mが4n+1の場合の2次体Q(√m)に関する、明示的な場合の予想L-3Bを提示しました。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・を初等的証明を得ました。0回積分の式から1回積分の式が出る証明
を与えました。
この天王星では、延々と予想L-3(次です)の正しさを具体的な例で確めてきました。
もちろん厳密な証明はまだ得ていませんが、とにかく、まず多くの具体例で、その正しさを確めてきたわけです。
そして、次の表Aのように、確めた具体例ではすべて予想L-3が成り立っていたのでした。
予想L-3は正しいと考えられます。
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下表では、L(χ,s)本体が露に出現する場合を◎で、分身を経由して出現する場合を○で表現しています。
◎、○どちらでも”予想が成り立っている”ことを意味します。(予想が破綻した場合は×を挿入するつもりです。)
表A
注意1:L(χ,s)欄は、各々の2次体に対応するL(χ,s)を示す。
注意2:一番下の行の「偶,奇」は、Q(√m)に対応するL(χ,s)特殊値が偶数回の積分(微分)の所に現れた場合に「偶」、
奇数回の積分(微分)の所に現れた場合に「奇」と記しています。
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さて、木星から土星にかけて非明示な場合の予想L-2を多くの具体例で確め、そして、それは明示的な場合の
予想L-2Bへと自然に引き継がれたのでした。予想L-2が正しければ同時に予想L-2Bも正しいということになった
のでした。
すでにお気づきかもしれませんが、同様にして、この天王星でやった非明示な場合の予想L-3も、明示的な場合
に自然に引き継ぐことができるのです。
その理由は、「土星 その2」の<予想L-2Bの提示>のくり返しになりますが、述べますと次のようになります。
[理由]
まず、非明示な場合の中心母等式@と明示的な場合の中心母等式Aを書きます。
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----@
(0 <|x|< 2π)
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----A
(0 < x < 2π)
@を重回積分-重回微分した結果の2回積分、3回積分のみを書くと次のようになります。
[非明示な場合]
2回積分
∫log(2sin(x/2))=-(sinx/1^2 + sin2x/2^2 + sin3x/3^2 + ・・・)
3回積分
∫∫log(2sin(x/2))=(cosx/1^3 + cos2x/2^3 + cos3x/3^3 + ・・・) - ζ(3)
次に、Aの明示的な場合の中心母等式を重回積分-重回微分した結果の2回、3回積分は次のようになる。
[明示的な場合]
2回積分
π/2・x - 1/2・x^2/2!=- (cosx/1^2 + cos2x/2^2 + cos3x/3^2 + ・・・) + ζ(2)
3回積分
π/2・x^2/2! - 1/2・x^3/3!=- (sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 + ・・・) + ζ(2)・x
上から、sin級数は非明示な場合では偶数回の積分(微分)のところに出て、明示的な場合では奇数回のところに
出るとわかります。
また、cos級数は、非明示な場合では奇数回の積分(微分)のところに出て、明示的な場合では偶数回のところに
出るとわかる。
非明示な場合と明示的な場合とでは、sin級数とcos級数の出方が完全に逆になっている。
予想L-3は、中心母等式@の右辺の級数に焦点をあてたものであり、sin級数かcos級数かというそれだけが、
ディリクレのL関数L(χ,s)を決める決定的な点となっています。
予想L-3中の「2次体Q(√m)が虚2次体であるならばそれに対応するL(χ,s)は偶数回の微分・積分の所に現れ、
実2次体であるならば対応するL(χ,s)は奇数回の微分・積分の所に現れる。」という文の偶数と奇数を逆にした
ものが、そのまま明示的な場合の予想へと繋がるとわかるでしょう。
すなわち、非明示な場合の予想L-3では、
虚2次体−偶数回
実2次体−奇数回
であったものが、明示的な場合の予想では、
虚2次体−奇数回
実2次体−偶数回
となり、関係が逆になってくる。
[理由の説明終わり]
よって、明示的な場合の予想は次のようになります。予想L-3Bとして提示します。
そして、ここまでくると上の表Aの結果も、予想L-3Bにそっくりそのまま(ただし奇数回と偶数回を逆にして)引き継ぐ
ことができることは自明です。
よって、予想L-3Bの結果として、次の表A−2が瞬時に出せるわけです。
表A−2
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -------@
(0 < x < 2π)
@は、cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----A
と並ぶ重要な中心母等式ですが、これまで@の正しさ厳密に証明したわけではありませんでした。
今回、ディリクレのL関数L(χ,s)の明示的な場合の特殊値を生み出す@を初等的に証明することができましたので、
報告します。
ところで、一番最初に@を得た方法というのは、土星 その1でも述べましたが、たんに、マグロウヒル公式集(*)
にのっていた次式
π/2-x/2=sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・ -----B
