「ディリクレの類数公式」と「統一的法則性」の間の関係性を示します。
とくに、虚2次体の場合の類数hと解析世界のkとの不思議な関係を発見しました。
ディリクレの類数公式と、このHPで見出した統一的法則性(重回積分-重回微分の規則)との間には密接な関係が
あります。ここでは、そのことを指摘します。
その統一的法則性に関して、私はこれまで4つの予想を提示してきました。そして、その4つの予想に対して様々な
解析を加え、多くの具体例でその正しさを確めてきたのでした。
予想L-3と予想L-3Bも同類です。
よって、ここでは、予想L-2と予想L-3を掲げておきましょう。
さて、これらの予想を参考にしながら、ディリクレの類数公式との関係を見てみましょう。
まずディリクレの類数公式を示します。
実2次体と虚2次体にはそれぞれ「ディリクレの類数公式」というものがあります。これは2次体Q(√m)において
きわめて重要な公式です。
いま Kを2次体とすると、次の公式が成り立ちます。
Kが実2次体なら、---> L(χ,1)=h・logε・2/√N -----@
Kが虚2次体なら、---> L(χ,1)=h・2π/(w√N) -----A
これらをディリクレの類数公式といいます。
ここで、h はKの類数、L(χ,1)はKに対応したディリクレのL関数L(χ,s)のs=1での特殊値。
ε は実2次体Kの基本単数であり、w は虚2次体Kに含まれる1のべき根の個数です。
N は Kの導手です(これは、このサイトでもよく出てきました)。
これら類数や単数のことについては、雑誌「数学のたのしみ No.17」で加藤和也さんがわかりやすく解説してくれて
いますのでそちらを参考にしてください。
なぜ上式@、Aが重要であるかというと、「解析的なゼータL(χ,s)」と「代数体」が結びついているからです。
左辺が解析的、右辺が代数的となっている。異質なものの結合です。解析と代数というまったく違った領域のことが
イコールで結びつくふしぎがあらわれている。
こういうのに数学者は驚き、また喜びます。私は数学者ではありませんが、私もうれしくなります。
ただ、L(χ,s)は無限積あるいは無限和で定義され解析の香りをもっていますが、整数論的な香りもたぶんに残してい
ますし、私はゼータは異なる領域を橋渡ししてくれる生命体と思っていますので、そういう形に@、Aを書き替えたいの
です。
それをやりたいのですが、上の予想L-2と予想L-3をながめるだけでそういう形に簡単にできることに気付きます。
まず予想L-3の場合(m=4n+1型のQ(√m)の場合)を考察しましょう。
(予想L-3Bにおいても結果は同じとなります。)
この予想は実2次体と虚2次体に関するものですので、そっくりそのまま@、Aに関係づけられます。
予想L-3では導手Nは、N=k となります。k はもちろん、qπ/k代入 の k です。
よって、@とAは、次のようになります。
いま Kを2次体とすると、
Kが実2次体なら ---> L(χ,1)=h・logε ・2/√k -----@
Kが虚2次体なら ---> L(χ,1)=h・2π/(w√k) -----A
ちょっと変形すると、次のようになります。
Kが実2次体なら ---> √k・L(χ,1)=2h・logε -----B
Kが虚2次体なら ---> √k・L(χ,1)=2πh/w -----C
これは、まさに異質な世界をゼータが橋渡ししている様子を表した式となっています。
左辺のkというのは、上の二つの予想でもわかる通り、「フーリエ展開の式を重回積分や重回微分したものに、qπ/k
代入する」という場合のk のことであり、これは解析中の解析であり、よって k は純粋な解析学の世界に属します。
一方の右辺は、類数 h やら単数 ε やら1のべき根の個数 w やら、こちらは純粋な代数の世界に属します。
この二つが、BやCのようにゼータL(χ,1)を介して結びついている。
中央にゼータL(χ,1)という小山があって、解析の人がその小山を越えれば、右辺の代数の世界に出ます。
逆に、代数体の人が小山を越えれば解析の世界に出られる。
BとCはそんな様子をあらわしている。
なお、いま予想L-3(m=4n+1型のQ(√m))を代表にとりましたが、予想L-2の場合(m=4n+2 or 4n+3型の
Q(√m))に着目した場合は、今度はN=2k となって当然ながら同様の議論ができます。またこの場合、
予想L-2Bでも同じ結果となります。つまり、次のようになります。
