私のテイラーシステムでζ(-5)、ζ(-7)を求めました。ベルヌ−イ数関連で面白い規則(予想)を見つけました。
私の予想Aとの関連で、クラウゼン・フォンシュタウトの定理を紹介。予想Aが解かれました。
「ベルヌ−イ数=ベルヌ−イ数の和」を示す。 関・ベルヌ−イの定義式との関連。
その3で、ζ(-1),ζ(-3)を出していまして、ζ(-5)、ζ(-7)を出すのをうっかり忘れていましたので、ここで
導出しておきます。
まず、その3で導出したζ(-1),ζ(-3)の式を書いておきます。
*******************
(1-2)・(1-2^2)・ζ(-1)
= (1/π^2)・[(1-2^4)・3・ζ(4)/2^5 + (1-2^6)・5・ζ(6)/2^9
+ (1-2^8)・7・ζ(8)/2^13 + (1-2^10)・9・ζ(10)/2^17
+ (1-2^12)・11・ζ(12)/2^21 + (1-2^14)・13・ζ(14)/2^25
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ]
(1-2^3)・(1-2^4)・ζ(-3)
= (1/π^4)・[(2^6-1)・5・4・3・ζ(6)/2^7 + (2^8-1)・7・6・5・ζ(8)/2^11
+ (2^10-1)・9・8・7・ζ(10)/2^15 + (2^12-1)・11・10・9・ζ(12)/2^19
+ (2^14-1)・13・12・11・ζ(14)/2^23 + (2^16-1)・15・14・13・ζ(16)/2^27
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ]
**********************
このように、どちらも[偶数ゼータの無限和]という面白い形に表されたのでした。
上を、階乗n!を用いた形に書き直しておきます(簡単です)。次のようになります。
さて、テイラーシステムでの 条件Cos[ s=s, π/2代入,πテイラー]で求めた一般式は、となります。
その3でζ(-1),ζ(-3)を出したのとまったく同様にして(あるいは上の一般式を用いても同じですが)、
ζ(-5),ζ(-7)も求めました。答えだけ書きます。
(1-2^5)・(1-2^6)・ζ(-5)
=-1/π^6・[(1-1/2^8)・7!・ζ(8)/(2!・2^1)
+ (1-1/2^10)・9!・ζ(10)/(4!・2^3)
+ (1-1/2^12)・11!・ζ(12)/(6!・2^5)
+ (1-1/2^14)・13!・ζ(14)/(8!・2^7)
+ (1-1/2^16)・15!・ζ(16)/(10!・2^9)
+ (1-1/2^18)・17!・ζ(18)/(12!・2^11)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ]
(1-2^7)・(1-2^8)・ζ(-7)
=1/π^8・[(1-1/2^10)・9!・ζ(10)/(2!・2^1)
+ (1-1/2^12)・11!・ζ(12)/(4!・2^3)
+ (1-1/2^14)・13!・ζ(14)/(6!・2^5)
+ (1-1/2^16)・15!・ζ(16)/(8!・2^7)
+ (1-1/2^18)・17!・ζ(18)/(10!・2^9) + (1-1/2^20)・19!・ζ(20)/(12!・2^11)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ]
最後に、ζ(-1),ζ(-3),ζ(-5),ζ(-7)の式をまとめておきます。
その3での結論を繰り返しますと、結局「ゼータ関数のいくつかの点について」の結果とあわせて、極ζ(1)を除いて、
負の地点もふくめたすべてのζ(2n+1)
つまり、
・・・・ζ(-7),ζ(-5),ζ(-3),ζ(-1),ζ(3),ζ(5),ζ(7),・・・・
は、[偶数ゼータの無限和]で表現できることがわかりました。
上のζ(-1),ζ(-3),・・の計算の途上、左辺の(1-2^2)・ζ(-1) や (1-2^4)・ζ(-3) など ・・を計算していて、
面白い事実を発見しましたので、お知らせします。
結論から述べますと、どうも次のようになっているようなのです。
まずオイラーの式
ζ(1-m)=(-1)^(m-1)・Bm/m --------@