(0 < x < 2π)
を、1回微分したということでした。
そして、Bで、xの範囲(0 < x < 2π)の値代入においては、左辺の有限の項は、当然有限(収束)となり、よって、
この(0 < x < 2π)という範囲においては、右辺の無限級数の項別微分は保証されると考えられる。よって@においても
x のとる範囲は(0 < x < 2π)としたのです。ただ、面白いことに(0 <= x <= 2π)としても@は成立しているのですが。
これに関しては、少し後で調べます。
さて、まず、@の初等的証明を述べます。
[証明]
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + cos5x + cos6x + cos7x + cos8x・・・・ -----@
というこの@の成立を証明する。
「ゼータ関数のいくつかの点について その13」の<高校生でもできる初等的証明>の類似の方法である。
@の両辺にsinxをかけた式を考察しよう。
すなわち、
-sinx/2=sinx・cosx + sinx・cos2x + sinx・cos3x + sinx・cos4x
+ sinx・cos5x + sinx・cos6x + sinx・cos7x + sinx・cos8x +・・・・ -----A
と、当然こうなる。
さて、このAが正しい式であることをまず証明したい。
このAが正しい式であることが証明されれば、@も正しいと言える。なぜなら、Aの両辺をsinxで割れば@が出てくる
からである。
さて、三角関数の加法定理より、次が成り立つ。
sin(x+y)=sinx・cosy + siny・cosx ------B
sin(x-y)=sinx・cosy - siny・cosx ------C
B+Cより、
sinx・cosy =1/2・{sin(x+y) + sin(x-y)} -----D
となる。
このDをAの右辺に適用していくと、
Aの右辺
=1/2・[{sin(x+x) + sin(x-x)} + {sin(x+2x) + sin(x-2x)} + {sin(x+3x) + sin(x-3x)}+ {sin(x+4x) + sin(x-4x)}
+ {sin(x+5x) + sin(x-5x)} + {sin(x+6x) + sin(x-6x)} + {sin(x+7x) + sin(x-7x)} + {sin(x+8x) + sin(x-8x)} +・・・]
=1/2・[{sin2x + sin0} + {sin3x - sinx} + {sin4x - sin2x}
+ {sin5x - sin3x} + {sin6x - sin4x} + {sin7x - sin5x} + {sin8x - sin6x} + {sin9x - sin7x} +・・・]
=-1/2・sinx
=Aの左辺
このようにAの左辺と右辺が等しいことがわかった。(右辺の項がすべて打ち消しあう妙を味わうこと!)
A式は正しいことが判明した。したがって、@式も正しいとわかるのである。
[証明終わり]
この証明は、まったく初等的であり、高校生でもできます。
ここでも、L(χ,s)の様々な明示的な特殊値を生み出す重要な母等式が、高校生でも証明できる式であったと
わかったのです。
(証明自体は簡明そのものですが、思いつくのは別で、この発見には多少苦労しました)
@式の右辺は左辺のフーリエ展開となっていると考えられますが、そのフーリエ解析の観点からの証明という
のにはいまだ成功していないことを付け加えておきます。
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さて、少し上で述べた@の範囲のこと、すなわち、(0 < x < 2π)か(0 <= x <= 2π)かが気になりましたので、
もっと大きな視点で調べました。
土星 その1で@の重回積分-重回微分の結果を書きましたが、もう一度書きます。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
@の重回積分-重回微分した結果です。
[重回積分、重回微分した一連の式]
・
・
4回微分
0=cosx + 2^4cos2x + 3^4cos3x + 4^4cos4x + ・・・・
3回微分
0=sinx + 2^3sin2x + 3^3sin3x + 4^3sin4x + ・・・・
2回微分
0=-(cosx + 2^2cos2x + 3^2cos3x + 4^2cos4x + ・・・・)
1回微分
0=- (sinx + 2sin2x + 3sin3x + 4sin4x + ・・・・)
0回積分
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・
1回積分
π/2 - x/2=sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・
2回積分
π/2・x - 1/2・x^2/2!=- (cosx/1^2 + cos2x/2^2 + cos3x/3^2 + ・・・) + ζ(2)
3回積分
π/2・x^2/2! - 1/2・x^3/3!=- (sinx/1^3 + sin2x/2^3 + sin3x/3^3 + ・・・) + ζ(2)・x
4回積分
π/2・x^3/3!- 1/2・x^4/4!= (cosx/1^4 + cos2x/2^4 + cos3x/3^4 + ・・・) - ζ(4) + ζ(2)・x^2/2!
5回積分
π/2・x^4/4!- 1/2・x^5/5!= (sinx/1^5 + sin2x/2^5 + sin3x/3^5 + ・・・) - ζ(4)・x + ζ(2)・x^3/3!
