちまちに右辺は左辺に収束する。
 Aにx=1/4を代入して整理すると次が得られる。

 π/8=1/2-{ζ(2)・(1/4)^2 + ζ(4)・(1/4)^4 + ζ(6)・(1/4)^6 + ・・・}    -----C

これらが既に知られているかどうかわからなかったが、数学仲間のSugimoto氏がかつてこの種の式を多く出して
いたので気になり、氏のサイトにあるかもしれないと思い調べるとやはり出ていた。
http://homepage3.nifty.com/y_sugi/gf/gf21.htm
ここに出ている。
しかし、導出過程が違っている。既出の式の再発見というわけだが、また違う登山道がわかったというちょっとした
意味あいはあると思う。
 Bを見ていて、私は次のように変形できることに気づいた。

  0=ζ(0)・(1/2)^0 + ζ(2)・(1/2)^2 + ζ(4)・(1/2)^4 + ζ(6)・(1/2)^6 + ・・・      ------D


  驚くべき美と調和というほかない。もちろんζ(0)=-1/2である。

 同様の観点から、Cを書き直すと、

 π/8=-{ζ(0)・(1/4)^0 + ζ(2)・(1/4)^2 + ζ(4)・(1/4)^4 + ζ(6)・(1/4)^6 + ・・・}    -----E

まとめておこう。

ζ(s)の式

  0=ζ(0)・(1/2)^0 + ζ(2)・(1/2)^2 + ζ(4)・(1/2)^4 + ζ(6)・(1/2)^6 + ・・・


  π/8=-{ζ(0)・(1/4)^0 + ζ(2)・(1/4)^2 + ζ(4)・(1/4)^4 + ζ(6)・(1/4)^6 + ・・・}

    





2007/1/23             < ζ(s)の美しい式 その2>

一つ上でみた次式を再度取り上げたい。

 1/x - π(cosπx/sinπx)=2{ζ(2) x + ζ(4)x^3 + ζ(6)x^5 + ・・・ }   -----@
                                            (  0 < |x| < 1 )

 これもさらに美しい形に変形できることに気づいた。両辺にx/2をかけてζ(0)=-1/2を用いれば次のようになる。

 ζ(0)・xπ・(cosπx/sinπx)=ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ・・・    -----A
                                            (  0 < |x| < 1 )

あるいは当然ながら次でも同じである。

 ζ(0)・(πx/tanπx)=ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ・・・    -----B
                                            (  0 < |x| < 1 )

 これらも優雅な式である。
 AやBを眺めるだけで、三角関数とζ(s)がいかに密接に結びついているかがわかるだろう。
あとから気づいたが、じつは上式は、「ゼータ関数のいくつかの点について その3」の中で3年半前に既に求めて
いた。そのときは部分分数展開を利用して求めている。しかしいまBへと到達する別の登山ルートが見つかったと
いえる。

Aより、sinπx=A・cosπxの形にすると、次となる。

 sinπx=ζ(0)・xπ/{ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ・・・}cosπx    -----C

 さて、三角関数では当然ながらsinとcosの間に次の関係がある。

   sin(πx+π/2)=cos(πx)  -----D

 CとDを見比べると面白い。
 sinは”位相”空間を通ってcos世界へといけるが、Cのようにsinはゼータの橋をわたってもcos世界へ
といけるのである。つくづく面白い。
 まとめておこう。

ζ(s)の式

 ζ(0)・xπ・(cosπx/sinπx)=ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ・・・
                                            (  0 < |x| < 1 )

 同じだが次のようにも表現できる

 ζ(0)・(πx/tanπx)=ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ・・・
                                            (  0 < |x| < 1 )





2007/1/25       <y=x/tanx を解にもつ微分方程式とその一般解>

 上で次の不思議な式を見た。

 ζ(0)・xπ/tanπx=ζ(0)x^0 + ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 + ζ(6)x^6 + ・・・    -----A
                                            (  0 < |x| < 1 )

 この式はゼータ世界できわめて本質的な意味をもつことは一つ上で見たとおりである。ここでも、左辺の関数を
解にもつ微分方程式を調べたくなった。解が本質的なものならば、その微分方程式も面白いにちがいないと思う
からである。
早速、y=x/tanx =x・cosx/sinxを特解にもつ微分方程式を求めよう。
まず
  y=x・cosx/sinx     -----A
より、
 y^2=x^2・(cosx)^2/(sinx)^2
   =x^2・{1-(sinx)^2}/(sinx)^2
   =x^2/(sinx)^2 - x^2
よって、
  x^2/(sinx)^2 =y^2 + x^2    ------B