m=1,2,3,4,・・・
という簡明な関係があることはよく知られている。よって、この予想はベルヌ−イ数の予想ともいえるのです。
予想の一例を上げましょう。例えば、n=6のとき、B6 = 1/42 なので@を利用して
(1-2^6)・ζ(-5)=(-63)・(-B6/6)=(-63)・(-1/252)=1/2^2
となるという具合です。
ベルヌ−イ数を考えると、この予想(規則)はぜんぜん自明ではない。なぜこんなふうになるのか皆目見当もつか
ないという類のものです。
予想1の提示でベルヌ−イ数を具体的に書いていましたので、それを再度記します。
ベルヌーイ数は、
x/(e^x−1)=B0+B1x+B2x^2/2!+B3x^3/3!+・・・・
として展開される有理数Bnで、次のようになります。
ベルヌ−イ数 (B0〜B34)
B0 = 1 B20=-174611/330
B1 = -1/2 B22=854513/138
B2 = 1/6 B24=-236364091/2730
B4 = -1/30 B26=8553103/6 B6 = 1/42 B28=-23749461029/870 B8 = -1/30 B30=8615841276005/14322 B10 = 5/66 B32=-7709321041217/510 B12 = -691/2730 B34=2577687858367/6
B14 = 7/6 ・
B16 = -3617/510 ・
B18=43867/798
とどこまでも続いていく。ちなみに、n が1を除く奇数の場合はすべて0です。 本によっては、B2nをBnと記しているものもあるのでご注意ください(つまり奇数は0だからはじめから除いている)。
上の私の予想を具体的にたくさん調べたいわけですが、もちろんオイラーの式@を利用しながら予想を調べていきます。
ζ(1-m)=(-1)^(m-1)・Bm/m --------@
m=1,2,3,4,・・・
ベルヌ-イ数の分母が上でみるように、てんでばらばらになっているので、予想の右辺の分母が2^mに統一されて
いるのが余計に不思議におもえるのです(ただ、この規則?はすでに知られているのかもしれませんが)。
以上で前準備は終わりです。では、はじめましょう。予想に合っていればOKとします。
[具体的に予想を確める]
(1-2^2)・ζ(-1)=(-3)・(-B2/2)=(-3)・(-1/12)=1/2^2 OK
(1-2^4)・ζ(-3)=(-15)・(-B4/4)=(-15)・(1/120)=-1/2^3 OK
(1-2^6)・ζ(-5)=(-63)・(-B6/6)=(-63)・(-1/252)=1/2^2 OK
(1-2^8)・ζ(-7)=(-255)・(-B8/8)=(-255)・(1/240)=-17/2^4 OK
(1-2^10)・ζ(-9)=(-1023)・(-B10/10)=(-1023)・(-1/132)=31/2^2 OK
(1-2^12)・ζ(-11)=(-4095)・(-B12/12)=(-4095)・{691/(2730×12)}=-691/2^3 OK
(1-2^14)・ζ(-13)=(-16383)・(-B14/14)=(-16383)・{-1/(2^2×3)}=43×127/2^2 OK
(1-2^16)・ζ(-15)=(-65535)・(-B16/16)=(-65535)・{3617/(2^5×3×5×17)}=-257×3617/2^5 OK
・
・
・
と、このようにどこまでもOKのようなのです。
(1-2^n)・ζ(1-n)=(整数)/2^m となっているようなのです。
とても不思議です。
ちなみに、上で最後は分子を素因数分解しています。整数を素因数分解するには次サイトが便利です。
私は、ζ(-31)まで調べましたが、すべてOKでした。ちなみに、ζ(-31)は、
(1-2^32)・ζ(-31)=257×65537×37×683×305065927/2^6 OK
となります。
ぜひみなさんも、Aサイトで素因数分解しながら確めてみてください。面白いですよ。
ζ(-31)より上はAサイトを利用しても素因数分解がなかなかたいへんなのですが、すべてのn(偶数)で成り立って
いるような気がします。
@の関係があるので、この予想はζ(-n)の秘密ともベルヌ−イ数の秘密ともいえそうです。
はたして、この私の予想Aは正しいのでしょうか?
それとも、反例が出てくるのでしょうか?
