< 不思議な素数ゼータ >
< 素数ゼータ その2>
Cos[ 2π/3代入, πテイラー]でζ(5/2)、ζ(9/2)を導出した。log2の考察。素数ゼータP(s)の研究。
ゼータ素数関数ζp(s)のGourdonとSebahの論文。問題1、2を提示。「素数の逆数の交代級数」の問題3を提示。
すこし道草をしていたが本道に戻し、「その2」の継続で、ここではCos[ s=5/2, 2π/3代入, πテイラー]でζ(5/2)を
導出する。
[ζ(5/2)の導出]Cos[ s=5/2, 2π/3代入, πテイラー]
もちろんまず
f(x)=(cosx)/1^2.5 + (cos2x)/2^2.5 + (cos3x)/3^2.5 + (cos4x)/4^2.5 + ・・・ -------@
という母関数を考える。
@で xに2π/3を代入すると
f(2π/3)
=-1/2・(1/1^2.5 + 1/2^2.5 - 2/3^2.5 + 1/4^2.5 + 1/5^2.5 - 2/6^2.5 + 1/7^2.5 + 1/8^2.5 - 2/9^2.5 + ・・・ )
=-1/2・{(1/1^2.5 + 1/2^2.5 + 1/3^2.5 + 1/4^2.5 + 1/5^2.5 + 1/6^2.5 + 1/7^2.5 + 1/8^2.5 + 1/9^2.5 + ・・・ )
- (3/3^2.5 + 3/6^2.5 + 3/9^2.5 + 3/12^2.5 + ・・・)}
=-1/2・{ζ(5/2) - 3/3^2.5(1/1^2.5 + 1/2^2.5 + 1/3^2.5 + 1/4^2.5 + ・・・)}
=-1/2・{ζ(5/2) -1/3^1.5・ζ(5/2)}
=-1/2・(1 - 1/3^1.5)・ζ(5/2) ------A
となりζ(5/2)が現れた。
次に、@の右辺をx=πの周りでテイラー展開すると次のようになる。
f(x)=-(1-1/2^1.5)・ζ(5/2) + (1-2^0.5)・ζ(1/2)・(x-π)^2 /2!- (1-2^2.5)・ζ(-3/2)・(x-π)^4 /4!
+ (1-2^4.5)・ζ(-7/2)・(x-π)^6 /6! - (1-2^6.5)・ζ(-11/2)・(x-π)^8 /8!
+ (1-2^8.5)・ζ(-15/2)・(x-π)^10 /10! - (1-2^10.5)・ζ(-19/2)・(x-π)^12 /12!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -------B
こちらにもζ(5/2)が出た。ここでζ(s)の関数等式
ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)
を利用して、Bのζ(-3/2),ζ(-7/2)・・・をすべて現実的なζ(5/2) ,ζ(9/2),・・・に直して、さらにxに2π/3を代入
して整理整頓すると次のようになる。
f(2π/3)=-(1-1/2^1.5)・ζ(5/2) +(1-2^0.5)・ζ(1/2)・(π/3)^2 /2!