6回積分
π/2・x^5/5!- 1/2・x^6/6!
= - (cosx/1^6 + cos2x/2^6 + cos3x/3^6 + ・・・) + ζ(6) -ζ(4)・x^2/2!+ ζ(2)・x^4/4!
と、このように上下に延々と続いていきます。
これまで本サイトで延々やってきたように、L(χ,s)の特殊値を探求していくにおいては、0回積分のみならず、これら
一連のもの全ての式が対象となるわけですが、これらは果たしてx=0やx=2πでも成立しているのでしょうか?
当てはめていけばすぐにわかることですが、面白いことに次の1回積分以外はすべて成立しているのです!
π/2 - 1/2・x=sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・
この式では、x=0やx=2π代入が不成立であるのは、明らかですね。
この観点もありますので、予想L−3、L−3Bでの範囲はこれまで通り、(0 < x < 2π)としておきます。
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
一つ上で@の[重回積分、重回微分した一連の式]を書きましたが、これまで自明のようにこれら一連の式を
書いてきましたが、じつはまだ0回積分の式(つまり@)から1回積分の式(つまり次の式)が出るという証明は与え
ていませんでした。
π/2 - x/2=sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・ -----A
今回それを与えます。それ以外の無数にある式が、@の重回積分−重回微分によって自然に出ることは上の
[重回積分、重回微分した一連の式]を眺めればわかると思います。
ここでやろうとしていることは「ゼータ関数のいくつかの点 その11」の<奇数ゼータの統一的法則性を究極の形へ>
でやったことの類似になっています。
もう一つの中心母等式である次のBでも、0回積分の式から1回積分の式への導出だけが気になり、そしてその計算が
実際にできることを<奇数ゼータの統一的法則性を究極の形へ>で示したのでした。
そこではぎりぎりのところで、ゼータの世界は調和がたもたれている様子をみたのでした。
cos(x/2)/sin(x/2)=2(sinx + sin2x + sin3x + sin4x + ・・・) -----B
私が気にしていることもわかっていただけるのではないでしょうか。
@を0〜xまで1回積分してもAにはならないのではないか?と一見思ってしまうからです。
しかし、じつは、@を1回積分すればAが出るのだというのを以下に示します。
上のBでの証明の類似のアイディアを使い、その状況下でたしかに成り立っていることを示します。
[証明]
-1/2=cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ -----@
π/2 - x/2=sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・ -----A
@を0〜xまで定積分するとAが出ることを示します。
Aは現代数学で知られている等式で、左辺のフーリエ展開が右辺となっているものです。
私のもっている「マグロウヒル数学公式・数表ハンドブック」(Murray R. Spiegel著、氏家勝巳訳、オーム社)にも
0 < x <2πで成り立つ式としてのっています。
さて、@を0+ε〜x の範囲で定積分します。
もちろんεは小さな正の数です(積分した後にεを0に究極に近づけるとします)。
∫(0+ε〜x)(-1/2)dx=∫(0+ε〜x)(cosx + cos2x + cos3x + cos4x + ・・・・ )dx -----B
Bの左辺=-x/2 + ε/2
となります。
一方、右辺は
Bの右辺=[sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・](x,0+ε)
=(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・)
- (sinε/1 + sin2ε/2 + sin3ε/3 + sin4ε/4 + ・・・・)
となります。 [Bの左辺]=[Bの右辺]より、
-x/2 + ε/2 =(sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・)
- (sinε/1 + sin2ε/2 + sin3ε/3 + sin4ε/4 + ・・・・) -----C
という等式がまず成り立ちます。
Cを眺めることより、もし次式が成り立てばCから目標のAが出ることにお気づきでしょうか。
π/2 - ε/2 =sinε/1 + sin2ε/2 + sin3ε/3 + sin4ε/4 + ・・・・ -----D
究極にεを0に近づけた状態で、この式Dははたして成り立っているのでしょうか?
その成立がいえれば、すべては終了するのです。さて、このDは正しいでしょうか?
じつは、Dは正しいのです。その理由は、Aのxにεを代入するとDになるからです。
いくら0に近づいているといってもεは完全に0ではない。よって、AよりDが成り立つことがいえるわけです。
これよりDが成り立つことがわかったから、DとCより、
-x/2 + π/2 =sinx/1 + sin2x/2 + sin3x/3 + sin4x/4 + ・・・・
という式が出る。これは、すなわち目標とするAそのものである。
よって、@を0〜xまで定積分するとAが出ることが示せた。
[証明終わり]
このようにして、ゼータはぎりぎりのところで調和をたもっているのです。
地下の世界(微分の世界)と地上の世界(積分の世界)は細い一本の糸でつながっていることが、ここでも
わかったわけです。
それにしても、上の証明は不思議な感じのする証明ではあります。
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