エンケ彗星 その2

 条件Cos[ s=s, π代入, π/2テイラー]でζ(3)を出した。テイラーシステム成立条件の別表現を提示した。
Cos[ s=s, π代入, π/2テイラー]でのζ(0)、ζ(-1)、ζ(-3)、・・の場合を確かめた。ζ(2)、ζ(4)、ζ(6)を求めた。
さらにζ(1/4)を導出した。


2006/8/18            < ζ(3)値の導出  > Cos[ s=3, π代入, π/2テイラー]

 テイラーシステムを用い、ζ(3)を条件Cos[ s=3, π代入, π/2テイラー]で求める。

条件Cos[ s=3, π代入, π/2テイラー]とは、
 f(x)=(cosx)/1^3 + (cos2x)/2^3 + (cos3x)/3^3 + (cos4x)/4^3 + ・・・
という母関数をx=π/2周りでテイラー展開したのちπ代入を経由する形でζ(3)を求めるという意味である。

エンケ彗星 その1で出した一般のζ(s)の式を利用しよう。まずそれを掲げる。

テイラーシステムによって得られたζ(s)の表式  条件Cos[ s=s, π代入,π/2テイラー]

 -(1-1/2^s)・(1-1/2^(s-1))・ζ(s) 
   = - L(s-1)・(π/2)^1 /1!
     + 2^(2-s)・(1-2^(3-s))・ζ(s-2)・(π/2)^2 /2! + L(s-3)・(π/2)^3 /3!
     - 2^(4-s)・(1-2^(5-s))・ζ(s-4)・(π/2)^4 /4! - L(s-5)・(π/2)^5 /5!  
     + 2^(6-s)・(1-2^(7-s))・ζ(s-6)・(π/2)^6 /6! + L(s-7)・(π/2)^7 /7!   --------A
            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 -(1-1/2^s)・(1-1/2^(s-1))・ζ(s) 
   = (π/2)^s・[- L(2-s)/{Γ(s-1)・sin((s-1)π/2)・1!} + (2^(s-3)-1)・ζ(3-s)/{Γ(s-2)・cos((s-2)π/2)・2!}
            + L(4-s)/{Γ(s-3)・sin((s-3)π/2)・3!} - (2^(s-5)-1)・ζ(5-s)/{Γ(s-4)・cos((s-4)π/2)・4!}
            - L(6-s)/{Γ(s-5)・sin((s-5)π/2)・5!} + (2^(s-7)-1)・ζ(7-s)/{Γ(s-6)・cos((s-6)π/2)・6!}
            + L(8-s)/{Γ(s-7)・sin((s-7)π/2)・7!} - (2^(s-9)-1)・ζ(9-s)/{Γ(s-8)・cos((s-8)π/2)・8!}
                        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・]  ---B



 Aを使い、ζ(3)を求めよう。

[ζ(3)の導出] Cos[ s=3, π代入, π/2テイラー]

 Aでs=3とすると、次のようになる。

-(1-1/2^3)・(1-1/2^2)・ζ(3) 
   = - L(2)・(π/2)^1 /1! + 2^(-1)・(1-1/2^0)・ζ(1) ・(π/2)^2 /2!
     + L(0)・(π/2)^3 /3! - 2^1・(1-2^2)・ζ(-1)・(π/2)^4 /4!
     - L(-2)・(π/2)^5 /5! + 2^3・(1-2^4)・ζ(-3)・(π/2)^6 /6!
     + L(-4)・(π/2)^7 /7! - 2^5・(1-2^6)・ζ(-5)・(π/2)^8 /8!   -------@
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ここで、(1-1/2^0)・ζ(1) =log2である。公式では(1-1/2^0)×ζ(1)という不思議なものが出るが、手計算では
ここはうまく回避されて自然にlog2が出る。よって、(1-1/2^0)・ζ(1) をlog2に置き換え、次を得る。

