「おそろし
三島屋変調百物語事始」
タイトルに百物語とあるとおり、ふしぎ話の連作もの。
怪異もの、情念ものと語られて、最終話の「家鳴り」で一応の解決となります。
聞き手となるのは17歳の娘・おちか。
川崎の旅籠の娘だが、ある事件の当事者となり、自分の心から逃げるしかない生活を送っている。
おちかの叔父である三島屋夫婦は、そんなおちかの心を救うために
同じように心に重荷を持つ人を集めて、話を聞かせることを考えた。
こうして三島屋を訪ねる人々が語る話が1編づつ収められてるわけですが、
怪談という意味での怖い話ではないですね。
人の心の闇、情念や執念の恐ろしさが主になってます。
そういう意味でおそろしい話だと思ったのが「邪恋」と「魔鏡」。
「邪恋」では、主人公とも言えるおちかが関わった事件のあらましが語られ、
「魔鏡」は、ある一家の崩壊の話。
特に「魔鏡」の親が私には怖かったですね。
真面目で堅気のふつうの人の、己でさえ気がつかない邪悪。
それが垣間見えてしまうところがおそろしい。
悪人の悪より善人の悪の方が救われない気がしてしまいます。
最後の解決は、宮部さんらしい優しいラストです。
それがなぜか救いに思えない私は、やっぱりひねくれものなのかな〜
そういえば最近読んだ篠田節子の「聖域」。
あの最後で語られる荒涼のほうが私は救われる気がしますね。
長い長い殺人
短編が積み重なって1つの長編になるというストーリー。
そして語り手は登場人物の財布。
事件には被害者がいて犯人がいる。もちろん捜査をする警察官もいる。
その被害者と犯人にも家族や知り合いがいる。
偶然に事件に関わってしまった人もいる。
そんな様々な人がそれぞれの視点から事件を見ていて、
それが順に語られることによって事件とその背景が見えてくるという仕掛け。
財布の視点で見るということで、財布から見えない聞こえない部分は語られない。
そうやって視点を限ることで読者はミスリードされるのですが、
もちろん読んでいる時には、そんなことには気が付かない
むしろその見えない部分が返ってリアルな複雑さを感じさせる。
そして、その仕掛けが最後に活きてきます。
謎解きミステリー的に言うと難点もあるのだけれど、
次々に意外な事実が出てくるというミステリーとしては充分楽しめます。
レベル7
記憶喪失の男女が消された過去を探すところから物語は始まる。
そこにもうひとつ、突然姿を消した女子高生の謎が
このふたつがやがて1つの謎に結びついていく。
過去探しでは「火車」的なスリルもあるし、
サイコ的な色合い、猟奇的事件と盛り沢山な内容。
途中の展開は文句なく面白いのですが、
ある程度先が読めてしまうのが難点かな。
祐司が実は宮前孝だったら面白いと思ったけど、
逆にその方が予想できてしまうでしょうか??
魔術はささやく
世間的には評価の高い作品なのだが、私としてはイマイチ。
若い女性の謎めいた自殺が続く導入部や、
それに巻き込まれた家族の苦悩など、引き込まれる展開ではあるのだが、
やはり基本になる設定に納得できないものを感じてしまう。
解決も後味が悪いと思ってしまいました。
|