「解決できたよ」というお便りを待っています。
クラウゼン・フォンシュタウトの定理というのがあって、私の予想Aと関係があるかもしれないので、それを
紹介します。
私の予想Aは次のものでした。
私の予想Aは、次のオイラーの式@をからめて確めていくと、結局ベルヌ−イ数Bmの分母と分子両方に関係した
規則(予想)であるとわかります。
ζ(1-m)=(-1)^(m-1)・Bm/m --------@
m=1,2,3,4,・・・
一見、ベルヌ−イ数の分母のみに関係あるのではないか?と思えますが分子も関係している。
例えば、(1-2^22)・ζ(-21)をみると、
(1-2^22)・ζ(-21)=(-4194303)・(-B22/22)=(-4194303)・{-(854513/138)×(1/22)}
=(-4194303)・[-{(11×131×593)/(2×3×23)}×{1/(2×11)}]
=(-4194303)・{-131×593/(2^3×3×23)}
=(-3×23×89×683)・{-131×593/(2^3×3×23)}
=89×683×131×593/2^2 OK
と、このようにB22=854513/138の分子854513も関係している(上では素因数分解をして確認)。
そうやって、きわどく予想Aが成り立っているのです。
さて、クラウゼン・フォンシュタウトの定理というベルヌ−イ数に関する強力な定理があります。
私は、はじめ予想Aは、もしかしてこの定理の力で証明されるかもしれないとも思ったのですが、しかしこれは
ベルヌ−イ数Bmの分母を決定する定理であり、これだけでは不完全なのかもしれません。
しかし、ともあれベルヌ−イ数に関して重要な定理ですから、
「ベルヌ−イ数とゼータ関数」(荒川恒男ほか著、牧野書店)を参照しつつ、紹介しておきます。
本の表現とはすこし変えていますがこのような定理です。ベルヌ−イ数の分母を完全に決定している。
(さらに詳しくは、”少数部分”を決定している。)
これは驚くべき定理なのですが、これだけではわかりにくいでしょう。
いくつかのベルヌ−イ数Bnの具体例で見てみましょう。
B4
例えば、B4 = -1/30 を見ましょう。
定理では和 Σ1/p がポイントです。 Σ1/pは、p-1がnを割るような素数pをわたる。
いまn=4ですから、p-1が4を割るような素数は、5,3,2 のみとわかる。
(つまり、5-1=4・1,3-1=2・2,2-1=4・1)
よって、Σ1/p=1/5+1/3+1/2=(6+10+15)/30=31/30 ----@
となる。
さて、定理の式
Bn=-Σ1/p + Cn (Cnは整数)
は、成り立っているでしょうか?
@より、-1/30=-31/30 + 1
と、なって成り立っている。つまり、CnのC4は1と整数となり、成立しているのです!
@によって、B4の分母が30と決定されている。
B10
つぎに、例えば、B10 = 5/66 を見ましょう。Σ1/pは、p-1がnを割るような素数pをわたる。
いまn=10ですから、p-1が10を割るような素数は、11,3,2 のみとわかる。
(つまり、11-1=10・1,3-1=5・2,2-1=1・10)
よって、Σ1/p=1/11+1/3+1/2=(6+22+33)/66=61/66 ----A
となる。
さて、定理の式
Bn=-Σ1/p + Cn (Cnは整数)
は、成り立っているでしょうか?
