「百武彗星 その1」で出したζ(3)と、「ゼータ関数のいくつかの点について」で導出したζ(3)の収束性を比較した。
ゼータのフラクタル構造を指摘し、その観点からζ(2)、ζ(4)、ζ(6)、ζ(8)をζ(0)で表現した。
フラクタル構造を利用して、ζ(s)=・・の右辺を様々に変えた一般式を出した。
「百武彗星 その1」で出したζ(3)は収束がきわめて速いものであった。
テイラーシステムCos[ s=s, π/2代入, πテイラー]の条件で導いたものである。
ところで、3年前にまったく別の方法で(「ゼータ関数のいくつかの点について その7」)導いたζ(3)も非常に速い
収束性をもっていたが、テイラーシステムでのζ(3)とどの程度の差があるものなのか気になったので、ここで少し
比較しておきたい。
まず 「百武彗星 その1」でテイラーシステムを用いて導いたζ(3)は次のものである。
(1-1/2^3)・(1-1/2^2)・ζ(3)
=π^2・[log2・/8 - (1-1/2^2)・ζ(2)/{(4・3・2)・2^3}
- (1-1/2^4)・ζ(4)/{(6・5・4)・2^5} - (1-1/2^6)・ζ(6)/{(8・7・6)・2^7}
- (1-1/2^8)・ζ(8)/{(10・9・8)・2^9} - (1-1/2^10)・ζ(10)/{(12・11・10)・2^11} + ・・・・] ----@
@の形で、右辺をΣの記号で書くと、次となる。
(1-1/2^3)・(1-1/2^2)・ζ(3)
=π^2・[log2/8 - Σ(1-1/2^(2n))・ζ(2n)/{2n・(2n+1)・(2n+2)・2^(2n+1)} ------A
(n=1〜∞)
さて「ゼータ関数のいくつかの点について その7」で出した4つのζ(3)を記す。
上から収束の速い順番に並べておきます。
ながめるとわかるが、Aはこの4つものではCに本質的に収束速度が等しいとわかる。
Cなどは、その収束のよさに当時びっくりしていた記憶があるが、テイラーシステムCos[ s=s, π/2代入, πテイラー]
で求まったA(=@)は、収束がきわめて速いCと同等の収束性をもつとわかったのである。
なお、「エンケ彗星 その2」でテイラーシステムCos[ s=s, π代入, π/2テイラー]で導いたζ(3)は交代級数でも
あり、Aのζ(3)より収束性は劣っているはずである。
「百武彗星 その3」でテイラーシステムによって出したζ(s)の一般式は、次のものだが、よく見ると非常に面白い
性質をもっていることに気づく。
これは、ζ(s)を、ζ(s-2)、ζ(s-4)、ζ(s-4)、・・・・で表現した式ですが、よく考えると、このζ(s-2)やζ(s-4)や
ζ(s-6)・・・自身に、同じように@式が成り立っていることに気づくのである。
ζ(s-2)では@でsをs-2に置き換えた式が成り立ち、またζ(s-4)ではsをs-4に置き換えた式が成り立ち、そして
またζ(s-6)ではsをs-6に置き換えた式が成り立ち・・・・とすべてのζ(s-2n)で@が成り立っている。
すなわち、@右辺の各々のζ(s-2n)でまた@が成り立っているという不思議な構造になっているのです。
そして、そうやって、できた孫式?の右辺でもまた同様のことが成り立つ・・・・というように延々と自己相似形が
無限につづいていくのである!
