池谷・関彗星 その7

ゼータ母関数一般式の超一般化 
< coshでのゼータ母関数一般式 >
< ζ(s)cosh(x/n)型母関数 >
< ζ(s)cosh(x/n^2)型母関数 >
< ζ(s)cosh(x/n^3)型母関数 >
< cosh(x/n^r)型ζ(s)母関数の普遍的な一般式 >
< cosh(x/n^r)型での特異点解消 >

 「池谷・関彗星」での一般式をさらに一般化した。
cosに対するcoshで類似を調べた。cosh(x/n)型、cosh(x/n^2)型、cosh(x/n^3)型を調べ、普遍的な一般式を導出。
coshxでの特異点解消。


2007/4/3            <ゼータ母関数一般式の超一般化 

 この「池谷・関彗星」シリーズで得られた種々のゼータ関数の一般式をさらに普遍化したい。

ディリクレのL関数L(χ,s)は
  L(χ,s)=χ(1)/1^s + χ(2)/2^s + χ(3)/3^s + χ(4)/4^s + χ(5)/5^s + χ(6)/6^s + ・・・・

で定義されるゼータである。リーマン・ゼータζ(s)を拡張したものともいえる。

 ディリクレ指標χ(a)は、ある自然数Nについて、次の3条件を満たす。
(1)a≡b mod N ならχ(a)=χ(b)
(2)χ(ab)=χ(a)χ(b)
(3)aとNが共通因数を持つときに限り、χ(a)=0

 このL(χ,s)から、種々のχ(a)に対応する様々なゼータ関数が無数に生み出されていく。

まず「その1」〜「その6」で得られた種々のゼータの一般式をまとめて並べて書く。

 ζ(s)は、次で定義される、よく知られたリーマン・ゼータである。
 ζ(s)=1 + 1/2^s + 1/3^s + 1/4^s + 1/5^s +・・・
ζ(s)もディリクレのL関数L(χ,s)の一種であり、「すべてのaに対してχ(a)=1」としたときのL(χ,s)に一致する。
その1」、「その2」で得た一般式を書く。
cos(x/1^r)/1^s + cos(x/2^r)/2^s + cos(x/3^r)/3^s + cos(x/4^r)/4^s + ・・・ 
  =ζ(s) - ζ(s+2r)・x^2 /2!+ ζ(s+4r)・x^4 /4!- ζ(s+6r)・x^6 /6!+ ・・・
                                              s、rは、s>1,r >=0の実数。

[上の交代形]
cos(x/1^r)/1^s - cos(x/2^r)/2^s + cos(x/3^r)/3^s - cos(x/4^r)/4^s + ・・・ 
  =(1-1/2^(s-1))ζ(s) - (1-1/2^(s-1+2r))ζ(s+2r)・x^2/2!+ (1-1/2^(s-1+4r))ζ(s+4r)・x^4/4!- ・・・
                                          s、rは、s>0,r >=0の実数。



 L(s)は、次で定義される。
  L(s)=1 - 1/3^s + 1/5^s - 1/7^s + ・・・
「a≡0, 1, 2, 3 mod 4に対しそれぞれχ(a)=0, 1, 0, -1」というχ(a)をもつ。
L(s)は虚2次体Q(√-1)に対応する。「その3」で得た一般式を書いておく。

 cos(x/1^r)/1^s - cos(x/3^r)/3^s + cos(x/5^r)/5^s - cos(x/7^r)/7^s + ・・・
       =L(s) - L(s+2r)・x^2 /2!+ L(s+4r)・x^4 /4!- L(s+6r)・x^6 /6!+ - ・・・
                                              
                                                s、rは、少なくとも s>0,r >=0 ととれる。



 LA(s)は、次で定義される。
  LA(s)=1 - 1/2^s + 1/4^s - 1/5^s + ・・・
「a≡0, 1, 2 mod 3に対し、それぞれχ(a)=0, 1, -1」というχ(a)をもつ。
LA(s)は虚2次体Q(√-3)に対応する。「その4」で得た一般式を書く。

cos(x/1^r)/1^s - cos(x/2^r)/2^s + cos(x/4^r)/4^s - cos(x/5^r)/5^s + ・・・
  =LA(s) - LA(s+2r)・x^2 /2!+ LA(s+4r)・x^4 /4!- LA(s+6r)・x^6 /6!+ LA(s+8r)・x^8 /8!- ・・・
   