Aより、5/66=-61/66 + 1
となって成り立っている。つまり、CnのC10は1と整数となり、成立しているのです。
Aによって、B10の分母が66と決定された。
以上。
以上、二つの具体例でクラウゼン・フォンシュタウトの定理を見ましたが、いかに本質的な定理であるか
わかるでしょう。
(なぜ@やAから、分母の完全な決定がいえるのか?それは、Σ1/pの計算のしくみと、その結果への整数の
足し算のしくみを考えればわかります。)
ベルヌーイ数は、
x/(e^x−1)=B0+B1x+B2x^2/2!+B3x^3/3!+・・・・
として展開される有理数Bnです。これからは、まったく素数との関係がみえないわけですが、
クラウゼン・フォンシュタウトの定理では、見事に素数とつながりが見えているのでした。
上記本によれば、この定理の結果は、
「・・ベルヌ−イ数のp進的性質を調べる際に基本的なものである。さらに、アイゼンシュタイン級数を通して、p進
モジュラー形式の理論においても基本的な役割を果たす。」
ということです。
Sugimoto氏に私の予想Aを問うたところ、タンジェント数との関係でこれは間接的に知られた事実であると教えてくだ
さいました。
つまり、私の予想Aは正しいという結論になりました。
許可を得て、Sugimotoさんにご教示いただいた内容を掲載します。
********************************************
今回の数は「タンジェント数」の性質そのものです。
tan x = 1(x/1!)+2(x^3/3!)+16(x^5/5!)+272(x^7/7!)+… における 1,2,16,272,7936,353792,… がその数列です。 このタンジェント数T<n>はベルヌーイ数Bnと次の関係があります。 T<n-1> = 2^n(2^n-1) |Bn|/n 従って今回の数は絶対値で考えると偶数のnに対して |(1-2^n)ζ(1-n)| = |(1-2^n) (-Bn)/n| = T<n-1>/2^n であり、タンジェント数を2^nで割った数になります。 例えば次のようになります。 n=2 T1/2^2 = 1/2^2 n=4 T3/2^4 = 2/2^4 = 1/2^3 n=6 T5/2^6 = 16/2^6 = 1/2^2 n=8 T7/2^8 = 272/2^8 = 17/2^4 n=10 T9/2^10= 7936/2^10 = 31/2^2 このタンジェント数とベルヌーイ数の関係は http://homepage3.nifty.com/y_sugi/gf/gf11.htm#tangnum を参照して下さい。 タンジェント数とオイラー数も相互に関係の深い数です。 http://homepage3.nifty.com/y_sugi/gf/gf35.htm にはその興味深い関係を書いています。 ζ(1-n) ←→ ベルヌーイ数 ←→ タンジェント数 ←→ オイラー数 は互いに深い関係がある数です。 クラウゼン・フォンシュタウトの定理に出てくる ベルヌーイ数の整数部分 Cn に関しては、私の予想式が http://homepage3.nifty.com/y_sugi/gf/gf15.htm にあります。良ければ見て下さい。 Cn = [ π/2 - 2ζ(n)n!/(2πi)^n ] これも予想式 においてζ(n)を計算で求めるようにした式です。 ************************************************
明快な説明でした。結局、(1-2^n)ζ(1-n)は、整数のタンジェント数を2^nで割ったものに等しいのですから、
(整数)/2^mという形になるのは当然というわけです。
私はタンジェント数という数はよく知らなかったのですが、上の説明をみると、ゼータやベルヌ-イ数と関係した
味わいふかい数のようです。
また、佐藤郁郎氏は、
「ベルヌーイ数についてのこの関係は、杉岡さんのものとは表現形が少しころなるもののすでに知られていて、
しかもまったく関係なさそうに思える微分位相幾何学の定理とも関係しています。もちろん、クラウセン、フォンシュ
タウトとも関係しています。」
と教えていただきました。
いろいろなものが地下ふかくでつながっています。お二人に感謝いたします。
以下示す結果は、この「百武彗星」ですでに得た結果から自動的に出る結果なので、なんら本質的なものでは
ありません。
ただ、私のオリジナルな手法テイラーシステムからこのような結果が出ること、またゼータではなくベルヌ−イ数という
視点で見れば一寸面白いかと思いますので、書いておきます。
このページ冒頭の結果とその2の結果を記します。
本ページ(その5)冒頭で、ζ(-n)が[偶数ゼータの無限和]で表現できることがテイラーシステムから得られること
を次のように示しました。
またその2では、偶数ゼータζ(2n)が[偶数ゼータの有限和]で表現できるという私のテイラーシステムから得られる
ことを示しました。次です。
上から、すぐにわかることは、
あるベルヌ−イ数は、それ以外のベルヌ−イ数の無限個の和で表現できる
また、
あるベルヌ−イ数は、それ以外のベルヌ−イ数の有限個の和で表現できる
ということです。具体例を一つづつ示します。
[無限個の方から]
例えば、上の
(1-2)・(1-2^2)・ζ(-1)
=-1/π^2・[(1-1/2^4)・3!・ζ(4)/(2!・2^1)
+ (1-1/2^6)・5!・ζ(6)/(4!・2^3)
+ (1-1/2^8)・7!・ζ(8)/(6!・2^5)
+ (1-1/2^10)・9!・ζ(10)/(8!・2^7)
+ (1-1/2^12)・11!・ζ(12)/(10!・2^9)
+ (1-1/2^14)・13!・ζ(14)/(12!・2^11)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ]
をとりあげます。関数等式
ζ(1-m)=cos(πm/2)・(m-1)!・2^(1-m)・π^(-m)・ζ(m) ------@
m=0,2,4,6,・・・
から、ζ(-1)=-ζ(2)/(2・π^2)となり、よって、
3・ζ(2) /2 =(1-1/2^4)・3!・ζ(4)/(2!・2^1)
+ (1-1/2^6)・5!・ζ(6)/(4!・2^3)
+ (1-1/2^8)・7!・ζ(8)/(6!・2^5)
+ (1-1/2^10)・9!・ζ(10)/(8!・2^7)
+ (1-1/2^12)・11!・ζ(12)/(10!・2^9)
+ (1-1/2^14)・13!・ζ(14)/(12!・2^11)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ------A
となります。つまり@は、偶数ゼータは[偶数ゼータの無限和]で表現できるという式でもあったのです。
さて、
ζ(m)=(-1)^(m/2+1)・2^(m-1)・Bm・π^m/m! ------B
m=1,2,3,4,・・・
というζ(s)でよく知られた式より、Aは全部ベルヌ−イ数で表すことができる。
結果だけ書くと、
3・B2 =2^3・[-(1-1/2^4)・3・B4・π^2/4!