またAの両辺を微分して
 y´={(x・cosx)´sinx - x・cosx(sinx)´}/(sinx)^2
   ={cosx・sinx - x・(sinx)^2-x・(cosx)^2}/(sinx)^2
   ={cosx・sinx - x}/(sinx)^2
よって、
  xy´= x・cosx/sinx- x^2/(sinx)^2
Aをこれに代入して
  xy´= y - x^2/(sinx)^2    ------C

BをCに代入して
  xy´+ y^2 - y + x^2=0 
よって、
  y´+ (y^2 - y)/x + x=0    ------D

 これがy=x/tanxを特解とする微分方程式であり、1階の非線形の微分方程式である。
さて、1階だから任意定数を一つ含む解を求めればそれが一般解となるわけだが、三角関数の性質を考えると
それはすぐに求まり次が一般解となる。

  y=x/tan(x+C)      -----E

Cは任意定数。
じつは、このページ上方でも特解のsinやcosの位相の中をx-->x+Cとするだけで一般解がすんなり求まり驚いてい
たわけだが、三角関数の性質を考えればじつは当たり前であるとわかる(考えられたい)。
EがDの解となっていることはDに代入すれば簡単に確認できる。

 Dを眺めよう。
  y´+ (y^2 - y)/x + x=0    ------D

 この微分方程式はなにか数学で知られた形のものなのであろうか?
微分方程式の本(*)で調べると、これは”広義のリッカチの微分方程式”というものに分類されるものであることがわ
かった。広義のリッカチの微分方程式は次のようなものである。
 y´ + P(x)y^2 + Q(x)y + R(x)=0

 Dと見比べていただきたい。Dはまさしく広義のリッカチとなっている。
Dがなにか物理の微分方程式と関連がつけば面白いのだが、とにもかくにも広義のリッカチの微分方程式
というものであることがわかったのはうれしい。
 そういえば、「場の量理論の発散の困難の解消 その3」の<y´+ y^2=-1の一般解、求まる!>でもゼータに
関するcosx/sinxを特解にもつ微分方程式を広義のリッカチに帰着させ一般解を求めていた。

 ゼータと広義のリッカチの微分方程式とは深い関係にあるようである。

まとめておこう。

[y=x/tanxを特解にもつ微分方程式に関する結果]

微分方程式 y´+ (y^2 - y)/x + x=0 の一般解は、

 y=x/tan(x+C)

である。Cは任意定数。



(*)「演習 微分方程式」(寺田/坂田/斎藤共著、サイエンス社)


2007/1/25       <y=x/tanhx を解にもつ微分方程式とその一般解>

 この際ついでであるので、ゼータの母関数たる資格をもつを思われる関数を解にもつ微分方程式をどんどんと導出
しておきたい。「ゼータ関数のいくつかの点について その3」で次の美しい式を導出していた。

    πx/tanhπx=-2{ζ(0) x^0 - ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 - ζ(6)x^6 + ・・・ } -----@
                                             ( 0 < |x| < 1 )
 同じだが、次のようにも表現できる。

    ζ(0)・πx/tanhπx=ζ(0) x^0 - ζ(2) x^2 + ζ(4)x^4 - ζ(6)x^6 + ・・・  -----A
                                             ( 0 < |x| < 1 )

 ここで tanhx={e^x-e(-x)}/{e^x+e(-x)} である。
左辺に注目して、y=x/tanhxを解とする微分方程式を求めよう。
詳細は省くが、やや複雑な計算を経て、y=x/tanhxを特解(特殊解)とする微分方程式は次のように出た。

  y´+ (y^2 - y)/x - x=0    ------B

これも広義のリッカチの微分方程式である。1階だから任意定数を一つ含む解を求めればそれが一般解となるわけ
だが、tanhx={e^x-e(-x)}/{e^x+e(-x)}を考え、e^xの微分の性質を考えると次が一般解となることは容易にわかる。
  y=x/tanh(x+C)      -----C

Cは任意定数。
 ところでBは一つ上で見たy=x/tan(x+C)を一般解とする微分方程式

  y´+ (y^2 - y)/x + x=0   ------D

と驚くほど似ている。BとDを比べられたい。比較する形でまとめておこう。

[y=x/tanhxを特解にもつ微分方程式に関する結果]

微分方程式 y´+ (y^2 - y)/x - x=0 の一般解は、

 y=x/tanh(x+C)

である。Cは任意定数。


[y=x/tanxを特解にもつ微分方程式に関する結果]

微分方程式 y´+ (y^2 - y)/x + x=0 の一般解は、

 y=x/tan(x+C)

である。Cは任意定数。







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