-(1-1/2^3)・(1-1/2^2)・ζ(3) 
   = - L(2)・(π/2)^1 /1! + 2^(-1)・log2 ・(π/2)^2 /2!
     + L(0)・(π/2)^3 /3! - 2^1・(1-2^2)・ζ(-1)・(π/2)^4 /4!
     - L(-2)・(π/2)^5 /5! + 2^3・(1-2^4)・ζ(-3)・(π/2)^6 /6!
     + L(-4)・(π/2)^7 /7! - 2^5・(1-2^6)・ζ(-5)・(π/2)^8 /8!   -------A
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

なおL(s)は
  L(s)= 1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + 1/9^s - 1/11^s + 1/13^s - 1/15^s + ・・・
であり、ディリクレのL関数L(χ,s)というゼータに関係するゼータ関数である。
ζ(s)はリーマン・ゼータである。

さて、ζ(s)の関数等式
  ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)
と、次のL(s)の関数等式
  L(1-s)=π^(-s)・2^s・Γ(s)・sin(sπ/2)・L(s)

を利用してL(-2),ζ(-1),・・・をすべて現実的なL(3) ,ζ(2),・・・に直して整理すると、Aは次のBになる。

(1-1/2^3)・(1-1/2^2)・ζ(3) 
   = L(2)・(π/2)^1 /1! - log2 ・π^2 /(2^3・2!) - L(0)・(π/2)^3 /3!
      + (π/2)^2・[(1-1/2^2)・ζ(2)・1!/4! - L(3)・2!/5!
              + (1-1/2^4)・ζ(4)・3!/6! - L(5)・4!/7!
              + (1-1/2^6)・ζ(8)・7!/10! - L(7)・8!/11!  -------B
               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・]


 Bで、L(0)=1/2、L(3),ζ(2),L(5),ζ(4),・・・の実際的な値を用いて計算すると、右辺は左辺の値に収束する
とわかった。またL(2)=0.91596559・・を使った。手計算で確めたものを以下に示す。
まず
 ζ(3)は、ζ(3)=1.2020569・・  ----C
である。
B左辺を16倍した値は (4-1/2)・(4-1)・ζ(3)=12.621597・・   ----D
となる。
右辺を16倍した値を見ていくと、
 3項までの和=11.011924・・
 7項までの和=12.550285・・
11項までの和=12.604619・・

とDに収束することがわかる。

 収束半径を調べてみよう。ここでは公式を用いたので、ベキ級数を経由しなかったが、別途ベキ級数を出してそれから
収束半径Rをlim(An/An+1)(n->∞)で計算すると、R=π/2と出た。
条件の[π代入, π/2テイラー]はその1のζ(1/2)、ζ(5/2)と同じである。
| p - q | =| π - π/2 |=π/2なので、<テイラーシステム成立の条件>での| p - q |は 収束半径Rと等しい場合
相当していることがわかる。ここはきわどい地点でありよって別途具体的にBの収束を確めたのだが、上で見たよう
にB右辺は正しく左辺の値に収束していく。

以上。


 AとBを書いておく。

ζ(3)の式 条件Cos[ s=s, π代入, π/2テイラー]


  -(1-1/2^3)・(1-1/2^2)・ζ(3) 
     = - L(2)・(π/2)^1 /1! + 2^(-1)・log2 ・(π/2)^2 /2!
       + L(0)・(π/2)^3 /3! - 2^1・(1-2^2)・ζ(-1)・(π/2)^4 /4!
       - L(-2)・(π/2)^5 /5! + 2^3・(1-2^4)・ζ(-3)・(π/2)^6 /6!
       + L(-4)・(π/2)^7 /7! - 2^5・(1-2^6)・ζ(-5)・(π/2)^8 /8!
        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


  (1-1/2^3)・(1-1/2^2)・ζ(3) 
     = L(2)・(π/2)^1 /1! - log2 ・π^2 /(2^3・2!) - L(0)・(π/2)^3 /3!
        + (π/2)^2・[(1-1/2^2)・ζ(2)・1!/4! - L(3)・2!/5!
                + (1-1/2^4)・ζ(4)・3!/6! - L(5)・4!/7!
                + (1-1/2^6)・ζ(8)・7!/10! - L(7)・8!/11!
                  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・]





