百武彗星 その1

 発見した独自の手法を用いてζ(s)の特殊値ζ(1/2)の導出に成功しましたので報告します。
この手法をテイラーシステムと名付けました。「半整数ゼータ値は無限個の半整数ゼータ値で表現される」という
美しい事実を発見。
 また本システムを用いてζ(3),ζ(5),ζ(7)従来にない簡潔さで導出できました。


2006/5/8 (5/10改)       < ζ(1/2)値の導出  > Cos[ s=1/2, π代入,π/2テイラー]

  数学者は、オイラー・マクローリンの和公式というたいへん複雑な公式を用いて、ζ(1/2)の値を求めることが
多いようですが、今回、独自の手法を用いてζ(1/2)値を求めることができましたので、報告します。
それは簡潔で美しいものであり、広範な応用性をもっています。

 ところで、ζ(1/2)値は一体いくらなのでしょうか?
「素数に憑かれた人たち」(ジョン・ダービシャー著、日経BP社)p.184によれば、厳密値は
ζ(1/2)=-1.460354508・・・となります。

 ζ(1/2)導出が簡単ではないのは、リーマン・ゼータζ(s)の重要な公式の一つである次の関数等式がζ(1/2)では、
無力であることからわかるでしょう。

   ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)  -------@

 s=1/2を入れても、だめですよね? Γ(s)はガンマ関数です。Γ(1/2)=√π

 いろいろとζ(1/2)値を出す方法があるようですが、数学者はオイラー・マクローリンの和公式によって出す場合
が多いようです。
 しかし、オイラー・マクローリンの和公式は、どうみても美しさを感じない公式であり、私はもっと別の方法で
出るはずだと模索を続けていたのですが、ついに発見できた次第です。
なおオイラー・マクローリンの和公式は次の佐藤郁郎氏のHPにζ(1/2)値の記述とともに紹介されています。
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/346_zeta.htm

またSugimoto氏のサイトには、ほとんど知られていないと思われるHasseの公式を使ったζ(1/2)の例も
示されています。--->http://homepage3.nifty.com/y_sugi/sp/sp13.htm

また、上記「素数に憑かれた人たち」にはζ(1/2)に関して交代級数を用いた手法が記されています。この
本のζ(1/2)の記述はSugimoto氏に教わりました。

さて、私自身の導出方法を書きます。
[私のζ(1/2)値の導出方法][π代入,π/2テイラー]
 まず
 f(x)=(cosx)/1^0.5 + (cos2x)/2^0.5 + (cos3x)/3^0.5 + (cos4x)/4^0.5 + ・・・ -------A

という母関数を考えます。
 そして、まず上でx=πを代入します。すると
 f(π) = -(1-2^0.5)・ζ(1/2)   -------B

となり、ζ(1/2)の姿が現れます。

 次に、Aの右辺をx=π/2の周りテイラー展開します。

 f(x)= - 2^(-0.5)・(1-2^0.5)・ζ(1/2) - L(-1/2)・(x-π/2)^1 /1!
    + 2^1.5・(1-2^2.5)・ζ(-3/2)・(x-π/2)^2 /2! + L(-5/2)・(x-π/2)^3 /3!
    - 2^3.5・(1-2^4.5)・ζ(-7/2)・(x-π/2)^4 /4! - L(-9/2)・(x-π/2)^5 /5!  
    + 2^(5.5)・(1-2^6.5)・ζ(-11/2)・(x-π/2)^6 /6! + L(-13/2)・(x-π/2)^7 /7!    -------C
      ・・・・・・・・・・・

  無限個の半整数ゼータ値が出てきました。なんとも、ふしぎです。こちらにもζ(1/2)が見えました

 L(s)は当サイトで何度も出てきたゼータ
  L(s)= 1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
です。
 L(s)は、巨大な古典的ゼータであるディリクレのL関数L(χ,s)というゼータ関数の一種で、L(1)=π/4であることは
よく知られています。ちなみに、リーマン・ゼータζ(s)もL(χ,s)の一種です。L(χ,s)は無限に多くのゼータを生み出
すことができます。

 さて、Cにx=πを代入して、@のζ(s)の関数等式
  ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s)  -----@
と、次のL(s)の関数等式
  L(1-s)=π^(-s)・2^s・Γ(s)・sin(sπ/2)・L(s)   -----D