                                                s、rは、少なくとも s>0,r >=0 ととれる。



 L1(s)は、
  L1(s)=(1 - 1/3^s - 1/5^s + 1/7^s ) + (1/9^s - 1/11^s - 1/13^s + 1/15^s ) + ・・・
「a≡1 or 7 mod 8-->χ(a)=1、 a≡3 or 5 mod 8 -->χ(a)=-1、 それ以外のaではχ(a)=0」というχ(a)をもつ。
L1(s)は実2次体Q(√2)に対応する。「その5」で得た一般式を書く。

 cos(x/1^r)/1^s - cos(x/3^r)/3^s - cos(x/5^r)/5^s + cos(x/7^r)/7^s + ・・・ 
  =L1(s) - L1(s+2r)・x^2 /2!+ L1(s+4r)・x^4 /4!- L1(s+6r)・x^6 /6!+ L1(s+8r)・x^8 /8!- ・・・
                                                   s、rは、少なくとも s>0,r >=0 ととれる。



 L2(s)は、次で定義される。
  L2(s)=(1 + 1/3^s - 1/5^s - 1/7^s ) + (1/9^s + 1/11^s - 1/13^s - 1/15^s ) + ・・・
「a≡1 or 3 mod 8-->χ(a)=1、 a≡5 or 7 mod 8 -->χ(a)=-1、それ以外のaではχ(a)=0」というχ(a)をもつ。
L2(s)は虚2次体Q(√-2)に対応する。「その6」で得た一般式を書いておく。

 cos(x/1^r)/1^s + cos(x/3^r)/3^s - cos(x/5^r)/5^s - cos(x/7^r)/7^s + ・・・ 
  =L2(s) - L2(s+2r)・x^2 /2!+ L2(s+4r)・x^4 /4!- L2(s+6r)・x^6 /6!+ L2(s+8r)・x^8 /8!- ・・・
                                                   s、rは、少なくとも s>0,r >=0 ととれる。




 これらを眺めると、次のように一挙に抽象的に表現できることがわかる。


χ(1)cos(x/1^r)/1^s + χ(2)cos(x/2^r)/2^s + χ(3)cos(x/3^r)/3^s + χ(4)cos(x/4^r)/4^s + ・・・ 
 =L(χ,s) - L(χ,s+2r)・x^2 /2!+ L(χ,s+4r)・x^4 /4!- L(χ,s+6r)・x^6 /6!+ L(χ,s+8r)・x^8 /8!- ・・・

                                                s、rは、少なくとも s>0,r >=0 ととれる。
                                                      (ただしL(χ,s)がζ(s)のときのみ s>1,r >=0)





2007/4/7            < coshでのゼータ母関数一般式 

 じつは、coshでも「その1」〜「その7」までの類似の結果が出せる。

 coshx=(e^x+e^(-x))/2=1 + x^2/2!+ x^4/4!+ x^6/6!+・・・

である。また、当たり前だがcosxは、
 cosx=1 - x^2/2!+ x^4/4!- x^6/6!+・・・
である。

 このcoshxで具体例を見てみよう。




2007/4/7          < ζ(s)cosh(x/n)型母関数 

 「その1」のζ(s)cos(x/n)型母関数の類似を行う。cosに対してcoshを見る。やり方は全く同じなので途中は略す。

 F(x)=cosh(x/1)/1^s + cosh(x/2)/2^s + cosh(x/3)/3^s + cosh(x/4)/4^s + ・・・

のs=1、2、3の各場合を調べると、次のようになる。

 cosh(x/1)/1 + cosh(x/2)/2 + cosh(x/3)/3 + cosh(x/4)/4 + ・・・ 
   =ζ(1) + ζ(3)・x^2 /2!+ ζ(5)・x^4 /4!+ ζ(7)・x^6 /6!+ ζ(9)・x^8 /8!+ ・・・

 cosh(x/1)/1^2 + cosh(x/2)/2^2 + cosh(x/3)/3^2 + cosh(x/4)/4^2 + ・・・
   =ζ(2) + ζ(4)・x^2 /2!+ ζ(6)・x^4 /4!+ ζ(8)・x^6 /6!+ ζ(10)・x^8 /8!+ ・・・


 cosh(x/1)/1^3 + cosh(x/2)/2^3 + cosh(x/3)/3^3 + cosh(x/4)/4^3 + ・・・ 
   =ζ(3) + ζ(5)・x^2 /2!+ ζ(7)・x^4 /4!+ ζ(9)・x^6 /6!+ ζ(11)・x^8 /8!+ ・・・


s=1、2、3できれいな規則性が出ている。容易に一般化できて、一般式は次となる。

一般式

 cosh(x/1)/1^s + cosh(x/2)/2^s + cosh(x/3)/3^s + cosh(x/4)/4^s + ・・・ 
   =ζ(s) + ζ(s+2)・x^2 /2!+ ζ(s+4)・x^4 /4!+ ζ(s+6)・x^6 /6!+ ζ(s+8)・x^8 /8!+ ・・・