それは、まるで地下へ暗闇に下っていく無限階段のようだ。
同じ形がどこまでも内包されている、それはまさにマンデルブロー集合図のようなフラクタル構造を連想させる。
@は、いろいろと面白い性質がある。次に示す。
フラクタル構造の性質で、私が思い付いた面白い応用を示したい。
@は、ζ(s)をζ(s-2)、ζ(s-4)、ζ(s-6)、ζ(s-8)、・・・というもので表現したものだが、ζ(s-2)を消して
ζ(s)をζ(s-4)、ζ(s-6)、ζ(s-8)、・・・で表現できると気づく。
つまり、@でsをs-2で置き換え、ζ(s-2)=・・の式をもとめ、それを@に代入すれば、ζ(s-2)が消えてくれる。
つまり、
ζ(s)=A1・ζ(s-4) + B1・ζ(s-6) + C1・ζ(s-8) + D1・ζ(s-10) + ・・・・ -------A
というような式になる。
さて、ζ(s-2)が消えたわけだが、今度はζ(s-4)をも消してみたい。その方法はすぐにわかるであろう。
つまり、@でsをs-4で置き換え、ζ(s-4)=・・の式をもとめ、それをAに代入すれば、次のようになる。
ζ(s)=A2・ζ(s-6) + B2・ζ(s-8) + C2・ζ(s-10) + D2・ζ(s-12) + ・・・・
めでたくζ(s-4)も消えた。
この方法を繰り返していくと、いくらでも違った式をアレンジすることができるのであるが、これを奇数ゼータζ(2n+1)や
偶数ゼータζ(2n)に応用していきたい。次で見たい。
まず偶数ゼータの場合をみよう。
@式だが、一つ上で指摘したことを利用して、偶数ゼータζ(2)、ζ(4)、ζ(6)・・・に応用する。
@に関して「百武彗星 その2」で導出した偶数ゼータの結果を再び示すと、次のようになる。
偶数ゼータが「有限個の偶数ゼータの和」で表現できるという面白い結果であった。
さて、一つ上で指摘したことを応用してみる。つまり、@式を用いて、右辺の変数をコントロールして面白い結果
を出したいのである。
結論を先に言っておくと、
ζ(2)=A・ζ(0)
ζ(4)=B・ζ(0)
ζ(6)=C・ζ(0)
ζ(8)=D・ζ(0)
・
・
というような形にしたいのである。ζ(2n)をζ(0)だけで表現したい!ということである。
早速、その目標に向かって進もう。
@でまずs=2としてみよう。
(1-1/2^2)・(1-1/2^1)・ζ(2)
= (1-1/2^(-1))・ζ(0)・π^2 /(2!・2^2)
- (1-1/2^(-3))・ζ(-2)・π^4 /(4!・2^4)
+ (1-1/2^(-5))・ζ(-4)・π^6 /(6!・2^6)
- (1-1/2^(-7))・ζ(-6)・π^8 /(8!・2^8)
・・・・・・・・・・・・・・・・
ここで、ζ(-2)、ζ(-4)、ζ(-6)・・は当然 0 であるから、上は次のようになる。
(1-1/2^2)・(1-1/2^1)・ζ(2)
= (1-1/2^(-1))・ζ(0)・π^2 /(2!・2^2) --------A
当然ながら、Aは簡単に出た。
ここからは、複雑になるので、記号を作っておきたい。
(1-1/2^n)=[n]
π^n /(n!・2^n)=<n>
とすることにする。例えば、π^6 /(6!・2^6)は<6>であり、(1-1/2^2)は[2]である。
これでAを書き直せば、次のようになる。
[2][1]ζ(2)=[-1]<2>ζ(0) --------B
なんと簡単になったことか!
