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道は岩場の斜面を横切って進む。
当然、左側は岳沢へ下る斜面となり、岳沢の状況がよく見える。
さすがに、この時間になると乗鞍岳頂上付近は完全に雲に覆われており、
焼岳の方はまだその姿が見えるものの、
ガスも混ざってやや霞み気味である。
岩場の道を進む。道は小さなアップダウンはあるものの、
比較的平坦に近い道が続く。
ただ、油断は禁物で、足を滑らせたら、岳沢への転落も考えられるので、あまり調子に乗ってはいけない。 |
やがて、
『 分岐点 』 と岩に大きく白文字で書かれている場所を通過。時刻は 12時53分。
前穂高岳からここまで尾根伝いに下って来られるらしいが、一般道では無く少々難しそうである。
また、ここは 最低コル (鞍部) であり、ここから徐々に登りがきつくなる。
少し進んで左下方を見れば、岳沢小屋の赤い屋根が見える。よくもまあ こんな高さまで登ってきたものである。
振り返れば前穂高岳が大きく、
その斜面を横切る巻き道 (通ってきた道) が見える。 | |
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前を向けば、奥穂高岳方面は相変わらずガスに囲まれている。
このままでは、頂上での展望は得られないのだろうと少々テンションが下がる中、
岩場をまっすぐに登って行く道が厳しいものに感じられる。
目的の山は見えず、登りもきつく辛いが、一つ慰めてくれるのが前穂高岳の姿である。
こちらが高度を上げるのに連れ、全体が見え出し、その大きな姿に圧倒される。
右には明神岳への稜線が続き、左には北尾根が鋸状に続いている。立派な山である。
他の山域なら十分に主役であるのだが、奥穂高岳がある故、
おまけ的な位置づけである。少々不遇の山なのかもしれない。 |
ところで、この時間帯あまり人がいない。北穂高小屋や穂高岳山荘に泊まられた方は、
紀美子平より下に下っているはずであるし、こちらのルートを登っている方はそれ程多くないようである。
今まで紀美子平からは岳沢方面ばかりが見えていたが、高度を上げていくと、
涸沢方面が見える様になってきた。
涸沢カールの雪渓、そして涸沢ヒュッテ、涸沢小屋の赤い屋根、それらが緑に囲まれて美しい。
そして、涸沢が見えれば、北穂高岳も見えてくる。何度も言うが、
明日 南陵を下るのはきつそうである。 | |
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こちらは涸沢カールの写真。
後方上部の常念岳のピラミダルな姿が美しい。
常念岳の右手には蝶槍の突起も見え、
なだらかな蝶ヶ岳へと続いている。
常念岳の左には横通岳、東天井岳、そして大天井岳が続く。
そして、常念岳の手前、涸沢カールの後方には
屏風ノ頭がデンと構えている。
涸沢カールの方は視界が良好であるのに対し、
進んでいる道の先には相変わらずガスが漂っていてハッキリしない。
登りはきつくなり、脆そうな岩場をペンキマークに従って登って行くことになる。 |
やがて鎖場に到着。
足場がしっかりしているので、全く問題なく登って行ける。人が居ないのがありがたい。
そして、鎖場を いくつか登っていくと、うっすらとしか見えていなかった前方の岩壁のガスがとれ、岩壁がハッキリと見える様になってきた。
これは嬉しい。この状況が山頂まで持つことを願うばかりである。
振り返れば、前穂高岳、そして前穂から明神岳へと続く尾根が見える。
これがどういう訳かマチュピチュを彷彿させる。 | |