-π^2・[(√2-1/2^2)・(4!/(2^4・2!・4!))・ζ(5/2)・(1/3)^4
+ (√2-1/2^4)・(8!/(2^8・4!・6!))・ζ(9/2)・(1/3)^6
+ (√2-1/2^6)・(12!/(2^12・6!・8!))・ζ(13/2)・(1/3)^8
+ (√2-1/2^8)・(16!/(2^16・8!・10!))・ζ(17/2)・(1/3)^10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ] -----C
AとCは等しいのでζ(5/2)を左辺にまとめて整理すると次のようになる。
{1/2 - 1/2^1.5 + 1/(2・3^1.5)}・ζ(5/2)
=π^2・[- (√2-1/2^0)・(1/2!)・ζ(1/2)/3^2
- (√2-1/2^2)・(4!/(2^4・2!・4!))・ζ(5/2)/3^4
- (√2-1/2^4)・(8!/(2^8・4!・6!))・ζ(9/2)/3^6
- (√2-1/2^6)・(12!/(2^12・6!・8!))・ζ(13/2)/3^8
- (√2-1/2^8)・(16!/(2^16・8!・10!))・ζ(17/2)/3^10
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ] -----D
美しい式である。これまでのものと違ったζ(5/2)の表式が得られた。logは自然対数。
ζ(5/2)値は、数値計算で求まり
ζ(5/2)=1.341487198・・
である。
よって、
Dの左辺=0.325540917・・(目標値)
となる。
これを目標値として、D右辺がこれに収束するか見よう。Excelの数値計算で、
ζ(5/2)=1.341487198・・
ζ(9/2)=1.054707511・・
ζ(13/2)=1.0120059・・
となる。ζ(1/2)値は、math worldに詳しい値があり次の通り。
ζ(1/2)=-1.46035450880・・・
これを利用して電卓で手計算すると、
D右辺の第1項目 =0.33167279・・
D右辺の第2項目まで=0.32572598・・
D右辺の第3項目まで=0.32555006・・
となり、急速に収束していく。
[終わり]
まとめておこう。
次にCos[ s=9/2, 2π/3代入, πテイラー]でζ(9/2)を導出する。
[ζ(9/2)の導出]Cos[ s=9/2, 2π/3代入, πテイラー]
まず
f(x)=(cosx)/1^4.5 + (cos2x)/2^4.5 + (cos3x)/3^4.5 + (cos4x)/4^4.5 + ・・・ -------@
という母関数を考える。
@で xに2π/3を代入すると
f(2π/3)
=-1/2・(1/1^4.5 + 1/2^4.5 - 2/3^4.5 + 1/4^4.5 + 1/5^4.5 - 2/6^4.5 + 1/7^4.5 + 1/8^4.5 - 2/9^4.5 + ・・・ )
=-1/2・{(1/1^4.5 + 1/2^4.5 + 1/3^4.5 + 1/4^4.5 + 1/5^4.5 + 1/6^4.5 + 1/7^4.5 + 1/8^4.5 + 1/9^4.5 + ・・・ )
- (3/3^4.5 + 3/6^4.5 + 3/9^4.5 + 3/12^4.5 + ・・・)}
=-1/2・{ζ(9/2) - 3/3^4.5(1/1^4.5 + 1/2^4.5 + 1/3^4.5 + 1/4^4.5 + ・・・)}
=-1/2・{ζ(9/2) -1/3^1.5・ζ(9/2)}
=-1/2・(1 - 1/3^3.5)・ζ(9/2) ------A
となりζ(9/2)が現れた。
次に、@の右辺をx=πの周りでテイラー展開すると次のようになる。
f(x)=-(1-1/2^3.5)・ζ(9/2) + (1-1/2^1.5)・ζ(5/2)・(x-π)^2 /2!- (1-2^0.5)・ζ(1/2)・(x-π)^4 /4!
+ (1-2^2.5)・ζ(-3/2)・(x-π)^6 /6! - (1-2^4.5)・ζ(-7/2)・(x-π)^8 /8!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ -------B
こちらにもζ(9/2)が出た。ここでζ(s)の関数等式
ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)
を利用して、Bのζ(-3/2),ζ(-7/2)・・・をすべて現実的なζ(5/2) ,ζ(9/2),・・・に直して、さらにxに2π/3を代入
して整理整頓すると次のようになる。
f(2π/3)
=-(1-1/2^3.5)・ζ(9/2) + (1-1/2^1.5)・ζ(5/2)・(π/3)^2 /2!- (1-2^0.5)・ζ(1/2)・(π/3)^4 /4!