を利用して、L(-1/2),ζ(-3/2),・・・をすべて現実的なL(3/2) ,ζ(5/2),・・・に直すと、次のようになりました。

f(π)= - 1/2^0.5・(1-2^0.5)・ζ(1/2) - 1/2・L(3/2)
     + (1-1/2^2.5)・{(1・3)/(2・4)}・ζ(5/2) - {(1・3・5)/(2・4・6)}・L(7/2)
      + (1-1/2^4.5)・{(1・3・5・7)/(2・4・6・8)}・ζ(9/2)
                                - {(1・3・5・7・9)/(2・4・6・8・10)}・L(11/2)
        + (1-1/2^6.5)・{(1・3・5・7・9・11)/(2・4・6・8・10・12)}・ζ(13/2)
                                  - {(1・3・5・7・9・11・13)/(2・4・6・8・10・12・14)}・L(15/2)
                       ・・・・・・・・・・・・・                                  -----E

 この美しい形を味わってください。 1・3・5は1×3×5の意味です。

 BとEは等しいですので、ζ(1/2)を左辺にまとめて整理すると、次のようになります。

 -(1-1/2^0.5)・(1-2^0.5)・ζ(1/2)
        = - 1/2・L(3/2)
         + (1-1/2^2.5)・{(1・3)/(2・4)}・ζ(5/2) - {(1・3・5)/(2・4・6)}・L(7/2)
           + (1-1/2^4.5)・{(1・3・5・7)/(2・4・6・8)}・ζ(9/2)
                               - {(1・3・5・7・9)/(2・4・6・8・10)}・L(11/2)
             + (1-1/2^6.5)・{(1・3・5・7・9・11)/(2・4・6・8・10・12)}・ζ(13/2)
                                - {(1・3・5・7・9・11・13)/(2・4・6・8・10・12・14)}・L(15/2)
                       ・・・・・・・・・・・・                                  -----F

 右辺のL(3/2),ζ(5/2),L(7/2),ζ(9/2),・・・は、現実世界において確固とした値として計算できる(現実的に収束
する)ものですので、延々と無限級数を計算していけば右辺は収束し、ζ(1/2)=-1.46035・・とわかるのです(*)。

 Fは+と-が交互に現れる交代級数の形になっています。観察するとすぐにわかりますが、すこし遠くへいけば
(-1)^n・{1・3・5・・・(2n-3)・(2n-1)}/{(2・4・・・・(2n-2)・2n)}が順番に出てくることと同じになります。交代級数で
あり且つ徐々に項の大きさが小さくなっていきますから、確実に収束します(*)。

(*) ただし収束がたいへん遅く、ExcelのVBAで近似を用いたプログラムを組み計算しましたが、9億9999万9999項目で-1.460428・・と
 なり、10億項目で-1.460280・・ となりました。Pentium CPUで13分かかった。(交互に振動しながら、中心線-1.460354・・をまたぎながら
 それに徐々にちかづいていく) これ以上の計算はオーバーフローとなり無理でしたが、十分でしょう。
 なお、ζ(34.5)、L(33.5)より大きいゼータ値はすべて1として計算しました。

以上。

  いかがでしょうか?
 このように、かなり簡単に求められてしまうのです。
しかも、この応用性ははかり知れないものがあります。というのも、上ではπ/2周りでテイラー展開しましたが、
これはπ/2でなくとも、それ以外の値でもよいはずだからです(左辺の関係で最後にπを代入するのでπだけ
は除く)。また、上でのπ代入もそれ以外のπ/nでもできるはず。とすると、ゼータ惑星での様々な結果と関係して
きて、半整数ゼータ値は、ありとあらゆる様々なL(χ,s)の値で表現できてくると思われるのです。

 上は、たしかに収束は遅いです。
しかし、一個の半整数ゼータ値が、無限個の半整数ゼータ値で表現される
という驚くべき事実がわかったのです!

たんに値をもとめるという単発的なことにとどまらず、L(χ,s)ゼータ全体の構造がわかってくるという点が、この私の
手法の最大の利点と思われます。

 上のA式をみればすぐに気付くことですが、じつはAの0.5を3に変えればζ(3)が出ます。また2.5に変えれば
ζ(5/2)が出ます。まだここまでしかやっていませんが、

  (cosx)/1^s + (cos2x)/2^s + (cos3x)/3^s + (cos4x)/4^s + ・・・

という母関数のsを実数にまで拡張できるのは確実であり、また解析接続により複素数まで拡大できると考えられます。

 この手法は、あまりにも簡明ですが、大きな応用性を秘めているといえるでしょう。


***************************************
2006/5/11追記
 math worldにさらに詳しい値がありました。次の通りです。
 ζ(1/2)=-1.46035450880・・・




2006/5/11           < ζ(1/2)値の導出 その2 > Cos[s=1/2, π/2代入,πテイラー]

 上は、π代入でやりましたが、π/2代入でやってみました。テイラー展開はx=π周りに展開しました。

 すると、今度はζ(1/2)が無限個の半整数ζ(s)だけで表現できました。
しかも、収束がきわめて速いものが得られたのです!