+ (1-1/2^6)・5・B6・π^4/6!
- (1-1/2^8)・7・B8・π^6/8!
+ (1-1/2^10)・9・B10・π^8/10!
- (1-1/2^12)・11・B12・π^10/12!
+ (1-1/2^14)・13・B14・π^12/14!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ] ------C
となりました。
このようにB2は、B4以上の無限個のベルヌ−イ数で表現できる。(πが含まれてしまいましたが)
以上。
[有限個の方]
有限個の例として、上の結果から次をとりあげましょう。
(1-1/2^4)・(1-1/2^3)・ζ(4)
=(1-1/2)・ζ(2)・(π/2)^2 /2!- (1-2)・ζ(0)・(π/2)^4 /4!
無限個の場合と同様にして計算した結果を記すと、次のようになります。
110・B4 =-24・B2 + B0/2 ------D
このように、B6は、B2とB0の二つの(有限個の)ベルヌ−イ数で表現できた。
(B4=-1/30,B2=1/6,B0=1)
ただし、ベルヌ−イ数が有限個のベルヌ−イ数で表現できるのは珍しいことでもなんでもなく、ベルヌ−イ数の
定義(色々ありますが)からして、そうなのです。
「ベルヌ−イ数とゼータ関数」(荒川恒男ほか著、牧野書店)にのっていますが、関孝和とベルヌ−イが記した
漸化的な定義式があります。次のものです。
nCkはニ項係数、Bkはベルヌ−イ数である。(本と表記を変えているが、同じものです)
これから容易に次のようになることがわかります。
n=0--> B0=1
n=1--> B0 + 2B1=2
n=2--> B0 + 3B1+ 3B2=3
n=3--> B0 + 4B1+ 6B2+ 4B3=4
n=4--> B0 + 5B1+ 10B2+ 10B3+ 5B4=5 -----E
・
・
このようにベルヌ−イ数が有限個のベルヌ−イ数で表されるのは当たり前のことなのです。
ここで、上の関とベルヌ−イによる定義式ではB1=1/2となります。(市販の本ではB1=-1/2となっているものも
多いので、この定義式を用いた場合この点だけ注意すべきです)
私のテイラーシステムを用いて上で出したB4の式Dを再度書きます。
110・B4 =-24・B2 + B0/2 ------D
一方、関とベルヌ−イの定義式から出したB4のEは、B3は0であるから、
B0 + 5B1+ 10B2+ 5B4=5
つまり、
-5B4=B0 + 5B1+ 10B2 - 5 -----F
となる。
(B4=-1/30,B1=1/2,B2=1/6,B0=1)
DとFを比べると、違っています。面白いものですね。
驚くべきことに、関孝和(1642-1708)は、ベルヌ−イ(1654-1705)より前にベルヌ−イ数を発見して
いたことが「ベルヌ−イ数とゼータ関数」(荒川恒男ほか著、牧野書店)に書いてあります。
本には「ベルヌ−イ数は本当は「関・ベルヌ−イ数」と呼ばれるべきと思われる」とある。
江戸時代、日本で素晴らしい発見がひそかになされていたわけです。
数学を研究されているKonoさんから、私の予想Aに対する回答を頂きましたので、以下に掲載します。
********************************************
1 ベキ化多項式とベキ化係数
等比級数 1 + x + x^2 + x^3 + x^4 + … = 1/(1-x) を4乗する(3回微分して3!で割る)と 1 + 4x + 10*x^2 + 20*x^3 + 35*x^4 + … = 1/(1-x)^4 となりますがこの左辺の係数はベキにはなっていません。 ところがこれに多項式 1 + 4x + x^2 を乗じると3次のベキを係数とする級数 1 + 2^3*x + 3^3*x^2 + 4^3*x^3 + 5^3*x^4 + … = (1+4x+x^2)/(1-x)^4 が得られます。 小生はこの多項式をベキ化多項式、この係数 1 4 1 をベキ化係数と呼んでいます。 