+ π^4・[(√2-1/2^2)・(4!/(2^4・2!・6!))・ζ(5/2)・(1/3)^6
+ (√2-1/2^4)・(8!/(2^8・4!・8!))・ζ(9/2)・(1/3)^8
+ (√2-1/2^6)・(12!/(2^12・6!・10!))・ζ(13/2)・(1/3)^10
+ (√2-1/2^8)・(16!/(2^16・8!・12!))・ζ(17/2)・(1/3)^12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ] -----C
AとCは等しいのでζ(9/2)を左辺にまとめて整理すると次のようになる。
{1/2 - 1/2^3.5 + 1/(2・3^3.5)}・ζ(9/2)
=(1-1/2^1.5)・ζ(5/2)・(π/3)^2 /2!
+ π^4・[(√2-1/2^0)・(0!/(2^0・0!・4!))・ζ(1/2)・(1/3)^4
+ (√2-1/2^2)・(4!/(2^4・2!・6!))・ζ(5/2)・(1/3)^6
+ (√2-1/2^4)・(8!/(2^8・4!・8!))・ζ(9/2)・(1/3)^8
+ (√2-1/2^6)・(12!/(2^12・6!・10!))・ζ(13/2)・(1/3)^10
+ (√2-1/2^8)・(16!/(2^16・8!・12!))・ζ(17/2)・(1/3)^12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ] -----D
これまでのものと違うζ(9/2)の表式が得られた。logは自然対数。
ζ(9/2)値は、数値計算で求まり
ζ(9/2)=1.054707511・・
である。
よって、
Dの左辺=0.445406487・・(目標値)
となる。
これを目標値として、D右辺がこれに収束するか見よう。Excelの数値計算で、
ζ(5/2)=1.341487198・・
となる。ζ(1/2)値は、math worldに詳しい値があり次の通り。
ζ(1/2)=-1.46035450880・・・
これを利用して電卓で手計算すると、
D右辺の第1項目 =0.47549552・・
D右辺の第2項目まで=0.44518553・・
D右辺の第3項目まで=0.44540291・・
と、たった3項で目標値に急速に収束していく。
[終わり]
まとめておこう。
上からの同種条件Cos[ s=1, 2π/3代入, πテイラー]でlog2が出るかを見てみよう。
結論をいえば、じつは簡単に求まらないのである。
「ヘール・ボップ彗星 その3」では、Cos[ s=1, π/2代入, πテイラー]やCos[ s=1, π代入, π/2テイラー]でlog2が
求まった。そのきれいな結果を再度、書いておく。
それならば、Cos[ s=1, 2π/3代入, πテイラー]でも求まりそうなものだが、これが意外に難しいのである。
とにかくやってみよう。
[log2の導出]Cos[ s=1, 2π/3代入, πテイラー]
まず
f(x)=(cosx)/1 + (cos2x)/2 + (cos3x)/3 + (cos4x)/4 + ・・・ -------@
という母関数を考える。@で x=2π/3を代入すると
f(2π/3)
=-1/2・(1/1 + 1/2 - 2/3 + 1/4 + 1/5 - 2/6 + 1/7 + 1/8 - 2/9 + ・・・ )
=-1/2・{(1/1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + 1/5 + 1/6 + 1/7 + 1/8 + 1/9 + ・・・ )
- (3/3 + 3/6 + 3/9 + 3/12 + ・・・)}
=-1/2・{ζ(1) - 3/3(1/1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + ・・・)}
=-1/2・{ζ(1) -1/3^0・ζ(1)}
=-1/2・(1 - 1/3^0)・ζ(1) ------A
となってしまい、うまくlog2を繰り出すことができないのである。
では、まったく絶望的か?というと、そうでもない。上の赤字の箇所を再度よく見てみよう。
A=1/1 + 1/2 - 2/3 + 1/4 + 1/5 - 2/6 + 1/7 + 1/8 - 2/9 + ・・・
であるが、もう少し先まで書くと、
A=1/1 + 1/2 - 2/3 + 1/4 + 1/5 - 2/6 + 1/7 + 1/8 - 2/9 +1/10 + 1/11 - 2/12 + ・・・
である。よくみると、これは収束する交代級数となっている。
そして、
A=(1/1 + 1/2) - 2/3 + (1/4 + 1/5) - 2/6 + (1/7 + 1/8) - 2/9 + (1/10 + 1/11) - 2/12 + ・・・
とすると、それがよくわかる。
つまり、これは、
A=1.5 - (0.66・・) + 0.45 - (0.33・・) + (0.26・・) - (0.22・・) + (0.19・・) - (0.16・・) + ・・・