2007/4/8          < ζ(s)cosh(x/n^2)型母関数 

 次に「その1」のζ(s)cos(x/n^2)型母関数>の類似を行う。cosに対してcoshを見るのである。
やり方は、同じなので途中は略す。

 F(x)=cosh(x/1^2)/1^s + cosh(x/2^2)/2^s + cosh(x/3^2)/3^s + cosh(x/4^2)/4^s + ・・・

のs=1、2、3の各場合を調べると、次のようになる。

 cosh(x/1^2)/1 + cosh(x/2^2)/2 + cosh(x/3^2)/3 + cosh(x/4^2)/4 + ・・・ 
   =ζ(1) + ζ(5)・x^2 /2!+ ζ(9)・x^4 /4!+ ζ(13)・x^6 /6!+ ζ(17)・x^8 /8!+ ・・・

 cosh(x/1^2)/1^2 + cosh(x/2^2)/2^2 + cosh(x/3^2)/3^2 + cosh(x/4^2)/4^2 + ・・・
   =ζ(2) + ζ(6)・x^2 /2!+ ζ(10)・x^4 /4!+ ζ(14)・x^6 /6!+ ζ(18)・x^8 /8!+ ・・・


 cosh(x/1^2)/1^3 + cosh(x/2^2)/2^3 + cosh(x/3^2)/3^3 + cosh(x/4^2)/4^3 + ・・・ 
   =ζ(3) + ζ(7)・x^2 /2!+ ζ(11)・x^4 /4!+ ζ(15)・x^6 /6!+ ζ(19)・x^8 /8!+ ・・・


 上式では、nが大きくなるほど、右辺は(つまり左辺は)coshxにどんどん近づくことがわかる。
なぜなら
  coshx=1 + x^2 /2!+ x^4 /4!+ x^6 /6!+ x^8 /8!+ ・・・
であり、
ζ(2)=1.6449・・
ζ(3)=1.2020・・
ζ(4)=1.0823・・
ζ(5)=1.0369・・
ζ(6)=1.0173・・
ζ(7)=1.0083・・
ζ(8)=1.0040・・
ζ(9)=1.0020・・
ζ(10)=1.0009・・
 ・
 ・
であって、nが増せばどんどんとζ(n)は1に近づくから、それがわかる。

 F(x)=cosh(x/1^2)/1^s + cosh(x/2^2)/2^s + cosh(x/3^2)/3^s + cosh(x/4^2)/4^s + ・・・

とすると、
  limF(x)=coshx
  (n->∞)

となっているわけである。

s=1、2、3できれいな規則性が出ている。容易に一般化でき、次となる。

一般式

 cosh(x/1^2)/1^s + cosh(x/2^2)/2^s + cosh(x/3^2)/3^s + cosh(x/4^2)/4^s + ・・・ 
   =ζ(s) + ζ(s+4)・x^2 /2!+ ζ(s+8)・x^4 /4!+ ζ(s+12)・x^6 /6!+ ζ(s+16)・x^8 /8!+ ・・・





2007/4/8          < ζ(s)cosh(x/n^3)型母関数 

 次に「その2」のζ(s)cos(x/n^3)型母関数>の類似を行う。cosに対してcoshを見るのである。
やり方は、同じなので途中は略す。

 F(x)=cosh(x/1^3)/1^s + cosh(x/2^3)/2^s + cosh(x/3^3)/3^s + cosh(x/4^3)/4^s + ・・・

のs=1、2、3の各場合を調べると、次となる。

 cosh(x/1^3)/1 + cosh(x/2^3)/2 + cosh(x/3^3)/3 + cosh(x/4^3)/4 + ・・・ 
   =ζ(1) + ζ(7)・x^2 /2!+ ζ(13)・x^4 /4!+ ζ(19)・x^6 /6!+ ζ(25)・x^8 /8!+ ・・・

 cosh(x/1^3)/1^2 + cosh(x/2^3)/2^2 + cosh(x/3^3)/3^2 + cosh(x/4^3)/4^2 + ・・・
   =ζ(2) + ζ(8)・x^2 /2!+ ζ(14)・x^4 /4!+ ζ(20)・x^6 /6!+ ζ(26)・x^8 /8!+ ・・・


 cosh(x/1^3)/1^3 + cosh(x/2^3)/2^3 + cosh(x/3^3)/3^3 + cosh(x/4^3)/4^3 + ・・・ 
   =ζ(3) + ζ(9)・x^2 /2!+ ζ(15)・x^4 /4!+ ζ(21)・x^6 /6!+ ζ(27)・x^8 /8!+ ・・・