 このような「π/2代入、テイラー展開はx=π周り」で求める方法を簡単に[π/2代入、π周りテイラー]
などと略して書いておきます。

 この私の手法を、テイラーシステムと名付けます。テイラー展開を利用して出すことからこう名付けました。
単純ですが、今後、この名前もよく使っていきたいと思います。

 それでは早速、[π/2代入、π周りテイラー]でζ(1/2)を出してみましょう。一つ上とやり方は全く同じです。

[ζ(1/2)を導出する] [π/2代入、π周りテイラー]
 まず
 f(x)=(cosx)/1^0.5 + (cos2x)/2^0.5 + (cos3x)/3^0.5 + (cos4x)/4^0.5 + ・・・ -------@

という母関数を考えます。
 そして、まず上でx=π/2を代入します。すると
 f(π/2) = -2^(-0.5)・(1-2^0.5)・ζ(1/2)   -------A

となり、ζ(1/2)が現れます。

 次に、@の右辺をx=πの周りテイラー展開します。すると、次のようになります。

 f(x)= - (1-2^0.5)・ζ(1/2)  + (1-2^2.5)・ζ(-3/2)・(x-π)^2 /2!
      - (1-2^4.5)・ζ(-7/2)・(x-π)^4 /4! + (1-2^6.5)・ζ(-11/2)・(x-π)^6 /6!
       - (1-2^8.5)・ζ(-15/2)・(x-π)^8 /8! + (1-2^10.5)・ζ(-19/2)・(x-π)^10 /10!
        - (1-2^12.5)・ζ(-23/2)・(x-π)^12 /12! + (1-2^14.5)・ζ(-27/2)・(x-π)^14 /14!
             ・・・・・・・・・・・                                          -------B

 無限個の半整数ζ(s)値が出てきました。こちらにもζ(1/2)が出ています。

 さて、Bにx=π/2を代入してζ(s)の関数等式
  ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s) 
を利用して、ζ(-3/2),ζ(-7/2)・・・をすべて現実的なζ(5/2) ,ζ(9/2),・・・に直して整理整頓すると、
次のようになります。

f(π/2)
 = - (1-√2)・ζ(1/2)
 + (√2-1/2^2)・{(1・3)/(2・4)}・ζ(5/2)/2^2
  + (√2-1/2^4)・{(1・3・5・7)/(2・4・6・8)}・ζ(9/2)/2^4
   + (√2-1/2^6)・{(1・3・5・7・9・11)/(2・4・6・8・10・12)}・ζ(13/2)/2^6
    + (√2-1/2^8)・{(1・3・5・7・9・11・13・15)/(2・4・6・8・10・12・14・16)}・ζ(17/2)/2^8
     + (√2-1/2^10)・{(1・3・5・7・9・11・13・15・17・19)/(2・4・6・8・10・12・14・16・18・20)}・ζ(21/2)/2^10
                       ・・・・・・・・・・・・・                                  -----C

  1・3は1×3の意味です。Cは階乗n!を使って表すこともできますが、このように表現しました。

 AとCは等しいですので、ζ(1/2)を左辺にまとめて整理すると、次のようになります。

 (1-1/√2)・(1-√2)・ζ(1/2)
 = (√2-1/2^2)・{(1・3)/(2・4)}・ζ(5/2)/2^2
  + (√2-1/2^4)・{(1・3・5・7)/(2・4・6・8)}・ζ(9/2)/2^4
   + (√2-1/2^6)・{(1・3・5・7・9・11)/(2・4・6・8・10・12)}・ζ(13/2)/2^6
    + (√2-1/2^8)・{(1・3・5・7・9・11・13・15)/(2・4・6・8・10・12・14・16)}・ζ(17/2)/2^8
     + (√2-1/2^10)・{(1・3・5・7・9・11・13・15・17・19)/(2・4・6・8・10・12・14・16・18・20)}・ζ(21/2)/2^10
                       ・・・・・・・・・・・・・                                  -----D

 なんとも美しいものですね。
 右辺のζ(5/2),ζ(9/2),・・・は、現実世界において確定した値ですので、無限級数を計算していけば右辺は
-1.46035・・に収束します。 Dは、冒頭でのζ(1/2)の級数とは比較にならないくらい収束が速かった。

 なんと、たったの100項で、-1.46035450866・・となったのですから!(*) 
(厳密値はζ(1/2)=-1.46035450880・・・)

(*)なお、この計算はExcelのVBAでプログラムを組んでやりましたが、ζ(5/2)〜ζ(69/2)までは計算で出したかなり正確なζ(s)値を使いまし
たが、それ以外のζ(s)値はすべて1として計算しました。

以上

 このように、
  ζ(1/2)が、無限個の半整数ゼータ値ζ((1+4n)/2)で表現できる
ことがわかりました。
それも、きわめて速い収束性で!