Kが実2次体なら ---> k・L(χ,1)=√2・h・logε -----D
Kが虚2次体なら ---> k・L(χ,1)=√2・π・h/w -----E
B〜Eは孤立した二つの島に、ゼータという橋がかかった様子を表しているといえるでしょう。
厳密には冒頭の予想が正しければB〜Eは正しいといえるものですのでまだ予想の式といえますが、私の予想は、
まず間違いなく正しいだろうと思えるものですので、B〜Eは正しいと考えられます。
以上より、私の予想が正しいとした場合、次が成り立ちます。
加藤和也さんの著書「解決!フェルマーの最終定理」(日本評論社)p.94には、虚2次体のディリクレの類数公式の
別表現ものっています。
上でも出ましたが、再度、虚2次体の類数公式を書きます。
L(χ,1)=h・2π/(w√N) -----@
そして、さらに、次の式も成り立つことが書かれています。
L(χ,1)=-{π/(N√N)}・Σχ(a)・a -----A
(Σでは、aは0<a<Nをわたる)
ここで、h は2次体の類数、L(χ,1)は2次体に対応したディリクレのL関数L(χ,s)のs=1での特殊値。
w は虚2次体に含まれる1のべき根の個数です。
この@とAより、次が出ます。
h=-w/(2N)・Σχ(a)・a -----B
(Σでは、aは0<a<Nをわたる)
こんな素晴らしい式が書かれています。
そして、このBも「ディリクレの類数公式」と呼ばれているのだそうです。L(χ,1)がなくなっている分、より一般的な感じ
がします。
Bをつぎのように、変形しておきましょう。
1/N・Σχ(a)・a =-2h/w -----C
さて、一つ上でやったのと同じ考察をおこなってみます(私の予想が正しいとした場合の考察です)。
まず予想L-3の場合(m=4n+1型のQ(√m)の場合)を考えると、この場合、導手Nは、N=k となります。
k はもちろん予想中の qπ/k の kです。
よって、Cより、次が成り立ちます。
1/k・Σχ(a)・a =-2h/w -----D
(Σでは、aは0<a<Nをわたる)
次に予想L-2の場合(m=4n+2 or 4n+3型のQ(√m)の場合)を考えると、その場合は、今度はN=2k となり、
よって、Cより、次が成り立ちます。
1/k・Σχ(a)・a =-4h/w -----E
(Σでは、aは0<a<Nをわたる)
Σχ(a)・aは、L(χ,s)と同じものと考えられますから、DもEも一つ上でみたように、ゼータが二つの世界を結びつける
役割をしていることを表現した式となっています。
まとめておきましょう。冒頭の私の予想が正しいとした場合、次が成り立ちます。
k さんは、解析の世界に住んでいます。また、h さん、w さんは代数の世界に生きている。
この異質な世界の住人が、ゼータ(Σχ(a)・a)という橋によって行き来できる状態になっていることをD、Eは示して
いると考えられます。
一つ上の式で、面白いことがわかるのです。もう一度、一つ上で見つけた式を書きます。
[m=4n+1型のQ(√m)の場合]
1/k・Σχ(a)・a =-2h/w -----@
(Σでは、aは0<a<Nをわたる)
[m=4n+2 or 4n+3型のQ(√m)の場合]
1/k・Σχ(a)・a =-4h/w -----A
(Σでは、aは0<a<Nをわたる)
ここで、h は2次体の類数、L(χ,1)は2次体に対応したディリクレのL関数L(χ,s)のs=1での特殊値。
w は虚2次体に含まれる1のべき根の個数です。k は私の予想中の qπ/k の kです。
もう一度、加藤和也さんの名著「解決!フェルマーの最終定理」(日本評論社)に登場願いましょう。
そこには、興味深い事実が書かれているのです。
虚2次体の類数公式における上のw(体での1のべき根の個数)は、次のようになっているというのです。
********************************
w=6 ・・・・・F=Q(√-3)の時
w=4 ・・・・・F=Q(√-)の時
w=2 ・・・・・それ以外の時
********************************
すなわち、これは、虚2次体Q(√m)は無数にあるがQ(√-3)とQ(√-1)を除いて、他は全部w=2であるという
ことです。
よって、@、Aは次のように書き換えることができるのです。冒頭の私の予想が正しいとした場合、次が成り立ちます。
驚くべき簡明さです!
