シャッフルロマンス
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CAST
 ハート姫   :ブリッジ公国の王女様      (毛利  蘭)
 スペイド王子 :トランプ王国の王子       (工藤 新一)
 
 白き魔法使い :またの名をエース        (黒羽 快斗)
 青き助手   :またの名をクィン        (中森 青子)
 紅き魔女   :またの名をレディ        (小泉 紅子)

 騎士フラッシュ:スペイド王子の親友       (服部 平次)
 道士クローバー:フラッシュの彼女で聖道士    (遠山 和葉)

 モーリス王  :ハート姫のパパ         (毛利小五郎)
 エリー王妃  :ハート姫のママ         (妃  英理)

 クラブ王   :スペイド王子のパパ       (工藤 優作)
 ストレート王妃:スペイド王子のママ       (工藤有希子)
 
 ダイヤ    :黒き魔女 ハート姫の姉     (宮野 志保)
 皇帝ジョーカー:ポーカー帝国の皇帝       (新出 智明)

 
 
 原作・脚本:鈴木 園子
 総監修  :新出 智明
 口出し  :工藤有希子

***

序章

「スペイドって言うの?君」
「そう、君は」
「わたしはハート姫って呼ばれてるの」
「ふぅーん、じゃあハートって呼んでいい?」
「うん、いいよ」

「ハート。僕は君と一緒にいたいんだ」
「わたしも、スペイドと一緒にいたいよ」
「ホントに?」
「ウン」
「ハート姫、ボクが成人した暁には、ボクの妃になって下さい」
「ハイ」
「約束、だよ」
「ウン、約束」

***

 いつの頃か記憶にはない。
 ただ、その人に逢った時から、その人は運命の人だった。

 暗黒…そう言っても過言ではないほど暗い部屋と呼べるようなところで一組の男女が話していた。
「皇帝陛下、気になる娘がいるそうね」
「よく気がついたな、黒き魔女よ」
「当然でしょう」
「今、欲しいものがある。たった一人の女だ。それが欲しい」
「手に入るわよ。あなたならね……」
 暗黒の中に消え入りそうな魔女と、暗黒さえも飲み込むような男である。