ベキ化係数はパスカルのピラミッドのようになっていて、上段から例示すると 1 , 1 1 , 1 4 1 , 1 11 11 1 , 1 26 66 26 1 , … のようになっています。面白いことにこの n 段の横計は n! になります。 n 段目のr 列目のベキ化係数を nDr と表します。 2 e^ix / (1- e^ix) の高階導関数と高階微係数 この高階導関数と高階微係数を求めて整理すると次式が得られます。 ζ(-n) = 1 / 2^(n+1) / (1-2^(n+1)) * (-1)^(r-1)*nDr r=1〜n n を n-1 に置き換えれば ζ(1-n) = 1 / 2^n / (1-2^n) * (-1)^(r-1)* n-1Dr r=1〜n-1 即ち (1-2^n)*ζ(1-n) = (-1)^(r-1)* n-1Dr / 2^n r=1〜n-1 を得ます。 n は偶数ですから n-1 は奇数、よって分子は上記係数ピラミッドの 奇数段を交代数列にして加えればよいことになります。奇数段は左右対称 且つ中心項は偶数ですから分子は必ず偶数になります。分母は 2^n だから これを既約分数にすれば分子は必ず奇数、分母は 2^m (m<n) となります。 Q.E.D 例えば n=6 とすると (1-2^6)*ζ(-5) = (1-26+66-26+1)/2^6 = 16/2^6 = 1/2^2 pdf 等の添付ファイルをお許し頂ければきちっと書けるのですが、拙著を御一読 頂ければその必要はないかと思います。場所は、小生のサイトの第1章第4節です。
********************************************
このように解かれていますが、過程が面白いと思いました。
Sugimoto氏の解法と比べてみると、どこかタンジェント数とも関係がありそうです。
私は、ベキを係数にもつ母関数とその展開の式に深いものを感じます。こんなものは全然知らなかった。
1 + 2^3*x + 3^3*x^2 + 4^3*x^3 + 5^3*x^4 + … = (1+4x+x^2)/(1-x)^4
など面白いではありませんか。
記されているとおり、これはn次に一般化されており、例えば、4次べき、5次べきでは次のようになる。
1+ 2^4*x + 3^4*x^2 + 4^4*x^3 + … = (1+11x+11x^2+x^3)/(1-x)^5
1+ 2^5*x + 3^5*x^2 + 4^5*x^3 + … = (1+26x+66x^2+26x^3+x^4)/(1-x)^6
面白い式です。 「パスカルのピラミッドのようになっていて、・・」の辺りは、数学の重要ななにかが隠れているに
ちがいありません。
2006/7/23追加
Sugimoto氏に上記Kono氏の結果を伝えたところ、次のメールをもらいましたので紹介します。
*****************************************
河野さんが独自の名前で呼ばれている係数は、通常は
Eulerian number と呼ぶため、以下はこの名前を使用します。 いわゆるオイラー数(1,-1,5,-61,1385,…)とは異なるものです。 三角形は triangle of Eulerian numbers あるいは Euler's number triangle と呼ばれているようです。 Eulerian numberを交代数列にして加えると、タンジェント数 になる事を今回知りました。 1-26+66-26+1 = 16 1-120+1191-2416+1191-120+1 = -272 タンジェント数、つまりベルヌーイ数の表現は多数あるわけ
ですね。
**************************************
このように、タンジェント数とEulerian number は地下で結びついていたのです。面白いことです。
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