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緩やかなアップダウンの道も、いよいよバラ谷の頭への登りにかかる。さほど急勾配ではないので助かったが、やはり登りは辛い。
最初はササ原を進むが、やがてガレ場の縁を登ることとなる。ここでも下から吹き上げてくる風が強い。ここのガレ場は、岩崩れではなく、
本当に土の斜面が浸食されているという感じである。岩混じりの土が剥き出しになっており、これでは雨が降る度にドンドン削れていくことであろう。
風が強く、足下も崩れやすいので、ササ原に戻り、斜面を斜めに横断する。これが結構危ない。歩いたのは恐らく獣道だったのだろう、
斜めに進むために足下のササが足の踏ん張りを邪魔し、一つ間違えれば斜面を転げ落ちかねない。
もっとも、ササ原の斜面なので怪我することはないと思うが・・・。 |
再びガレ場沿いを進む。
ガレ場の先には青い空が見えており、頂上も近そうだ。と思ったら、そんなに甘くはなかった。登り着いた先には、
傾斜が緩くなったササの斜面が待っていた。
振り返れば、今度はササ原の絨毯が黒法師岳へと続いているのが見える。そして、黒法師岳の右には、やや雲が湧き出る中、同じような形の山が見える。
前黒法師岳である。
前黒法師岳の左斜面は、途中から大きく左側に曲がる尾根を有しており、その尾根がこちら側、少し右の方に向かって延びている。
そして途中で再び向きを右に変え、黒法師岳へと繋がっている。恐らく、この尾根が前黒法師岳と黒法師岳を結ぶ登山ルートなのであろう。 |  |
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緩やかな斜面を登り切ると、今度は間違いなくバラ谷の頭の頂上であった。時刻は 12時56分。
頂上は小広い台地状になっており、黒法師岳方面が屋上テラスのように開けている。従って、眺めは素晴らしい。対面の黒法師岳は無論のこと、
前黒法師岳、
雲に隠れつつある朝日岳、
丸盆岳や鎌崩の頭、不動岳、そして上河内岳、
聖岳、
光岳なども見ることができる。
しかし、先に述べたように、この日は黄砂が飛んでいるのか、遠くの山々は霞み気味である。
また、ここには 『 バラ谷の頭 』 と書かれた標識が立っており、その傍らにどういう訳か、
小型のツルハシの錆びた頭部が置かれている。 |
ここからの景色は後でゆっくり堪能することにして、
『 本邦 最南の 2,000mの地 』 の標識を目指して奥へと進む。
先程、黒法師岳山頂で会った方が、『 本邦 最南の 2,000mの地 』 と書かれた標識のある場所の方が頂上より高い所にあると言っておられたが、
その通りであった。頂上から2分程進むと、少し盛り上がった場所にその標識が立てられていた。どういう訳か、
バラ谷の頭の頂上に立った時よりも、感激を覚える。標識に書かれている通り、日本においてこれ以上南に 2,000mの地は存在しない、
そんな場所に意外に簡単に立てたことに感慨を覚える。しかも、この時、周囲には誰も居なかったのがさらに思いを深くさせている。 |  |
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この場所から周囲を見渡せば、写真のような光景が広がる。
鹿などが現れても全く不思議ではない。南アルプスの深南部に入り込んでいるということを実感する。
ここも気持ちの良い場所である。しかし、誰も居ないというのは、それはそれで嬉しいとともに、少々落ち着かなくさせるところがある。
しかも、こんな山深い場所である。風の音しか聞こえない。こういう所に単独でテント泊される方がおられるようだが、
夜は怖かろう。鹿が周囲を往来すると思われ、小生ではとてもできない芸当だ。
2分程居て、13時1分にバラ谷の頭頂上へと引き返す。 |
13時3分に再びバラ谷の頭頂上に戻り着く。
ここで小休憩とし、チョコレートなどを食しながら、暫し周囲の景色を堪能する。
まずはやはり不動岳の左右に見える白い頂に目が行く。右が上河内岳、
左が聖岳である。
上河内岳の右前に黒い山が見えるが、あれは前黒法師岳から見えた時に、
同定するのに苦労した椹沢山 (信濃俣南峰) と思われる。山が双耳峰の様に見えるので、
信濃俣も見えているのかもしれない。
そして光岳も見える。
素晴らしい眺めである。願わくば、もう少しクリアに見えて欲しいところであるが、贅沢は言えない。 |  |