虚2次体の類数 h という非常に大切なものが、解析の世界の住人 k とこんなにも直接的に関係しているのです。
BとCは次のように解釈できるでしょう。
解析の k さんがゼータ山(Σχ(a)・a)を越えれば代数の類数 h さんのところ行ける。
逆に代数のh さんがゼータ山(Σχ(a)・a)を越えれば解析の k さんのところ行ける。
こんなきれいなことを示している。
これは、根源部分で h と k は兄弟であることを意味していると考えられます。
私が「ゼータ関数のいくつかの点について」以来延々と見てきたフーリエ級数の重回積分−重回微分のqπ/k代入
のk が、2次体Q(√m)でもっとも大切な類数と、こんなにも美しい形で結びついていたのです。
類数というのはイデアルとも関係する非常に難しいものであり、私もその意味を完全にはわかっていないのですが、
その難しい類数が、まったく簡単なqπ/k代入の k でとりおさえられるというのですから、これには驚くしかありません。
これは現代数学での「代数の世界が保型形式(解析)でとりおさえられるはず・・」などのラングランズ哲学の方向と似て
いるような気もします。
加藤和也さん(京都大学教授)の「化身(けしん)」という言葉を借りて、次のように表現しておきます。
類数 hは k の化身である!
さて、一つ上の関係をもう一度書きましょう。
そして、何例か具体的に確認して、この正しさを実感しましょう。
なお、上の式は、私の予想が正しいとした場合のものですが、これまでの多くの具体例の検証でその正しさは
ほぼ間違いないと考えられます。
さて、虚2次体について、具体的に確認します。
まず[Q(√-3)を除くm=4n+1型のQ(√m)の場合]からいきましょう。
Bを確認します。
********************************************************************************
虚2次体Q(√-7)を見てみましょう。冒頭の予想L-3から、|m|=k より、この場合k=7です。
また、Q(√-7)に対応するL(χ,s)は、
「天王星 その1」の<cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )の重回積分-重回微分にπ/7を代入>でも
見たとおり、次のものです。
LP(s)=(1/1^s + 1/2^s - 1/3^s + 1/4^s - 1/5^s - 1/6^s)
+ (1/8^s + 1/9^s - 1/10^s + 1/11^s - 1/12^s - 1/13^s)・・・・
(注意: + - はこの()の単位で延々とくり返されていく。)
上をディリクレ指標χ(a)を用いて表現すると、次のようになります。
LP(s)は、mod 7に対応したχ(a)をもち、
「 a≡1 or 2 or 4 mod 7-->χ(a)=1、
a≡3 or 5 or 6 mod 7 -->χ(a)=-1、
それ以外のaではχ(a)=0」
というχ(a)に対応したL(χ,s)となります。そして、このχ(a)の導手はN=7です。
さて、このLP(s)のΣχ(a)・a を計算します。Σは、0<a<Nをわたるのですから、次のように簡単に求まります。
Σχ(a)・a =1 + 2 - 3 + 4 - 5 -6 =-7
さらにQ(√-7)の類数hは、h=1であることが知られています。
これで、k,h,Σχ(a)・aが求まりましたから、Bが確認できます。
左辺=1/k・Σχ(a)・a =1/7・(-7)=-1
右辺=-h=-1
よって、左辺=右辺となりましたので、Bの正しさが確認できました。
******************************************************************************
次に、虚2次体Q(√-15)を見てみましょう。冒頭の予想L-3から、|m|=k より、この場合k=15です。
また、Q(√-15)に対応するL(χ,s)は、
「天王星 その1」の<cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x +・・ )の重回積分-重回微分にπ/15を代入>でも
見たとおり、次のものです。
LS(s)=(1/1^s + 1/2^s + 1/4^s - 1/7^s + 1/8^s - 1/11^s - 1/13^s - 1/14^s)
+ (1/16^s + 1/17^s + 1/19^s - 1/22^s + 1/23^s - 1/26^s - 1/28^s - 1/29^s) +・・・
(注意: + - はこの()の単位で延々とくり返されていく。)
上をディリクレ指標χ(a)を用いて表現すると、次のようになります。
LS(s)は、mod 15に対応したχ(a)をもち、
「 a≡1 or 2 or 4 or 8 mod 15-->χ(a)=1、
a≡7 or 11 or 13 or 14 mod 15 -->χ(a)=-1、
それ以外のaではχ(a)=0」
というχ(a)に対応したL(χ,s)となります。そして、このχ(a)の導手はN=15です。