「姫、ハート姫。陛下がおよびですよ」
 メイドが呼びに来る。
 ハート姫…彼女はブリッジ公国の姫である。
 近隣諸国の中では一番の小国ではあったが豊富な鉱物資源および豊穰な国土のために財政面ではかなり豊かな公国である。
 だがしかし、近年、この豊かな公国を脅かす存在が現れた。
 強大な兵力を用いて近隣諸国を蹂躙し始めたポーカー帝国である。
 その魔の手はブリッジ公国までも近付いていた。
 そして、公国には天敵というべき国が存在していた。
「姫、そなたをトランプ王国に嫁いでもらうことになった」
 そう、トランプ王国である。
「父様…それは政略結婚と言うことですか?」
 ハート姫の言葉に父王であるモーリス王は言葉を失う。
「分っています…。現在、トランプ王国と我が国ブリッジ公国は犬猿の仲。しかし、ポーカー帝国に対するためにはトランプ王国と我が国が同盟を結ばなくてはならないと言うこと……分っております。でも……」
 ハート姫はそれ以上言葉をつなぐことが出来ない。
 彼女が思っている人は、父王がもっとも嫌いな人物だからだ。
「ハート姫、これは命令だ!!!スペイドなんかお前には似合わない!あんな男なんか忘れろ」
 と父王は激怒した。
 その言葉にハート姫は傷つき、父王の前から自分の部屋に戻っていった。
「ちょっと、言い過ぎじゃないの?」
 と、モーリス王の妃であるエリー妃が王に言葉を掛ける
「あれぐらいの方がいい。そうしたら忘れられる」
「あの娘が忘れられると思う?」
 エリー妃の言葉にモーリス王は言葉を失う。
「……私にはあの娘の気持ちがわかるわ。私もあの娘と同じ立場でしたもの。騎士スペイドはあの時のあなただもの……。重ねてしまうのね。でもね、貴方の思惑は外れるのよ」
「うるせー。んなこと分ってるよ」
 エリー王妃の言葉にモーリス王はそうつぶやいた。
『あの方にお逢いしたい』
 ハート姫は今日何度それを思ったのだろうか。
 彼女の思い人は遠き昔の……まだ身分とかが分っていない子供の頃に共に遊んだ……幼なじみ、騎士スペイドへ思いをはせる。
「ハート姫、ボクが成人した暁には、ボクの妃になって下さい」
「ハイ」
 幼きころのたわいもない約束さえも思い出される。
 だが、父王であるモーリス王の怒りに触れ、このブリッジ公国の城から追い出された、秀麗な騎士。
 たくさんの少女のあこがれでありながら、彼はハート姫にしか興味を示してはいなかった。
『どこにいらっしゃるのですか?』
『あなたにもう一度お逢いしたい』
「あぁ、全知全能の神ゼウスよ!!!どうして貴方は私にこんな仕打ちをなさるのです!?それとも望みもしないこののろわれた婚姻に身をゆだねよと申されるのですか?!」
 ハート姫はあたりを照らす、月に向かって叫ぶ。
「私の思いはもう、かなわぬものなのですか??」
 そう言って姫は泣き崩れる。
「美しいお嬢さん、あなたに涙は似合いませんよ」
 突然、ハート姫の前に白い装束に身を包んだ者が空から舞い降りてきた。
「どなたですか??」
 白いマントにシルクハットとタキシード、モノクル(片眼鏡)をつけた男と、その後ろに憤然といる青いローブの女性にハート姫は話しかける。
「突然、に驚かして申し訳ございません。私の名前は白き魔法使いエース。そして、この青いのは青き助手クィン」
 と白き魔法使い…エースは言う。
「ご存知でしたか?ハート姫」
 ハート姫はうなずく。
 白き魔法使いと青き助手は近隣諸国にその名をとどろかせる魔法使いの呼称なのである。
「何故、私の前に?」
「…あなたのことを頼まれたから……」
「…ってエースは言ってるけど違うんだよ。ある人が凄く悲しそうで、であなたも凄く悲しそうで、だから来たんだよ」
 とクィンは言う。
「クィンは余計な事言うな。あなたの嘆き聞きました。でも、ご安心下さい。あなたの思い人はあなたを思っています。あなた方二人は素晴らしく強いきずなで結ばれている。たとえ、どんな障害が目の前に現れようとも、その強いきずなで障害をモロともせずにはね飛ばしてしまう。何人たりともあなた方二人の障害にはなりえていないのです」
 エースの言葉にハート姫は驚く。
「………貴方はスペイドをご存知なのですか??」
 白き魔法使いはその言葉には応えず、
「ご安心下さい、必ずあなた方はあうことが出来る。美しいお嬢さん、あなたに涙は似合いません。あなたに似合うのは笑顔ですよ」
 そう言って白き魔法使いはニッコリ笑う。
「姫、あなたにはあなたが知らない力があります。それを帝国は狙っています。お気を付けて。こちらをお渡ししておきます。あなたなら…この物をご存知でしょう」
 と指輪を取りだし、ハート姫の手に乗せると白き魔法使いは青き助手を連れて消えてしまった。
「これは……スペイドの物…。……白き魔法使い……私は信じてよろしいのですね。スペイドに会えると……」

「……エース、さっきハート姫の前から消えるときクィンのオシリ触ったでしょう」
「は?」
「エースはすぐHするんだから」
「バーロ?しゃーねーだろう。じゃあ、どうやってあそこから消えろって言うんだよ。」
「あぁ、やっぱりさわったんだぁ」
 ……エースとクィンの言い合いはまだまだ続く。




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