Encyclopedia [Ring of Mercuries] |
辞書的な意味では生物の自己制御能力を機械としてのシステムに置き直し、通信・制御・情報処理の技術として反映していくもの。
ここで言うサイバネティクスとは、人工義肢や人工臓器など、肉体を機械系列に置換する技術の総称を指す。
今までは高分子ポリマーを化学反応剤と組み合わせて筋肉の代わりとするような形態のものが多かったが、現在ではナノテクノロジーの発達によって、身体構造をより精緻にエミュレートした高精度のモデルが多数登場している。広義では、人口細胞や代理細胞の置換による機能修復・保全もここに含まれる。
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ザンジバル
ランクZの一人「黒い槍騎兵」ローン・ド・ヴァルの能力。
アラビア語で「黒き者たちの彼岸」を意味するこの能力は、本来ならばローン自身の肉体を武器に変化させるという、装着系能力とも変異系能力ともつかぬ異形の能力である。
「黒い槍騎兵」の異名通り、変化した肉体は射突型の杭、あるいは槍に変化し、接触面の構造を情報的に分解し、崩壊させる。実際槍に見えているのは物性をも備えた超超高密度の情報体であり、物理的な破壊力を持ちながら性質は論理系であるという、矛盾の産物である。
ちなみに槍が黒いのは、槍自身の因果が絶望や虚無の領域に固定化され、可視光線の情報を常に分解し続けているためである。
時間蝕
「eclipse」とはランクZの一人、「ザ・サイレンス」エクセル・シューマッハの能力。
無限に重なる時間の層に割り込むことで断続的に空間を跳躍する。
言うなれば8ミリフィルムの映像の中に任意で自分の姿を書き込むようなもので、発現した瞬間に「その場所にいる」事になるため、 傍目から見ると瞬間移動してきたように見える。
跳べる時間は数秒足らずだが、かなりの回数を割り込みできるらしい。その限界数は不明である。
名だたるリブロイドデザイナー達が持てる技術を最大限に生かし、ただただ純粋に技術の追求のみを目指して創立したリブロイドメーカー。
年間生産数10体という極小生産のリブロイドは完全なハンドメイドで、しかもワンオフ生産というこだわりようである。
しかし、まさに唯一無二のリブロイド達は既存のリブロイドとは比べものにならないほどの超高性能を誇り、高位ランクの能力者と互角以上の戦闘さえ可能と言われている。
創業時からの理念はただ一つ、「究極のリブロイドを作る」事だけ。シノノメにとってリブロイドの作成は「商売」ではなく「芸術」であり、一体一体あらゆる採算を度外視して製作される。
だがそのデザイン、立ち振る舞い、性能は全てあらゆる次元のリブロイドを超越した至高の一品であり、世界中のリブロイド愛好家達にとって垂涎の的である。
一般の市場に出回ることはなく、年に一回の「エマーシアス・オートマタ・オークション」に出品されるだけで、そこで落札する以外にシノノメ製のリブロイドを手に入れることは出来ない。
勿論、最終落札価格は天文学的なものになるが、関係者によればそれでも儲けはほとんど無いらしい。
写本
写本は活版印刷技術が存在するより以前に、主として修道士達の手で行われていた本の複製方法である。
修道士達は貴重な現金収入の手段として、精緻かつ豪華な彩色写本を作成していた。
現在に於いては、魔術師達の収入源の一つとしてこの写本技術は残されている。
複製技術が進歩し、本物と寸分違わぬものが作成出来る時代に何故写本が必要とされるかと言えば、
魔術書には例え断片であっても複写を拒んだり意味を歪めたりすることがあり、
それ相応の訓練を受けたものでなければ正しく意味を捉えることが出来ないからである。
それ故に、魔術師達は魔術書の写本を作成し、それを必要とするものに売却することが成り立つ。
もちろん写本作業は全て手作業で行われるため、解読の手間を含め量産して頒布すると言うことは不可能である。
また、未熟な魔術師の作った写本は当然ながら擬情報が紛れ込んでおり、重大な事故を起こすこともある。
著名な例としては、フレデリック・ブラウンの著作から引用された「ヘルメスの杖」の制作方法で、出回っているもののほとんどが重大な間違いを含んでおり、これに沿ってヘルメスの杖を作成した場合、良くてもガラクタ、最悪の場合には術者が死亡する。
写本は魔術の深淵に触れうる方法で最も接しやすいものだが、それでさえ時として命の危険を伴う。
魔術書や魔術の知識を求めるものが多くても、それが広まらないのはこうした理由による。
スカーレット
クリムゾンの持つ念動発火能力。
正確には瞬時に加熱された大気中の塵が発火しているために炎に見えている。その熱量は集中した時間に比例し、最大温度は数千度にまで及ぶ。
破壊力は絶大だが持続性は無く、連続して行使すると一度の熱量は摂氏300度程度まで落ちてしまう。
クリムゾン自身は高熱よりはむしろ低い熱量で対象を嬲ることに至上の喜びを感じるため、問題はないらしい。
対人用としては非常に優れた能力である。
物理攻撃に対して、論理的な攻撃はこう称される。
相手の知覚に対して強制的な割り込みをかけ、認識変換や感情操作、身体制御の奪取などを行う。
対抗手段は強制命令に対する抵抗だけで、物理的にシャットアウトするのは難しい。大脳皮質と脊椎にバイパスを設置することで一応は対処可能だが、状況認識力が極端に低下する為に有効な装備とは言えない。
結局は精神力の勝負である。
ゴールディの「イヴィル・アイ」もこれに分類される。
<相>
『能力』、『アスペクト』などと呼ばれる、特殊能力の正式呼称。
実体不明、原理不明の謎の力。
何故それが『相』と呼ばれるのかもまた不明であるが、大破壊以前の文献にも散見されることから、何らかの理由があるとは思われる。
ソウル・サルベージャー
直訳すると魂の引き揚げ人。
語源はネットワーク上から抜け出せなくなった人間の精神を引き揚げて肉体に戻す、ネットワーク・レスキューの俗称。
現在のソウル・サルベージャーは人間の魂そのものから有用なものを引き揚げる、半違法のマインド・ハッカーも指す。
クローニング再生処置を施すと自我が深層心理の内側へ深く沈んでしまう「魂魄解離」という症状を起こすことがあり、その治療のためにはソウル・サルベージャーのような深層心理探査のプロが必要となる。資格としてはほぼ公認の物なのだが、その際に課せられる守秘義務に関してはあまり守られていないのが実状である。
彼らは魂の解析と理解、探求を至上目的としており、治療はその際の「副産物」に過ぎない。探求のためには相手の精神の破壊すらいとわない、偏執的な技術者もいるほどである。
感応系能力者が殆どを占めており、「ソウルダイブ」等相手の精神に直接働きかけるような能力を持つ。