さて、このLP(s)のΣχ(a)・a を計算します。Σは、0<a<Nをわたるのですから、次のように簡単に求まります。
Σχ(a)・a =1 + 2 + 4 - 7 + 8 - 11 - 13 - 14 =-30
さらにQ(√-15)の類数hは、h=2であることが知られています。
これで、k,h,Σχ(a)・aが求まりましたから、Bが確認できます。
左辺=1/k・Σχ(a)・a =1/15・(-30)=-2
右辺=-h=-2
よって、左辺=右辺となりましたので、Bの正しさが確認できました。
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2例しか確認しませんが、他の場合も、ちゃんと成り立っているはずです。皆さんも、天王星での具体的結果を利用
して確認してみてください。面白いものです。
次に[Q(√-1)を除くm=4n+2 or 4n+3型のQ(√m)の場合]を見てみましょう。
Cを確認するのです。この場合も2例見ましょう。
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虚2次体Q(√-5)を見てみましょう。冒頭の予想L-2から、k =2|m|より、この場合k=10です。
また、Q(√-5)に対応するL(χ,s)は、
見たとおり、次のものです。
LC(s)=(1/1^s + 1/3^s + 1/7^s + 1/9^s - 1/11^s - 1/13^s - 1/17^s - 1/19^s)+・・・
(注意: + - はこの単位で延々とくり返されていきます。)
LC(s)は、mod 20に対応したχ(a)をもち、
「 a≡1 or 3 or 7 or 9 mod 20-->χ(a)=1、
a≡11 or 13 or 17 or 19 mod 20 -->χ(a)=-1、
それ以外のaではχ(a)=0」
というχ(a)に対応したL(χ,s)となります。このχ(a)の導手NはN=20です。
さて、このLP(s)のΣχ(a)・a を計算します。Σは、0<a<Nをわたるのですから、次のように簡単に求まります。
Σχ(a)・a =1 + 3 + 7 + 9 - 11 - 13 - 17 - 19 =-40
さらにQ(√-5)の類数hは、h=2であることが知られています。
これで、k,h,Σχ(a)・aが求まりましたから、Cが確認できます。
左辺=1/k・Σχ(a)・a =1/10・(-40)=-4
右辺=-2h=-2・2=-4
よって、左辺=右辺となりましたので、Cの正しさが確認できました。
******************************************************************************
虚2次体Q(√-10)を見てみましょう。冒頭の予想L-2から、k =2|m|より、この場合k=20です。
また、Q(√-10)に対応するL(χ,s)は、
見たとおり、次のものです。
LK1(s)=(1/1^s - 1/3^s + 1/7^s + 1/9^s + 1/11^s + 1/13^s - 1/17^s + 1/19^s
- 1/21^s + 1/23^s - 1/27^s - 1/29^s - 1/31^s - 1/33^s + 1/37^s - 1/39^s ) +・・・・
(注意: + - はこの単位で延々とくり返されていきます。)
LK1(s)は、mod 40に対応したχ(a)をもち、
「 a≡1 or 7 or 9 or 11 or 13 or 19 or 23 or 37 mod 40 -->χ(a)=1、
a≡3 or 17 or 21 or 27 or 29 or 31 or 33 or 39 mod 40 -->χ(a)=-1、
それ以外のaではχ(a)=0」
というχ(a)に対応したL(χ,s)となります。そして、このχ(a)の導手NはN=40です。
さて、このLP(s)のΣχ(a)・a を計算します。Σは、0<a<Nをわたるのですから、次のように簡単に求まります。
Σχ(a)・a =1 - 3 + 7 + 9 + 11 + 13 -17 + 19 - 21 + 23 - 27 - 29 - 31 - 33 + 37 - 39 =-80
さらにQ(√-10)の類数hは、h=2であることが知られています。
これで、k,h,Σχ(a)・aが求まりましたから、Cが確認できます。
左辺=1/k・Σχ(a)・a =1/20・(-80)=-4
右辺=-2h=-2・2=-4
よって、左辺=右辺となりましたので、Cの正しさが確認できました。
******************************************************************************
このように、やはり、[Q(√-1)を除くm=4n+2 or 4n+3型のQ(√m)の場合]でもきちんと成立していました。
これらはほんとうに不思議な事実だと思います。
非常に難しい類数 h が、まったく簡単な k と表裏一体となっているという不思議。
その不思議さをあじわうために、再度書いておきましょう。
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