 じつは、この方法からは、無限に面白い結果が得られます。
というのは、私がゼータ惑星で出した結果をそっくりそのまま応用できるからです。

 (cosx)/1^s + (cos2x)/2^s + (cos3x)/3^s +・・・
 からは、実2次体ゼータが出る。kπ/n代入のnをいろいろに変えることにより、様々な実2次体ゼータが
飛び出してきます。
 (sinx)/1^s + (sin2x)/2^s + (sin3x)/3^s +・・・
 からは、虚2次体ゼータが出る。kπ/n代入のnをいろいろに変えることにより、様々な虚2次体ゼータが
飛び出してくる。
 そしてどんなゼータが飛び出してくるかも、わかっているのです。私の予想L-4からわかります。

 今回発見した手法は強力ですので、この手法をひっさげ、ゼータ惑星での結果を利用しながら、他ゼータの半整数
値のみならず、いろいろと調べていくことにします。


 ところで、実2次体や虚2次体のゼータ関数とは、なんなのでしょうか?
 一言でいえば、それは方程式のゼータ関数です。
私が敬愛する加藤和也先生によればゼータ関数の中でも、方程式のゼータ関数がもっとも難しいものであるとの
ことです。
 実2次体や虚2次体に関係する方程式は、2次の合同方程式といわれるもので、その辺のことは
「解決!フェルマーの最終定理」(加藤和也著、日本評論社)にくわしく書いてあります。

 フェルマー予想は、ワイルスが解きました。
その際に使ったのが、楕円曲線のゼータ関数です。楕円曲線のゼータも、方程式のゼータ関数です。
ほかに、保型形式のゼータ関数という解析的なゼータ関数もあります。

 ワイルスは、「保型形式のゼータがなぜか楕円曲線のゼータに一致する」というきわめて不思議な事実
(谷山・志村予想といわれた)の、大きな部分を解決して、フェルマー予想を証明したのでした。
谷山・志村予想が正しければフェルマー予想も正しいことが先に証明されていたからです。

 楕円曲線のゼータにくらべれば、2次体ゼータはまだやさしいといえますが、それでも、まだまだ未知の領域が
残っている気がします。

 私がゼータ惑星で発見した
 (cosx)/1^s + (cos2x)/2^s + (cos3x)/3^s +・・・ からは、実2次体ゼータが出る
 (sinx)/1^s + (sin2x)/2^s + (sin3x)/3^s +・・・ からは、虚2次体ゼータが出る

という事実も、なぜか e^ix=cosx + i・sinx の実部と虚部に見事に対応してしまっていることを考えると、なんとも
不思議な感覚におそわれます。

 ゼータは、三角関数からあふれ出てきているようです




2006/5/11          < ζ(3) を導出 > Cos[ s=3, π/2代入,πテイラー]

 私のテイラーシステムは、きわめて応用が広いです。
 これを用いると、ζ(3)が簡単に求まってしまうのです!

ζ(3)は、もちろん
 (cosx)/1^3 + (cos2x)/2^3 + (cos3x)/3^3 +・・・ ----------@

を用いて求めます。[π/2代入,π周りテイラー展開]の条件でやってみましょう。
 今後は、このような条件を、次のように略記することにします。
 Cos[s=3, π/2代入,πテイラー]

 Cosはもちろん上式のcosを、s=3は@の1^3などの3を意味します。

 一般的にいえば、
 (cosx)/1^q + (cos2x)/2^q + (cos3x)/3^q +・・・
で、[A代入、B周りテイラー展開]で求める場合は、 Cos[s=q, A代入,Bテイラー]となります。

 また、あとで、
(sinx)/1^s + (sin2x)/2^s + (sin3x)/3^s +・・・

も、出てきますが、その場合は、Sin[・・・]とします。

 さて、早速、ζ(3)を出しましょう。

[ζ(3)を導出する] Cos[s=3, π/2代入、πテイラー]
 まず
 f(x)=(cosx)/1^3 + (cos2x)/2^3 + (cos3x)/3^3 + (cos4x)/4^3 + ・・・ -------@