と、次の項の大きさが前の項のそれより小さくなっているので、これは確実に収束する。
よって、Aのようなヘタな変形ではなく、もっとうまく変形すれば、log2を引き出すことができるのではないかという
希望もあるのである。しかし、いまのところ成功していない。このようなことなのでCos[ s=1, 2π/3代入, πテイラー]
では、まだlog2の式は出せていないという状況である。
ここではテイラーシステムからは外れ、数日前から考察している問題について触れる。
リーマン・ゼータζ(s)は
ζ(s)=1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s + 1/5^s + 1/6^s + ・・・ -----@
であるが、ふと、右辺の各項の分母が素数だけから成るようなゼータは考えられるのだろうか?と思った。
つまり、
P(s)=1/2^s + 1/3^s + 1/5^s + 1/7^s + 1/11^s + ・・・ -----A
というようなゼータ関数は考えられないだろうか? P(s)を素数ゼータと勝手に名づけたのだが。
じつは、この問題より先に、
P(2)=1/2^2 + 1/3^2 + 1/5^2 + 1/7^2 + 1/11^2 + ・・・
や
P(4)=1/2^4 + 1/3^4 + 1/5^4 + 1/7^4 + 1/11^4 + ・・・
はいくらになるのか?と思ったところから出発している。
ζ(2)=π^2/6、ζ(4)=π^4/90
などはよく知られているので、P(2)やP(4)が果たしてこのようにπなどを用いて表されるのか?という問題意識
である。(教科書ではこの問題は見たことがないので自身の問題として考えた。答えがすでにわかっている可能性もあるが)
そこで、まず自然な発想としてAのP(s)をζ(s)を用いて表現することを考えた。
もし、
P(s)=A・ζ(s) ------B
という形にできれば、よく知られたζ(s)の値を用いてP(s)の値もすぐに求まるという発想である。誰でもが思いつく
着想だろう。
ところが、どうしてもBの形にできないのである。
これは私の変形がへたということではなく、不思議なことだが、原理的に無理であることがわかったのである。
その過程の概要を述べる。
[過程]
AのP(s)の分母は素数だけである。一方、@のζ(s)の分母はすべての自然数である。
よって、ζ(s)とP(s)の関係を得ようとする場合、ζ(s)から1を除いた後、ζ(s)の分母の2の倍数の項を(1/2^sだけ残して)
まずすべて除く。
すなわち 1/4^s、1/6^s、1/8^s、1/10^s、・・・・をまず除く。その状態の関数をP1(s)とすると、
P1(s)=(1-1/2^s)ζ(s) - 1 + 1/2^s ------C
となる。まだまだ不完全だが、P1(s)はP(s)にすこし近づいたといえる。
つぎに、3の倍数の項を(1/3^sだけ残して)すべて除く。
すなわち、 1/9^s、1/15^s、1/21^s、1/27^s、・・・・を除く。
ただし、先に2の倍数の項のときに既に除いていたものは、当然除く必要がない(重複に注意)。
その結果の関数をP2(s)とすると、
P2(s)=(1-1/2^s)(1-1/3^s)ζ(s) - 1 + 1/2^s + 1/3^s ------D
である。P1(s)よりP2(s)はP(s)にさらに近づいた。
これを繰り返していけばいずれ、目的のP(s)が求まるはずである。もう少しつづけよう。
5の倍数の項を(1/5^sだけ残して)すべて除いたものは、
P3(s)=(1-1/2^s)(1-1/3^s)(1-1/5^s)ζ(s) - 1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/5^s ------E
7の倍数の項を(1/7^sだけ残して)すべて除いたものは、
P4(s)=(1-1/2^s)(1-1/3^s)(1-1/5^s)(1-1/7^s)ζ(s) - 1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/5^s + 1/7^s ------F
これで規則性がわかった。
これをどんどんと押しすすめれば左辺はP(s)になるので次のようになることは容易にわかる。
P(s)={(1-1/2^s)(1-1/3^s)(1-1/5^s)(1-1/7^s)・・・}ζ(s) - 1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/5^s + 1/7^s +・・・ ---G
これをよく見ていただきたい。
右辺の 1/2^s + 1/3^s + 1/5^s + 1/7^s+・・・ は、P(s)そのものであるので、これもP(s)で置き換えてGは次と
なる。
P(s)={(1-1/2^s)(1-1/3^s)(1-1/5^s)(1-1/7^s)・・・}ζ(s) - 1 + P(s) -----H
なんと、ここで両辺からP(s)が消えてしまうのである!