 上式では、nが大きくなるほど、右辺は(つまり左辺は)coshxにどんどん近づくことがわかる。

s=1、2、3できれいな規則性が出ているので、容易に一般化でき、次となる。

一般式

 cosh(x/1^3)/1^s + cosh(x/2^3)/2^s + cosh(x/3^3)/3^s + cosh(x/4^3)/4^s + ・・・ 
   =ζ(s) + ζ(s+6)・x^2 /2!+ ζ(s+12)・x^4 /4!+ ζ(s+18)・x^6 /6!+ ζ(s+24)・x^8 /8!+ ・・・





2007/4/8     < cosh(x/n^r)型ζ(s)母関数の普遍的な一般式 

 上で得た、r がいろいろな数の場合のcosh(x/n^r)型ζ(s)母関数の一般式を並べる。

 cosh(x/1)/1^s + cosh(x/2)/2^s + cosh(x/3)/3^s + cosh(x/4)/4^s + ・・・ 
   =ζ(s) + ζ(s+2)・x^2 /2!+ ζ(s+4)・x^4 /4!+ ζ(s+6)・x^6 /6!+ ζ(s+8)・x^8 /8!+ ・・・


 cosh(x/1^2)/1^s + cosh(x/2^2)/2^s + cosh(x/3^2)/3^s + cosh(x/4^2)/4^s + ・・・ 
   =ζ(s) + ζ(s+4)・x^2 /2!+ ζ(s+8)・x^4 /4!+ ζ(s+12)・x^6 /6!+ ζ(s+16)・x^8 /8!+ ・・・


 cosh(x/1^3)/1^s + cosh(x/2^3)/2^s + cosh(x/3^3)/3^s + cosh(x/4^3)/4^s + ・・・ 
   =ζ(s) + ζ(s+6)・x^2 /2!+ ζ(s+12)・x^4 /4!+ ζ(s+18)・x^6 /6!+ ζ(s+24)・x^8 /8!+ ・・・

 きれいな規則性があるので、これらを一般化して、次の一般式を得ることができる。

cosh(x/1^r)/1^s + cosh(x/2^r)/2^s + cosh(x/3^r)/3^s + cosh(x/4^r)/4^s + ・・・ 
   =ζ(s) + ζ(s+2r)・x^2 /2!+ ζ(s+4r)・x^4 /4!+ ζ(s+6r)・x^6 /6!+ ・・・


 美しい普遍的な式と言えるだろう。
 これまでは、s、rが整数の場合だけを扱ったが、もちろん、実数へと一般化できる。
まだ詳しく調べていないが、少なくとも、s、rは、s>1,r >0とできる。
 右辺のζ(s)の間隔を大きくとりたければ、rを大きな値に設定すればよいとわかる。
例えば、s=2、r=50とすれば、ζ(2)、ζ(102)、ζ(202)、・・が右辺に登場してくる。
また例えば、右辺にζ(3/2)を出したければ、s=3/2とすればよい。

 まとめておく。


cosh(x/1^r)/1^s + cosh(x/2^r)/2^s + cosh(x/3^r)/3^s + cosh(x/4^r)/4^s + ・・・ 
   =ζ(s) + ζ(s+2r)・x^2 /2!+ ζ(s+4r)・x^4 /4!+ ζ(s+6r)・x^6 /6!+ ・・・
                                              s、rは、少なくとも、s>1,r >0 とできる。





2007/4/12         < cosh(x/n^r)型での特異点解消 

 上方では、極ζ(1)という特異点が発生する数式があった。ζ(1)は、ζ(1)=+∞で、リーマン・ゼータζ(s)の特異点と
なっている。
「池谷・関彗星 その1」の<交代形cos(x/n)型ζ(s)母関数>でやったのと同様の手法を用いれば、ここでも特異点
の発生を抑えることができるのである。具体的な二つの場合だけを記す。

 cosh(x/1)/1 - cosh(x/2)/2 + cosh(x/3)/3 - cosh(x/4)/4 + ・・・ 
  =log2 + (1-1/2^2)ζ(3)x^2 /2!+ (1-1/2^4)ζ(5)x^4 /4!+ (1-1/2^6)ζ(7)x^6 /6!+ ・・・


 cosh(x/1^2)/1 - cosh(x/2^2)/2 + cosh(x/3^2)/3 - cosh(x/4^2)/4 + ・・・ 
  =log2 + (1-1/2^4)ζ(5)x^2 /2!+ (1-1/2^8)ζ(9)x^4 /4!+ (1-1/2^12)ζ(13)x^6 /6!+ ・・・


 ゼータの心で見ればlog2=(1-1/2^0)ζ(1)であり、その視点から上式を見れば、ここでもきれいな秩序が出ている
ことがわかる。

 coshxの場合も、「池谷・関彗星」の「その1」〜「その6」でやったcosxの場合と全く同様におしすすめることができ、
この頁トップのように超一般化までもっていくことができるが、やり方は同じなので、略す。
coshxはここで終わる。







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