次に進む。
@でs=4とすると、
(1-1/2^4)・(1-1/2^3)・ζ(4)
= (1-1/2^1)・ζ(2)・π^2 /(2!・2^2)
- (1-1/2^(-1))・ζ(0)・π^4 /(4!・2^4)
+ (1-1/2^(-3))・ζ(-2)・π^6 /(6!・2^6)
- (1-1/2^(-5))・ζ(-4)・π^8 /(8!・2^8)
+ (1-1/2^(-7))・ζ(-6)・π^10 /(10!・2^10)
・・・・・・・・・・・・・・・・
となるが、もちろん、ζ(-2)、ζ(-4)、ζ(-6)・・は 0 であるから、上は次のようになる。
(1-1/2^4)・(1-1/2^3)・ζ(4)
= (1-1/2^1)・ζ(2)・π^2 /(2!・2^2)
- (1-1/2^(-1))・ζ(0)・π^4 /(4!・2^4)
ここでζ(2)を消すために、A(B)のζ(2)=・・をこれに代入して整理して、記号で書くと、次のようになる。
[4][3][2]ζ(4)=[-1] (<2><2> - [2]<4>)ζ(0) ------C
ζ(4)の場合の式も出た。もちろん、ζ(0)=-1/2 である。
同様にして、ζ(6)、ζ(8)の式も出すと次のようになる。
[6][5][4][2]ζ(6)
=[-1] (<2><2><2> - [4]<4><2> - [2]<2><4> + [4][2]<6>)ζ(0) ------D
[8][7][6][4][2]ζ(8)
=[-1] (<2><2><2><2> - [6]<4><2><2> - [4]<2><4><2> - [2]<2><2><4>
+ [6][4]<6><2> + [6][2]<4><4>+ [4][2]<2><6> - [6][4][2]<8> )ζ(0) ------E
まとめておこう。
この右辺()内は、機械的に作れる秩序がひそんでいるはずだが、まだ発見できていない。
すなわち、右辺の()内を機械的に作っていければ、とても素敵なのである。なぜ素敵なのかといえば、
そこにζ(2n)の構造が見出せるからである。それは、ベルヌイ数の構造とも密接に関係することになる。
リーマン・ゼータζ(s)をベルヌイ数で表現した式(よく知られた式)を示しておく。
ζ(m)=(-1)^(m/2+1)・2^(m-1)・Bm・π^m/m! ------F
m=2,4,6,8,・・・
C〜EとFを見ると、いかにベルヌイ数が、C〜E右辺の構造と関わっているかがわかるであろう。
奇数ゼータζ(2n+1)への応用を見る前に、フラクタル構造の性質を利用して、ζ(s)=・・の右辺の変数を
いろいろに変えた場合を示しておく。
一つ上の偶数ゼータζ(2n)では、直接やったことを、まず抽象的に表現しておきたい。
すなわち、
ζ(s)=A0・ζ(s-2) + B0・ζ(s-4) + C0・ζ(s-6) + D0・ζ(s-8) + ・・・・・・ -----A
ζ(s)=A1・ζ(s-4) + B1・ζ(s-6) + C1・ζ(s-8) + D1・ζ(s-10) + ・・・・・ -----B
ζ(s)=A2・ζ(s-6) + B2・ζ(s-8) + C2・ζ(s-10) + D2・ζ(s-12) + ・・・・ -----C
ζ(s)=A3・ζ(s-8) + B3・ζ(s-10) + C3・ζ(s-12) + D4・ζ(s-14) + ・・・・ ----D
というような右辺の変数sをコントロールした式を出したいのである。
もちろん、出発点は次式である。
Aは@そのものであり、つまり次式となる。
(1-1/2^s)・(1-1/2^(s-1))・ζ(s)
= (1-1/2^(s-3))・ζ(s-2)・π^2 /(2!・2^2)
- (1-1/2^(s-5))・ζ(s-4)・π^4 /(4!・2^4)
+ (1-1/2^(s-7))・ζ(s-6)・π^6 /(6!・2^6)
- (1-1/2^(s-9))・ζ(s-8)・π^8 /(8!・2^8)
+ (1-1/2^(s-11))・ζ(s-10)・π^10 /(10!・2^10) --------A
・・・・・・・・・・・・・・・・
このあと、やや複雑化していくので、一つ上で導入した記号でAを表現しておきたい。
(1-1/2^n)=[n]
π^n /(n!・2^n)=<n>
という記号である。例えば、π^6 /(6!・2^6)は<6>であり、(1-1/2^2)は[2]である。
これを用いて、Aを表現すると、次のようになる。
[s][s-1]ζ(s)=[s-3] ζ(s-2)<2>
- [s-5] ζ(s-4)<4>
+ [s-7] ζ(s-6)<6>
- [s-9] ζ(s-8)<8>