2006/9/17          < テイラーシステム成立条件の別表現

 「百武彗星 その6」のテイラーシステム成立の条件で、テイラーシステムが成立する場合の条件を提示した。
次である。
テイラーシステムの成立条件

 テイラーシステムが成立するには、Cos[ s=s, p代入,qテイラー]やSin[ s=s, p代入,qテイラー]
のp、q が次を満たす必要がある。

  | p - q | < R の場合はOK。
または
  | p - q | = R の場合はその都度、実際の計算で確めることにする。 

 ここでR は次のAやBをテイラー展開したときの収束半径である。

 f(x)=(cosx)/1^s + (cos2x)/2^s + (cos3x)/3^s + (cos4x)/4^s + ・・・ -----A

 g(x)=(sinx)/1^s + (sin2x)/2^s + (sin3x)/3^s + (sin4x)/4^s + ・・・   -----B



上では、”=R”の場合を特別に「実際の計算で確かめる」などというという複雑さをもったものであったが、いろいろと
実験で確かめた結果、上の条件は次のようにすっきりさせることもできる(つまり別表現)ことに気づいた。

テイラーシステムの成立条件(別表現)

 テイラーシステムが成立するには、Cos[ s=s, p代入,qテイラー]やSin[ s=s, p代入,qテイラー]
のp、q が次を満たす必要がある。

  | p - q | < R の場合はOK。       -------[T]

 ここでR は次のAやBをテイラー展開したときの収束半径である。

 f(x)=(cosx)/1^s + (cos2x)/2^s + (cos3x)/3^s + (cos4x)/4^s + ・・・ -----A

 g(x)=(sinx)/1^s + (sin2x)/2^s + (sin3x)/3^s + (sin4x)/4^s + ・・・   -----B

 ただし、収束半径を計算したとき(例えば、lim(An/An+1)(n->∞)で)、| p - q |がRとなる場合は、εを
無限小の小さい正の値とすると、@R+εかAR-εで区別できる。すなわち、@はR+ε>Rであり、Aは
R-ε<R なのである。               -------[U]


 この[U]はどういうことかというと、例えば、p-q=Rであったとしよう。そして、AやBの右辺の収束半径を計算した
場合、R+εでRとなるのか、あるいはR-εでRとなるかで決定的な違いが発生する!という意味である。
ただし、こんなややこしいことが問題になるのは、| p - q | = Rというやっかいな状況の場合だけである。
そして、このエンケ彗星でやっていることがまさに、このややこしい状況なのであるが、だから、冒頭のζ(3)の場合も
次のように
**************************
右辺を16倍した値を見ていくと、
 3項までの和=11.011924・・
 7項までの和=12.550285・・
11項までの和=12.604619・・

とDに収束することがわかる。

 収束半径を調べてみよう。ここでは公式を用いたので、ベキ級数を経由しなかったが、別途ベキ級数を出してそれから
収束半径Rをlim(An/An+1)(n->∞)で計算すると、R=π/2と出た。
条件の[π代入, π/2テイラー]はその1のζ(1/2)、ζ(5/2)と同じである。
| p - q | =| π - π/2 |=π/2なので、<テイラーシステム成立の条件>での| p - q |は 収束半径Rと等しい場合
相当していることがわかる。ここはきわどい地点でありよって別途具体的にBの収束を確めたのだが、上で見たよう
にB右辺は正しく左辺の値に収束していく。
*************************
などとして、別途計算で実際に収束することを確かめたのであった。
 上の条件(別表現)では、実際の計算で収束をたしかめなくとも、R が R+ε か R-ε かで、テイラーシステムが
使えるか否かがわかるということを主張する。