という母関数を考えます。
 まず@で x=π/2を代入します。すると
 f(π/2) = -2^(-3)・(1-1/2^2)・ζ(3)   -------A

となり、ζ(3)が現れます。

 次に、@の右辺をx=πの周りテイラー展開します。すると、次のようになります。

 f(x)= - (1-1/2^2)・ζ(3)  + log2・(x-π)^2 /2!
      - (1-2^2)・ζ(-1)・(x-π)^4 /4! + (1-2^4)・ζ(-3)・(x-π)^6 /6!
       - (1-2^6)・ζ(-5)・(x-π)^8 /8! + (1-2^8)・ζ(-7)・(x-π)^10 /10!
          ・・・・・・・・・・・                                          -------B

 無限個のζ(-n)値が出てきました。こちらにもζ(3)が出ています。

 さて、Bにx=π/2を代入してζ(s)の関数等式
  ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s) 
を利用して、ζ(-1),ζ(-3)・・・をすべて現実的なζ(2) ,ζ(4),・・・に直して整理整頓すると、
次のようになります。

f(π/2)= - (1-1/2^2)・ζ(3)
   + π^2・[log2/8 + (1-2^2)・ζ(2)/{(4・3・2)・2^5}
    + (1-2^4)・ζ(4)/{(6・5・4)・2^9} + (1-2^6)・ζ(6)/{(8・7・6)・2^13}
      + (1-2^8)・ζ(8)/{(10・9・8)・2^17} + (1-2^10)・ζ(10)/{(12・11・10)・2^21} + ・・・・・・ ] ----C

  AとCは等しいですので、ζ(3)を左辺にまとめて、変形を加えて整理すると、次のようになります。

(1-1/2^3)・(1-1/2^2)・ζ(3)
        π^2・[log2/8 - (1-1/2^2)・ζ(2)/{(4・3・2)・2^3}
         - (1-1/2^4)・ζ(4)/{(6・5・4)・2^5} - (1-1/2^6)・ζ(6)/{(8・7・6)・2^7}
           - (1-1/2^8)・ζ(8)/{(10・9・8)・2^9} - (1-1/2^10)・ζ(10)/{(12・11・10)・2^11} - ・・・・] ----D

 美しい形です。
 「ゼータ関数のいくつかの点について」で見た通り、ζ(3)=[偶数ゼータの無限和]となりました。

 さて、ζ(3)の精密な値は、math worldによれば、
 ζ(3)=1.2020569032・・ 
です。
 D右辺のζ(2),ζ(4),・・・は、現実世界において確定した値ですので、右辺の無限級数を計算すると
上記1.2020569032・・・に収束します。 Dは、またきわめて収束が速く、最初から(ζ(2)項から)たったの10項で
1.202056903343・・ となりました。(Excel VBAでプログラムを組んで検証しました)

以上

 この導出の簡単さ!を味わってください。まとめておきます。

(1-1/2^3)・(1-1/2^2)・ζ(3)
     π^2・[log2/8 - (1-1/2^2)・ζ(2)/{(4・3・2)・2^3}
         - (1-1/2^4)・ζ(4)/{(6・5・4)・2^5} - (1-1/2^6)・ζ(6)/{(8・7・6)・2^7}
           - (1-1/2^8)・ζ(8)/{(10・9・8)・2^9} - (1-1/2^10)・ζ(10)/{(12・11・10)・2^11} - ・・・・] 

 またはn!を用いて、

(1-1/2^3)・(1-1/2^2)ζ(3)
   π^2{log2/8 - (1-1/2^2)・(1!/4!)ζ(2)/2^3
        - (1-1/2^4)・(3!/6!)ζ(4)/2^5 - (1-1/2^6)・(5!/8!)ζ(6)/2^7
          - (1-1/2^8)・(7!/10!)ζ(8)/2^9 - (1-1/2^10)・(9!/12!)ζ(10)/2^11
             -   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    }


 2年半ほど前、ζ(3),ζ(5),・・の導出に成功したときは、もうほんとうに、気の遠くなるような思いの計算の
末に、求めていました。次の「ゼータ関数のいくつかの点について」の「その4」〜「その7」あたりを見てください。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page021.htm

 佐藤郁郎氏も次の最後で「本当に気が遠くなるような思いの末に・・」と表現しています。
http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/sugioka1.htm

 それが、たった上だけの計算でできてしまいました。しかも、きわめて速い収束性で。
魔法のようです・・




2006/5/12          < ζ(5) を導出 > Cos[ s=5, π/2代入,πテイラー]