Hは、結局、次のようになる。
{(1-1/2^s)(1-1/3^s)(1-1/5^s)(1-1/7^s)・・・}ζ(s) = 1 -----I
そして、面白いことにIはリーマン・ゼータζ(s)の定義そのものなのであった!
このように、どうやってもP(s)=A・ζ(s)のような表現はできないという不思議なことになるのである。
[終わり]
よって、上の問題は依然未解決のままである。まとめておこう。
この問題は、非常に興味があります。読者でわかればご報告ください。
Sugimoto氏から情報をいただいたのでお知らせしたい(氏のサイトはこちら)。
上の問題1をどう思われるか氏に質問したところ、この素数ゼータP(s)というもの自体は、知られており、次のサイトに
詳しい内容があると教えてくださった。GourdonとSebahのサイトである。
注意!このサイトは文字化けしやすいので、インターネット・エクスプローラー(IE)を次のようにして見てください。
--> 表示→エンコードが日本語シフトJIS になっているのを、西ヨーロッパ言語(ISO) にする。
私が上で定義した素数ゼータP(s)は、論文ではζp(s)となっているがまったく同じ定義である。
またSugimoto氏の次ページでもすこし研究されていた。
「級数と乗積 ゼータ関数等の級数・乗積・連分数」 3行--> http://homepage3.nifty.com/y_sugi/sp/sp51.htm
「級数と乗積 素数の積と円周率・ゼータ関数」 2003/10/24の部分-->http://homepage3.nifty.com/y_sugi/sp/sp32.htm 上のGourdonとSebahのサイトでは1748年に素数ゼータP(s)をあのオイラーが既に研究していたことが次のように
書いてあり、驚いてしまった。
In 1748, Euler made an estimation of the numbers zp(s) up to zp(36) but only for the even values of s with 15 digits of
accuracy (around 13 digits were correct)
数学者はいろいろなことを考え出す人種であるから、私が一つ上でこの関数に思い至ったときも、誰かがすでに研究
している可能性は十分にあるとおもっていたのだが、なんとそれが260年前のオイラーにまでさかのぼるとは!
ただし、このゼータ素数関数ζp(s)は、ゼータ関数の中ではまったくマイナーな存在であることは間違いない。
ゼータ関数のいろいろな本でも、こんなものは見たことがないからだ。しかし、だからといって重要でないとは限らない。
私の直観では本質的なものを感じる。一つ上の<不思議な素数ゼータ>の「過程」をなぞれば、その深みというもの
を感じざるをえない。
GourdonとSebah論文では”Riemann zeta prime function”となっている。
Sugimoto氏は”直訳すれば「ゼータ素数関数」でしょうか”といわれているが、私の”素数ゼータ”とも近い名前である。
以下は、論文のζp(s)のほうを使わせていただく。もちろん、ζp(s)=P(s)である。
論文には、いろいろな式が見えるが、私が最も惹かれるのはメビウス関数μ(n)を用いた次式である。
ζp(s)=Σμ(n)・(logζ(sn))/n -----@
(n=1〜∞)
ここで右辺のζ(s)はリーマン・ゼータである。”sn”はs×nの意味。
メビウス関数μ(n)は次によって定義される関数である。
μ(1)=1として、
「nがある平方数で割り切れるときはμ(n)=0。n=p1・p2・・・・p rがr個の異なる素数の積のときはμ(n)=(-1)^r」
というものである。
例えば、8は、2^2で割り切れるからμ(8)=0である。
また、6は異なる2個の素数2と3の積であるから、μ(6)=(-1)^2=1となる。
@でs=2とした場合は論文にもあるとおり、
ζp(2)=logζ(2) - {logζ(4)}/2- {logζ(6)}/3- {logζ(10)}/5 + {logζ(12)}/6 - ・・ ------A
となる。
ゼータ素数関数と、リーマン・ゼータζ(s)はこんな関係になっていた!