 「エンケ彗星 その1」ζ(1/2)を再度、この条件の観点から見てみよう。

そこでは、テイラーシステムを用いてζ(1/2)を条件Cos[ s=1/2, π代入, π/2テイラー]で求めたのであった。
繰り返すと、条件Cos[ s=1/2, π代入, π/2テイラー]とは、
 f(x)=(cosx)/1^0.5 + (cos2x)/2^0.5 + (cos3x)/3^0.5 + (cos4x)/4^0.5 + ・・・ -------@
という母関数をx=π/2周りでテイラー展開したのちπ代入を経由する形でζ(1/2)を求めるという意味である。

 いまp=π,q=π/2であるから、p - q=π/2  ----A
である。
 次に@の右辺をx=π/2の周りテイラー展開すると、次のようになる。

 f(x)= - 2^(-0.5)・(1-2^0.5)・ζ(1/2) - L(-1/2)・(x-π/2)^1 /1!
     + 2^1.5・(1-2^2.5)・ζ(-3/2)・(x-π/2)^2 /2! + L(-5/2)・(x-π/2)^3 /3!
     - 2^3.5・(1-2^4.5)・ζ(-7/2)・(x-π/2)^4 /4! - L(-9/2)・(x-π/2)^5 /5!  
     + 2^5.5・(1-2^6.5)・ζ(-11/2)・(x-π/2)^6 /6! + L(-13/2)・(x-π/2)^7 /7!    -------B
       ・・・・・・・・・・・

 このBが導かれたのであったが、はたしてこの式は収束するのか?ということである。ζ(s)とL(s)の関数等式を
使ってB右辺の収束半径を計算すると、
lim(An/An+1)(n->∞)で収束半径Rを計算すると、
 R=lim(n->∞) π/2・{(n+1)/(n+0.5)}=π/2+ε ------C
となる。(εは無限小の正の値)

 上の条件(別表現)の観点から、A、Cをみると、ぎりぎりではあるが| p - q | < R が成り立っているから、Bf(x)の
べき級数はR上で収束することになり、π代入でもテイラーシステムはうまく働くのである。
 そして「エンケ彗星 その1」ζ(1/2)で次式を最終的に得たのであった。

 (√2-1)・ζ(1/2)
      =(1-1/2^0.5)・0!/{2^0・(0!)^2}・ζ(1/2) - 2!/{2^2・(1!)^2)}・L(3/2)
         + (1-1/2^2.5)・4!/{2^4・(2!)^2}・ζ(5/2) - 6!/{2^6・(3!)^2)}・L(7/2)
           + (1-1/2^4.5)・8!/{2^8・(4!)^2}・ζ(9/2) - 10!/{2^10・(5!)^2)}・L(11/2)
             + (1-1/2^6.5)・12!/{2^12・(6!)^2}・ζ(13/2) - 14!/{2^14・(7!)^2)}・L(15/2)
                 ・・・・・・・・・・・・・・・・・


 (√2-1)・ζ(1/2)
       = -2^(-0.5)・(1/2^0-√2)・ζ(1/2) - L(-1/2)・π/(2^1・1!)
          + 2^1.5・(1/2^2-√2)・ζ(-3/2)・π^2/2! + L(-5/2)・π^3/(2^3・3!)
            - 2^3.5・(1/2^4-√2)・ζ(-7/2)・π^4/4! - L(-9/2)・π^5/(2^5・5!)  
              + 2^5.5・(1/2^6-√2)・ζ(-11/2)・π^6/6! + L(-13/2)・π^7/(2^7・7!)
                  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 また条件(別表現)は、「エンケ彗星」で求めたζ(5/2)やζ(3)でももちろん成り立っているが、省略する。




2006/9/17 < 条件Cos[ s=s, π代入, π/2テイラー]で ζ(-1)、ζ(-3)・・は出るか?ζ(0)は?)
(改2006/10/23)

「百武彗星 その3」の<ζ(s)式を具体的に見る>では、Cos[ s=s, π/2代入, πテイラー]の条件で、ζ(-1)、ζ(-3)を
求め、また同条件で「百武彗星 その5」ではζ(-5)、ζ(-7)を出した。この場合は、なんの問題もなく求まった。