+ [s-11] ζ(s-10)<10>
- [s-13] ζ(s-12)<12> ------A-2
・・・・・・・・・・・・・・
なんとも、すっきりするものである。 もちろんAの形の式である。
次に進もう。Aでs=s-2として出したζ(s-2)=・・の式を、A-2に代入すると、ζ(s-2)が消せる。
すると、次式が出る。
[s][s-1][s-2]ζ(s)
=[s-5] ζ(s-4)(<2><2> - [s-2]<4>)
- [s-7] ζ(s-6)(<2><4> - [s-2]<6>)
+ [s-9] ζ(s-8)(<2><6> - [s-2]<8>)
- [s-11] ζ(s-10)(<2><8> - [s-2]<10>)
+ [s-13] ζ(s-12)(<2><10> - [s-2]<12>)
- [s-15] ζ(s-14)(<2><12> - [s-2]<14>) ------B-2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Bの形の式が出た。きれいなものである。()内の規則性を味わって頂きたい。
さらにAでs=s-4として出したζ(s-4)=・・の式を、B-2に代入すると、ζ(s-4)が消せる。
すると、次式が出る。
[s][s-1][s-2][s-4]ζ(s)
=[s-7] ζ(s-6)(<2><2><2> - [s-2]<4><2>- [s-4]<2><4> + [s-2][s-4]<6>)
- [s-9] ζ(s-8)(<2><2><4> - [s-2]<4><4>- [s-4]<2><6> + [s-2][s-4]<8>)
+ [s-11] ζ(s-10)(<2><2><6> - [s-2]<4><6>- [s-4]<2><8> + [s-2][s-4]<10>)
- [s-13] ζ(s-12)(<2><2><8> - [s-2]<4><8>- [s-4]<2><10> + [s-2][s-4]<12>) ----C-2
+ [s-15] ζ(s-14)(<2><2><10> - [s-2]<4><10>- [s-4]<2><12> + [s-2][s-4]<14>)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Cの形の式が出た。
さらにAでs=s-6として出したζ(s-6)=・・の式を、C-2に代入すると、ζ(s-6)が消せる。
すると、次式が出る。
[s][s-1][s-2][s-4][s-6]ζ(s)
=[s-9] ζ(s-8)(<2><2><2><2> - [s-2]<4><2><2>- [s-4]<2><4><2> - [s-6]<2><2><4>
+ [s-2][s-4]<6><2> + [s-2][s-6]<4><4> + [s-4][s-6]<2><6> - [s-2][s-4][s-6]<8>)
- [s-11] ζ(s-10)(<2><2><2><4> - [s-2]<4><2><4>- [s-4]<2><4><4> - [s-6]<2><2><6>
+ [s-2][s-4]<6><4> + [s-2][s-6]<4><6> + [s-4][s-6]<2><8> - [s-2][s-4][s-6]<10>)
+ [s-13] ζ(s-12)(<2><2><2><6> - [s-2]<4><2><6>- [s-4]<2><4><6> - [s-6]<2><2><8>
+ [s-2][s-4]<6><6> + [s-2][s-6]<4><8> + [s-4][s-6]<2><10> - [s-2][s-4][s-6]<12>)
- [s-15] ζ(s-14)(<2><2><2><8> - [s-2]<4><2><8>- [s-4]<2><4><8> - [s-6]<2><2><10>
+ [s-2][s-4]<6><8> + [s-2][s-6]<4><10> + [s-4][s-6]<2><12> - [s-2][s-4][s-6]<14>) ----D-2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
見やすくするため、空白行をつけた。 Dの形の式が出た。
このD-2でも上から下へと眺めると、()内に明確な規則性が現れているのであるが、お気づきであろうか。
これで目標のA〜Dの形の式が出せた。まとめておこう。
右辺を様々に変えた形のζ(s)一般式
これをζ(s)の奇数ゼータに応用してみたい。頁を変えて「その6」で行う。
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