 次にζ(5)を求めてみましょう。
  ζ(3)と同じ「π/2代入,πテイラー」の条件で、求めます。
つまり、
 (cosx)/1^5 + (cos2x)/2^5 + (cos3x)/3^5 +・・・

という母関数を考え、π周りテイラー展開とπ/2代入を行うわけです。
略記すれば、Cos[ s=5, π/2代入,πテイラー]となります。

[ζ(5)を導出する] Cos[s=5, π/2代入、πテイラー]
 まず
 f(x)=(cosx)/1^5 + (cos2x)/2^5 + (cos3x)/3^5 + (cos4x)/4^5 + ・・・ -------@

という母関数を考えます。
 まず@上で x=π/2を代入します。すると
 f(π/2) = -2^(-5)・(1-1/2^4)・ζ(5)   -------A

となり、ζ(5)が現れます。

 次に、@の右辺をx=πの周りテイラー展開します。すると、次のようになります。

 f(x)= - (1-1/2^4)・ζ(5)  + (1-1/2^2)・ζ(3)(x-π)^2 /2! - log2・(x-π)^4 /4!
      + (1-2^2)・ζ(-1)・(x-π)^6 /6! + (1-2^4)・ζ(-3)・(x-π)^8 /8!
       - (1-2^6)・ζ(-5)・(x-π)^10 /10! + (1-2^8)・ζ(-7)・(x-π)^12 /12!
          ・・・・・・・・・・・                                          -------B

 無限個のζ(-n)値が出てきました。こちらにもζ(5)が出ています。ζ(3)も見えた。

 さて、Bにx=π/2を代入してζ(s)の関数等式
  ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s) 

を利用して、ζ(-1),ζ(-3)・・・をすべて現実的なζ(2) ,ζ(4),・・・に直して整理整頓すると、
次のようになります。

f(π/2)= - (1-1/2^4)・ζ(5) + (1-1/2^2)π^2・ζ(3)/(2!・2^2) 
  + π^4・[-log2/(4!・2^4) - (1-2^2)・ζ(2)/{(6・5・4・3・2)・2^7}
   - (1-2^4)・ζ(4)/{(8・7・6・5・4)・2^11} - (1-2^6)・ζ(6)/{(10・9・8・7・6)・2^15}
    - (1-2^8)・ζ(8)/{(12・11・10・9・8)・2^19} - (1-2^10)・ζ(10)/{(14・13・12・11・10)・2^23}
       -     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・             ]     --------------C

 4項目以降階乗n!を使って表現することもできます。
AとCは等しいので、ζ(5)を左辺にまとめて変形を加えて整理すると、次のようになります。

(1-1/2^5)・(1-1/2^4)・ζ(5) (1-1/2^2)π^2・ζ(3)/(2!・2^2) 
  + π^4・[-log2/(4!・2^4) + (1-1/2^2)・ζ(2)/{(6・5・4・3・2)・2^5}
   + (1-1/2^4)・ζ(4)/{(8・7・6・5・4)・2^7} + (1-1/2^6)・ζ(6)/{(10・9・8・7・6)・2^9}
    + (1-1/2^8)・ζ(8)/{(12・11・10・9・8)・2^11} + (1-1/2^10)・ζ(10)/{(14・13・12・11・10)・2^13}
      +     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・                             ] --------D


 「ゼータ関数のいくつかの点について」で見たと同様、ζ(5)=[偶数ゼータの無限和]となりました。(これはζ(3)が
一つ上で[偶数ゼータの無限和]とわかっていますから、そうなりますね)

 さて、ζ(5)の精密な値は、math worldによれば、
 ζ(5)=1.0369277551・・    ---------E
です。
 D右辺のζ(3),ζ(2),ζ(4),・・・は、現実世界において確定した値ですので、右辺の無限級数を計算すると
Eの値収束します。ζ(3)は一つ上での精密値を使いました( ζ(3)=1.2020569032・・ )。

 Dもまた、きわめて収束が速く、最初から(ζ(2)項から数えて)たったの10項で1.036927755143 ・・ となりま
した。(Excel VBAでプログラムを組んで検証)

以上

  まとめておきます。

(1-1/2^5)・(1-1/2^4)ζ(5)
    (1-1/2^2)π^2・ζ(3)/(2!・2^2) 
      + π^4・[-log2/(4!・2^4) + (1-1/2^2)・ζ(2)/{(6・5・4・3・2)・2^5}
        + (1-1/2^4)・ζ(4)/{(8・7・6・5・4)・2^7} + (1-1/2^6)・ζ(6)/{(10・9・8・7・6)・2^9}
          + (1-1/2^8)・ζ(8)/{(12・11・10・9・8)・2^11} + (1-1/2^10)・ζ(10)/{(14・13・12・11・10)・2^13}
             +  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・      ] 