メビウス関数μ(n)が橋渡しをしている。まったく面白い。
ただし、一つ上の<不思議な素数ゼータ>でも私が示したとおり、ζp(s)=A・ζ(s)というような単純な関係式は
出ないことに注意したい。つまり、ζp(2)=A・ζ(2)などとできない。
Aをすこし検証してみよう。
論文では、ζp(2)の数値計算値が記されていて、それによると次となる。
ζp(2)=0.452247420041065498506543364832247934173231343239892421736418... ------B
さて、Aの右辺がこれに収束していくか、既知のζ(2)=π^2/6、ζ(4)=π^4/90などを用いて電卓を叩いた。
1項までの和=0.49770030・・
2項までの和=0.45814536・・
3項までの和=0.45241390・・
4項までの和=0.45221508・・
となり、Bに漸近していく。
以上。
ただし、私が一つ上で出した問題1、問題2に関しては、論文ではなにも触れられていない。ということは、
この問題は、ほぼ確実に未解決であると思われる(もし解決されていれば、真っ先に載るはずであるから)。
しかし、この問題は、きわめて重要であり、この結果こそ知りたいのだが・・。
問題を再度掲載しておく。
さらに、もう一つ問題を追加させていただきたい。
じつは、上の問題1、2を思いつく前に、素数がらみで「素数の逆数の交代級数はいくらになるのだろう?」との疑問
がわきおこった。すなわち、
1/2-1/3+1/5-1/7+1/11-1/13+・・・ ------C
はいくらか?
という問題である。
素数の逆数の和 1/2+1/3+1/5+1/7+1/11+1/13+・・・が無限大に発散するのはよく知られているが、では、この
交代級数版はどうなのか? こんな問題は本では見たことがないので、気になった。
そこで、数学の巨人・佐藤郁郎氏に聞いたところ氏も「見当がつかない」との返事であった(佐藤氏のサイトはこちら)。
ところでCは必ず収束する。(交代級数は、項の大きさが一つ前の項の大きさより小さくなっていれば、必ず収束する。これはグラフを書
いて幾何学的に考えればすぐにわかる。)
コンピューターの数値的な値など興味はなく、もちろんπなどを用いて簡潔に表示できないか?という問題意識
である。
これも問題3として追加しておこう。
問題1,2,3 これらは、果たしてどうなのだろうか?
---------------------------------------------------------------------
追加2007/2/28
GourdonとSebahのサイトで、もう一つの重要な式を見落としていた。
ζ(s)=Σζp(sn) /n -----D
(n=1〜∞)
ここでsnはs×nの意味である。これは、具体的に書けば、
ζ(2)=ζp(2)/1 + ζp(4)/2 + ζp(6)/3 + ζp(8)/4 + ・・・
ζ(3)=ζp(3)/1 + ζp(6)/2 + ζp(9)/3 + ζp(12)/4 + ・・・
ζ(4)=ζp(4)/1 + ζp(8)/2 + ζp(12)/3 + ζp(16)/4 + ・・・
・
・
ということである。なんというシンプルさだろう。
こんなにも単純で美しい関係が、ζp(s)とζ(s)の間にあること自体、ζp(s)が重要な関数である証拠であろう。
|