 さて、ではCos[ s=s, π代入, π/2テイラー]は、どうなのだろうか?
この条件でも、問題なくζ(-1)、ζ(-3)・・・は求まるのだろうか?じつは、この場合は、求まらないのである。
というのは、この条件Cos[ s=s, π代入, π/2テイラー]が一つ上で見た通りぎりぎりの条件であることに関係している
からであるが、実際に、この条件でζ(-1)、ζ(-3)、・・・を求めても、その式は破綻した式となる。

例えば、ζ(-3)を見てみてみよう。まず一つ上での条件(別表現)の観点で、調べると、
条件Cos[ s=s, π代入, π/2テイラー]であるから、まず
 | p - q | = π/2 ------@
である。
 さて、ζ(-3)をテイラーシステムを機能させ、途中のべき級数展開式の収束半径Rを計算すると、それはじつは
 R=lim(n->∞) π/2・{(n+1)/(n+4)}=π/2-ε ------A

となる。
 条件(別表現)の観点から、@、Aをみると、ぎりぎりで| p - q | < R が成り立っていないから、Af(x)のべき級数は
R上では収束しないことになり、π代入では正しい結果が得られないのである。
実際に次のA(冒頭の式)からs=-3として、ζ(-3)を出しても右辺が(解析接続でも)どんどんと発散していく式となり
だめである。

 -(1-1/2^s)(1-1/2^(s-1))・ζ(s) 
   = - L(s-1)・(π/2)^1 /1!
     + 2^(2-s)・(1-2^(3-s))・ζ(s-2)・(π/2)^2 /2! + L(s-3)・(π/2)^3 /3!
     - 2^(4-s)・(1-2^(5-s))・ζ(s-4)・(π/2)^4 /4! - L(s-5)・(π/2)^5 /5!  
     + 2^(6-s)・(1-2^(7-s))・ζ(s-6)・(π/2)^6 /6! + L(s-7)・(π/2)^7 /7!   --------A
            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

では、ζ(0)はどうなのだろうか?
Cos[ s=s, π代入, π/2テイラー]で無事求まるのであろうか?
じつは、求まる。Aの式で、左辺で -(1-1/2^0)(1-1/2^(0-1))・ζ(0)などとなり、また右辺は0であり、0=0となって、
式は成立しているのに、うまく求まらない。
 これは途中の経路を省略して公式の形であるため求まらないのか?普通にテイラーシステムを実行したら求まるの
だろうか、念のため、見てみよう。

[ζ(0)の導出] Cos[ s=0、 π代入, π/2テイラー]
 まず
 f(x)=(cosx)/1^0 + (cos2x)/2^0 + (cos3x)/3^0 + (cos4x)/4^0 + ・・・
   =cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・ 
という母関数を考える。

 そして、まず上でx=πを代入すると
f(π)== -1 + 1 - 1 + 1 - 1 +・・・
   =-( 1 - 1 + 1 - 1 + 1 - ・・・)
   =-{( 1 + 1 + 1 + 1+・・・) - 2(1 + 1 + 1 + 1 + ・・)}
   =-{ζ(0) - 2・ζ(0)}
   =ζ(0)
となる。

 次に、@の右辺をx=π/2の周りテイラー展開すると、次のようになる。

 f(x)= - (1-2^1)・ζ(0) - L(-1)・(x-π/2)^1 /1!
     + 2^2・(1-2^3)・ζ(-2)・(x-π/2)^2 /2! + L(-3)・(x-π/2)^3 /3!
     - 2^4・(1-2^5)・ζ(-4)・(x-π/2)^4 /4! - L(-5)・(x-π/2)^5 /5!  
     + 2^6・(1-2^7)・ζ(-6)・(x-π/2)^6 /6! + L(-7)・(x-π/2)^7 /7!    -------B
       ・・・・・・・・・・・