 またはn!を用いて、

(1-1/2^5)・(1-1/2^4)ζ(5)
   = (1-1/2^2)π^2・ζ(3)/(2!・2^2) 
      + π^4{-log2/(4!・2^4) + (1-1/2^2)・(1!/6!)ζ(2)/2^5
        + (1-1/2^4)・(3!/8!)ζ(4)/2^7 + (1-1/2^6)・(5!/10!)ζ(6)/2^9
          + (1-1/2^8)・(7!/12!)ζ(8)/2^11 + (1-1/2^10)・(9!/14!)ζ(10)/2^13
             +  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・     }



  このように、ζ(5)もまったく簡単に求まりました。

 テイラーシステムは力が強く、奇数ゼータ特殊値を簡単に導き出してくれるのでした。




2006/5/13         < ζ(7) を導出 > Cos[ s=7, π/2代入,πテイラー]

 次にζ(7)を求めてみましょう。
  ζ(3)、ζ(5)と同じ「π/2代入,πテイラー」の条件で求めます。
つまり、
 (cosx)/1^7 + (cos2x)/2^7 + (cos3x)/3^7 +・・・

という母関数を考え、π周りテイラー展開とπ/2代入を行います。
略記すればCos[ s=7, π/2代入,πテイラー]となります。

[ζ(7)を導出する] Cos[s=7, π/2代入、πテイラー]
 まず
 f(x)=(cosx)/1^7 + (cos2x)/2^7 + (cos3x)/3^7 + (cos4x)/4^7 + ・・・ -------@

という母関数を考えます。
 まず@上で x=π/2を代入します。すると
 f(π/2) = -2^(-7)・(1-1/2^6)・ζ(7)   -------A

となり、ζ(7)が現れます。

 次に、@の右辺をx=πの周りテイラー展開します。すると、次のようになります。

 f(x)= - (1-1/2^6)・ζ(7)  + (1-1/2^4)・ζ(5)(x-π)^2 /2!
    - (1-1/2^2)・ζ(3)(x-π)^4 /4!+ log2・(x-π)^6 /6!
      - (1-2^2)・ζ(-1)・(x-π)^8 /8! + (1-2^4)・ζ(-3)・(x-π)^10 /10!
       - (1-2^6)・ζ(-5)・(x-π)^12 /12! + (1-2^8)・ζ(-7)・(x-π)^14 /14!
          ・・・・・・・・・・・                                       -------B

 無限個のζ(-n)値が出てきました。こちらにもζ(7)が出ました。ζ(5),ζ(3)も現れています。

 さて、Bにx=π/2を代入してζ(s)の関数等式
  ζ(1-s)=cos(πs/2)・Γ(s)・2^(1-s)・π^(-s)・ζ(s) 

を利用して、ζ(-1),ζ(-3)・・・をすべて現実的なζ(2) ,ζ(4),・・・に直して整理整頓すると、
次のようになります。

f(π/2)=- (1-1/2^6)・ζ(7) + (1-1/2^4)・ζ(5)π^2 /(2!・2^2) - (1-1/2^2)・ζ(3)π^4 /(4!・2^4)
     + π^6・[log2/(6!・2^6) + (1-2^2)・ζ(2)・1!/(8!・2^9)
       + (1-2^4)・ζ(4)・3!/(10!・2^13) + (1-2^6)・ζ(6)・5!/(12!・2^17)
         + (1-2^8)・ζ(8)・7!/(14!・2^21) + (1-2^10)・ζ(10)・9!/(16!・2^25)
           +    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・             ] --------C

 今回のζ(7)では、階乗n!を使って表現しました。例えば、4!=4×3×2×1です。
AとCは等しいので、ζ(7)を左辺にまとめて変形を加えて整理すると、次のようになります。

(1-1/2^7)・(1-1/2^6)・ζ(7)
    (1-1/2^4)・ζ(5)π^2 /(2!・2^2) - (1-1/2^2)・ζ(3)π^4 /(4!・2^4)
     + π^6・{log2/(6!・2^6) - (1-1/2^2)・ζ(2)・1!/(8!・2^7)
           - (1-1/2^4)・ζ(4)・3!/(10!・2^9) - (1-1/2^6)・ζ(6)・5!/(12!・2^11)
             - (1-1/2^8)・ζ(8)・7!/(14!・2^13) - (1-1/2^10)・ζ(10)・9!/(16!・2^15)
               -   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・      }      ------D

