Encyclopedia [Ring of Mercuries] |
大破壊
50年前に世界を舐め尽くした天変地異。
「大災害」、「崩壊の日」などとも呼ばれる。
世界人口のおよそ86%が死滅するほどの事態を引き起こしている。
破壊と同時に大規模な電磁傷害が発生したようで、殆どの観測機器が破壊されていることもあって電気的な記録が失われているため、実際には何が起こったのかよく判っていない。ただ、この後から能力者の発生傾向が増えていることから、ただの災害ではないようである。
地表部の殆どが壊滅的打撃を受けており、建築物の殆どは現存していない。また避難当時の記録からは、突然の避難勧告以外には何も知らない人間が多く、この事件が「いったいどういう理由で世界が壊滅状態に陥ることになったのか」という根本的なことに関して何も判っていない。
国際的緊張や大規模紛争などの記録もなく、全世界同時に、且つ僅か5分という短時間に全てが破壊されるという異常事態については結局謎のままである。(この破壊時間に関しては後の調査によって判ったもので、避難当時はシェルターでの生活が2年ほど続いたと言われている)
しかし、かろうじて山岳部の建築物はいくつか残っており、数少ない森林資源と共に、特A級の保護対策が成されている。(ワイルドトラストの醸造所もこの保護区の中にあり、文化遺産保護の名目で営業が続けられている)
ギリシャ語で「悪魔」を意味する言葉。
ダウンタウンの支配者の俗称であり、その人数から一般には「12ディアボロス」と呼ばれる。
元々の意味は「非難する者」であり、ダウンタウンの支配者達がそう呼ばれるのは、ダウンタウンが都市の政策から反発した者のコミュニティから生まれた事に因る。
12人の支配者達はそれぞれ特異な能力、あるいは常人を超越した力を持つ者が多く、故にダウンタウンに於いても一目置かれる存在がその座に着く。 企業の支配する都市に立ち向かうためには、相応の力が必要とされるのは当然のことである。「光」「闇」「火」「風」「地」「水」の6人はそれぞれ固定された名称だが、他の6人の名称はその代によって異なるようだ。
世襲制ではなく襲名制で、時として後継者争いのために血なまぐさい抗争があったこともある。
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デッガー
プログラムを自在に組み替える「Designer」とハードウェア・デッキを行使する「Decker」の二つを合わせた造語。
一般的に「人形使い」と称されるデッガーたちは、ハンドメイドで人形を製作しているわけではない。彼らはハードウェアではなく、人形を自立的に作動させるためのソフトウェアを組むのである。
初歩のデッキでは、既存のプログラムでどんな組み合わせにするかでセンスを競い、デッガーとして実力が高まるにつれオリジナリティの領域を広げて行き、思考ルーチンや人格プログラムなどをリプログラムしていく。
一般に名前の浸透したデッガーたちは、企業と提携したり、自ら起業家として独自OSを販売している。
伝説
大破壊から50年、その間に人類は失われた英知と技術の復興に心血を注いできたが、その中にも神話は生まれる。
何処なりとも現れて人々の治療に当たった「影無き医師団」
力ある存在の前にのみ現れるという「ビハインド・ザ・ミラー」クレイドル・ビアーズの話
この世の理を曲げて災厄を起こした「ハート・オブ・メイルシュトローム」を持つ魔女
それらの真偽は噂から噂へと流れていくだけで、誰も真実にたどり着いたものはいないという。
けれども、それは確かに存在していた。
真実へたどり着かないことと伝説が幻であるということの意味は違う。
それらの伝説が、いずれ明らかになるのか伝説のまま終わるのか、それは誰にもわからない。
都市
この世界に於いて、国家の最小単位は「都市」である。国土というものがもはや意味を成さないこの世界では、都市こそ国土であり、また国家そのものであると言えよう。
「国家」は都市を管理する議会の総意によって運営されているが、それらはあくまで方針の決定であり「民意の反映としての国家運営」ではない。
作中では殆ど名前は出てこないが、十六夜達の住む都市は『アナトリア』と呼ばれる。
そのほか『エテメンアンキ』『ヘリオポリス』『イスサファン』『エイワース』など数多くの都市が存在するが、それでも総人口はかつての隆盛にはほど遠く、人類全体の数は大破壊時より僅かに増えた程度に過ぎない。
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沈黙のDALIA
被虐思考とまで呼ばれるOSで、マニアの間で流通していたが、その完成度の高さから一般にも流通するようになった。DALIAは、人形には不可能といわれた感情の表現を精緻で芸術的に再現させた。すなわち恐怖の感情のエミュレーションである。
DALIAをインストールされた人形は、絶対に音声を発することができなくなる。だが、言葉以上に目や仕草が雄弁に恐怖を体現する。それはあたかも、神の供物に捧げられた子羊のように。
感情のエミュレーションはリブロイド研究者にとっての一つの到達点ではあるが、DALIAのもたらす異常なほどの負荷はリブロイドの有機メモリを浪費劣化させ、程なく物理的プログラム的な死を迎えることとなる。
トリニティ・コーポレーション
軍事・医療・産業の3部門で強大な支配力を有する超巨大コングロマリット企業。
その経済力はエクスィードをも凌ぐといわれている。
世界経済の支配を本気で考えている、といわれるまでに強権的な企業。
敵対的買収はおろか、実力行使で他企業を滅ぼすことさえ平然としてのける。
アナトリアの都市管理局への介入を頻繁に行っており、水面下でのエクスィードとの衝突はもはや小規模の紛争とさえ言えるほどである。
トラブル・シューター
企業にはあらゆる危機を想定しその対応策を研究、指導する「危機管理部」という部署があるが、トラブル・シューターはそういった部署では対処できない予測外のトラブルに対して独自の方法で解決する、いわば雇われの処理、交渉人である。(トラブルに関して治安維持機関や軍への出動要請は予算の関係から大抵見送られる)
基本的に企業外の人間が適用され、一件のみの契約の場合が殆どであるが、中には長期契約を結んで企業の非合法活動の一端を担う場合もある。
ただし、トラブルシューターの殆どは法律知識に秀でた交渉人であり、十六夜のような肉体労働派というのはごく少数である。