 さて、ζ(-2)、ζ(-4)・・やL(-1)、L(-3)・・・はすべて0であるから、結局Bの右辺は - (1-2^1)・ζ(0) となる。
もちろん、π代入のf(π)でも同じであり、
f(π)= - (1-2^1)・ζ(0)ζ(0)    -------C
となる。

A、Cより、 ζ(0)=ζ(0)
となって、成立はしているが、やはり求まらない。
以上。

 このようにζ(0)の値も、テイラーシステム自体からは求まらない。




2006/9/17         < ζ(2)、ζ(4)、ζ(6)を求める

 次に、条件Cos[ s=s, π代入, π/2テイラー]で、ζ(2)、ζ(4)、ζ(6)を求めておこう。
 冒頭の公式Aを再度書く。

テイラーシステムによって得られたζ(s)の表式  条件Cos[ s=s, π代入,π/2テイラー]

 -(1-1/2^s)・(1-1/2^(s-1))・ζ(s) 
   = - L(s-1)・(π/2)^1 /1!
     + 2^(2-s)・(1-2^(3-s))・ζ(s-2)・(π/2)^2 /2! + L(s-3)・(π/2)^3 /3!
     - 2^(4-s)・(1-2^(5-s))・ζ(s-4)・(π/2)^4 /4! - L(s-5)・(π/2)^5 /5!  
     + 2^(6-s)・(1-2^(7-s))・ζ(s-6)・(π/2)^6 /6! + L(s-7)・(π/2)^7 /7!   --------A
            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ζ(2)の場合
  Aでs=2を代入して、
 -(1-1/2^2)・(1-1/2^1)・ζ(2) 
   = - L(1)・(π/2)^1 /1!
     + 2^0・(1-2^(3-2))・ζ(0)・(π/2)^2 /2! + L(-1)・(π/2)^3 /3!
     - 2^2・(1-2^(5-2))・ζ(-2)・(π/2)^4 /4! - L(-3)・(π/2)^5 /5!  
     + 2^4・(1-2^(7-s))・ζ(-4)・(π/2)^6 /6! + L(-5)・(π/2)^7 /7!
            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さて、ζ(-2)、ζ(-4)・・やL(-1)、L(-3)・・・はすべて0であるから、結局

 -(1-1/2^2)・(1-1/2)・ζ(2) 
   = - L(1)・(π/2)^1 /1!+ 2^0・(1-2^1)・ζ(0)・(π/2)^2 /2!   ------@

となる。
ここで、ζ(2)=π^2/6、L(1)=π/4、ζ(0)=-1/2であり、実際に計算しても@は成り立っている。

ζ(4)の場合
 Aでs=4を代入して、上と同様にして、

 -(1-1/2^4)・(1-1/2^3)・ζ(4) 
   = - L(3)・(π/2)^1 /1!+ 2^(-2)・(1-2^(-1))・ζ(2)・(π/2)^2 /2!
       + L(1)・(π/2)^3 /3!- 2^0・(1-2^1)・ζ(0)・(π/2)^4 /4!  ------A
が成り立つ。
ここでζ(4)=π^4/90、ζ(2)=π^2/6、ζ(0)=-1/2、L(1)=π/4、L(3)=π^3/32であり、実際に計算しても
当然Aは成り立っている。

ζ(6)の場合
  Aでs=6を代入して、上と同様にして、

 -(1-1/2^6)・(1-1/2^5)・ζ(6) 
   = - L(5)・(π/2)^1 /1! + 2^(-4)・(1-2^(-3))・ζ(4)・(π/2)^2 /2!
      + L(3)・(π/2)^3 /3! - 2^(-2)・(1-2^(-1))・ζ(2)・(π/2)^4 /4!
        - L(1)・(π/2)^5 /5! + 2^0・(1-2^1)・ζ(0)・(π/2)^6 /6!  ------B

ここでζ(6)=π^6/945、ζ(4)=π^4/90、ζ(2)=π^2/6、ζ(0)=-1/2、L(1)=π/4、L(3)=π^3/32、
L(5)=5π^5/1536であり、実際に計算しても当然Bは成り立っている。
以上。

 ζ(8)以降も全く同様にして求められるのはいうまでもない。 まとめておこう。

テイラーシステムで得られたζ(2)、ζ(4)、ζ(6)の表式  Cos[ s=2, 4, 6, π代入, π/2テイラー]

 -(1-1/2^2)・(1-1/2)・ζ(2) 
   = - L(1)・(π/2)^1 /1!+ 2^0・(1-2^1)・ζ(0)・(π/2)^2 /2!