 
 「ゼータ関数のいくつかの点について」で見たと同様、ζ(7)=[偶数ゼータの無限和]となりました。(これはζ(3)と
ζ(5)が上で[偶数ゼータの無限和]とわかっているので、そうなります)

 さて、ζ(7)の精密な値は、math worldによれば、
 ζ(7)=1.0083492774 ・・      ---------E
です。
 D右辺のζ(5),ζ(3),ζ(2),ζ(4),・・・は、現実世界において確定した値ですので、右辺の無限級数を計算
するとEの値収束します。ζ(3)、ζ(5)は本ページ上での精密値を使いました。

 Dも収束は非常に速く、最初からの(ζ(2)項から数えて)たったの10項で1.008349277382 ・・ となりました。
(Excel VBAでプログラムを組んで検証)

以上

  このように、ζ(7)もまったく簡単に求まりました。ここでも収束は異常に速かった

 「ゼータ関数のいくつかの点についてで2年半ほど前に、これらζ(3)、ζ(5)、ζ(7)を計算していたときは
まったくたいへんな計算でした。手計算でζ(7)などは6時間以上はかっかっていたのではないかと思われ、
過酷な修行のようなものだったのです。

 それが、上の計算だけで当時と同等(同類)の式がでてくる。
 D式を出すのにわずか30分ほどでできてしまうのです!(手計算で)  あっという間です。

  恐るべしテイラーシステム!といえるでしょう。

ζ(3)、ζ(5)と合わせてまとめておきます。
(1-1/2^3)・(1-1/2^2)ζ(3)
 π^2{log2/8 - (1-1/2^2)・(1!/4!)ζ(2)/2^3
        - (1-1/2^4)・(3!/6!)ζ(4)/2^5 - (1-1/2^6)・(5!/8!)ζ(6)/2^7
           - (1-1/2^8)・(7!/10!)ζ(8)/2^9 - (1-1/2^10)・(9!/12!)ζ(10)/2^11
              -   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・    }


(1-1/2^5)・(1-1/2^4)ζ(5)
 = (1-1/2^2)π^2・ζ(3)/(2!・2^2) 
      + π^4{-log2/(4!・2^4) + (1-1/2^2)・(1!/6!)ζ(2)/2^5
            + (1-1/2^4)・(3!/8!)ζ(4)/2^7 + (1-1/2^6)・(5!/10!)ζ(6)/2^9
              + (1-1/2^8)・(7!/12!)ζ(8)/2^11 + (1-1/2^10)・(9!/14!)ζ(10)/2^13
                 +  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・     }


(1-1/2^7)・(1-1/2^6)ζ(7)
 (1-1/2^4)ζ(5)π^2 /(2!・2^2) - (1-1/2^2)ζ(3)π^4 /(4!・2^4)
   + π^6{log2/(6!・2^6) - (1-1/2^2)・(1!/8!)ζ(2)/2^7
         - (1-1/2^4)・(3!/10!)ζ(4)/2^9 - (1-1/2^6)・(5!/12!)ζ(6)/2^11
           - (1-1/2^8)・(7!/14!)ζ(8)/2^13 - (1-1/2^10)・(9!/16!)ζ(10)/2^15
              -   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   }
  




2006/5/14         < これまでのまとめ

  ここまでの結果をまとめておきます。
 テイラーシステムは優れた手法ですが、条件がいくつもあるので、整理整頓しておきたいと思います。

テイラーシステムでの結果
ゼータ値   条件 左記ゼータ値を表現
するゼータの種類
@ ζ(1/2) Cos[ s=1/2, π代入,π/2テイラー]
L(s),ζ(s)
A ζ(1/2) Cos[ s=1/2, π/2代入,πテイラー]
ζ(s)
B ζ(3) Cos[ s=3, π/2代入,πテイラー]
ζ(s)
C ζ(5) Cos[ s=5, π/2代入,πテイラー]
ζ(s)
D ζ(7) Cos[ s=7, π/2代入,πテイラー]
ζ(s)



 表の見方は、例えば@では、「Cos[ s=1/2, π代入,π/2テイラー]の条件で、ζ(1/2)がL(s)とζ(s)の
無限和で表現された」ことをあわらしています。他も同様に見てください。

 @の「条件」以外は、すべて本質的に等しい条件となっています。本ページでは、

 (cosx)/1^s + (cos2x)/2^s + (cos3x)/3^s +・・・ 

 の母関数に対し、[π/2代入、π周りテイラー展開]を中心にやったわけです。






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ゼータ系の彗星群

数学の研究