 -(1-1/2^4)・(1-1/2^3)・ζ(4) 
   = - L(3)・(π/2)^1 /1!+ 2^(-2)・(1-2^(-1))・ζ(2)・(π/2)^2 /2!
       + L(1)・(π/2)^3 /3!- 2^0・(1-2^1)・ζ(0)・(π/2)^4 /4!


 -(1-1/2^6)・(1-1/2^5)・ζ(6) 
   = - L(5)・(π/2)^1 /1! + 2^(-4)・(1-2^(-3))・ζ(4)・(π/2)^2 /2!
      + L(3)・(π/2)^3 /3! - 2^(-2)・(1-2^(-1))・ζ(2)・(π/2)^4 /4!
        - L(1)・(π/2)^5 /5! + 2^0・(1-2^1)・ζ(0)・(π/2)^6 /6!


 こんなにも興味深い式がいとも簡単に求まった。テイラーシステムの威力!をいまさらながら思い知る。

 念のため、「百武彗星 その2」ζ(6)とζ(8)の導出で求めた式も比較のため次に再掲しておく。

テイラーシステムで得られたζ(2) ,ζ(4),ζ(6) ,ζ(8) の表式 Cos[ s=2,4,6,8, π/2代入,πテイラー]

 (1-1/2^2)・(1-1/2^1)・ζ(2)= (1-2^1)・ζ(0)(π/2)^2 /2!


 (1-1/2^4)・(1-1/2^3)・ζ(4)
      =(1-2^(-1))・ζ(2)(π/2)^2 /2!- (1-2^1)・ζ(0)(π/2)^4 /4!


 (1-1/2^6)・(1-1/2^5)・ζ(6)
     =(1-2^(-3))・ζ(4)(π/2)^2 /2!
         - (1-2^(-1))・ζ(2)(π/2)^4 /4! + (1-2^1)・ζ(0)(π/2)^6 /6!


 (1-1/2^8)・(1-1/2^7)・ζ(8)
     = (1-2^(-5))・ζ(6)(π/2)^2 /2!- (1-2^(-3))・ζ(4)(π/2)^4 /4!
         + (1-2^(-1))・ζ(2)(π/2)^6 /6!- (1-2^1)・ζ(0)(π/2)^8 /8!





2006/9/17           < ζ(1/4)を求める

 ここでは、ζ(1/4)をCos[ s=s, π代入, π/2テイラー]で導出した。

[ζ(1/4)の導出] Cos[ s=1/4, π代入, π/2テイラー]
 まず
 f(x)=(cosx)/1^0.25 + (cos2x)/2^0.25 + (cos3x)/3^0.25 + (cos4x)/4^0.25 + ・・・ -------@

という母関数を考える。
 そして、まず上でx=πを代入すると
 f(π) = -(1-2^(3/4))・ζ(1/4)   -------A

となる。ζ(1/4)の姿が現れた。

 次に、@の右辺をx=π/2の周りテイラー展開すると、次のようになる。

 f(x)= - 2^(-0.25)・(1-2^0.75)・ζ(1/4) - L(-3/4)・(x-π/2)^1 /1!
     + 2^1.75・(1-2^2.75)・ζ(-7/4)・(x-π/2)^2 /2! + L(-11/4)・(x-π/2)^3 /3!
     - 2^3.75・(1-2^4.75)・ζ(-15/4)・(x-π/2)^4 /4! - L(-19/4)・(x-π/2)^5 /5!  
     + 2^5.75・(1-2^6.75)・ζ(-23/4)・(x-π/2)^6 /6! + L(-27/4)・(x-π/2)^7 /7!    -------B
       ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  こちらにもζ(1/4)が出てきた

 L(s)は
  L(s)= 1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
である。
 ζ(s)はもちろんリーマン・ゼータである。

 さて、Bにx=πを代入した式とAより、次となる。

 -(1-2^(-1/4))・ (1-2^(3/4))・ζ(1/4)
 = M・Γ(7/4)・[-(2/π)^(7/4)・L(7/4) ・(1/1!)・(π/2)^1
           + {(2/π)^(11/4)-π^(-11/4)}ζ(11/4)・(7/(2!・4^1))・(π/2)^2
             -(2/π)^(15/4)・L(15/4) ・(11・7/(3!・4^2))・(π/2)^3
               + {(2/π)^(19/4)-π^(-19/4)}ζ(19/4)・(15・11・7/(4!・4^3))・(π/2)^4
                 -(2/π)^(23/4)・L(23/4) ・(19・15・11・7/(5!・4^4))・(π/2)^5
                   + {(2/π)^(27/4)-π^(-27/4)}ζ(27/4)・(23・19・15・11・7/(6!・4^5))・(π/2)^6
                        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・]

整理して、次のようになる。

 -(1-2^(-1/4))・ (1-2^(3/4))・ζ(1/4)
 = M・Γ(7/4)・π^(-3/4)・[-2^(3/4)・L(7/4) ・(1/1!)
                   + {2^(3/4)-1/2^2)}ζ(11/4)・(7/(2!・4^1))
                     -2^(3/4)・L(15/4) ・(11・7/(3!・4^2))
                       + {2^(3/4)-1/2^4)}ζ(19/4)・(15・11・7/(4!・4^3))
                         -2^(3/4)・L(23/4) ・(19・15・11・7/(5!・4^4))
                           + {2^(3/4)-1/2^6)}ζ(27/4)・(23・19・15・11・7/(6!・4^5))
                                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・]  ------C

 ここで、M=sin(π/8)=(√(2-√2))/2、またΓ(7/4)はガンマ関数Γ(s)の値である。

途中で、ζ(s)の関数等式
  ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)
と、次のL(s)の関数等式
  L(1-s)=π^(-s)・2^s・Γ(s)・sin(sπ/2)・L(s)
を利用した。ガンマ関数Γ(s)の公式
 Γ(s)=(s-1)Γ(s-1)  (s > 1)
を利用した。

Cは、+と-が繰り返される交代級数であり、且つ各項の大きさが徐々に小さくなっているから、収束することがわかる。
Bについて、この頁上方で見た条件(別表現)を調べよう。im(An/An+1)(n->∞)で収束半径Rを計算した結果、
 R=lim(n->∞) π/2・{(n+1)/(n+0.75)}=π/2+ε ------D
となる。(εは無限小の正の値)
 p=π,q=π/2であり、そしてDから、ぎりぎりではあるが| p - q | < R が成り立っているから、Bf(x)のべき級数
R上で収束することになり、π代入でもテイラーシステムはうまく働くのである。

 テイラーシステムで得られたζ(1/4) の表式 Cos[ s=1/4, π代入, π/2テイラー

 -(1-2^(-1/4))・ (1-2^(3/4))・ζ(1/4)
 = M・Γ(7/4)・π^(-3/4)・[-2^(3/4)・L(7/4) ・(1/1!)
                   + {2^(3/4)-1/2^2)}ζ(11/4)・(7/(2!・4^1))
                     -2^(3/4)・L(15/4) ・(11・7/(3!・4^2))
                       + {2^(3/4)-1/2^4)}ζ(19/4)・(15・11・7/(4!・4^3))
                         -2^(3/4)・L(23/4) ・(19・15・11・7/(5!・4^4))
                           + {2^(3/4)-1/2^6)}ζ(27/4)・(23・19・15・11・7/(6!・4^5))
                                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・] 

 
                             ここで、M=sin(7π/8)=(√(2-√2))/2 である。







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